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「信頼できるインターネット調査法の確立に向けて」 by SSJ

2009/7/16の"Survey ML"で萩原さんが紹介されていた、「信頼できるインターネット調査法の確立に向けて」について、今日は考えてみたいと思います。

報告書は、こちら↓からダウンロードできます。
(No.42です。PDFで、ファイルサイズが5.5Mあります。)

東京大学社会科学研究所付属社会調査・データアーカイブセンター

インターネット調査、郵送調査、訪問調査による違いを把握しようというものです。
これまでも、同種の調査・研究は多く行われていますが、少し前のものになってしまっていましたので、あらためて、この種の調査が行われ、公開された意義は大きいと思います。

ただ。。。
以前から思っていたのですが、この種の調査は、基本的に社会調査、世論調査としての研究で、マーケティングリサーチとしての視点からではない点に、留意が必要かと思います。
できれば、マーケティングリサーチの視点からの比較調査も必要だと思うのですが、どこから費用を得て、どこがやるのか、というのが難しいでしょうね、正直なところ。。。(第三者的な視点で、客観的に分析ができるのか、という問題がつきまといそう。。。)
さらに社会調査であれば、国や自治体が実施した、いわゆる「正統な統計調査」というものが存在するので、比較データが存在するのですが、マーケティングリサーチでは、この「比較対象」となる正統な統計調査というものが存在するのかどうか、という問題も大きいです。
こんな問題があるので、「マーケティングリサーチにおける、調査方法による差異についての実証研究」は、難しいと思われます。
なので、この研究のような、社会調査としてのリサーチ研究を参考にするしかないかな、と。

さて、結果です。
これまでの、この種の研究は、どちらかというと「インターネット調査は、統計調査とはいえない」という主張が前面に出ている印象で、インターネット否定的な論調が多かったように感じています。
しかし、この報告書では、インターネット調査ばかりでなく他の調査手法にも限界があることが指摘されている点が、これまでとは違います。
この点については、個人的には、以前から感じていました。調査がどのように行われているかを論理的に考えていけば、インターネット調査だけが否定される理由がわからないと思っていましたので。

ここでは、「終章 インターネット調査の限界と有効性」(pp.133-141)から、ポイントをあげておきます。

まず、

従来型調査をWEBモニター調査で代替することには,留意が必要なことが明らかにされた.ここでの従来型調査とは,明らかにしたい集団の特性を,当該集団(母集団)から統計的ルールに従って抽出した調査対象に対して調査を実施し,そのデータに基づいて母集団の特性を推定するものである.(p.139)

WEBモニター調査の限界を指摘したが,これは,WEB調査で,住民台帳や選挙人名簿から層化無作為抽出で調査対象を選定し,訪問面接調査や訪問留置調査で調査を実施する従来型調査(伝統的調査)を代替する場合を想定したものである.(p.140)

これは、これまでの常識を再度、確認した内容ですね。
ただし、比較対象を明確に定義している点がポイントだと思います。
つまり、「住民台帳や選挙人名簿から層化無作為抽出で調査対象を選定し,訪問面接調査や訪問留置調査で調査を実施する従来型調査(伝統的調査)を代替する場合」においては、インターネット調査に限界があるということで、どんな調査と比べても、というわけではないという点の理解が重要です。
ただ、マーケティングリサーチでは、この前提に立つ実査自体が、ほぼ不可能(住民台帳や選挙人名簿を閲覧すること自体が困難)なので、この点で限界を指摘されても、あまり意味はないかなと思います。

インターネット調査以外でも、つぎのような点が指摘されています。

従来型調査であっても,エリアサンプリングで調査対象を選定した訪問留置調査の場合では,回答者の基本属性に偏りがあることが確認された.(p.139)

訪問調査であっても回答率が低い場合には,特定の選好を持った者(「他人への信頼度」が高い人など)が調査に協力している可能性が高く,そのことが意識面の回答に偏りをもたらしている可能性が指摘できる.(p.140)

郵送ランダム調査でも回収率が低い場合は,モニター調査(WEB,郵送)に近い回答傾向があることが明らかにされた.(p.140)

「回収率が低ければ、従来型の調査でも偏りがあるんだよ」ということです。
(あたりまえといえば、あたりまえですが。ただ、この「あたりまえ」のことが、あまり「あたりまえでなくなっている」のが、いまのリサーチ業界の問題であると思えるのですが。。。なぜ、回収率が低いと偏りが出るのかについては、考えてみてください。説明できますか?)

そして、インターネット調査の有効性としては、つぎのようなことが上げられています。

調査母集団を確定できない対象に関して調査を実施する場合や,無作為抽出で調査対象を選定した場合では調査対象を十分に確保できい場合などではWEBモニター調査の有効性が高い.WEBモニター調査では,特定の属性や意識を持った層を抽出するための予備調査を容易に実施できるため,分析したい属性を持った対象者を事前に特定した後の本調査を実施出来ることによる.(p.140)

これって、マーケティングリサーチでは、ほとんどの場合に当てはまる条件のようにも思えるのですが。。。ある商品の使用者とか、認知層とか、母集団確定できないですよね?そんなリストはないことが、ほとんどでしょう。
と考えると、「マーケティングリサーチではWEBモニター調査」が有効ということになるけど、そんなに簡単なことでもないような。。。
(たとえば、「特定の属性や意識を持った層を抽出するための予備調査を容易に実施できる」とありますけど、実務となると、費用的にも、作業的にも、これがそんなに容易なことだとは思えない。。。)

さらに、

WEBモニター調査間の比較では,運営会社,モニターの構築方法(調査専用モニター,懸賞メーリングリストによるモニター),調査の回収方法(回収後に無作為抽出,先着順受付)などが異なっても,回答傾向に大きな違いがないことが明らかになった.(p.140)

WEB系リサーチ会社が行った他の研究でも、回収方法(回収後無作為抽出と先着順)による差は無い、と公表しているものを見た記憶がありますが、正直にいうと、この結果は鵜呑みにできないと感じています。
これらの結果は、あくまでも「それなりのサンプル数を確保する場合」と考えた方がいいのではないでしょうか?(今回の調査では1000サンプルベースで、集計しています。)
確かに、1000サンプルも集まれば、偏りは小さくなると思いますが、実務上はどうですか?
セル割付を行う場合、1セル100サンプルにも満たない場合も少なく無いのでは?(あくまでも、セル単位での話です。総サンプル数が1000サンプルだとしても、たとえば男女×10歳刻み年代で設計すると、1セルは100サンプルになります。)
たとえば、1セル=50サンプルくらいで設計されているとしたら?あっという間に調査終了しませんか?その場合、“回答できる人”に、ある特徴があると想定できませんか?
こうやって考えると、この「運営会社、モニター構築方法、回収方法による、回答傾向に大きな違いはない」という結論は、全面的に肯定できないように思います。(あくまで仮説です、実証できていないので。)

なんか、全般に否定的なコメントになってしまったでしょうか。。。
否定しているわけではなく、この研究の結果自体は、十分に理解しておいてほしいことばかりです。
ただ、この研究が「社会調査の視点に立っている」ことも含めて、結果の読み方には注意をしてほしい、ということです。

上記含め、調査手法について考えておいてほしいポイントをまとめます。

  • WEB調査ばかりでなく、他の調査手法でも、回答に偏りがでる場合がある。
  • とくに、「回収率」が重要な指標となり、回収率が低い場合は、どんな調査手法でも、偏りが発生する。
  • WEBモニター調査において、「回収方法による回答差はない」といわれているが、これはすべての場合において正しいとは限らないのではないか(サンプル数が十分に大きい場合に限定される可能性がある)。

一言でいえば、WEB調査に限らず、あらゆる調査手法には「偏り」の可能性があるということです。では、どうすればいいのか?

  • 従来のように「母集団」を所与のもの、規定されているものと考えずに、
    「集まったサンプルの母集団は、どんな人たちか?」ということを、
    常に考えて分析することが必要

ということではないでしょうか。
予備調査で「女性30代」と規定してサンプルを回収しても、実際に集まったサンプルは「どんな女性30代なのか」を考えた上で、分析する必要があるのでは?ということです。
未既婚比率やライフステージ、職業などの基本的な属性はもとより、イノベータ度や情報感度、その商品カテゴリーへの関与度や利用状況など、調査毎に集まったサンプルが異なる可能性もある、くらいの気持ちが必要なのかもしれません。

あるいは、

  • WEB調査でも、回収率を考えた実査コントロールが必要

ということもあるでしょう。
WEB調査に限らず、回収率が低ければ、偏りが生じる可能性があるというのが、今回の研究のポイントだと思っています。
となると、WEB調査でも回収率をしっかりと考えた実査コントロールが、本来は大切なのだと思います。ただ、これをきちんと行うには手間と時間=費用がかかり、せっかくのWEB調査の利点が損なわれることになるでしょう。
なので、ここは是々非々で、ある程度の代表性や精度が欲しい場合と、とにかく安く・早くの場合との使い分けが、大切ではないかと感じています。

以上、SSJの「信頼できるインターネット調査法の確立に向けて」を題材に、調査手法について考えてみました。ただ、ここに書いてある内容を鵜呑みにするだけでなく、皆さんも、報告書にぜひ目を通してください。
そして、今回のblogの内容では、「なぜ?」の部分については触れていません。(なぜ偏りがでるのか?、なぜ回収率がポイントなのか?等です)
また、調査手法による偏りがあることがわかったとして、では、どういう偏りが起こるのか、どういう時にどのような調査手法が適しているのか、等についても触れていません。
この点は、近いうちに、このblogでも考えてみたいと思いますが、しばし皆さんで考えてみてください。

「行動観察研究所」by大阪ガス

7月に入って、個人的な大事業に追われ、新しい情報に接することも、新しい本を読むこともままならず、当然このblogの更新も、しばしお預けとなっていました。
が、なんとか最初の関門は乗り越えたので、ぼちぼちと復活。

最初は、肩慣らし程度に、備忘録から。

以前紹介した↓の記事でもおわかりのように、大阪ガスはエスノグラフィに力を入れている企業のひとつといえると思います。

大阪ガス、調査手法「エスノグラフィー」をサービス改善などに活用、グループ会社にノウハウ伝授し調査の外販も(NIKKEI BP/IT Pro:2008/12/17)

この記事の中でも、

同社は2005年からエスノグラフィーに基づく調査サービスを外販するなど本腰を入れ始めた

とあるのですが、今回「研究所」という形で、さらに発展させたということでしょうか。

それが、こちら↓です。

行動観察研究所

7月7日にHPをオープンしたばかりのようですが、「研究所」と銘打つだけあり、ビジネス的な側面ばかりでなく、理論的背景などについてのコラム等も充実しそうで、期待したいです。

(この研究所に関しては、こちら↓のblogの紹介で知りました。あわせてご覧ください。)

大阪ガスの行動観察研究所(人机交互論さんのblog:2008/7/18)

田下氏(インテージ)&杉本氏(マクロミル)インタビュー

もう一本、紹介記事になりますが・・・。

以前、コメントで萬さんよりご紹介いただいたテレビ番組「賢者の選択」、WEBでご覧いただけます。インテージ田下社長だけでなく、マクロミル杉本社長のインタビューの回もありましたので、あわせてご紹介。

テレビ番組「賢者の選択」オフィシャルサイト

(「賢者一覧」→「情報処理・提供サービス」と辿ってください。
 一覧の中に、田下氏、杉本氏の回があります。
 田下氏:2009年6月13日放送、杉本氏:2007年6月2日放送)

現在の仕事についての語りはあまり多くなく、むしろ「人となり」と「今に至る道」をメインとしたインタビュー内容になっています。

ですので、直接リサーチに役立つ内容というわけではないのですが・・・。
それぞれの会社の歴史について知りたい、社長のこれまでの人生を知りたい、創業や会社の転機でどのような判断をしたか知りたい、という方はどうぞ。
(現職の方より、これから調査業界、マーケティング・リサーチ業界に入ってみたいという方むけかもしれませんね。とくに、この2社を狙っている方^^;)

1本50分近い内容になっていますので、お時間のあるときにどうぞ。




「ビジネスエスノグラフィ実践コース」by日本能率協会

このblogでも検索上位の単語になっている「エスノグラフィ」、皆さんの関心が高いことがうかがえます。

そこで、具体的に「エスノグラフィって、どうやってやるの?」という方のために、研修コースのご紹介です。
JMA(日本能率協会)で、下記↓の講座が予定されています。

「ビジネスエスノグラフィ実践コース」(日本能率協会)

<さらに詳しいプログラムは → こちら(PDFです) >

まる一日の研修×5日、受講料もそれなりのお値段となってますが。。。
(個人的には、参加したいのはやまやまですが、この金額はちょっと手が出ない・・・。)

この講座、昨年にも実施されています。たぶん、今回が2回目の講座となると思うのですが、2回目を実施するということは、それなりに評判がよかったのではないかと思います。

多摩大大学院教授の紺野先生、博報堂イノベーション・ラボの田村氏、さらに5日目のメンターに名を連ねている方々、いずれもエスノグラフィの分野では第一人者で、エスノグラフィを学ぶには、いまの日本では最良の方々ではないかと思います。
講座の内容も、座学による講義だけでなく、フィールドワークを伴う実践が含まれているのもいいです。エスノグラフィは、実践してみないとよくわからないことが多いと思いますので。

参考文献としてあげられているのは、こちら↓。いずれも良書だと思います。

知識デザイン企業 知識デザイン企業
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発売日:2008-02

発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法 発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
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発売日:2002-07-25

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発売日:2006-06

興味をもたれた方は、どうぞ。
(ただ、実際に参加したことがあるわけではないので、この点は留意の上、ご判断ください。あくまでも講師陣と講座内容から推測してのお勧めです。参加のご判断は、皆さんご自身の責任でお願いします。)




携帯電話の満足度に差はあるのか?~標本誤差の話

ネットに、つぎのような記事が出ています。

ケータイの満足度・所有率ともにトップは「シャープ」――ネットエイジア調べ(japan.internet.com:2009/6/16)

同じリリースをネタ元とした記事が、あちこちのニュースサイトで取りあげられていますので、ご覧になった方も多いと思います。

この記事タイトルとなった部分の分析は、以下のとおり。

ネットエイジア株式会社は、10代~30代の男女500人に対し「ケータイ端末の満足度について」の調査をモバイルリサーチにて実施、2009年6月16日、調査結果を発表した。調査期間は、5月25日~27日の3日間。

まず、現在利用しているケータイメーカー(複数利用している場合は最も利用しているメーカー)を聞いたところ(単一回答)、トップは「シャープ」25.0%、次に「パナソニック」16.4%、「NEC」12.6%、「ソニーエリクソン」8.0%となった。

次にケータイの総合満足度について、各メーカーを利用しているユーザー別で見てみると、「満足」(「かなり満足」と「まあまあ満足」の合計)が最も高かったのは、「シャープ」ユーザーで86.4%となり、これに僅差で「ソニーエリクソン」ユーザー85.0%が続き、以下「NEC」ユーザー84.1%、「富士通」ユーザー83.9%、「パナソニック」ユーザー82.9%となった。

さて・・・。
満足度は、シャープで86.4%、5位のパナソニックで82.9%。
満足度のベースは各メーカー機種のユーザーなので、シャープは125人、ソニーエリクソンが40人、NECが63人、富士通が31人、パナソニックが82人となっています。
果たして、この結果から「携帯満足度トップは、シャープ」とタイトルに打ってもいいものか?
みなさんは、どのように感じたでしょうか?

■「標本誤差」ということ

今回の調査の場合、ほんとに知りたい人たち=母集団は「10代~30代の男女で携帯電話を利用している人全員」となります。しかし実際には、この母集団全員からアンケートに回答してもらうのは不可能なので、「標本として500人分集めて、満足度を計算してみました」ということになるわけです。これが、一般に行われているマーケティング・リサーチの原理です。

ただ、ここで考えてみてほしいことが。

今回の500人の回答と、また500人を選び直して調査した時の回答と、またまた500人を選び直して調査した時の回答と、またまたまた・・・、というように何回か標本抽出を繰り返して調査をしてみると、調査から得られる満足度の値は、「毎回ぴたりと一致!」とはならないわけです。
このあたりは、ご自身で実験してみてはどうでしょう?たとえばコインを10回投げて、表の出る回数の割合を何回か試してみてください。毎回50%とはならないはずですから。

だからといって、「そんなこといったら、調査なんてやる必要ないじゃん!毎回、違う結果が出たら話にならないでしょ!」などと、憤ったりしないでください。。。
さらに複雑なのは、知りたいのは「今回の500人の満足度」ではなくて、「母集団である、10~30代男女の携帯電話を利用している人全員の満足度」ですよね?・・・

じゃあ、どうするんだ?

ここで出てくるのが、「標本誤差」という考え方です。リサーチャー必携の書『マーケティング・リサーチ用語辞典』には、つぎのように書いています。

標本調査において、全数を調査しないで一部対象者のみを調査し、その結果から母集団値を推定すことによって生ずる誤差のこと。(・・・中略・・・)
しかし、この誤差がどの範囲の大きさで生ずるかは、確率標本の場合は、確率論に基いて一定の式で計算できる。(『マーケティング・リサーチ用語辞典』P157)

マーケティング・リサーチ用語辞典 マーケティング・リサーチ用語辞典
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2004-12

標本調査から「母集団値を推定できる」、しかも、「誤差の範囲を計算できる」と。
(厳密には、「確率標本の場合は」という点を無視してはいけなのでしょうけど、ここにこだわると話がややこしくなるので、ここでは無視させていただきます。。。)

では、その推定値とやらをどうやって計算するのか?
計算式は面倒なので、統計の本で調べていただくとして。。。
ここでは、標本誤差簡易早見表という便利なものを使わせていただきます(これも、自分で探してもらうとして・・・)。

今回のデータではどうなるか。
(信頼度95%で。「信頼度」ってなんだ?という話になるのですが、これもスルーします。。)

  • シャープ→今回の調査では、125人のサンプル数で86.4%
    →かなり下駄をはかせて、200人の85%ラインでみると、標本誤差は±5.0%
    →なので母集団推定値(真の満足度)は、81.4%~91.4%の間にある。
  • パナソニック→今回の調査では、82人のサンプル数で82.9%
    →少し下駄をはかせて、100人の80%ラインでみると、標準誤差は±8.0%
    →なので母集団推定値(真の満足度)は、74.9%~90.9%の間にある。

という結果になります。(仕事で使うときは、もっときちんと計算をしますが・・・)

この結果からは、推定値の幅にかなりの重複区間があるので、シャープとパナソニックの真の満足度に差があるとはとてもいえない結果となっているわけで、「満足度は、シャープがトップ!」と見出しをかかげると、この記事へのYahoo!のコメント欄のように、「ほんとかよ? -_- 」という反応を呼び起す結果になるわけです。。。

このあたりの話は、「視聴率調査」で、いつもいつも語られるている「視聴率1ポイントの差に一喜一憂しても意味がない」といわれる話と同じなわけです。しかし、今回のような記事がつぎからつぎへと出てくるところをみると、なかなか理解されにくい、マーケティング・リサーチのやっかいな課題でもあります。。。

(視聴率についての考え方については、↓の本の1章で説明されているので、興味のあるかたは、こちらの本をどうぞ。標本誤差の考え方が、説明されています。)

視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) 視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2007-04-13

■とはいえ・・・

だからといって、いつもいつも調査結果に対して「標本誤差」を計算しないといけないのか?、統計的仮説検定をしないといけないのか?、というと話は別。。。

なぜか?

標本誤差は、サンプル数を大きくすれば、どんどん推定値の幅が小さくなります。ということは、1ポイントの差でも「有意差あり」という結果になることもあるわけです。しかし、この「1ポイントの差」がマーケティングを考える上で、ほんとうに意味のある差なのかというと、これは疑問です。
逆に、検定で有意差がないとなったら、ほんとうにマーケティング上の差がないと断言できるのかとなると、これまた微妙な問題だったりします。
(というか、小さな標本で検定をかけると、ほとんど有意差のない結果ばかりということになりかねません。。。)

「標本誤差」という考え方は、マーケティング・リサーチを行っていく上で、確かにとても大切な考え方ではあるのですが、だからといって盲目的に信奉しても仕方のない考え方でもあると、個人的には思っています。
(ただ、品質管理とか、医薬品の治験、商品テストなど、厳密に誤差をみないといけない領域もあるということも理解しておいてください。このあたりのニュアンスが微妙で、伝えるのに苦労するのですが。)

「統計的に有意差がある」ということと「マーケティング上、意味のある差である」ということは、別々に考えるべきだろうということです。

個人的には、納得性のある差であれば検定などせずに解釈をする、一方で、商品テストなどデータの厳密さを求める場合や、結果に疑問が残るような場合にはきちんと検定を行う、というスタンスをとればいいのではないかと思っています。

いずれにせよ、「標本誤差」とか「統計的仮説検定」は、リサーチを行なっていく上では避けて通れない考え方ですので、一度きちんと理解することをお勧めします。
(といいながら、自分がほんとうに理解できているのか・・・?[E:bearing])

おまけ・・・
参考書ですが、「これ!」といったものは、まだ見つけられていません。。。
ただ、以下の2冊が比較的お勧めかな、と思っていますので、よかったらどうぞ。

現場で使える統計学 現場で使える統計学
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2006-09-28

↑以前、このblogでも紹介しています(→こちら)ので、そちらも参考にしてください。
数式で理解せずに、概念的に理解しようというと、この本でしょうか。

心理統計学の基礎―統合的理解のために (有斐閣アルマ) 心理統計学の基礎―統合的理解のために (有斐閣アルマ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2002-06

↑数式いっぱいです。。。
しかし、初歩を抜け出し、より理解したい人向けの本としては、いい本だと思います。

「ビジュアルシンキング」

ほぼ1ヶ月ぶりの投稿なのに、備忘録ですいません。。。

マーケティング研修やコンサルをしている㈱シナプスの家弓氏のブログから。
「ビジュアルシンキング」について整理されたものを、シリーズで紹介しています。

「ビジュアルシンキング(1)~可視化による思考法」
「ビジュアルシンキング(2)~アイデア発想」
「ビジュアルシンキング(3)~発想のツールやスキル」
「ビジュアルシンキング(4)~構造化」
「ビジュアルシンキング(5)~総括」
(『ロジックとパッションの狭間から。。。』)

第1回目の、つぎのフレーズに「そうそう!」と。

シナプスでの会議では、ホワイトボードを徹底的に使いこなすことを推奨・徹底していたことに発端があります。

よく、会議と称しながら、数人で集まって1時間もただしゃべっているだけという光景があります。このような会議に限って、同じような話の周りをぐるぐるまわっているだけとか、何を話したのか結論がないとか、時間の無駄に終わってしまうことが多いように感じています。

そこで、「ビジュアルシンキング」。
「なぜビジュアルシンキングなのか」から初めて、いくつかのツールや考え方を紹介、最後の回では、家弓氏自身が行った講演資料づくりのプロセスを紹介しています。
(このプロセスも、私のやり方に近いものがあったので、「やっぱり、そうだよね」と。ここまで、きっちりとはしていませんが。。。)

家弓氏にとってはこれが商売のネタですから、詳細まで紹介しているわけではないので、もしかしたら食い足りないと思われる方もいるかもしれませんが、ビジュアルシンキングについての最初の取っ掛かりとして、参考になる内容だと思います。

少し関連して。
以前、「グラフィック・ファシリテーション」というのを聞いたことがありました。
(名称を忘れてしまい、探し出すのに苦労しました。やはり備忘録は大切・・・)

こちら↓で、どのようなものか紹介しています。

グラフィック・ファシリテーション.jp

会議の内容を、ほんとうに「絵」にしてしまうというものです。
「絵」ですから、あいまいさがあると描くことができません。究極のビジュアルシンキングともいえるでしょうか?興味がある方は、こちらもどうぞ。
(個人的には、一度、現場を見てみたいと思っているのですが。。。)

インテージ2009年3月期決算

インテージの2009年3月期決算が発表になっています。
2009年3月23日に、東証一部に指定替になってから初めての決算となります。

決算説明会資料および決算短信は、こちら↓からどうぞ。
(いつもは決算説明会のストリーミング映像もあるのですが・・・。後日確認して、アップされていたらページを更新しておきます。
【追記】→5/22に公表されています、ライブラリーからどうぞ。50分近くの映像です・・・)

2009年3月期決算説明会(アナリスト、機関投資家対象)を開催しました
(インテージIRニュース・2009/5/19)

インテージIRライブラリー(2009/5/8に「平成21年3月決算期決算短信」)

数値を抜書きすると、下記のとおりです。

連結  売上    343億円(対前年+3.7%)
     営業利益  33億円(対前年+0.2%)
     経常利益  33億円(対前年+0.0%)

単体  売上    266億円(対前年+ 1.8%)
     営業利益  25億円(対前年+11.0%)
     経常利益  25億円(対前年+ 6.3%)

連結・単体とも、売上、営業・経常利益いずれも対前年プラスは維持しています。
この経済環境を考えると、検討しているといえるのでは?

データで気になるのは、セグメント別での「市場調査・コンサルティング」の数字。全体では、

売上231億円・構成比67%・対前年比+6.0%
(営業利益29億円、対前年比+0.3%)

という数字です。さらに、カスタムリサーチとパネル調査にわけてみると、

カスタムリサーチ  売上 88.7億円・対前年比+0.0%
パネル調査     売上142.3億円・対前年比+10.1%

という結果に。
ほぼ独占のパネル調査は順調に売上を伸ばしましたが、カスタムリサーチはやや苦戦といったところでしょうか?
そこで、さらにカスタムリサーチを細分化すると、

従来型調査     売上47.5億円・対前年比+2.2%
インターネット調査 売上41.2億円・対前年比-2.2%

インターネット調査が苦戦のようです。
決算短信の中でも、「ここ数年にわたって成長の牽引役であったインターネット調査の伸び率が鈍化したこと、競争が激化して受注単価が下落傾向にあることから、増収減益となりました。」とコメントしています。
インターネット調査の減速が、単にいまの経済状況による要因が大きいのか、無条件で成長する時代が終わりに近づいたという構造的な要因なのかは、見極めが必要です。
(個人的には、構造的な要因が大きいように思っていますが。。。)

そして、2009年度の重点課題でも、「カスタムリサーチ分野の構造改革」が筆頭に上げられています。前提となる市場環境の認識については、他の調査会社・リサーチ会社にとっても同様であると思うので、引用しておきます。

    • 中長期の観点では、リサーチやデータに対するニーズは高まることがあっても、後退することはない。
    • ただし、インターネットを基点とするパラダイムシフトが進み、その変化に対応できた企業のみが生き残ることができる。
    • 意思決定のための情報活用という観点からは、リサーチにとどまらず、周辺領域を含めた対応力の強化が成長のための必須条件。
                     (インテージ「2009年3月期決算説明会資料」P13)

この内容に同意できるかどうかは、皆さんご自身の判断で。。。(2つめなど、従来の調査会社に対しては、ある意味、挑戦的なフレーズであるとも取れますが・・・)
そしてこのような環境の中で、インテージがどのような方向性を考えているのかは資料をご覧ください。

さて、上場している同業2社はどのような状況か?
まだ年度末決算ではないですが、動向をピックアップしておきます。

まず、マクロミルから。

マクロミル社IR情報

第3四半期決算(2009/5/15)や業績修正(2009/5/8)からみると、苦戦している模様。
このような中で、創業者の杉本氏が「代表取締役会長兼社長」へ復帰することで、意思決定の迅速化等を図る方向性を示しています。

続いて、クロスマーケティング。

クロスマーケティングIR情報

こちらも、第1四半期決算説明会資料(2009/5/1)をみると、苦戦している模様。
とくに気になったのが、説明会資料P6~8のセグメント別情報。ここで、「大手調査会社」セグメントの売上が対前年比で▲32.1%。これは、どういうことか?・・・。(コメントは控えさせていただきますが・・・)

ただ、一方でクロスマーケティングは、さまざまな動きを同時にしています。たとえば、

株式会社リサーチアンドサーベイの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
(2009/5/18)

コンベンショナルリサーチを中心に実施している会社を子会社化することで、インターネット調査以外の業務にも対応し、「総合的なマーケティングリサーチ会社」を目指すとしています。

以上、上場リサーチ会社3社の決算と動向を整理してきました。
第1四半期のGDP▲15.2%という状況は、当然リサーチ会社にも影響しているわけで、各社とも苦戦しているようです。ただし、他業界に比べると、まだ傷は浅いのかもしれませんね。(そして、この3社以外はどうか?むしろ、そちらの方が心配・・・)

インテージの環境認識にあったように、「生き残る」はどこか?
この時期の対応と、今後の戦略にかかっているのかもしれません。

PS.
過去の、インテージの決算関連のエントリーはこちら↓。

インテージ決算2008.3

統計データの公開

統計データの二次利用に関するリリースが、2本発表されていますので、ご紹介しておきます。

◆総務省統計局

今月8日(2009/5/8)、総務省統計局から下記のリリースが発表されています。

統計利用の一層の拡大に向けて-匿名データの提供とオーダーメード集計
                                   (総務省統計局)

ただし、誰でもOKというわけではなく、「学術研究を行なう研究者」に対してという限定つきですが。

公開されるデータは、

・全国消費実態調査

平成元年、6年、11年、16年

・社会生活基本調査

平成3年、8年、13年

・就業構造基本調査

平成4年、9年、14年

・住宅・土地統計調査

平成5年、10年、15年

また、オーダーメイド集計に対応するデータは、

・国勢調査

平成2年、7年、12年、17年

です。

実際に対応を行うのは、統計センターになります。こちら↓を参照ください。

統計データアーカイブの運営(独立行政法人統計センター)

◆日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)

こちらは先月になりますが、JMRAからも同様の制度に関するリリースが発表されています。

「JMRA リサーチ・データ・アーカイブ」に関するお知らせ
                                           (JMRAリリース・2009/4/17)

サービス提供のHPはこちら↓。

JMRA-リサーチ・データ・アーカイブ(JMRA)

やはりこちらも、学術研究・教育限定ですし、提供範囲(概要のみ・集計表・データ等)もさまざまですが、JMRA会員社で行われている調査を知ることができるという点だけでも意義があるのかなと思います。さらに、データの再分析までできるデータが増えれば、簡単には収集できないデータも少なくないので、研究目的だけとはいえ大きな貢献を果たすのではないかと思います。

日本以外では、このようなデータの二次利用は可能だという話を聞いていましたが、やっと日本でも土壌ができてきたようです。これを最初の一歩として、データ利用環境がさらによくなり、研究の数や深さが増していけばよいなと思います。

PS.
関連して、本を一冊。
本屋さんに行くと平積みされているようですので、すでに読んだ方も多いと思いますが、↓の本が出ています(いまはやりの「○○力」がタイトルなのが、成功要因のひとつ?・・・)

内容は大きく3章構成で、1章は基礎編として世の中のさまざまなデータを例にデータの見方を解説、2章は中級編として平均、分散、正規分布、大数の法則など統計の基礎の説明、そして3章は上級編として過去データから未来を予測する方法を紹介しています。

本日紹介した統計局やJMRAのデータは研究者の利用を前提としていますが、研究者でなくても世の中にあふれているデータの見方を知っていると、社会の見方も変わってきます。こういう本が売れることは、とてもいいことですね。

不透明な時代を見抜く「統計思考力」 不透明な時代を見抜く「統計思考力」
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2009-04-15

GIS+ネットリサーチ

GIS+ネットリサーチ、親和性はかなり高いと思っていたのですが、これまで具体的なサービスはなかったのでしょうか・・・?(ググってみても、めぼしいものは発見できなかったので・・・)

以下のリリースが発表されていました。

アイブリッジ、地図情報と連動したエリアマーケティングリサーチサービス「GISネットリサーチ」を提供~地図情報と連動した、エリアマーケティングリサーチが可能に(NIKKEI NET・2009/5/11)

年齢や性別、住所などの登録属性で調査対象者を抽出するのは、どこでもできますが、

「円形領域」「道路領域」「線側領域」「自動領域(主商圏)」「区画領域・自由領域」の区分でリサーチ対象地域・対象者の抽出が可能となった

のが、GISならではでしょう。
ただ、この機能によって何ができるの?、どのようなメリットがあるの?、ということを説明できるかどうかが勝負になりそうですが。。。
(メリット訴求がきちんとできるかどうかが、新機能によるリサーチ商品についてまわる悩みです。それと、コストパフォーマンス・・・。
いまでさえ主流となったネットリサーチですが、最初のころはかなり苦労されたと思います。
そういえば、マクロミルは杉本氏が社長に復帰していますね。どなたかも指摘していましたが、ユニクロを想起させます。。。閑話休題・・・)

こちら↓は、GIS+ネットリサーチといえるのかどうか?・・・。
単に、GISにリサーチデータをリンクさせるだけ?、という解釈をしましたが、どうなのでしょう?

ネットリサーチとの組み合わせでGISによるデータ分析がより身近に
(ZDNET Japan・2009/4/21)

「だけ?」とは書きましたが、データの見える化という点では、かなり効果的です。
店舗の商圏などを示せたりすれば、結構面白いのでは?
(ただ、サンプル数がネックになりそうです。狭いエリアでのマッピングだと・・・)

そもそも・・・
「GISってなに?」ということを説明していませんでしたが・・・^^;
こちら↓のページがわりと専門的でしょうか?お国のHPなので、具体的な商品の紹介はありませんが、GIS関連の情報を得るには、よいサイトだと思いますので、ご紹介しておきます。

GISポータルサイト(地理空間情報活用推進会議)

(まぁ、いまではカーナビやgoogle mapが一般的になったので、イメージしやすいと思いますが。。。)

クラウドソーシング関連備忘録 (and more…)

クラウドソーシング関連の記事で、備忘録。
(日経BP社のHPは登録制になっていますので、未登録の方はご覧いただけない場合があります。無料で登録できると思いますので~ご確認ください~、ぜひ登録してご覧ください。)

◆今注目される「クラウドソーシング」ならばできること

日経ビジネスオンラインの記事から。

今注目される「クラウドソーシング」ならばできること~”個人発”から世界が変わる可能性(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/5/1)

クラウドソーシングについての、いま現在のひとつの整理かと思います。
あたりまえのことではありますが、クラウドソーシングも万能ではない。そこで、

それではクラウドソーシングを活用する際に必要な要因とは何だろうか。筆者が考える成功要因は、(1)参加者の量と質、(2)適切に設定された課題、(3)オープンな環境の整備、(4)インセンティブである。

という整理をしています。
(さらに、国家としてのイノベーション戦略まで話が及ぶのですが・・・)

あわせて、同シリーズの↓の記事もぜひ。
クラウドソーシングでは必ずケースとしてあげられる空想生活についてです。

「あるといいな」が形になるサイト~消費者のアイデアは無尽蔵の資源
(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/4/15)

◆誰でもメーカー

こちらは、「日経エレクトロニクス」の創刊1000号記念特集。
WEB上での特集ページが、こちら↓。

誰でもメーカー(Tech-On/日経BP社)

そして、記事の一部を紹介しているのが、こちら↓。

日経レクトロニクス2009年3月23日号
特集・誰でもメーカー ~User Generated Deviceが拓く新時代
(Tech-On/日経BP社)

日経エレクトロニクス2009年3月23日号
特集・誰でもメーカー ~消費者は商品開発者になれるか,押し寄せるユーザー参加型開発の波(Tech-On/日経BP社)

「UGD」という造語をつくっていますが、編集長のあいさつ文を紹介しておきます。(ちょっと長めの引用になりますが)

さて,1000号記念特集の内容です。エレクトロニクス業界は,これまで数多くのエンターテインメントを消費者に提供してきました。ラジオ,テレビ,オーディオ,携帯電話,ゲームなどなど・・・。その販売によって生まれた収益は研究開発の原資となり,新技術が次々と生まれました。大量生産した同じ仕様の機器をできるだけ多くのユーザーに届けることによって,エレクトロニクス業界は巨大な産業に成長したといえます。

 マス・マーケットに完成品を届ける――。この大量生産型ビジネスとは異なる潮流が今,デジタル家電などの世界に押し寄せようとしています。ユーザーが機器やサービスの開発に参加し,メーカーが提供するハードウエアの機能モジュールやソフトウエアなどを組み合わせて,自分仕様のデジタル機器を作り上げる動きです。本誌では,こうしたユーザー参加型の開発環境から生まれた機器を「UGD(user generated device)」と名付けました。

 UGDの発展を支えるのは,これまでのようなマス・マーケットではありません。開発したユーザーに共鳴できる人々が構成する無数のミニ・コミュニティが相手です。この変化が,従来の大量生産型ビジネスを揺さぶることになるのでは・・・。こういった視点から,今回の特集「誰でもメーカー~User Generated Deviceが拓く新時代~」をまとめました。
                                    (引用元はこちら

興味を持った方は、ぜひ本誌も読んでみてください。

◆で?

で、これらの記事をみて思い出したのが、少し前の日本マーケティング・リサーチ協会実施のセミナー。題して、「Web2.0とマーケティングリサーチ」。(2009年3月に実施されました。JMRAにしては挑戦的な内容でした^^;)

このセミナーで、㈱電通ネットイヤーアビーム代表取締役社長・及川直彦氏の講演タイトルが「Web2.0時代のマーケティング戦略」で、クラウドソーシングにも関連する内容でした。
(この時の講演内容のベースとなったと思われる論文が、日本マーケティング協会発行『マーケティング・ジャーナル』111号(2009年1月発行)に掲載されています。タイトルは、「デジタル情報技術がもたらした事業環境における新たな商品開発戦略~いわゆる「Web2.0」的な事業環境を概観し、それらの商品開発戦略への意味合いを探る~」です。今回の内容に興味を持った方は、こちらもぜひ。)

ここまで読んできて、クラウドソーシングなんて、リサーチと関係あるの?と思う方。マーケティング・リサーチ協会が、こんなセミナーを実施しているんだから、あるんですよ。いつまでも、コンベンショナルなリサーチだけでいいの?クライアントは、こんなに進んでますよ、という意味で。もしもクラウドソーシングがあたりまえになったとしたら、外部機関としてのリサーチ会社の役割はどうなるのか?、ということを考えてしまいます・・・。

及川さんは講演の中で、キーワードについて「この言葉、知っていますか?」とたびたび問われていました。リサーチ関連のワードだけでなく、こういうワードを知っていると知らないとでは、いま起こっている現象についての理解が違うんだろうなと感じた次第です。
たとえば、こんな↓ワードです(今、資料を見直して気になったワードをあげています)。
どれくらい知ってますか?気になる方は、ぜひ自分で調べてみてください。

「Web2.0」「集合知」「マッシュアップ」「ユーザ・エクスペリエンス」「Web3.0」
「コンテクスト」「行動ログ」「SECIモデル」「情報の粘着性」「レコメンデーション」

(このblogでの過去の関連記事は、こちら↓。あわせてどうぞ。)

◆おまけ

クラウドソーシングではないですが、日経BPでの記事を拾っておきます。
(別エントリーの方がよかったかな・・・)

エスノとまでいえるかどうかですが、観察調査からの展開事例です。

キリンビバレッジ・店頭で顧客の検討状況を観察 ~目を引く販促手法を特定し、売り場作りに反映(IT-Pro/日経BP社2009/4/10)

こちらは、広~い意味ではクラウドになるのかな?。。。

三菱地所、無印良品仕様のマンション販売 ~良品計画のサイトで4万3000人の声を収集(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/5/8)

こちらは、前にも記事があったような気が・・・。ニューロ系の事例です。

カネボウ化粧品、化粧と女性心理の関係性を解明 ~脳科学を応用した「ニューロマーケティング」を模索(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/4/24)

そして、こちらは個人的なメモで(みなさんも、興味あると思いますが・・・)

徹底解説!行動ターゲティング(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/3~4)