日別アーカイブ: 2008-08-27

次代MR?~2.技術3題

前のエントリの「クラウド・ソーシング」は、「技術」というよりは、ビジネスモデルに近いものがあります。なので、ここでは純粋に「技術」に焦点をあてて、最近のジャーナルから気になったものをピックアップしてみました。
ただ、いずれも「技術」ですので、マーケティング・リサーチにどのように活用できるのかはこれからの話になります。とくに、プライバシーとの関わりで、かなり難しい問題を抱えているといえそうです。
このような問題もありますが、記憶に頼らない「リアルな行動データ」を収集できるという魅力をもった技術ですので、どなたか応用開発を。。。
(独白:きっとリサーチ業界ではないだろうな、このような応用開発ができるのは・・・)

■ビデオ監視技術

記事は、こちら↓。

インテリジェント化が進むビデオ監視技術――物体の検知・追跡・分類が可能に
(COMPUTERWORLD.jp)

犯罪防止やテロ対策に使われてきた技術ですね。これを、マーケティングに活用できるのではないかと。この記事では、つぎのような事例をあげています。

「監視技術の発達により、撮影中の場面をカメラ側で分析したり、動いている物体を数えたりする機能が向上している。小売店の場合は、人が多く集まる売り場がどこかを調べたり、販促策が新しい顧客を引きつけているかをチェックしたりするのに、監視技術を利用しているようだ」

確かに、このような技術とソフトがあれば、小売現場での観察ツールとして有効でしょう。
とくに、すでに監視ビデオを入れているところで、プラスαの機能として、このような解析ができるのであれば、リサーチに応用できる可能性は高くなりそうです。
(リサーチのためだけに、この機材とソフトを入れるのは難しい気がしますが。。。)

■RFID

記事は、こちら↓。

RFIDの技術動向と自社導入のポイント(COMPUTERWORLD.jp)

RFID自体は、ずいぶん前からあちこちで注目されながら、いまひとつブレイクしていないですね。そのあたりの背景もおさえながら、今一度、RFIDについて整理を。
中でも、つぎのユースケースがリサーチに活用できそうに思うのですが。

ユースケース9:位置検知
 アクティブ・タグを利用して、受信したアンテナの位置や電波強度から対象のアクティブ・タグのある位置を特定するユースケースである。人だけでなく商品や部品の位置管理などにも利用されている。

人の追跡に使えることはもちろんですが、商品の移動の検知はどうなのでしょう。
たとえば、レジを通る商品はPOSでわかります。それ以外にも、手に取られた=動いた、あるいはずっと棚に置かれたまま=動いていない、というような情報が取れるとマーケティング的には有用なようにも思うのですが。
(この技術については、すでに研究を行なっている会社もありそうです・・・)

■地理空間情報サービス

記事は、こちら↓。

抜群マーケティングで、モノが売れる時代に?(NBonline)

GPSとか、WiMAX技術を使った個人の位置情報の活用です。
(タイトルの「抜群」の意味がよくわからない。。。ピンポイントで個人を押さえることを、このように表現しているのだろうか?)

記事では、つぎのように書いています。

IT(情報技術)の発展で、GPS(全地球測位システム)や携帯電話などで人の位置を把握しやすくなった。今後の実用化が見込まれる無線通信技術「WiMAX(ワイマックス)」など、位置を特定できるデバイスはさらなる普及が見込まれる。こうした人の移動履歴と、どこで何を購入したかなどの行動履歴を分析することで、消費者の購買パターンを浮かび上がらせることができる。企業はそれを活用して、より効果的なネット広告の展開やマーケティング精度の向上など、新たなビジネス機会の創出が期待できるというわけだ。

携帯のGPSシステムについては、個人的にはずいぶん前から注目してました。さすがに、小売店内での導線調査には使えないでしょうが、もう少し広いエリアでの導線なら押さえられるのではないかと。。。
(たとえば、自動車。実際に、どれだけの範囲を移動しているのかとか、どこに行っているのかとか、そのようなことが押さえられそうだなと。)
WiMAXがどの程度ピンポイントでおさえられるのか定かではないのですが、店舗内での導線も押さえられるのか?(店舗内導線なら、RFIDを使えばできそうですけど。)
それと、「どこで」はわかるにしても、どうやって「何を購入した」までわかるのだろう?、という疑問も。。。

で、↓の記事とリリース。
これは、もしかしたらこの技術を応用したものなのでしょうか?
いずれにしても、またインテージ。。。

京都産業21など、海外客の動向を無線調査-観光活性化策に反映(日刊工業新聞)

京都ユビキタス特区コンソーシアム事業にインテージが参加(インテージ)

○最後に・・・

以上、ジャーナルから気になる技術を3題ご紹介しました。

が・・・。
最初にも書いたように、これらはあくまでも「技術」にすぎません。また、おそらく今の時点では、応用開発が実現したとしてもコスト的に見合うかどうかという問題も出てくると思います。

自分でふっておいてなんですが、↓の意見は実務家として肯んずること、多ですね。
(他のエントリーも、小売マーケティングについて、含蓄のあるよいコラムだと思いますので、あわせて読んでみてください)

需要再燃の一方で、知見・経験が薄れている店頭調査
(RetailTechnology:《連載》祝 辰也の「徒然マーケティング考」第6回)

具体的には、このようなことを書いていらっしゃいます。

もうひとつ店頭調査関連で最近気になるのが「ハイテク客動線調査」である。筆者に店頭調査の経験が多少あるせいか、時おり「店内客動線調査」のための「ハイテク」な仕組みのご紹介をいただくことがある。防犯カメラの映像記録を高度な画像認識ソフトで解析したり、買い物カートやカゴに仕掛けをして店内での移動軌跡をデータとして収集できる仕組みなどで、小売の協力で実際の店舗での実験結果を含めて紹介いただいたりする。それぞれスゴイ仕組みなのだが、技術先行で誰が何のために客動線調査を行うのかという視点・発想に欠けるため、コスト、詳細さの点でビジネス・ベースではまだ難しいと私自身は評価している。

「何ができるか」も、もちろん大切かもしれないですが、もっと大切なのは「誰が、何のために」行うかということ。ハイテク系の応用開発をしていると、忘れがちな視点です。

このような視点を大切にしながらも、新たな技術を応用したリサーチ技術の開発が必要な時代ではないか、とも思います。
次代のマーケティング・リサーチ、果たしてどのような技術が現実になっているのか。
(そして、その時のプレイヤーは誰???)

次代MR?~1.クラウドソーシング

北京五輪は昨日ですっかり終わり、テレビも通常プログラムに戻っています。
いろいろな競技を見て、スポーツは組織論やHRM、さらには経営戦略(環境適応の問題、競争フレームの問題等)について考えるいい素材になると思いました。とくに、男子サッカーと野球、そして男子柔道あたりは、このような切り口で整理をすると、わりといろいろな課題が見えてくるような気がします。(とはいえ、ここでは触れません。下手なことを書くと、炎上しそうなので^^;)

閑話休題。

マーケティング・リサーチも「環境変化」の大きな波にさらされています。
ほんの一昔前(ここ10年くらい)までは、マーケティング・リサーチといえば調査員さんと調査票を使ったサーベイか、インタビューで行うことが相場でした。
しかし、みなさんご存知のとおり、データ収集という面では、「ネットリサーチ」という大波が押し寄せ、POSデータや、FSPによる個人購買履歴情報を収集できるようになりました。データ解析の面では、PCがどんどん大容量・高速化することで、誰でも、どこでも集計・解析を実施することができるようになりました。データマイニングでも、テキストマイニングでも、高度な多変量解析でも、いまではすぐに実施することができます。(「実施できる」と「使いこなせる」は、別ですが・・・)

さらに、このblogでも過去に取り上げてきた、アイトラッキング、ニューロマーケティング、blog解析、予測市場など、新たな技術を駆使したデータ収集・解析手法が開発、実用化されています。(これらについては、以下のエントリーを参照ください)

いずれも、これまでのマーケティング・リサーチというフレームでは、捉えられない事例です。しかし、データを収集し分析するというマーケティング・リサーチの目的には、明らかに適う手法です。このような、新たなリサーチに結び付く技術は、まだまだあります。

今日は、これらをご紹介してみようと思います(2本のエントリーに分けます)。

■クラウドソーシング?

2008/8/22の日経MJの1面は、『SNSが知恵袋』として、SNSを商品開発に活用した事例を取り上げています。これまでのように、調査票やインタビューで消費者の意見を聞くのではなく、SNSという仕組みを使って、アイデアを募集、ブラッシュアップしていこうというものです。
また、日経情報ストラテジーの6月号でも『SNSを活用した顧客参加型商品開発』として、5ページの記事があります。こちらの方がより具体的で、この手法を運用する上での課題をあげています。

「SNSを活用した商品開発」とは何かというと、「顧客と直接コミュニケーションを取りながら顧客視点のアイデアを吸い上げて新商品を開発する(日経情報ストラテジー)」ことです。
メリットは、リアルタイムで継続的に意見のやり取りをすることで、消費者と一緒に開発の方向性を修正していくことが可能、ということ。また、今はまだこのような事例が少ないので、参加者が「自分が開発に参加した商品」という意識が高く、開発と同時に(バズによる)販促効果も見込めるというメリットもあるようです。
デメリットとしては、時間がかかるということがあげられています(これは本当?、とも思いますが・・・)。あとは、SNSの運営ノウハウと、収集した情報をどのように解釈するのかという問題。これは、従来のリサーチにも通じる課題でしょう。日経MJでは、つぎのように書いています。「SNSで集まった案を商品に実際どこまで反映するかも案外難しい。消費者の声を忠実に再現するのが簡単だが、平均的で無難な商品に落ち着く恐れもあるからだ。」

さて・・・。
最近、「クラウドソーシング」という言葉が目に付くようになったのですが、このSNSを活用した商品開発も、このクラウドソーシングの一種といえるのかもしれません。
(ちなみに、「クラウドコンピューティング」と、この「クラウドソーシング」の「クラウド」は別の言葉です。前者は、「cloud(雲)」で、後者は「crowd(群集)」です。お間違えなきよう。)

もっと、クラウドソーシングについて知りたい方は、↓の記事をどうぞ。

ビジネス革新に貢献してくれる“社外の人々”――「クラウドソーシング」の可能性
(COMPUTERWORLD.jp)

さらに、さらに学びたい方は、つぎのあたりの本を読んでみてください。

■対談で、日本の状況把握をさらっと

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■海外事例を&商品開発以外の事例も

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■これもクラウドソーシング、だよね?・・・

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■さらに、学術的な視点からも究めたい方には

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