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「マーケティング・リサーチの今」

「読売ADレポート」最新号の特集で、「マーケティング・リサーチの今」と題して3つの記事がアップされていました。(「今」というほど、今のことでもないですが・・・)
今回は、この記事の紹介&コメントを。

カスタマーの声に耳をかたむける調査とは

日産自動車市場情報室室長星野朝子氏のインタビュー記事です。
現場でマーケティング・リサーチを行ってきた人の言葉だけあって、納得できるものです。マーケティング・リサーチとはなんぞやという理解のためにも、ぜひ一読を。

いくつか、気になった発言を紹介しておきます。

(ネット調査は)あくまで、データベースとして使うための定量調査として行っています。

(定性調査は)調査結果から何かをわかろうとしてやっているというよりは、お客様に刺激をもらおうとしてやっていますね。

調査は「自分を刺激する材料」だというのが、私の考えです。カスタマーオリエンテッドとは、カスタマーに答えを聞くことではなくて、自分がカスタマーになりきって発想することです。

いずれも、納得の発言です。
このような発言の背景も、本文でぜひ確認してください。

■ネット調査を補正する「傾向スコア」の可能性

こちらは、個人的にはやや懐疑的。手法が懐疑的というのではなく、現実性の問題として懐疑的ということなのですが。
「傾向スコア」を適用するには、結局、正しくサンプリングされた対象データが必要となるわけで、そもそもそのようなデータを得ることができるのか?という問題が残されます。なので、記事の中でも、つぎのように指摘しています。

今後は欧米で行われているように、官公庁が行った調査データを一定の条件の下に民間でも利用できるようにすることが日本でも求められると思います。

確かに、官公庁はいまも「正しいサンプリングによる訪問調査」を実施していますので(回収率の問題はありますが・・・)、官公庁のデータを利用できれば実現可能性は高まるでしょう。ただ、マーケティング・リサーチにも適用したい補正項目が、官公庁調査でも取得できているということが前提になりますが。

そもそも、多くのマーケティング・リサーチでは補正はあまり必要ないというのもあります。ただ、記事で紹介されているビデオリサーチ社の「ACR調査」のような汎用性の高い実態・意識調査では、必要になるというのも理解できます。

■ネット調査利用のポイント

これは、JMRA(日本マーケティング・リサーチ協会)で制定された「インターネット調査に関する品質保証ガイドライン」を元に、JMRAの委員の方が寄稿したものです。
オリジナルのガイドラインは、JMRAのHPでダウンロードすることができます(⇒こちら)。

「報告書に記載すべき」とされる項目を中心に、チェックポイントとしてまとめてられています。「べき論」としては、確かにこれらの項目を記載すべきだというのは正論だと思います。いずれも、データを読むベースとしては必要な情報ですので。
ただ、これらが実行されているかというと、ほとんどお目にかかったことがない。。。とくに、発信数や回収率などは、調査報告書としては不可欠だと思うのですが。
思うに、クライアント=リサーチユーザーの方も、なぜこれらが必要なのかということを理解できていないからだと思います(or 理解していたとしても、この点を突っ込んでも仕方がないと諦めているか?)。
なのでJMRAには、次回このような記事を書く機会がある場合は、ぜひ「なぜ」の部分を説明していただければと、期待しています。
(機会を見つけて、このblogでも取り上げたいとは思っていますが・・・)

以上、「読売ADリポート」の紹介でしたが、ぜひ、リンク先の原文を読んでいただき、マーケティング・リサーチについて考えていただきたいと思います。

出口調査って?

2007年参議院選挙も終了し、結果について様々な論議がされていますが・・・。

ここでは、前回の選挙前情勢調査に続いて、「出口調査」について。
(しかし、みなさん出口調査に関心があるんですね。blog検索をすると、「出口調査ってなんだ」「どうして、開票前にわかるんだ」「出口調査を頼まれました」というような記事がいっぱい出ています。出口調査に協力した人の生の声を見てみたい方は、検索してみてください。)

20時の選挙特番開始と同時に発表される各テレビ局の議席数予想。これは、「出口調査」と呼ばれる調査を元に各社が算出しているものです。
各社の数字と実際の確定議席数を比べてみると、今回は各社ともかなりいい予測を出していたことがわかります(前回の衆議院選挙の時は、各社とも自民を多めに予測していたと記憶していますが。。。)

         NHK 日テレ系   TBS系 フジ系  テレ朝系   テレ東系 確定

  • 自民  31-43  38     34   36    38     39    37
  • 公明  8-12   9     10    10    8      9     9
  • 民社  55-65   59     60    61    58    60    60
  • 共産  2-6    3     4     4     4     3     3
  • 社民  1-2    2     2     2     2     2     2
  • 国民  0-2    1     2     2     2     2     2
  • 日本  0-1    0     1     0     1     0     1
  • 他   5-10    9     8     6     8     6     7

調査をしっかりやって、周辺情報を鑑みてデータを解釈すると、これだけの精度で結果が得られるというよい見本です。

では、「出口調査」はどのように行われているのか?
まずは、「何人の人に聞いているのか(サンプル数)」を見てみます。
この点について、WEB上で確認できたのは、朝日新聞とNHKです(他社さんで記述がありましたら、教えてください)。

「安倍不信任」鮮明 本社出口調査(朝日新聞:記事終りに説明)

おはようコラム 「参院選・当確の打ち方」(NHK:解説委員室)

朝日新聞は「全国3630カ所の投票所で」「約18万5000人から有効回答を得た」、NHKは「全国1600箇所で20万人を対象に」となっています。
今回選挙では、投票所数が51743ヶ所、有権者数が約1億371万人とのことですので、両社ともかなりの地点数と対象者人数で行っています。
(1回の調査規模としては、マーケティング・リサーチではありえない地点数とサンプル数です、調査会社はたいへんだろうな。それと、調査の現場にいた人間からみると、つい費用を計算したくなってしまうのですが・・・。面接調査のはずですから、かなりの費用を投じていますね。)

整理すると、

  • 朝日が、約14投票所に1地点、有権者約560人に1人、1地点あたり約51人。
  • NHKが、約32投票所に1地点、有権者約520人に1人、1地点あたり125人。

地点数を多くとるか、1地点あたりのサンプル数を多くするか、どちらがいいとは一概には言えませんが、両社の考え方の違いなのでしょう(プラス予算かな?)。

さて、これで調査の概要がわかりましたが、もうひとつ大切なことがあります。「どこの投票所で」、「誰に調査をお願いするか」ということです。
blogを見ても、「うちみたいな田舎では、調査しないんだろうな」とか、「調査をやっていたので頼まれると思ったのに、頼まれなかった。人を見ているのか?」というような記述がありましたが、そんなことはありません。きちんと、ルールがあるはずです。

まずは、「どこの投票所で」。都市部でしかやらないとか、行きやすそうなところだけでやっているとか、そんなことはないはずです。
たとえば、ある県の投票所数が100あって、この県で調査する投票所が10だとします(この都道府県あたりの調査対象投票所数も、きちんと有権者数などを元に決められます)。そうすると、100の投票所のリストから、10おきに投票所を選び出すというようなことをしていると思います。あるいは、投票所ごとの有権者数を元にもっと正確な方法で、選んでいるかもしれません(説明が面倒なので、省略しますが・・・)。いずれにしても、「すべての投票所が、同じ確率で選ばれるような方法」があって、その方法に従って、「どこの投票所で調査をするのか」を決めているはずです。

つぎに、その決められた投票所で、「誰にお願いをするのか」。
これも、一定のルールを決めます。たとえば「10人おきに依頼をすること」というような取り決めです。(もっと正確に行おうとすると、事前に投票所毎の性別・年齢別の有権者数を把握して、この「投票所では、男性○人・女性△人」というように、性別×年齢ごとにあらかじめ回収数を設定し、その条件の中で、何人おきにお願いするという方法も考えられます。しかし、この方法では、ほぼ全員の有権者が投票するという前提ならOKですが、棄権のことを考えると、正しくないように思います)。
もしも調査員にお任せで、誰にお願いするかを勝手に決めるとどうなるか?おそらく、頼みやすそうな人、女性とか、やさしそうな人とかに頼んでしまうことになるでしょう。しかし、投票所に来るのは、男性もいれば、ぱっと見では話しずらそうな人もいるはずです。となると「偏った人の意見しか聞いていない」ということになり、せっかくの調査も台無しです。

このように、精度の高いデータを得るためには、「何人の人に調査をお願いするのか」「どこで調査を行うのか」「対象者をどのように選ぶのか」ということを取り決めているのです。前回も出てきた「代表性」に関わる、重要な決め事です。
(プラス、現場で調査員がきちんと指示通りの調査を行っているのか、というのも重要です。ですから、きちんとした調査会社は、現場を巡回して調査の状況をチェックします。他より安い費用で調査を請け負う会社は、この辺りを手抜きすることになります。あるいは、理解していないか・・・。)

さてつぎに、「500人に1人から聞いた数字で、なぜ結果がこんなに正確なのか」という疑問も出てくると思います。これは、統計の領域に入ってしまうので、少々難しい話になります。
こちら↓のblogで、詳しい説明をしていますので興味のある方はどうぞ(ただし、数学的な説明になりますが・・・)。

出口調査は、どの程度、結果を予測できるのか?(永井孝尚のMM21)

また、今回の選挙ではないですが、日経リサーチが出口調査の結果を検証した記事もありましたので、あわせて紹介しておきます(こちらも、かなり専門的です)。
こちらでは、「いいかげんな出口調査も」として、先ほどの「きちんと、対象者を選んでいるのか」という問題点を指摘しています。プラス、最近の選挙では無視できなくなってきている期日前投票をどうするかについての考察も行っています。

衆院選出口調査の検証(日経リサーチ)

きっと、まだ疑問がありますよね?
開票が進んで、ある程度の実際の得票数が出てきている場面で、票が少ない人が、多い人よりも先に当確がでてしまうのは、なぜか?この点については、先ほど紹介しているNHK解説委員室のblogでも、次のような記述があります。

当確についてNHKの原則は三つ。
1.世論調査や記者の取材で、事前に情勢を把握する。
2.投票日の出口調査。今回は全国1600箇所で20万人を対象に行います。
3.開票所の直接取材です。
これらを総合的に判断して、当選確実を打ち出しているのです。
おはようコラム 「参院選・当確の打ち方」(NHK:解説委員室)

どういうことかというと、たとえばある県で2人の候補者が競っていたとします。
Aさんは県北部で強く、Bさんは県南部で強いということが、事前の情勢取材で予想されています。ところが、開票50%くらいの時点で、県北部しか開票結果がわかっていなかったのですが、得票数ではAさんとBさんがほとんど同じだとします。となると、開票されていない県南部での票が当初の情勢取材どおりBさんに多く集まっていれば、Bさんが有利ということになりますよね?で、出口調査の結果でも、この取材結果が裏づけられているとすると、すべてを開票しなくても、Bさんの当確を打つことができるということになります。実際に放送の現場で作業を行っているわけではないのですが、おそらくこのようなことだと思います。

最初の方で、「調査をしっかりやって、周辺情報を鑑みてデータを解釈すると」と書いたのは、この点についてです。マーケティング・リサーチも、実は考え方は一緒です。何度か、「1回の調査で判断するより、調査を重ねることが必要」というようなことを書いてきましたが、これと一緒です。1回きりの調査結果では、結果からマーケットを予測することは難しいですが、同じフォーマットで何度も調査を重ねていれば、過去の傾向から今回の結果データを解釈することで、マーケットの読みは正確さを増していくと思っています。
(この点は、神戸大学石井先生も「リサーチ標準」という言葉で、指摘されていることです→こちらのエントリーから参照ください)

最後に、「出口調査の歴史」が理解できるblogもみつけたので、紹介しておきます。

出口調査の父:ミトフスキー氏の死を悼む(メディア・レボリューション)

さて・・・
軽く「出口調査」を紹介しようと思っていましたが、結構長くなってしまいました。。。
ただ、世間の多くの人が「調査」というものに興味を持ってくれる機会ですし、WEB調査ではわからない調査の基本部分を理解するのに、いい教材ですので、少々詳しく書いてみました。
少しでも、「調査」「リサーチ」というものに興味を持ち、理解してくれる人が増えてくれればいいなと思っています。

参議院選挙情勢調査(代表性の話)

2007年参議院選挙も佳境に入り、報道各社の情勢調査が出ています。
ざっと見てみましょう。

論調は、自民党40議席の攻防というところで各社とも一致しているようです。
選挙についても思うところはありますが、ここで政治的な話をしてもしかたないので、やはり調査について。
(とはいえ、ぜひ各紙の解説記事を読み比べてみてください、ふだん新聞を一紙しか読まない方はとくに。各紙の論調の違いがわかっておもしろいですよ。)

WEB上で、具体的な予想議席数が見られるのは朝日新聞だけなのですが、参考までに予想議席数を引用しておきます。

  • 自民  38(31~45)
  • 民主  58(52~64)
  • 公明  10(7~13)
  • 共産   4(2~7)
  • 社民   2(1~3)
  • 国民   2(0~2)
  • 日本   0(0~1)
  • 無所属 7(5~9)

この数字が正しいかどうかは、月曜日の結果を見ればわかりますが、どうでしょうか・・・。
(調査結果が正しかったのかどうかが検証できるのが、選挙予測の怖いところですね。マーケティング・リサーチでは、調査結果が正しいかどうかの検証なんて、ほとんどできませんから。)

さて、報道各社で行っている世論調査、どのように行われているかご存知ですか?
どこの報道機関でも、電話調査で行っていると思います。それも、「RDD方式」と呼ばれる電話調査です。
マーケティング・リサーチと違って(と書くと、かなり語弊がありますが、あえてこう書きます)、世論調査、なかでも選挙予測となると、調査の「代表性」というものが、かなり重要になってきます。
「代表性」、ご存知ですか?もしも、あなたがリサーチを担当していたり、お仕事でリサーチをされたことがあるとしたら、この言葉を知らないと、かなりまずいことになります。。。
とはいえ、この代表性という概念をきっちり理解し、調査を行う際に完全に守ることはとても難しいことでもありますが・・・。
簡単にいいますと、「代表性」というのは、今回の調査に回答した人が、調べたい人全体(=母集団、選挙予測では有権者すべて)から、等しい確率で選ばれているか、ということになります。
といっても難しいですね・・・。
たとえば、地域別・性別・年齢別に見たときに、有権者全体の構成比と、調査回答者の構成比が等しいかどうかということを考えるわけです。ほんとうは、さらに、職業別だとか、年収別だとか、他のざまざまな属性においても等しいことが望ましいのですが。

では、各報道機関(実施しているのはどこかの調査会社さんだと思いますが)は、「代表性」の確保のために、どのようなことを行っているのか?
日経リサーチ社のホームページに、丁寧な説明が掲載されていますので、こちらを参考にしてください。

【日経リサーチHPより】
日経電話世論調査~調査方法

日経電話世論調査~よくある質問

いかがでですか?すぐに理解できますか?
正直、すぐには理解できないし、かなり面倒なことを行っていますよね?電話番号の選び方、さらには、世帯の中で誰に回答をしてもらうかも「年齢が上から乱数番目の人」というように、特定しています。
しかし、これだけのことをしないと、先ほどの「代表性」というものが確保できず、代表性が確保できなければ調査結果の信頼性も崩れてしまうということなのです。

あわせて、「よくある質問」もご覧ください。少々長いですが、調査というものを理解するには、ちょうどよい資料だと思いますので。

今回は、選挙予測に絡めて「代表性」というものを考えてみました。
(寺子屋、始まりませんね・・・。代表性からはじめようと思っているのですが、このように難しいテーマでして・・・ 
⇒ いいわけです、すいません。。。)

数字は怖い・・・(集計ベースの話)

blog 「とみざわのマーケティング思索ノート」から。
(「マーケティング千日回峰之記」というblogを書かれていた方の新blogです。千日回峰は無事、万行となられたようです。千日の間、一日も欠かさずにエントリーを続けられたことに、敬意を表します。すごいです。)

『リサーチャーとファシスト』という記事がアップされています。題名からは、よくわからないと思いますが、リサーチデータを読む際に注意しないといけないポイントが示されていると思いますので、ご紹介します。

まずは、発端となった記事から(上記blogからの孫引です)。

パスモを持っている人は全体の19.7%。うち64.3%がスイカも持っていた。両方持つ人の48.3%が交通機関によって2種類のカードを使い分けていた。
(日経朝刊07.7.15より)

さて、この記事の第一印象はどのようなものですか?
何も考えずに、すっと記事を読んでしまうと、「こんなに多くの人が、カードを2つも持って使い分けているの?」と感じませんか?
よーく読むと、これは完全に誤読だということがわかります。正しい数字の読み方をすると、どういう結論になるのか?少しご自身で考えてから、「とみざわのマーケティング思索ノート」をご覧ください。グラフも提示して、とてもわかりやすく説明されています。

以前、「シニアって誰ですか?」で、調査対象をどうするのかを、きちんと考えないといけないという趣旨のエントリーをアップしています(その後、調査結果とはまったく異なる事実を示す記事が出されています。コメント欄にリンクを掲示していますので、興味のある方はご覧ください)。
しかし、調査がしっかり行われたとしても、こんどは結果のデータをきちんと読むことができないと、これまた、意味がない。とくに、この事例のように、どんどんベース(集計を行うときの分母)を絞っていくような項目では注意が必要です。

なぜ、このことをあえて取り上げるかというと、WEB調査が全盛だからこそです。
WEB調査の調査システムは、回答対象者を設問ごとに、システム的に限定していくことができます。このシステムは、複雑な設問を行う上では、とても有用なシステムです。回答者は、とりたてて意識をすることなく、自分が答えるべき設問にのみ回答を行うことができますので。
ただ、これが集計結果を見る上での落とし穴になる場合があります。基本的に、このシステムでは、「回答者ベース」のみでの集計がアウトプットされることが多いようです。となると、事例の記事のように、「Aと答えた人は●%。そのうち、Bと答えた人は▲%。また、その中でCと答えた人は■%」というようなデータの読み方をするようになってしまいます。元々の全対象者ベースで、何%だったのかという数字を意識できなくなってしまいます。
結果、「印象としての数字」のみが一人歩きを始める・・・。

例をひとつあげましょう。
よく、商品のパフォーマンスを捉えるために、認知率・購入経験率・現在購入率という項目を設定しますよね。
このとき、集計結果はおそらく、

  • 認知率=全サンプルベース
  • 購入経験率=認知者ベース
  • 現在購入率=購入経験者ベース

で計算されている場合が多いのではないでしょうか?
もちろん、この数字を見ていくことも、重要な意味があります(ここでは、詳しくは説明しませんが)。
ただ、この「現在購入率」をそのまま、「現在、この商品を購入している人は、●%です」とやってしまうと、大きな間違いになります。基本的には、全サンプルベースで数字を計算しなおさないと、マーケットでのシェアにはなりません。

もしかしたら、このblogをご覧いただいている皆さんにとっては、「あたりまえ」のことかもしれませんが、他の人が提示するリサーチデータを読む時など、気を抜くと、こんな数字を読まされていることがあるかもしれません。

データを読む際には、「調査の設計は?=誰を対象にしたリサーチ?」と同時に、でてきたデータについても「集計のベースは?=誰の回答?」ということを、常に意識して結果を読むようにしたいものです。

「シニア」って誰ですか?

少し前の記事になりますが、

低調なシニア向けケータイ、40歳以上で5%未満(japan.internet.com)

という記事が出ています。また、同じところからのリリースで、

「シニア向けサイト」を利用しない理由は「自分はまだシニアではない」

という記事もあります。
確かに、これらの記事を見たような記憶があったのですが、スルーしていました。
ところがいくつかのblogで、これらの記事を題材にしているものがあり、もう一度記事を見直したのですが。。。(文末に、同じテーマを上げている方のblogを紹介しています。)

ポイントは、「調査対象者の設定」です。
調査対象者は、つぎのようになっています(いずれも、ほぼ同様です)。

調査対象は、全国の40歳以上の男女330人。性別では、男性44.2%、女性55.8%。年齢別では、40代53.3%、50代27.9%、60代14.5%、70歳以上4.2%。

40代が過半数、50代が3割近く、このふたつの年代で8割です。
はたして、「シニア向け携帯」や「シニア向けサイト」のターゲットはこの年代なのか???
どう思いますか?

なのに、この調査対象者でシニア向け携帯の利用率が5%未満だからといって「低調」と結論付けることになんの意味がるあるのでしょうか?
また、調査方法がインターネット調査なのですが、インターネット調査にモニター登録するような方は、そもそもがPCや携帯のリテラシーは低くはないでしょう。その人たちに、シニア向け携帯の調査を行うことに意味があるのでしょうか?この記事のリンクにある記事(ドコモ、FOMA 対応のらくらくホンを発売)のように、シニア向け携帯電話は、現在の高機能な携帯電話では使いこなせない方や、画面の文字が小さくて読みにくいという方にむけて、使用方法をシンプルにすることをコンセプトとしているはずなのに・・・。
(かくいう私もすでに40代ですが、シニア向け携帯のお世話になる気など毛頭ありません。画面の字が小さいと感じることもありませんし、機能が使いこなせないということも全くありませんので -_- )

一方の「シニア向けサイト」については、「シニア向けサイトを利用しない理由は、自分はまだシニアではない」って・・・。
これって、何か意味がある結果でしょうか???

「調査対象を、どう設定するか」は、調査を行う上でのイロハの部分であり、この部分をしっかり行わないと、どんなに優れた質問設計や分析を行っても、結果にほとんど意味はありません。車の両輪のひとつといっても過言ではない重要なポイントです。
ところが、現状では、この部分がかなり疎かになっていると感じています。
調査のテーマは何なのか、そのためにはどのような人たちを対象とした調査を行うべきなのか、このあたりの議論が十分になされないままにリサーチが行われているように思います。(それだけならまだしも、こうやって、その結果がいかにも一般的な傾向であるように公表される・・・)

だいぶご無沙汰している「寺子屋」本編ですが、近日中に、この「調査対象者の設定」に関わる問題から再開をしようと思います。

PS.
この記事についてコメントしているblogは、↓のようなものがあります。
いずれも、もっともなご意見だと思いますので、参考にしてください。

これで調査レポートと言えるの(「市民はたさんの普通の感覚?」さん)

シニア向け携帯電話 No1(「消費者心理学とマーケティング」さん)

このリサーチおかしくないか?(「NOTHING BAT・・・」さん)

アイトラッキング

この記事↓に関連して、結構あちらこちらのblogで引用されているようなので、備忘録もかねてご紹介。(しかし、昨年9月~10月調査なのに、なんでいまごろリリースなんだろう・・・)

検索ユーザーの目線はどう動く~Yahoo!とGoogleで違い(ITmediaNews)

この記事で行われているのは、「アイトラッキング」という調査手法です。
手法自体は、結構前から行われていたものですが、以前はカメラのようなものを装着していたのが、カメラなしでできるようになっているようです。

今では、WEBサイトのユーザビリティ調査に使われることが多いようですが、広告評価など、他にも応用できる範囲は結構あると思います。
ただ、アイトラッキングで判るのは、「どこを見ているのか」という事実のみであって、「なぜ、そこを見たのか」「それが、よい印象を与えているのか、よくない印象を与えているのか」といった理由(Causal dataといったりします)については、やはりインタビューなどを絡めないとわからないということです。
いまでは、アイトラッキングを行う会社も増えているようですが(ただ、いわゆる「調査会社」は、少ないようです・・・)、このあたりの見極めも行ったうえで、発注することが必要だと思います。(「アイトラッキング」で検索すると、いろいろな会社がヒットします。)

関連して、いくつかのサイトを紹介しておきます。
もう少し具体的に、アイトラッキングを使った分析例を紹介しているものとしては、↓のサイトがわかりやすいかもしれません。今後、シリーズ化されていくようなので、期待しているのですが。

実践! Webユーザビリティ研究室(INTERNET watch)

さらに、かなり骨っぽいところでは、↓のサイトを。
理論的な背景から含め、説明を行っています。長文です・・・。
(ただし会員制のサイトですので、オープンコンテンツでないと、見られないかもしれません。)

見えないニーズを捉える方法(J-marketing.net)

最後に少々蛇足を。
「実践!Webユーザビリティ研究室」を見ていただくとわかると思うのですが、人という動物は、かなり「先入観」というものに囚われています。このところ、「脳」関係の本を読み重ねているのですが、読めば読むほど、リサーチってなんだろう?、ほんとにリサーチで人の考えていることがわかるのだろうかと思わされます。(だから、Z-MET調査とか、エスノグラフィなどが注目されてくるのだとも、思います。)
先入観のような「脳」の働きを理解するとしないとでは、リサーチの設計や結果の読み方にかなり違いが出てくるだろうなと・・・。
ほんとに、リサーチって難しい・・・。
(「脳」については、近いうちにエントリーしていこうと思っています。)

マーケティング・リサーチを取り巻く2題

マーケティング・リサーチに関して、気になるblog、HP、MLを立て続けに見たので、エントリー。
ひとつはクライアントサイドの問題、ひとつは調査対象者の問題です。

■マーケティング・リサーチ/リサーチ・リテラシー

いつもの「マインドリーダーへの道」さんのblogで、「リサーチ・リテラシー」といいうエントリーがありました。詳しくは、直接blogを読んでいただくとして、つぎの文章にとても同意です。

そして、実は、しばしばリサーチ・リテラシーの低さが、マーケティング企画の立案や実行上の障害となる場合がある点です。(私自身、過去なんども経験してきました・・・)
もちろん、すべてのマーケターが、調査の具体的なノウハウ・テクニックを習得する必要はありません。
ただ、調査の意義や、基本的な調査・分析手法の考え方、データの見方といった最小限のリサーチリテラシーを持っておく必要性は高いんじゃないでしょうか?

このblogをはじめたのも、まさに同じ問題意識からでした。
リサーチにお金をかけることを疎ましく思っている人が少なくない、また、リサーチを実際に行っている人のリサーチに対する理解力が低下している、こんな危機感は今も強くあります。(「リサーチを行っている人」は、いわゆる調査会社に所属している人も含めます。こちらの方が、問題はより一層深刻になりますが・・・)

「マインドリーダーへの道」さんが引用している、石井先生の記事はこちら↓になります。

成長持続の鍵「マーケティング・リテラシー」
~独立したリサーチ部門をもたなければ、マーケティングの経験を長期的に蓄積することは難しい。筆者は、「マーケティング・リテラシー」を改善する手法を提案する。

この提案の骨子は、「専門部署としてのリサーチ部門を持つこと」だと思うのですが、企業のマーケティング・リテラシーの問題点として、つぎの3つを上げています。

  • やるべきリサーチをやらずにすます
  • 不明確なリサーチ課題の下にリサーチが実施される
  • 「リサーチ標準」を定着させることができない

この指摘も、的を射たものだと思います。よく出くわすことです・・・(残念ながら)。
もしも、読者にリサーチ担当者の方がいらっしゃったら、「リサーチ専門部署」を持つかどうかは別として、このあたりの問題点は常に認識をしながら、リサーチに取り組んでいただければ、よりよいリサーチの実施に繋がると思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

■「調査協力依頼文のモデルについて」(JMRA)

日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)のHPで、

「調査協力依頼文のモデルについて」が策定されました(2007.5.21)

というWhats newが出ています。このモデル策定の背景として「はじめに」で説明されている文章をみると、

2005年-2007年期の(社)日本マーケティング・リサーチ協会 倫理綱領委員会は、「個人情報の保護に関する法律」(以下「保護法」)および「JIS Q 15001:2006 個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」(以下「JIS」)に対応した調査協力依頼状モデルの作成を課題の一つとして与えられた。
モデルは、調査会社が調査対象者から個人情報を取得する場合に、保護法やJISが求めている明示あるいは通知すべき事項を満たす内容でなければならないが、さらに、マーケティング・リサーチ綱領の定めを満たし、できれば、(社)日本マーケティング・リサーチ協会のPRも含めたいとの要望があった。

との事なんですが・・・。
もっと、「調査対象者は何に不安を感じているのか」「なぜ調査協力依頼文が重要なのか」というような視点からの言及もしてほしかったなという気もするのですが。これでは、法律やシステム上必要だから作りました、ってだけに聞こえてしまいます(通達の意味合いが強い事務的文章かもしれないので、あえて考え方を入れる必要もないのかもしれないですけど・・・)。

それはさておき、JMRAとして、このようなモデルを提示することはとても重要なことだと思います。調査環境が悪化し調査協力を得ることが難しい状況の中では、少しでも調査対象者に対して、安心感を持ってもらうことは必要ですから。
で、あるMLでこのことに対し、素朴な疑問があげられていました。

「そもそも、この(調査)会社が言っていることが信用できるのだろうか?」という疑問を解消できるのでしょうか?

というような趣旨だったと思います。たしかに・・・。

いくら、個人情報を守ります、このような趣旨で調査への協力をお願いしますと言っても、そもそもにおいて、市場調査って何だ?なんで自分が協力しないといけないのか?だいたいこんな会社聞いたこともない!という状況だと、なかなか調査への協力は得られないですよね。
前のエントリーで紹介したようにインテージさんやマクロミルさんが上場を果たし、企業本も出版されるまでになり、またいろいろな調査会社さんが調査結果をリリースするようになり、少しは「市場調査」というものへの理解は得られるようになったかもしれませんが、世間一般では、まだまだ・・・。
JMRAのHPでも、「調査協力者」というページをつくり(しかし、「調査協力者」って偉そうですよね・・・。「調査にご協力いただく方へ」とか、もう少し言いようもあるように思うんですけど)、

各種調査に御協力いただいた方、調査に興味をお持ちの方のページです。
マーケティング・リサーチへのご理解を深めていただける情報をご提供いたします。

とPRも行っているようですが、内容はまだまだ感もあり。。。

「統計調査の民間開放・市場化テストに関する研究会」の報告書にもあったように、

さらに、統計調査を円滑かつ適切に行うためには、調査対象者の理解と協力が不可欠であり、今回の取組を契機として、民間開放の趣旨に加え、統計の意義や重要性について改めて国民に理解されるよう、より一層の広報を適切に行っていくことも重要である

ということを、もっと推し進める必要があると感じます。

協会として、新聞一面にPR広告を出すとか、「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」「プロフェッショナル」などで取り上げてもらうようにテレビ局に働きかけるとか、もっとマス広告の力も活用すべきかもしれませんね(先立つものの問題もありますが・・・)。HP上での啓蒙では、所詮、興味がある人向けにならざるを得ないので。
あるいは、インテージさんやマクロミルさんのようにお金を持っているところに、業界リーダーとしての活動をもっとがんばってもらうとか。。。そういえば「宣伝会議」という雑誌では、よくマクロミルさんや楽天リサーチさんなどの広告を見かけますね。でも、クライアントへの訴求ばかりでなく、調査対象者の理解を得るような訴求も、もっと行っていただければと思うのです。

マーケティング・リサーチを取り巻く課題を2題、ご紹介しました。
本格的にマーケティング・リサーチが始まって50年。この50年という期間が短いのか、長いのかわかりませんが、マーケティング・リサーチへの理解はまだまだだな、と思いました。
このような状況を打開するために、このblogが微力ながらも力になるといいのですが。
(という想いのもと、できるだけエントリーをするように心がけます。。。)






ふたたび、よいblog紹介~カスタマーバリューのフロンティア

(寺子屋はなかなか再開せず、他の方のHPやblogばかりを紹介していますが・・・。)
とても参考になるエントリーを発見、ぜひ紹介したい&備忘録に、ということでとりあえずのアップになります。

そのblogは、「マーケティング・ブレイン」さんです。
今週シリーズでエントリーされている「カスタマー・バリューのフロンティア」は、リサーチ担当者、商品開発担当者は必読の内容だと思います。
また、このblogでも取り上げた「仮説探索型」リサーチのよい事例集になると思います。

マーケティング・ブレインさんが触発されたのは、以前少し紹介した「心脳マーケティング」のようですが、消費者調査・リサーチの最先端ともいえる様々な事例を紹介してくれています。
6回シリーズなのですが、初回の内容を読んだだけで、共感できる記述が盛りだくさんです。

全6回の内容とリンクを以下に記しますので、どうぞお楽しみください。

1.カスタマー・バリューのフロンティア
2.表層心理の消費:シャープの『ホット庫』という見えないニーズへの気づき

3.深層心理の消費:サントリーのネット‘珍問答’飲料調査
4.感動心理の消費:花王『エッセンシャル』でかわいくなる
5.経験心理の消費:AVISレンタカーの経験
6.売り手の情熱:トヨタ『bB』 若者による若者のための・・・

他の方のblogだけを紹介していてもなんなので、関連していくつか。

第3回で取り上げられているサントリーの事例は、↓の本の中でも取り上げられています。(いずれ紹介しようと思っていたのですが・・・)

イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学 イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2007-01

この本の中で、つぎのような記述があります。

見えないものの典型のひとつに、消費者の潜在的なニーズがある。変化の早い市場や成熟度の高い市場については、顕在化しているニーズに対応するだけでは、ニーズの変化に遅れたり、他者との過当競争に陥りやすいため、いち早く潜在的ニーズをつかむことが大切になってきた。ただ、消費者自身も意識しておらず、その商品やサービスが提供されて初めて、それを求めていたことに気づくことが多いため、いくら市場調査を重ねても、潜在的ニーズは見えない。顕在化していない以上、一般的な消費者調査では調べることができない。

そして、この「一般的な消費者調査ではみえないニーズ」を探ろうという試みの事例が、マーケティング・ブレインさんが取り上げている事例にあたると思います。

また、一方で、コカ・コーラ社もつぎのような取り組みを始めています。

コカ・コーラ、心理学に着目して消費者を分析~飲料市場を「なぜ」でとらえるマーケティング展開(NBonline)

コカ・コーラの事例については、まいどの「マインドリーダーへの道」さんも取り上げていますので、あわせてご覧ください。

コカ・コーラの「CBL」:消費者調査の新手法

PS.
このようなblogを見てしまうと、正直、寺子屋を続けるのが必要だろうかと思ったり^^;
ま、近日中には再開をしようと思ってはいますが・・・

マーケティング・コラム(備忘録)

最近、blog中心に情報収集をしていて、あまりHP系は見ていなかったのですが、久しぶりにwebサーフィン(死語?)して、保存しておきたいページがあったので、備忘録を兼ね、ご紹介しておきます。
いずれも、「President Online」からのものです。

■消費者の生活に深く入り込む「経験価値マーケティング」(2006/1/30号)

マス・マーケティングの反省の中から生まれたのが、ブランド・マネジメントである。
しかし、その落とし穴はブランドのアイデンティティの議論が抜け落ちてしまうことにあった。
そこで筆者は、「経験価値マーケティング」という新しい手法を提案する。

■なぜテレビで紹介された商品を買ってしまうのか?(2006/4/3号)

情報バラエティ番組の商品紹介は、広告よりも圧倒的に効果がある。
筆者は、これを「インフォテイメント効果」と呼ぶ。
なぜこの効果が生まれるのか。二つの心理的機制から、この問題を考える。

■好調!松下PC事業の「三つの秘密」(2006/7/31号)

PC業界のトップを走るデルやHPでさえ、売上高利益率は10%に達しない。
生き残りをかけて、どういう戦略をとるべきか──。
筆者は、松下電器の例を基に「リーン・デザイン」の重要性を説く。

■市場に揉まれて強くなる「ロバストデザイン」とは(2006/10/2号)

持続的な競争優位を求め物づくりにこだわると、最初は単純なコンセプトで
出発したはずの商品も、多彩なベネフィットをもつ商品として完成度を上げる。
こういった商品を「ロバストデザイン」と呼ぶ。
筆者はここに、日本企業の優位を発揮できる余地があると主張する。

■隠れたニーズを掴むもうひとつのイノベーション(2006/12/4号)

「コマーシャル・イノベーション」という言葉をご存じだろうか。
顧客と新しい関係をつくることによって、市場を開拓する方法をこう呼ぶ。
新商品、改良商品、既存商品の三つの例をもとに、
このイノベーションについて検証してみよう。

■病院改革に光!「プリコラージュ」という手法(2007/1/29号)

高齢化により、病院の患者獲得合戦が繰り広げられている。
産業界が経営に乗り出すケースも増えている。
患者満足の向上、医療の質の向上、無駄なコストの削減という
三つの課題をどうやって解決するか。筆者は、新しい手法を提案する。

すべて、神戸大学の石井先生のものですが・・・^^;

4分の1がIE7ユーザー?、半数がCM見て検索?

「大西宏のマーケティングエッセンス」さんのblogで、『不満のない人が多いからといって、良い評価結果とはいえない』というエントリーがありました。

こういった調査の場合、世論調査ではないので、「不満」と「満足」のどちらが多いかで評判を決めるということにはなりません。いまどき、不満が少ないというのは当たり前であり、むしろどれだけ満足度を上げていくかが鍵なので、「満足」とズバリ答えた人の比率が重要になってきます。その結果が19.3%というのはちょっと微妙な結果で、常識的には、ややパワー不足の感が否めません。「やや満足」も19.3%であわせても満足派は38.6%という結果です。

このデータ解釈、まったく同意です。やはり、現場で数字を見ている人の感覚は、違いますね

で、今回のテーマとしてあげたいのは、もう少し別の視点から。
満足度の解釈もそうなのですが、そもそも素材として取り上げられた「全体の約4分の1はすでに IE7 ユーザー」が、どうなのかと。このblogへのアクセスでは、IE7は10%を少し超える程度。自分の感覚がすべて正しいなどというつもりはありませんが、どうも実態とそぐわないのではないかと感じて仕方がない・・・。

で、元リンクを確認してみると。
調査対象者を見てください。つぎのようになっています。

調査対象は、民間企業に勤務する20代から60代の男女330人。男女比は男性82.7%、女性17.3%。年齢別では、20代13.6%、30代47.0%、40代30.9%、50代7.3%、60代1.2%。地域別では、北海道1.5%、東北2.7%、関東34.5%、甲信越1.2%、東海30.0%、北陸1.8%、近畿18.2%、中国5.2%、四国1.8%、九州沖縄2.7%。

男性が8割。さらに30~40代が8割近い。
もしも、このリリースにタイトルをつけるとすると、「30~40代を中心としたビジネスマンでは、IE7ユーザーが4分の1」が、許せる範囲で、決して「全体の4分の1」ではない、と思うのですが、いかがでしょうか。

ついでなので、最近みたデータで、どうなのかなと思ったものを紹介します。
日経MJの2007.3.7の2面の記事、タイトルは「CM見て検索、半数が経験」というものです。
そこで、調査方法と対象者を確認すると、手法はインターネット調査、対象者は「週1回以上テレビを視聴する20代~50代の男女2000人」とあります。
ふむふむ・・・。
ポイントでも、「ネット利用者の」という言葉を使ってますし、上記の「全体の」とは違うので、ネット利用者ならこんなものなのかなと思ったのですが、問題はそのネット利用頻度。
平日プライベートの利用時間が、1時間前後が29%、2時間前後が24%・・・。
あれ、残りの半分は?と思うと、どうも、1時間未満と3時間以上が入っているよう。具体的な数字がないので、なんともいえないところではありますが、「平日」の「プライベート」利用で、2時間とか3時間ってどうなんでしょう?かなりのネット・ヘビーユーザーといえるのではないでしょうか?
感覚でものをいってもいけないので、ネット利用時間に関する調査がないかと探してみると、2005年のNHK国民生活時間調査で、つぎのような結果が(元資料はこちらです)。

今回の調査結果では、平日の国民全体のインターネットの行為者率は13%、その人たちの平均時間は1時間38分でした。そこで年層を20~50代に限定し、1時間30分以上インターネットをする人を「長時間利用者」として分析し、自由行動としてのインターネットを長時間する生活とはどのようなものかを考察してみました。

平日のネット利用率が13%、平均時間は1時間38分・・・。
となると、この日経MJの記事の調査対象者は、かなりのネット・ヘビーユーザーとなり、とても「ネット利用者」を代表していると言えないのではと思うのですが。。。
さらに、NHKの資料では、つぎのような見解も述べられています。

  • インターネットを長時間する人は仕事や家事などの拘束時間が短く、その結果自由時間が長い。つまり、インターネットを長時間するだけの時間的な余裕がある。
  • 自由時間が長い人がインターネットを長時間する傾向があるため、インターネットを長時間する人は、結局テレビも長時間見ている。

これをあわせて考えると、自由時間の多い人が、テレビを見る時間も、ネットをする時間も多く、そういう人は「CMを見て、半数が検索」、というのがどうも真実のような気がしてきました。日経MJの記事をよく読むと確かに、

さらに、テレビ視聴時間が長い層でインターネット使用時間も長い傾向がある。これはこのような層が平日に比較的プライベートの時間が多いことに加えて、テレビを見ながらインターネットを使っている可能性が高いことが考えられる。このような層に対して「ウエブ連動広告」が効果的に作用していることが考えられる。

と書いてありました。
だとしたら、「(自由時間の多い)ネットヘビーユーザーでは、CMを見て検索、半数が経験」という見出しをつけてもらわないと。この見出し=「CMを見て検索、半数が経験」では、ミスリードする可能性が高いでしょう。

それと、記事ではさらっとしか触れられていませんが、つぎのようなデータもあります。

「続きはウエブで」と誘導するテレビCMでは
 →WEB検索率=46%、商品購入経験率=18%
URLを知らせるテレビCMでは
 →WEB検索率=44%、商品購入経験率=22%
テレビCMを見て気になった商品を検索では
 →WEB検索率=64%、商品購入経験率=52%

・・・。
え?!、「続きはウエブで」よりも、「気になった商品を検索」の方が検索率も、商品購入率も高いじゃないですか。
ということは、「続きはウエブで」とか「URLを知らせる」ということをやるよりも、CM自体&商品自体の魅力を高める方が、検索率も購入経験率も高くなるということでは?・・・。

『つっこみ力』のエントリーでも書きましたが、データはこのように、分析者(記者?)の意図が反映されるものなのです。とくに、見出しだけで判断するのがいかに危険なことかがお分かりいただけると思います。

それと、もうひとつ。インターネット調査のデータを読むときは、「答えている人が誰か」ということを、きっちり確認し頭に入れてデータを読まないといけない。とくに、PCやネット関係の調査のときは、要注意です。(このあたりのことについては、寺子屋でも近々テーマとして取り上げるつもりです。)

PS.
だからといって、「ネット調査はダメだ」などというつもりは毛頭ありません。
要は使い方と、データの読み方です。