月別アーカイブ: 2008年9月

クロス・マーケティング、上場へ

クロス・マーケティングは、設立当初からIPOを狙っているという話を聞いていましたが、このご時勢なのですっかり忘却の彼方にあったのですが・・・。

株式会社クロス・マーケティングが、東証マザースへの上場承認を得たようです。

新規上場会社「株式会社クロス・マーケティング」(東証)
新規上場企業の横顔「クロス・マーケティング」(ロイター)

会社概要、および上場に際しての目論見書については、会社のHPでどうぞ↓。

株式会社クロス・マーケティングHP

リサーチ会社では、インテージ、マクロミルについで3社目の上場です。
会社の沿革をみると、H15(2003)年の設立ですから、約5年での上場達成となります。そして業績はH19(2007)年12月期で、売上24.3億円、経常利益3.4億円。こんなに成長しているとは知りませんでした。。。

クロス・マーケティングといえば、調査画面をすべてカスタマイズ設計で作成することに特徴があります。他社では、調査システムを構築し、そのシステムの範囲の中で画面設計を行うのが主流です。オーダーメイドとレディメイドの違いですね。
カスタマイズ設計のいい点は、ほぼリサーチャーの希望に沿った調査画面を構築することができること。レディメイドの画面では、妥協しなければならないことが時々あります(ただし最近は、他社システムもかなりいろいろなニーズに応えられるようになってきていますが)。
一方で、ひとつひとつカスタム設計を行うので、人的工数が掛かるのが欠点。利益率をマクロミルと比べていただくと、その差がお判りいただけると思います。

そして、目論見書を見ると、“ほー”と思う点が。おそらく、上記の「すべてカスタマイズ設計」と関連がありそうな気がします。(そしてまた、この点からクロス・マーケティングの調査会社としての業務範囲も自ずと予想がつきます。)

興味のある方は、ご自身で目論見書を眺めてみてください。
(販売実績とか、売掛先実績のところですね。業界では常識だったのでしょうか・・・。)

取り急ぎのエントリーでした。

ニューロマーケティング(ふたたび)

ちょっと調べ物をしていたら、ニューロマーケティング関係の記事に遭遇、ついついニューロマーケティングでうろうろと。。。
せっかくなので、備忘録も兼ねて、検索結果を紹介します。
(前にも同じテーマでの投稿をしていますので、こちら↓もあわせてご覧ください。ちょうど1年くらい前になるんですね。)

「脳を直撃する広告?」(2007.10)

◆消費者研究の新しいアプローチ(読売ADレポート「ojo」)

きっかけになったのは、こちら↓のHP。

消費者研究が新しい局面を迎えている。一言で言えばそれは、消費者の無意識へのアプローチだ。人の無意識の反応を脳の活性化から見ていこうというニューロマーケティング、非合理的な人間の行動に法則を見いだしていく行動経済学、さらには進化論や消費文化の視点から消費行動を見直す動きも始まっている。「無意識のマーケティング」に踏み込んだ消費者研究の今を探った。
(「消費者研究の新しいアプローチ」/読売ADレポート「ojo」2008.7)

田中洋先生(法政から中央に移られたんですね・・・)、友野典男先生(「行動経済学」の著者)、四元正弘氏(電通)の3名がそれぞれインタビュー形式で、消費者研究の今を語っています。いずれも、なかなかおもしろい内容だと思います。

・消費者行動研究はどこまできているのか(田中洋)

・行動経済学は消費者をどうみているのか(友野典男)

・消費者の無意識にどう向き合うか(四元正弘)

◆blogや記事から

大学の先生や雑誌記事から、ニューロマーケティングに関係ありそうなところを。

まずは、こちら↓。今年の消費者行動研究学会(JACS)の統一論題が「ニューロマーケティング」だったんですが、そのことについて書かれた大学の先生のblogです。

JACS@ADK~ニューロ・マーケティングの可能性(Mizuno on Marketing)
ニューロマーケティングへの期待(Mizuno on Marketing)

つぎに、ニューロマーケティング事情を書いているblog。
脳の測定方法には何種類かあるらしいのですが、fMRIという機械は、1台約300万ドル、20~30人の解析に5万ドルかかると。。。(そういえば、学会でもそんなことを言っていたな。)
ただ、技術開発も進み、EEG(エレクトロセファログラム)という機種では、「数百人を解析しても、その何分の1かのコストですむ」らしい。

ニューロマーケティングは企業、広告業界の救世主となるのか~脳ビジネスの最先端事情~(MediaSabor)

そして、日経アソシエからのインタビュー記事。
ニューロマーケではなく、行動経済学の先生なのですが、関連ありそうなので。

脳と行動の関係を解明、より良い選択を目指す~行動経済学の最先端を切り開くコリン・カメレール教授に聞く~(NBonline)

最後に、ニュース記事から。アメリカの話なのですが、

急速拡大分野のニューロマーケティングで世界をリードするニューロフォーカス社は4日、ニューロイメージング(脳神経機能画像化)をマーケティング・ツールとして利用する「中核特許」を買収したと発表した。(共同通信PRワイヤー2008.9)

ということです。記事の中に、ザルトマン博士(「心脳マーケティング」著者)の名前も。
さらに、「ニールセン社はニューロフォーカスへの戦略的投資家である」との記述もあります。つまり、着々と調査メニューとしての実用化が進んでいるということですね。。。

◆企業HPから

ニューロマーケティングについて記述している(≒事業として提供している)企業のHPから。

まず、前回の投稿でもリンクを貼った、NTTデータ経営研究所(→HPはこちら)。
「経営研レポート」の中に、ニューロサイエンス系の記事が2本、掲載されています。

ニューロR&Dによる次世代商品開発戦略(NTTデータ経営研究所)

ニューロコンサルティングの時代(NTTデータ経営研究所)

とくに「ニューロR&D・・・」では、簡単ですが事例も紹介されています。

つぎは、上記JACSで論文発表をしていた、ニューロインサイトジャパン(→HPはこちら)。
「ニューロマーケティングを考える」というメニューに、コラムがありますので、こちらをどうぞ。

ニューロマーケティングを考える(ニューロインサイトジャパン)

そして、広告代理店からは博報堂。

博報堂ブレイン・ブリッジ・プログラムとは、脳科学・認知科学・心理学・社会学などの理論や技術を活用し、ビジネスにおいて柔軟に右脳と左脳の双方を効果的に活用するための博報堂オリジナル調査やワークショッププログラムの総称です。(「博報堂ブレイン・ブリッジ・プログラム」博報堂)

として、いくつかのメニューを紹介しています。この中には、「心脳マーケティング」のZMET調査も(博報堂は、日本での独占サプライヤーだったのですね。。。)

めぼしいものは以上で。
また1年後にでも、状況を確認するかもしれません・・・。

TNSとGfk合併はご破算?

【20081208追記あり】

以前、こちらのエントリー(2008.5.1)で、ワールドワイドでのリサーチ会社合併の可能性として、TNSとGfkが合併か?ということを書きました。

ところがここにきて、状況が変わってきているようです。。。

世界3位の市場調査会社テイラーネルソンソフレス(TNS)の争奪戦から独同業GfKが撤退した。同社は27日、広告で世界2位の英WPPによる総額約11億ポンド(2,200億円)の買収提案に対抗するための資金調達ができなかったとして、TNSの取得を断念すると発表した。一方、TNSはこの日、WPPの提案を拒否する姿勢をあらためて示している。
(「独GfK、TNSの争奪戦から撤退」NNA.EU/2008.8.29)

何が起こっているのか・・・?

端的に言うと、6月の初めにはTNSとGfkの間で合意に達していた合併交渉に、広告会社で世界2位のWPPグループが参入し、7月に入りWPPがTNSに対しTOBを仕掛ける。Gfkは、買収提案に対抗するためにファンド会社と共同で提案を行うも不発、対抗できる資金調達も難しいため、買収を断念。

ということのようです。
ただし、TNSとしては、WPPの提案を拒否する姿勢を示しているので、これから事態がどのように推移するのかは、まだわかりません。
(対して、WPPはTNSへのTOBを延長しているようです。)

この合併・買収問題が、今後どうなるかも興味深いですが・・・、
(TNSとGfKの合併がご破算になると、インテージの世界トップ10入りも先伸ばしになってしまいそうですし・・・)

ここで確認したいのは、「なぜ、WPPが、こうまでしてTNSを買収したいのか」ということ。同記事によると、WPPの狙いはつぎの点にあるとしています。

WPPは傘下に市場調査会社のカンター・グループを抱える。カンターとTNSを統合すれば同業界で世界2位に浮上し、最大手の米ニールセンを追撃する体制が整う。これにより景気の影響を受けやすい広告事業への依存度を弱める考えで、今回、GfKの決定を歓迎する声明を出している。
(「独GfK、TNSの争奪戦から撤退」NNA.EU/2008.8.29)

この記事を素直に読めば、「事業分野のひとつである情報部門を拡大することで、広告依存の事業構造から脱却する」ということになりますか。これは、リサーチが収益性のある事業と考えている、ということでもありますよね?

日本の場合はどうでしょう・・・?
日本で広告代理店(やメディア)がリサーチ会社を傘下に置くのは、純粋に「リサーチ機能」を手元に置きたい、ということのように思うのですが。
リサーチ会社の情報力とか、収益性を見込んでのこと、とは正直思えない。。。
となると、日本と欧米のリサーチ会社は、その(社会的?)ポジションが異なっているとも言えそうですし、実際に異なっているとしたら、何が違うのか?要因は何なのか?ということを、考える必要もあるのではないかと・・・。
(実際、日本と欧米のリサーチ会社のポジションは異なる、とよく耳にします。。。)

今回のTNSとGfKの記事から、このようなことを考えてしまいました。。。
完全に個人的な感想なので、実態がどうなのかは定かではありませんが。

【追記2008.12.8】

結局、WPPグループのTNSの買収は成功し、TNSはWPP=カンターグループの一員になったようです。
TNSインフォプランからのリリースが出ていましたので、引用しておきます(リリース日:2008.11.29)

ロンドン発、2008年10月31日付プレスリリースで、TNSは、英国の大手広告会社WPPの Information, Insight and Consultancy Division, The Kantar Groupファミリーになったことが、正式に発表されました。
TNSブランド、TNS独自のサービスおよび製品開発は、優先的に継続され、弊社TNSインフォプランも含めて、経営陣、経営組織の大きな変更はございません。 TNSがWPP, The Kantar Groupファミリーになったことで、更にお客様のニーズに対応し充実したサービスを提供できると信じております。
TNSインフォプラン社員一同、お客様のお役に立てるサービスを提供できるよう、一層努力する所存ですので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
(TNSインフォプラン、リリース)