前のエントリの「クラウド・ソーシング」は、「技術」というよりは、ビジネスモデルに近いものがあります。なので、ここでは純粋に「技術」に焦点をあてて、最近のジャーナルから気になったものをピックアップしてみました。
ただ、いずれも「技術」ですので、マーケティング・リサーチにどのように活用できるのかはこれからの話になります。とくに、プライバシーとの関わりで、かなり難しい問題を抱えているといえそうです。
このような問題もありますが、記憶に頼らない「リアルな行動データ」を収集できるという魅力をもった技術ですので、どなたか応用開発を。。。
(独白:きっとリサーチ業界ではないだろうな、このような応用開発ができるのは・・・)
■ビデオ監視技術
記事は、こちら↓。
犯罪防止やテロ対策に使われてきた技術ですね。これを、マーケティングに活用できるのではないかと。この記事では、つぎのような事例をあげています。
「監視技術の発達により、撮影中の場面をカメラ側で分析したり、動いている物体を数えたりする機能が向上している。小売店の場合は、人が多く集まる売り場がどこかを調べたり、販促策が新しい顧客を引きつけているかをチェックしたりするのに、監視技術を利用しているようだ」
確かに、このような技術とソフトがあれば、小売現場での観察ツールとして有効でしょう。
とくに、すでに監視ビデオを入れているところで、プラスαの機能として、このような解析ができるのであれば、リサーチに応用できる可能性は高くなりそうです。
(リサーチのためだけに、この機材とソフトを入れるのは難しい気がしますが。。。)
■RFID
記事は、こちら↓。
RFID自体は、ずいぶん前からあちこちで注目されながら、いまひとつブレイクしていないですね。そのあたりの背景もおさえながら、今一度、RFIDについて整理を。
中でも、つぎのユースケースがリサーチに活用できそうに思うのですが。
ユースケース9:位置検知
アクティブ・タグを利用して、受信したアンテナの位置や電波強度から対象のアクティブ・タグのある位置を特定するユースケースである。人だけでなく商品や部品の位置管理などにも利用されている。
人の追跡に使えることはもちろんですが、商品の移動の検知はどうなのでしょう。
たとえば、レジを通る商品はPOSでわかります。それ以外にも、手に取られた=動いた、あるいはずっと棚に置かれたまま=動いていない、というような情報が取れるとマーケティング的には有用なようにも思うのですが。
(この技術については、すでに研究を行なっている会社もありそうです・・・)
■地理空間情報サービス
記事は、こちら↓。
GPSとか、WiMAX技術を使った個人の位置情報の活用です。
(タイトルの「抜群」の意味がよくわからない。。。ピンポイントで個人を押さえることを、このように表現しているのだろうか?)
記事では、つぎのように書いています。
IT(情報技術)の発展で、GPS(全地球測位システム)や携帯電話などで人の位置を把握しやすくなった。今後の実用化が見込まれる無線通信技術「WiMAX(ワイマックス)」など、位置を特定できるデバイスはさらなる普及が見込まれる。こうした人の移動履歴と、どこで何を購入したかなどの行動履歴を分析することで、消費者の購買パターンを浮かび上がらせることができる。企業はそれを活用して、より効果的なネット広告の展開やマーケティング精度の向上など、新たなビジネス機会の創出が期待できるというわけだ。
携帯のGPSシステムについては、個人的にはずいぶん前から注目してました。さすがに、小売店内での導線調査には使えないでしょうが、もう少し広いエリアでの導線なら押さえられるのではないかと。。。
(たとえば、自動車。実際に、どれだけの範囲を移動しているのかとか、どこに行っているのかとか、そのようなことが押さえられそうだなと。)
WiMAXがどの程度ピンポイントでおさえられるのか定かではないのですが、店舗内での導線も押さえられるのか?(店舗内導線なら、RFIDを使えばできそうですけど。)
それと、「どこで」はわかるにしても、どうやって「何を購入した」までわかるのだろう?、という疑問も。。。
で、↓の記事とリリース。
これは、もしかしたらこの技術を応用したものなのでしょうか?
いずれにしても、またインテージ。。。
○最後に・・・
以上、ジャーナルから気になる技術を3題ご紹介しました。
が・・・。
最初にも書いたように、これらはあくまでも「技術」にすぎません。また、おそらく今の時点では、応用開発が実現したとしてもコスト的に見合うかどうかという問題も出てくると思います。
自分でふっておいてなんですが、↓の意見は実務家として肯んずること、多ですね。
(他のエントリーも、小売マーケティングについて、含蓄のあるよいコラムだと思いますので、あわせて読んでみてください)
需要再燃の一方で、知見・経験が薄れている店頭調査
(RetailTechnology:《連載》祝 辰也の「徒然マーケティング考」第6回)
具体的には、このようなことを書いていらっしゃいます。
もうひとつ店頭調査関連で最近気になるのが「ハイテク客動線調査」である。筆者に店頭調査の経験が多少あるせいか、時おり「店内客動線調査」のための「ハイテク」な仕組みのご紹介をいただくことがある。防犯カメラの映像記録を高度な画像認識ソフトで解析したり、買い物カートやカゴに仕掛けをして店内での移動軌跡をデータとして収集できる仕組みなどで、小売の協力で実際の店舗での実験結果を含めて紹介いただいたりする。それぞれスゴイ仕組みなのだが、技術先行で誰が何のために客動線調査を行うのかという視点・発想に欠けるため、コスト、詳細さの点でビジネス・ベースではまだ難しいと私自身は評価している。
「何ができるか」も、もちろん大切かもしれないですが、もっと大切なのは「誰が、何のために」行うかということ。ハイテク系の応用開発をしていると、忘れがちな視点です。
このような視点を大切にしながらも、新たな技術を応用したリサーチ技術の開発が必要な時代ではないか、とも思います。
次代のマーケティング・リサーチ、果たしてどのような技術が現実になっているのか。
(そして、その時のプレイヤーは誰???)