投稿者「ats_suzuki」のアーカイブ

SPSSインテージ田下社長講演から

10月21日、22日に開催された「SPSS DIRECTIONS JAPAN2008」にて、インテージの田下社長が『「情報価値鑑定士」への道』という題目で、特別講演をされていました。
連投になりますが、忘れないうちにアップしておきます。

ここで、お話の内容自体を紹介するわけにはいかないと思いますが、講演からいくつか興味を惹かれた点を紹介しておきたいと思います。
(田下社長の講演内容とは直接関係のない、個人的な興味が主ですので、この点はあらかじめお断りしておきます。)

(講演内容自体については、後日、SPSSのHP(→こちら)で紹介されるかもしれませんので、そちらを参照してください。)

■グローバルリサーチ企業と日本のリサーチ企業

講演の最初は、お決まりの自社紹介。ここで紹介されていた「TOP25グローバルリサーチ企業」に興味が。。。
これまで、あまり気にしていなかったのですが、「本国以外での売上比率」というデータも掲載されており、これがまたなんとも特徴的な数字で。。。
すぐにひらめく人もいると思いますが、TOP25に上がっている日本企業3社のこの比率が、見事に低い。低いというか、ほとんど0(ゼロ)。TOP8の会社は、多くが50%越えの数字を示す(シノベイトなどは90%越え・・・)ことをあわせて考えると、いかに日本のリサーチ会社が、ドメスティックかということがわかります。
他の産業でもよくいわれていることでもありますが、日本の市場が半端に大きいために、ドメスティックでもそれなりの売上を上げることができてしまうので、たとえば携帯電話などで「ガラパゴス化」といわれるように、国際競争力のない状態に陥ってしまう。リサーチ業界も、同様なのでしょうか?・・・。

(世界の中での日本のリサーチの位置づけは、JMRAのHPでの資料でもいろいろ確認できます。とくに、↓の資料はなかなか興味深い点がいろいろあります。)

世界における日本のMarketing Researchの概況2008(JMRA:業界・海外動向)

■「内閣改造支持率の怪」

以前、このblogでも「まちまちな改造内閣支持率・・・」として紹介した8月の福田改造内閣支持率の結果について、調査の本質は操作主義という事例として取り上げていました。
各社の質問文を紹介していたのですが、どうも質問文に「改造」という言葉を入れている会社での支持率が高めという傾向があるようです。
調査タイミングの問題とあわせて考えると、内閣の顔ぶれ等を知らない回答者でも、「改造したんだ」という印象で支持率が高まる可能性はありますね。
ほんとに、調査は怖いということをあらためて感じます。

■アブダクション

まさか、「アブダクション」が出てくるとは思いませんでした。
個人的にも「アブダクション」は、これからのリサーチのキーワードになるのではないかと思っていたのですが、説明するのが難しい(つまり、完全な理解に至っていないということでもありますが・・・)ので、blogに取り上げずにきてました。しかし、田下社長も言及していたので、ここで少しだけ紹介を。
アブダクション(abduction または retroductionとも)は、演繹(Reduction)、帰納(Induction)と並ぶ科学論理的思考法のひとつとして、パースが唱えたものです。日本語では、「仮説的推論」と呼ばれることが多いようです。
アブダクションを紹介する人に共通する趣旨は、「演繹や帰納では創造的な仮説を作り出すことができない。現在のような時代にほんとうに必要なのは、アブダクションのような仮説を創造できる論理的思考だ。」というものです。

これ以上の説明は無理なので、興味のある方はこちら↓の本をどうぞ。(ただし、基本的に思想書に分類される本なので、なかなか・・・)

アブダクション―仮説と発見の論理 アブダクション―仮説と発見の論理
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2007-09-20

また、こちら↓の本でも、第5章の補論「知識デザインの実践:コンセプト・デザインにおける応用」の中でアブダクションを取り上げています。
(この本は、こんな中途半端な紹介ではなく、単独で取り上げたい本です。私が大学院で学んでいる先生の一人でもありますし・・・)

知識デザイン企業―ART COMPANY

知識デザイン企業―ART COMPANY
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2008-02

(※ちなみに、「アブダクション」には「拉致」という意味がありますので、googleなどで検索する場合は、この点を注意して検索してください。)

■データフュージョン

これも、注目していたワードのひとつでした。
再三このblogでも書いてきましたが、今は、さまざまな事実データが入手できる時代です。しかし事実のデータだけでは、事実の背景にある要因などをさらに分析するには難しいことが多い。そこで、リサーチデータとビジネス上で入手できるデータ(POS、FSP等)を融合=フュージョンさせることができると、有用だというものです。

こちら↓でも、同様の主張をされていますので、参考にしてください。
(ただし、論文要旨の紹介のみです。本文では方法まで論じているようですので、興味のある方は冊子を購入してみてください。)

データフュージョンの新展開(JMR生活総合研究所:J-marketing.net)

<掲載誌はこちら→ 『消費経済レビューVol.9』

以上、SPSSでの田下社長講演からインスパイアされた事どもを、徒然に書き留めてみました。。。
ここで、お願いです。
アブダクションやデータフュージョンについては、まだまだ理解を深めたいので、有用な情報源(HPや本など)をご存知の方、ぜひコメントにて教えてくださいm(_ _)m

商品開発@SNS事例

以前、「クラウドソーシング」についてのエントリーをしましたが、SNSを使った商品開発の事例をいくつかクリップしておきます。
今回カルピスの記事を見たのをきっかけに、過去のものをあらためて検索した結果ですので、少々古い事例ですが。。。

「クラウドソーシング」に関するエントリーは、こちらで↓。

次代MR?~1.クラウドソーシング

SNS利用の商品開発の事例は、こちら↓。

カルピス、mixi公認コミュニティで「フルーツカルピス」の新製品を開発(ITPro)

ニフティのSNSでコクヨの商品開発 ビジネスパーソンの声反映(ITmedia)

携帯SNSコミュニティによる消費者巻き込みマーケティングでの商品開発をトリンプが本格開始(Web担当者Forum)

mixiでアイデア募集したカップめん【開発者に直撃取材】(nikkei TRENDY net)

最後(4つめ)のは、エースコックの開発担当者のインタビューです。

これらの事例が、成功だったのかどうかがわからないのが、ジャーナルの欠点で・・・。

あくまで、メモですので、あしからず。。。

『なぜビジネス書は間違うのか』

なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想 なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-05-15

この本、タイトル通りの内容~なぜビジネス書は間違うのか~について、紹介するわけではありません。。。
ビジネス書で取り上げられている事例が、数年後にはエクセレントではなくなっていることなど、みなさん、ご承知でしょうから、正直なところ、何をいまさら感は無きにしも非ず、です。
ただ、ビジネス書を読んで、その通りにするとうまくいくと思っている人がいるとしたら、この本は有益でしょう(よくいますよね、「正解」だけを求めたがる人・・・。語られている要因の背景にある文脈などを無視して、表層だけをまねしようとする人・・・)。

しかし・・・
この本を、「なぜ、研究、調査、リサーチが間違うのか」という視点で読むと、これは使えるのではないかと思ったのです。とくに、最初の2ページ~4ページに書いてあることがポイントです。(実際、このページを見たから、この本を買ったのですが。)

核心はもう少しあとで。
まずは、いつものようにもくじから。

第1章 わかるのはほんの少し
第2章 シスコ・ストーリー
第3章 ABBの栄光と転落
第4章 ハロー効果のまばゆい光
第5章 企業調査は答えを教えてくれるのか
第6章 星を探し、ハローを見つける
第7章 積み重ねられる妄想
第8章 ストーリー、科学、多重人格的超大作
第9章 ふたたびビジネスの最大の疑問
第10章 エセ科学に惑わされないマネジメント

この本、タイトルがよくないのかも。。。
主題は、「はじめに」に書いてあるように、

企業パフォーマンスの要因を理解するのはなぜ難しいのか

だと理解するのがいいと思います。
そもそも、経営やマーケティングが「科学」なのか?科学は、要因をコントロールした実験室での実験が基本的に可能ですが、経営やマーケティングで、要因を完全にコントロールした実験など、そもそも難しいのですから。
(全否定をするつもりはないですので、その点は了解ください。)

それと、著者のいう「レポート」と「ストーリー」という対比も興味深いです。

レポートとは、何よりも事実を伝えることであり、作意や解釈が紛れ込んではならない。(・・・中略・・・)他方、ストーリーは人々が自分の生活や経験の意味を理解するための手段だ。よいストーリーの条件は、事実に忠実であることではない。それよりも、ものごとが納得いくように説明されていることが重要なのである。

(中略)

ストーリーがいけないのではない。ストーリーだとわかって読むならかまわない。ところが油断ならないことに、科学の仮面を被ったストーリーが知らぬ間にはびこっている。いかにも科学です、という顔をしているが、そこには真の科学の厳密さも論理もない。

ここでは、ビジネス書の多くが「レポート」ではなく「ストーリー」だということを言っているのですが、私たちがふだん書いている調査報告書はどうでしょう・・・。
(調査報告書も、「ストーリー」が悪だ、などと決め付けるつもりはないです。「ストーリー」が必要な場面は、いっぱいあるのも承知しています。ただ、「ストーリー」の前提となった「レポート」も、きちんとあるべきだとは思っています。)

さて、今日の本題であるこの本のポイント。
ほんとは、ルール違反の引用になるかもしれませんが、あえて紹介しておきます。
ビジネス書が間違う背景にある「妄想」として、つぎの9つをあげています。

妄想1 ハロー効果
妄想2 相関関係と因果関係の混同
妄想3 理由は1つ
妄想4 成功例だけをとり上げる
妄想5 徹底的な調査
妄想6 永続する成功
妄想7 絶対的な業績
妄想8 解釈のまちがい
妄想9 組織の物理法則

これらをみて、「なるほど」とか「あたりまえだな」と思う方は、本書は読む必要はないです。
一方、「よくわからないな」と思った方。本書を読んで、「なぜ、研究、調査、リサーチが間違うのか」を一度考えてみた方がいいかもしれません。

『思考・論理・分析』

思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践 思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2004-07

連投で。(紹介したい本がいくつかあるので、しばらくは本シリーズになりそうです。。。)

前の「分析力が~」などの本を読むと、大量データ時代、分析力が必要だということはわかります。しかし、ここで陥りがちなのが、「分析ばかり症候群」あるいは「アナリスト気取り」だと思うのです。

データを集めて、エクセルでピボット集計や回帰分析(エクセルでもできてしまうんです)をしてみる。あるいは、SPSSとかクレメンタイン、SAS、テキストマイニングなど、ちょっと高度なソフトをまわしてみる。すると何らかの結果は出るので、自分では“分析”をしたようなつもりに陥る人が増えるのではないか、という危惧があるのです。
さらに、その分析は必要な分析なのか?、役に立つ分析なのか?、なんらかの知見が得られているのか?、ためにする分析になっていないか?、そもそも間違った方法・視点で分析していないか・・・?

そこで、「分析とは、なんぞや」ということに、いまいちど立ち返ってみる必要はないかと。そして、その方法論(ノウハウではありません)も、いまいちど理解する必要があるのではないかと。。。
そんな問題意識で出会ったのが、今回の本です。

では、いつものように、もくじを。

第1章 思考
 Ⅰ.1 思考とは
 Ⅰ.2 「分ける」ための三要素
 Ⅰ.3 思考成果
 Ⅰ.4 因果関係
 Ⅰ.5 思考の属人性
第2章 論理
 Ⅱ.1 論理とは
 Ⅱ.2 論理展開
 Ⅱ.3 論理展開の方法論
 Ⅱ.4 正しさの根拠
第3章 分析
 Ⅲ.1 分析とは
 Ⅲ.2 分析作業
 Ⅲ.3 合理的分析の方法
 Ⅲ.4 論理と心理

各章とも、「○○とは」で始まってます。なので、人によっては理屈っぽいと感じるかもしれません。大学の教科書的な雰囲気です。(Amzonでも、「わざと難しく書いているのでは」という批評もありました)

けど、それでいいと思うのです。本書を読む目的は、「そもそも、分析とは何ぞや」を確認・理解するためなので。著者も「はじめに」で、つぎのように書いてます。

(筆者注:論理思考に関する関心の高まりもあり、書店には多くの本が並んでいる。という文脈に続いての記述です。)
ただし、残念な点もある。それは現在数多く存在する論理的思考の解説書のほとんどが、論理的思考のテクニックとフォーマットを紹介したハウツウ本にとどまっている点である。論理的思考プロセスをフォーマット化して、各人が指導要領に従ってフォーマットを埋めていけば論理的思考的な手順を踏めるというようなマニュアル本になっているのである。
これでは本当の論理的思考力を習得するのは難しい。なぜなら、マニュアルに基いてフォーマットを埋める行為とオリジナルの思考とは、本質的に正反対の性質のものだからである。

同意です。
「ほんとうの論理思考」を習得するなら、このような本を一冊は読んでおくべきだと思います

◆プラスして

「思考」ということに関しては、つぎの2冊もお勧めです。
(↑の本にもまして、大学の教科書的ですが。。。)

知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫) 知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)
価格:¥ 924(税込)
発売日:2002-05

常識やステレオタイプに囚われないものの見方をするにはどうすればいいか。
これがテーマです。そして、いま必要なのは、「問をどうたてるか」。
けっこう読みやすい文体だと思います。

創造の方法学 (講談社現代新書 553) 創造の方法学 (講談社現代新書 553)
価格:¥ 735(税込)
発売日:1979-09

1979年出版、なのにいまだに増刷を重ねています。それだけ良い本だということです。
ただ、少々骨がおれるかもしれません。

◆とはいえ、「もっと使える本は?」という方へ・・・

「確かに学生ならいいかもしれないけど、こっちは毎日仕事してんだよ。もっと、手っ取り早いのはないの?」という方へ。。。   (ひよった・・・)

ビジネス数字力を鍛える (グロービスの実感するMBA) ビジネス数字力を鍛える (グロービスの実感するMBA)
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2008-07-04

いま流行の「プチ物語+解説」という体裁です。
こちらは、一応もくじをあげておきますか。。。

第1章 目的を明らかにし、仮説を持つ
第2章 数字を加工する
第3章 解釈し、意味合いをつむぎだす
第4章 分析結果を伝える
第5章 マネジャーとして数字を読む

リサーチ会社で企画・分析をするなら、ここで書かれていることは最低限理解してないと、という内容です(それだけ、初歩的内容だということでもありますが)。
当然リサーチ以外でも、ビジネスマンなら必要なスキルです。

(でもやっぱり、最初の3冊も読んで欲しい・・・)

『分析力を武器とする企業』

分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学 分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2008-07-24

最近は、リサーチ関連の本とともに、「分析力」をキーワードとした本も多く出版されてます。
今回紹介するのはその中の一冊で、概論的にまとまっていると思った本です。

キーワードは、「ビジネス・インテリジェンス」。
たとえば、↓のHPでもわかりやすく整理されています。(というか、このHPで紹介されているものと同じチャートが、本書の中でも引用されています)

進化するビジネス・インテリジェンス(COMPUTERWORLD.JP)

いま、データソースはリサーチからだけではありません。とくにIT革命以降、企業はさまざまなデータを入手できるようになりました。本書でも書かれていましたが、「データのコモディティ化」といえるような状況がおきつつあります。さらに、パソコンの処理量も速度も飛躍的に増し、さまざまな分析ツールを実用的に使えるようになりました。
(いつか、どこかで、同じようなことを書いたような気がしますが・・・)

このような時代背景から、「分析力」が企業の競争優位を産み出す、というのが本書の主張です。(原題はダイレクトに、"Competing on Analytics")

では、もくじ。

第1部 分析力を武器とする企業の特徴
 第1章 データ分析で競争に勝つ
 第2章 こんな企業が分析力を武器にしている
 第3章 データ分析を業績に結び付ける
 第4章 社内へデータ分析を活用する
 第5章 社外へ向けてデータ分析を活用する

第2部 分析力を組織力にする
 第6章 分析力活用のためのロードマップと組織戦略
 第7章 分析力を支える人材
 第8章 分析力を支える技術
 第9章 分析競争の未来

もくじをご覧いただくとわかるように、第1部では分析力とは何かについて事例や調査結果を踏まえて論じ、第2部では分析力を活かすための組織づくりについて論じています。ただし、分析の具体的なノウハウを紹介しているわけではないので、その点は注意してください。
(分析の具体的なノウハウを求める方は、統計・解析の専門書が必要になります。。。)

Amzonの書評でも指摘している人がいますが、結局、分析力を活かせるかどうかは組織に関わってくるような気がしています。たとえば、CIOの役割。本書では、つぎのように述べています。

言うまでもなくCIOはITの総責任者であり、分析力の技術面に関しては陣頭指揮を執るポストである。だが、CIOの仕事はそれだけではない。確かに社内に分析システムを構築するには専門家が必要だが、何もCIOが努める必要はない。専門家を呼んでCIOが監督をしても十分間に合う。
それよりもCIOが心すべきは、肩書きの「I」の部分、つまり情報である。情報は正確か、信頼できるか、実態を正確に反映しているか。そこに注意を注ぐべきだ。

このような時代の中での、調査会社、リサーチ会社のポジションは?
たとえば、つぎのように言及しています。

(筆者注:分析ビジネスに携わる企業には、データ販売を行う企業もある~たとえば、ダンハンビーなど~、という流れの中での言及。)
ただしたいていの場合、情報を売ってもらうだけではお客さんは満足しない。その情報をどう解釈しどう活用するのかも教えてもらいたがっている。そこで、情報と一緒にコンサルティングも提供することが必要になる。

「ビジネス・インテリジェンス」とは何か、「分析力」を競争優位に活かすとはどういうことか、「分析力」を競争優位に活かすための組織づくりはどうすればいいのか。
これらについて理解したい人は、本書をどうぞ。

◆さらに、関連書もいくつか。

その数学が戦略を決める その数学が戦略を決める
価格:¥ 1,800(税込)
発売日:2007-11-29

テーマはほとんど一緒だと思います。訳者解説では、「本書の中心テーマの一つは、大量データ解析が各種の意思決定にますます活用されているということだ」と書いてますので。
何が違うかというと、こちらの方が少し統計・解析の内容的なものにも触れている、という点でしょうか。

マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫) マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2006-03-02

「分析力~」でも、「その数字~」でも取り上げられている共通の事例がこれ、ベースボールでのセイバーメトリクスです。この本、出版当時かなり話題になったので、すでに読まれている人も多いと思いますが、もう一度「分析力」という視点で読み直すのもいいかもしれません。

戦略的データマイニング アスクルの事例で学ぶ 戦略的データマイニング アスクルの事例で学ぶ
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2008-04-17

Tesco顧客ロイヤルティ戦略 Tesco顧客ロイヤルティ戦略
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2007-09

いずれも、“もっと個別事例を深く知りたい方”向け。
アスクルは、データマイニングの教科書としてもいけそう。
Tescoは、「分析力~」でも取り上げられている事例です(実は未読です。お世話になっているOUTLOGICさんのblogで知りました↓。こちらもあわせて、ご覧いただければ。余談ですが、最近のOUTLOGICの読書傾向、かなりかぶってます。。。)

データマイニングを活用したマーケティング動向(OUTLOGIC)

そういえば、「ガイアの夜明け」や「日経MJ」で取り上げられていた事例で、オギノというSMの事例もありました(詳しくは、↓こちらのblogを参照してください)

ガイアの夜明け「地元密着スーパーの逆襲」を見ました(名経大経営学部のブログ)

『課題解決型マーケティング・リサーチ』

課題解決型マーケティング・リサーチ 基礎編
価格:¥ 2,205(税込)
発売日:2008-10
課題解決型マーケティング・リサーチ 事例編 課題解決型マーケティング・リサーチ 事例編
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:2008-10

ほんとに、マーケティング・リサーチの本がよく出ます。
一応、特徴的なものを選んで紹介しているつもりですが、これだけ紹介してしまうと、結局どれがいいのか迷ってしまいますよね・・・。
目的次第でどの本になるかも決まりそうですが、それぞれに長短があるので、本屋さんで実物を確認してからの方がいいかもしれません。
(とはいえ、↑のリンクを通じてアマゾンで購入していただくのが、一番うれしいです^^;)

今回ご紹介する本は、「基礎編」と「事例編」の2分冊になっています。両方買うと、5千円近いので、ちょっと高いかなという気もしないではないですが。

まずは、もくじを見てみましょう。「基礎編」から。

第1章 マーケティング・リサーチの役割
第2章 マーケティング・リサーチの手順と基本設計
第3章 定量的手法の概説
第4章 インターネット・リサーチの特徴と活用
第5章 実験調査法と評価技法の概説
第6章 データ分析の方法
第7章 今後のマーケティング・リサーチ

本文総ページ数185ページの中に、これだけ網羅していますので、もくじにもあるとおり「概説」です。マーケティング・リサーチ(それも定量調査について)を行う際に知っておくべき知識を網羅している感じで、事典的に利用するのに適しているといえるかもしれません。これだけだったら、きっとこのblogで取り上げることもなかったと思います。

では、なぜ、ここで取り上げたのか?
それは、「第5章 実験調査法と評価技法の概説」の章があるからです。これまでの類書で、この点をきっちりおさえている本は、あまりないのではないでしょうか?
たとえば、つぎのような言葉について、解説されています。いずれも、コンセプト調査やプロダクトテスト、パッケージテストなどの商品開発系の調査を行うには、知っておかなければいけない知識です。(が、このあたりを書いている本は専門書になってしまうし、web上でもあまり見かけません・・・)
以下にあげる言葉を、きっちりと説明できますか?

順序効果、記号効果、位置効果、初期効果と練習効果、疲労効果、対比効果、期待効果、実験者効果、偽薬効果

テスト品の提示順

モナディックテスト、シーケンシャルモナディックテスト、一対比較テスト

オープンテストとブラインドテスト

絶対評価と相対評価

よくわからない方は、一度、この本で確かめてください。商品開発系の調査は、これらをどう判断するか、さらにCLTで実施するのか、HUTで実施するのか等の手法の選択など、多くのポイントを検討しておく必要があるのです。

つぎに、「事例編」のもくじを。

第1章 マーケティング課題へのリサーチ手法の応用
第2章 消費者ニーズ把握のための調査
      ~携帯電話の消費者ニーズ調査
第3章 アイデア探索・コンセプト構築のための調査
      ~緑茶飲料のニーズ探索調査
第4章 製品コンセプト開発のための調査
      ~カップスープのコンセプト評価調査
第5章 新製品のプロダクトテスト
      ~キャラメルのプロダクト評価調査
第6章 ネーミングテスト
      ~ビールのネーミング調査
第7章 価格戦略立案のための調査
      ~電動歯ブラシの価格調査
第8章 ブランド・マネジメント戦略立案のための調査
      ~輸入車のブランド・イメージ調査
第9章 広告効果測定調査
      ~特定保健用食品のテレビCM効果測定調査
第10章 顧客との関係性強化のための調査
      ~コンビニエンスストアの顧客満足度調査

以上の事例について、「調査の背景と目的」「アプローチ方法」「調査設計と調査項目」「調査の結果」「考察・示唆・知見」といった項目で整理しています。

これまでマーケティング・リサーチをあまり実施したことがない方や、特定の領域でのリサーチしか経験したことがない方が、様々なテーマでのリサーチについて、具体的なイメージをつかむ参考になると思います。(あるいは、自分がふだん行っている内容と同じなのか違うのか、どこが違うのか、を確認するというのもありかもしれません。)

ただし、ここで取り上げられている内容ややり方が、いつも正解というわけではないので、その点はお間違えなきよう。

クロス・マーケティング、上場へ

クロス・マーケティングは、設立当初からIPOを狙っているという話を聞いていましたが、このご時勢なのですっかり忘却の彼方にあったのですが・・・。

株式会社クロス・マーケティングが、東証マザースへの上場承認を得たようです。

新規上場会社「株式会社クロス・マーケティング」(東証)
新規上場企業の横顔「クロス・マーケティング」(ロイター)

会社概要、および上場に際しての目論見書については、会社のHPでどうぞ↓。

株式会社クロス・マーケティングHP

リサーチ会社では、インテージ、マクロミルについで3社目の上場です。
会社の沿革をみると、H15(2003)年の設立ですから、約5年での上場達成となります。そして業績はH19(2007)年12月期で、売上24.3億円、経常利益3.4億円。こんなに成長しているとは知りませんでした。。。

クロス・マーケティングといえば、調査画面をすべてカスタマイズ設計で作成することに特徴があります。他社では、調査システムを構築し、そのシステムの範囲の中で画面設計を行うのが主流です。オーダーメイドとレディメイドの違いですね。
カスタマイズ設計のいい点は、ほぼリサーチャーの希望に沿った調査画面を構築することができること。レディメイドの画面では、妥協しなければならないことが時々あります(ただし最近は、他社システムもかなりいろいろなニーズに応えられるようになってきていますが)。
一方で、ひとつひとつカスタム設計を行うので、人的工数が掛かるのが欠点。利益率をマクロミルと比べていただくと、その差がお判りいただけると思います。

そして、目論見書を見ると、“ほー”と思う点が。おそらく、上記の「すべてカスタマイズ設計」と関連がありそうな気がします。(そしてまた、この点からクロス・マーケティングの調査会社としての業務範囲も自ずと予想がつきます。)

興味のある方は、ご自身で目論見書を眺めてみてください。
(販売実績とか、売掛先実績のところですね。業界では常識だったのでしょうか・・・。)

取り急ぎのエントリーでした。

ニューロマーケティング(ふたたび)

ちょっと調べ物をしていたら、ニューロマーケティング関係の記事に遭遇、ついついニューロマーケティングでうろうろと。。。
せっかくなので、備忘録も兼ねて、検索結果を紹介します。
(前にも同じテーマでの投稿をしていますので、こちら↓もあわせてご覧ください。ちょうど1年くらい前になるんですね。)

「脳を直撃する広告?」(2007.10)

◆消費者研究の新しいアプローチ(読売ADレポート「ojo」)

きっかけになったのは、こちら↓のHP。

消費者研究が新しい局面を迎えている。一言で言えばそれは、消費者の無意識へのアプローチだ。人の無意識の反応を脳の活性化から見ていこうというニューロマーケティング、非合理的な人間の行動に法則を見いだしていく行動経済学、さらには進化論や消費文化の視点から消費行動を見直す動きも始まっている。「無意識のマーケティング」に踏み込んだ消費者研究の今を探った。
(「消費者研究の新しいアプローチ」/読売ADレポート「ojo」2008.7)

田中洋先生(法政から中央に移られたんですね・・・)、友野典男先生(「行動経済学」の著者)、四元正弘氏(電通)の3名がそれぞれインタビュー形式で、消費者研究の今を語っています。いずれも、なかなかおもしろい内容だと思います。

・消費者行動研究はどこまできているのか(田中洋)

・行動経済学は消費者をどうみているのか(友野典男)

・消費者の無意識にどう向き合うか(四元正弘)

◆blogや記事から

大学の先生や雑誌記事から、ニューロマーケティングに関係ありそうなところを。

まずは、こちら↓。今年の消費者行動研究学会(JACS)の統一論題が「ニューロマーケティング」だったんですが、そのことについて書かれた大学の先生のblogです。

JACS@ADK~ニューロ・マーケティングの可能性(Mizuno on Marketing)
ニューロマーケティングへの期待(Mizuno on Marketing)

つぎに、ニューロマーケティング事情を書いているblog。
脳の測定方法には何種類かあるらしいのですが、fMRIという機械は、1台約300万ドル、20~30人の解析に5万ドルかかると。。。(そういえば、学会でもそんなことを言っていたな。)
ただ、技術開発も進み、EEG(エレクトロセファログラム)という機種では、「数百人を解析しても、その何分の1かのコストですむ」らしい。

ニューロマーケティングは企業、広告業界の救世主となるのか~脳ビジネスの最先端事情~(MediaSabor)

そして、日経アソシエからのインタビュー記事。
ニューロマーケではなく、行動経済学の先生なのですが、関連ありそうなので。

脳と行動の関係を解明、より良い選択を目指す~行動経済学の最先端を切り開くコリン・カメレール教授に聞く~(NBonline)

最後に、ニュース記事から。アメリカの話なのですが、

急速拡大分野のニューロマーケティングで世界をリードするニューロフォーカス社は4日、ニューロイメージング(脳神経機能画像化)をマーケティング・ツールとして利用する「中核特許」を買収したと発表した。(共同通信PRワイヤー2008.9)

ということです。記事の中に、ザルトマン博士(「心脳マーケティング」著者)の名前も。
さらに、「ニールセン社はニューロフォーカスへの戦略的投資家である」との記述もあります。つまり、着々と調査メニューとしての実用化が進んでいるということですね。。。

◆企業HPから

ニューロマーケティングについて記述している(≒事業として提供している)企業のHPから。

まず、前回の投稿でもリンクを貼った、NTTデータ経営研究所(→HPはこちら)。
「経営研レポート」の中に、ニューロサイエンス系の記事が2本、掲載されています。

ニューロR&Dによる次世代商品開発戦略(NTTデータ経営研究所)

ニューロコンサルティングの時代(NTTデータ経営研究所)

とくに「ニューロR&D・・・」では、簡単ですが事例も紹介されています。

つぎは、上記JACSで論文発表をしていた、ニューロインサイトジャパン(→HPはこちら)。
「ニューロマーケティングを考える」というメニューに、コラムがありますので、こちらをどうぞ。

ニューロマーケティングを考える(ニューロインサイトジャパン)

そして、広告代理店からは博報堂。

博報堂ブレイン・ブリッジ・プログラムとは、脳科学・認知科学・心理学・社会学などの理論や技術を活用し、ビジネスにおいて柔軟に右脳と左脳の双方を効果的に活用するための博報堂オリジナル調査やワークショッププログラムの総称です。(「博報堂ブレイン・ブリッジ・プログラム」博報堂)

として、いくつかのメニューを紹介しています。この中には、「心脳マーケティング」のZMET調査も(博報堂は、日本での独占サプライヤーだったのですね。。。)

めぼしいものは以上で。
また1年後にでも、状況を確認するかもしれません・・・。

TNSとGfk合併はご破算?

【20081208追記あり】

以前、こちらのエントリー(2008.5.1)で、ワールドワイドでのリサーチ会社合併の可能性として、TNSとGfkが合併か?ということを書きました。

ところがここにきて、状況が変わってきているようです。。。

世界3位の市場調査会社テイラーネルソンソフレス(TNS)の争奪戦から独同業GfKが撤退した。同社は27日、広告で世界2位の英WPPによる総額約11億ポンド(2,200億円)の買収提案に対抗するための資金調達ができなかったとして、TNSの取得を断念すると発表した。一方、TNSはこの日、WPPの提案を拒否する姿勢をあらためて示している。
(「独GfK、TNSの争奪戦から撤退」NNA.EU/2008.8.29)

何が起こっているのか・・・?

端的に言うと、6月の初めにはTNSとGfkの間で合意に達していた合併交渉に、広告会社で世界2位のWPPグループが参入し、7月に入りWPPがTNSに対しTOBを仕掛ける。Gfkは、買収提案に対抗するためにファンド会社と共同で提案を行うも不発、対抗できる資金調達も難しいため、買収を断念。

ということのようです。
ただし、TNSとしては、WPPの提案を拒否する姿勢を示しているので、これから事態がどのように推移するのかは、まだわかりません。
(対して、WPPはTNSへのTOBを延長しているようです。)

この合併・買収問題が、今後どうなるかも興味深いですが・・・、
(TNSとGfKの合併がご破算になると、インテージの世界トップ10入りも先伸ばしになってしまいそうですし・・・)

ここで確認したいのは、「なぜ、WPPが、こうまでしてTNSを買収したいのか」ということ。同記事によると、WPPの狙いはつぎの点にあるとしています。

WPPは傘下に市場調査会社のカンター・グループを抱える。カンターとTNSを統合すれば同業界で世界2位に浮上し、最大手の米ニールセンを追撃する体制が整う。これにより景気の影響を受けやすい広告事業への依存度を弱める考えで、今回、GfKの決定を歓迎する声明を出している。
(「独GfK、TNSの争奪戦から撤退」NNA.EU/2008.8.29)

この記事を素直に読めば、「事業分野のひとつである情報部門を拡大することで、広告依存の事業構造から脱却する」ということになりますか。これは、リサーチが収益性のある事業と考えている、ということでもありますよね?

日本の場合はどうでしょう・・・?
日本で広告代理店(やメディア)がリサーチ会社を傘下に置くのは、純粋に「リサーチ機能」を手元に置きたい、ということのように思うのですが。
リサーチ会社の情報力とか、収益性を見込んでのこと、とは正直思えない。。。
となると、日本と欧米のリサーチ会社は、その(社会的?)ポジションが異なっているとも言えそうですし、実際に異なっているとしたら、何が違うのか?要因は何なのか?ということを、考える必要もあるのではないかと・・・。
(実際、日本と欧米のリサーチ会社のポジションは異なる、とよく耳にします。。。)

今回のTNSとGfKの記事から、このようなことを考えてしまいました。。。
完全に個人的な感想なので、実態がどうなのかは定かではありませんが。

【追記2008.12.8】

結局、WPPグループのTNSの買収は成功し、TNSはWPP=カンターグループの一員になったようです。
TNSインフォプランからのリリースが出ていましたので、引用しておきます(リリース日:2008.11.29)

ロンドン発、2008年10月31日付プレスリリースで、TNSは、英国の大手広告会社WPPの Information, Insight and Consultancy Division, The Kantar Groupファミリーになったことが、正式に発表されました。
TNSブランド、TNS独自のサービスおよび製品開発は、優先的に継続され、弊社TNSインフォプランも含めて、経営陣、経営組織の大きな変更はございません。 TNSがWPP, The Kantar Groupファミリーになったことで、更にお客様のニーズに対応し充実したサービスを提供できると信じております。
TNSインフォプラン社員一同、お客様のお役に立てるサービスを提供できるよう、一層努力する所存ですので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
(TNSインフォプラン、リリース)

次代MR?~2.技術3題

前のエントリの「クラウド・ソーシング」は、「技術」というよりは、ビジネスモデルに近いものがあります。なので、ここでは純粋に「技術」に焦点をあてて、最近のジャーナルから気になったものをピックアップしてみました。
ただ、いずれも「技術」ですので、マーケティング・リサーチにどのように活用できるのかはこれからの話になります。とくに、プライバシーとの関わりで、かなり難しい問題を抱えているといえそうです。
このような問題もありますが、記憶に頼らない「リアルな行動データ」を収集できるという魅力をもった技術ですので、どなたか応用開発を。。。
(独白:きっとリサーチ業界ではないだろうな、このような応用開発ができるのは・・・)

■ビデオ監視技術

記事は、こちら↓。

インテリジェント化が進むビデオ監視技術――物体の検知・追跡・分類が可能に
(COMPUTERWORLD.jp)

犯罪防止やテロ対策に使われてきた技術ですね。これを、マーケティングに活用できるのではないかと。この記事では、つぎのような事例をあげています。

「監視技術の発達により、撮影中の場面をカメラ側で分析したり、動いている物体を数えたりする機能が向上している。小売店の場合は、人が多く集まる売り場がどこかを調べたり、販促策が新しい顧客を引きつけているかをチェックしたりするのに、監視技術を利用しているようだ」

確かに、このような技術とソフトがあれば、小売現場での観察ツールとして有効でしょう。
とくに、すでに監視ビデオを入れているところで、プラスαの機能として、このような解析ができるのであれば、リサーチに応用できる可能性は高くなりそうです。
(リサーチのためだけに、この機材とソフトを入れるのは難しい気がしますが。。。)

■RFID

記事は、こちら↓。

RFIDの技術動向と自社導入のポイント(COMPUTERWORLD.jp)

RFID自体は、ずいぶん前からあちこちで注目されながら、いまひとつブレイクしていないですね。そのあたりの背景もおさえながら、今一度、RFIDについて整理を。
中でも、つぎのユースケースがリサーチに活用できそうに思うのですが。

ユースケース9:位置検知
 アクティブ・タグを利用して、受信したアンテナの位置や電波強度から対象のアクティブ・タグのある位置を特定するユースケースである。人だけでなく商品や部品の位置管理などにも利用されている。

人の追跡に使えることはもちろんですが、商品の移動の検知はどうなのでしょう。
たとえば、レジを通る商品はPOSでわかります。それ以外にも、手に取られた=動いた、あるいはずっと棚に置かれたまま=動いていない、というような情報が取れるとマーケティング的には有用なようにも思うのですが。
(この技術については、すでに研究を行なっている会社もありそうです・・・)

■地理空間情報サービス

記事は、こちら↓。

抜群マーケティングで、モノが売れる時代に?(NBonline)

GPSとか、WiMAX技術を使った個人の位置情報の活用です。
(タイトルの「抜群」の意味がよくわからない。。。ピンポイントで個人を押さえることを、このように表現しているのだろうか?)

記事では、つぎのように書いています。

IT(情報技術)の発展で、GPS(全地球測位システム)や携帯電話などで人の位置を把握しやすくなった。今後の実用化が見込まれる無線通信技術「WiMAX(ワイマックス)」など、位置を特定できるデバイスはさらなる普及が見込まれる。こうした人の移動履歴と、どこで何を購入したかなどの行動履歴を分析することで、消費者の購買パターンを浮かび上がらせることができる。企業はそれを活用して、より効果的なネット広告の展開やマーケティング精度の向上など、新たなビジネス機会の創出が期待できるというわけだ。

携帯のGPSシステムについては、個人的にはずいぶん前から注目してました。さすがに、小売店内での導線調査には使えないでしょうが、もう少し広いエリアでの導線なら押さえられるのではないかと。。。
(たとえば、自動車。実際に、どれだけの範囲を移動しているのかとか、どこに行っているのかとか、そのようなことが押さえられそうだなと。)
WiMAXがどの程度ピンポイントでおさえられるのか定かではないのですが、店舗内での導線も押さえられるのか?(店舗内導線なら、RFIDを使えばできそうですけど。)
それと、「どこで」はわかるにしても、どうやって「何を購入した」までわかるのだろう?、という疑問も。。。

で、↓の記事とリリース。
これは、もしかしたらこの技術を応用したものなのでしょうか?
いずれにしても、またインテージ。。。

京都産業21など、海外客の動向を無線調査-観光活性化策に反映(日刊工業新聞)

京都ユビキタス特区コンソーシアム事業にインテージが参加(インテージ)

○最後に・・・

以上、ジャーナルから気になる技術を3題ご紹介しました。

が・・・。
最初にも書いたように、これらはあくまでも「技術」にすぎません。また、おそらく今の時点では、応用開発が実現したとしてもコスト的に見合うかどうかという問題も出てくると思います。

自分でふっておいてなんですが、↓の意見は実務家として肯んずること、多ですね。
(他のエントリーも、小売マーケティングについて、含蓄のあるよいコラムだと思いますので、あわせて読んでみてください)

需要再燃の一方で、知見・経験が薄れている店頭調査
(RetailTechnology:《連載》祝 辰也の「徒然マーケティング考」第6回)

具体的には、このようなことを書いていらっしゃいます。

もうひとつ店頭調査関連で最近気になるのが「ハイテク客動線調査」である。筆者に店頭調査の経験が多少あるせいか、時おり「店内客動線調査」のための「ハイテク」な仕組みのご紹介をいただくことがある。防犯カメラの映像記録を高度な画像認識ソフトで解析したり、買い物カートやカゴに仕掛けをして店内での移動軌跡をデータとして収集できる仕組みなどで、小売の協力で実際の店舗での実験結果を含めて紹介いただいたりする。それぞれスゴイ仕組みなのだが、技術先行で誰が何のために客動線調査を行うのかという視点・発想に欠けるため、コスト、詳細さの点でビジネス・ベースではまだ難しいと私自身は評価している。

「何ができるか」も、もちろん大切かもしれないですが、もっと大切なのは「誰が、何のために」行うかということ。ハイテク系の応用開発をしていると、忘れがちな視点です。

このような視点を大切にしながらも、新たな技術を応用したリサーチ技術の開発が必要な時代ではないか、とも思います。
次代のマーケティング・リサーチ、果たしてどのような技術が現実になっているのか。
(そして、その時のプレイヤーは誰???)