日別アーカイブ: 2008-10-15

『なぜビジネス書は間違うのか』

なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想 なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-05-15

この本、タイトル通りの内容~なぜビジネス書は間違うのか~について、紹介するわけではありません。。。
ビジネス書で取り上げられている事例が、数年後にはエクセレントではなくなっていることなど、みなさん、ご承知でしょうから、正直なところ、何をいまさら感は無きにしも非ず、です。
ただ、ビジネス書を読んで、その通りにするとうまくいくと思っている人がいるとしたら、この本は有益でしょう(よくいますよね、「正解」だけを求めたがる人・・・。語られている要因の背景にある文脈などを無視して、表層だけをまねしようとする人・・・)。

しかし・・・
この本を、「なぜ、研究、調査、リサーチが間違うのか」という視点で読むと、これは使えるのではないかと思ったのです。とくに、最初の2ページ~4ページに書いてあることがポイントです。(実際、このページを見たから、この本を買ったのですが。)

核心はもう少しあとで。
まずは、いつものようにもくじから。

第1章 わかるのはほんの少し
第2章 シスコ・ストーリー
第3章 ABBの栄光と転落
第4章 ハロー効果のまばゆい光
第5章 企業調査は答えを教えてくれるのか
第6章 星を探し、ハローを見つける
第7章 積み重ねられる妄想
第8章 ストーリー、科学、多重人格的超大作
第9章 ふたたびビジネスの最大の疑問
第10章 エセ科学に惑わされないマネジメント

この本、タイトルがよくないのかも。。。
主題は、「はじめに」に書いてあるように、

企業パフォーマンスの要因を理解するのはなぜ難しいのか

だと理解するのがいいと思います。
そもそも、経営やマーケティングが「科学」なのか?科学は、要因をコントロールした実験室での実験が基本的に可能ですが、経営やマーケティングで、要因を完全にコントロールした実験など、そもそも難しいのですから。
(全否定をするつもりはないですので、その点は了解ください。)

それと、著者のいう「レポート」と「ストーリー」という対比も興味深いです。

レポートとは、何よりも事実を伝えることであり、作意や解釈が紛れ込んではならない。(・・・中略・・・)他方、ストーリーは人々が自分の生活や経験の意味を理解するための手段だ。よいストーリーの条件は、事実に忠実であることではない。それよりも、ものごとが納得いくように説明されていることが重要なのである。

(中略)

ストーリーがいけないのではない。ストーリーだとわかって読むならかまわない。ところが油断ならないことに、科学の仮面を被ったストーリーが知らぬ間にはびこっている。いかにも科学です、という顔をしているが、そこには真の科学の厳密さも論理もない。

ここでは、ビジネス書の多くが「レポート」ではなく「ストーリー」だということを言っているのですが、私たちがふだん書いている調査報告書はどうでしょう・・・。
(調査報告書も、「ストーリー」が悪だ、などと決め付けるつもりはないです。「ストーリー」が必要な場面は、いっぱいあるのも承知しています。ただ、「ストーリー」の前提となった「レポート」も、きちんとあるべきだとは思っています。)

さて、今日の本題であるこの本のポイント。
ほんとは、ルール違反の引用になるかもしれませんが、あえて紹介しておきます。
ビジネス書が間違う背景にある「妄想」として、つぎの9つをあげています。

妄想1 ハロー効果
妄想2 相関関係と因果関係の混同
妄想3 理由は1つ
妄想4 成功例だけをとり上げる
妄想5 徹底的な調査
妄想6 永続する成功
妄想7 絶対的な業績
妄想8 解釈のまちがい
妄想9 組織の物理法則

これらをみて、「なるほど」とか「あたりまえだな」と思う方は、本書は読む必要はないです。
一方、「よくわからないな」と思った方。本書を読んで、「なぜ、研究、調査、リサーチが間違うのか」を一度考えてみた方がいいかもしれません。