分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:2008-07-24 |
最近は、リサーチ関連の本とともに、「分析力」をキーワードとした本も多く出版されてます。
今回紹介するのはその中の一冊で、概論的にまとまっていると思った本です。
キーワードは、「ビジネス・インテリジェンス」。
たとえば、↓のHPでもわかりやすく整理されています。(というか、このHPで紹介されているものと同じチャートが、本書の中でも引用されています)
いま、データソースはリサーチからだけではありません。とくにIT革命以降、企業はさまざまなデータを入手できるようになりました。本書でも書かれていましたが、「データのコモディティ化」といえるような状況がおきつつあります。さらに、パソコンの処理量も速度も飛躍的に増し、さまざまな分析ツールを実用的に使えるようになりました。
(いつか、どこかで、同じようなことを書いたような気がしますが・・・)
このような時代背景から、「分析力」が企業の競争優位を産み出す、というのが本書の主張です。(原題はダイレクトに、"Competing on Analytics")
では、もくじ。
第1部 分析力を武器とする企業の特徴
第1章 データ分析で競争に勝つ
第2章 こんな企業が分析力を武器にしている
第3章 データ分析を業績に結び付ける
第4章 社内へデータ分析を活用する
第5章 社外へ向けてデータ分析を活用する第2部 分析力を組織力にする
第6章 分析力活用のためのロードマップと組織戦略
第7章 分析力を支える人材
第8章 分析力を支える技術
第9章 分析競争の未来
もくじをご覧いただくとわかるように、第1部では分析力とは何かについて事例や調査結果を踏まえて論じ、第2部では分析力を活かすための組織づくりについて論じています。ただし、分析の具体的なノウハウを紹介しているわけではないので、その点は注意してください。
(分析の具体的なノウハウを求める方は、統計・解析の専門書が必要になります。。。)
Amzonの書評でも指摘している人がいますが、結局、分析力を活かせるかどうかは組織に関わってくるような気がしています。たとえば、CIOの役割。本書では、つぎのように述べています。
言うまでもなくCIOはITの総責任者であり、分析力の技術面に関しては陣頭指揮を執るポストである。だが、CIOの仕事はそれだけではない。確かに社内に分析システムを構築するには専門家が必要だが、何もCIOが努める必要はない。専門家を呼んでCIOが監督をしても十分間に合う。
それよりもCIOが心すべきは、肩書きの「I」の部分、つまり情報である。情報は正確か、信頼できるか、実態を正確に反映しているか。そこに注意を注ぐべきだ。
このような時代の中での、調査会社、リサーチ会社のポジションは?
たとえば、つぎのように言及しています。
(筆者注:分析ビジネスに携わる企業には、データ販売を行う企業もある~たとえば、ダンハンビーなど~、という流れの中での言及。)
ただしたいていの場合、情報を売ってもらうだけではお客さんは満足しない。その情報をどう解釈しどう活用するのかも教えてもらいたがっている。そこで、情報と一緒にコンサルティングも提供することが必要になる。
「ビジネス・インテリジェンス」とは何か、「分析力」を競争優位に活かすとはどういうことか、「分析力」を競争優位に活かすための組織づくりはどうすればいいのか。
これらについて理解したい人は、本書をどうぞ。
◆さらに、関連書もいくつか。
その数学が戦略を決める 価格:¥ 1,800(税込) 発売日:2007-11-29 |
テーマはほとんど一緒だと思います。訳者解説では、「本書の中心テーマの一つは、大量データ解析が各種の意思決定にますます活用されているということだ」と書いてますので。
何が違うかというと、こちらの方が少し統計・解析の内容的なものにも触れている、という点でしょうか。
マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫) 価格:¥ 798(税込) 発売日:2006-03-02 |
「分析力~」でも、「その数字~」でも取り上げられている共通の事例がこれ、ベースボールでのセイバーメトリクスです。この本、出版当時かなり話題になったので、すでに読まれている人も多いと思いますが、もう一度「分析力」という視点で読み直すのもいいかもしれません。
戦略的データマイニング アスクルの事例で学ぶ 価格:¥ 2,940(税込) 発売日:2008-04-17 |
Tesco顧客ロイヤルティ戦略 価格:¥ 3,150(税込) 発売日:2007-09 |
いずれも、“もっと個別事例を深く知りたい方”向け。
アスクルは、データマイニングの教科書としてもいけそう。
Tescoは、「分析力~」でも取り上げられている事例です(実は未読です。お世話になっているOUTLOGICさんのblogで知りました↓。こちらもあわせて、ご覧いただければ。余談ですが、最近のOUTLOGICの読書傾向、かなりかぶってます。。。)
そういえば、「ガイアの夜明け」や「日経MJ」で取り上げられていた事例で、オギノというSMの事例もありました(詳しくは、↓こちらのblogを参照してください)