月別アーカイブ: 2006年12月

『鈴木敏文の「統計心理学」』

鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む 鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む
価格:¥ 700(税込)
発売日:2006-03

『ビジネスマンのための統計心理学』の中でも、紹介されている本です。
リサーチャーにとっては必読の本だと思います。

鈴木敏文の考え方やモノの見方は、過去に様々な本や雑誌で紹介されていますが、この本では「発想の視点、顧客心理の掴み方、統計術」という3つのテーマについて、55の金言と著者のキーワード化によってわかりやすく整理されています。

たとえば、発想の視点としてつぎの5つが紹介されています。

・変化の流れを時間軸で捉えると、今の時代の動きがわかる
・時間軸を輪切りにすると、本当のようなウソがみえてくる
・時間軸で未来に目を向けると、今の時代の顧客心理が読める
・脱経験的思考-過去の「常識」は今の「非常識」
・陰陽両面的志向-買い手の「合理」は売り手の「非合理」

とくに、リサーチャーが読むべきは第3章です。漫然とデータをみて、解釈することへの戒めが述べられており、肝に銘じておきたい内容です。
6つのポイントで整理されています。

・売り手から買い手へ、視点を変えると別のデータが見える
・統計データは鵜呑みにするな、その背景や中身を突き詰めろ
・同じデータ、情報でも「分母」を変えると意味が逆転する
・なぜ、モノが売れないのか、心理抜きには統計は読み切れない
・仮説・検証で初めてデータが生きる、WHYとWHATの問題意識を常に持つ
・自分の都合のよいように、数字のつじつま合わせをするな

鈴木氏の話はいまではあまり耳にしなくなりましたし、CVSのビジネスについては一個人として思うところもあるのですが、それは置いておいても、やはりデータを読む視点、スタンスには学ぶべきことが多い本です。

『ビジネスマンのための心理学入門』

ビジネスマンのための心理学入門 ビジネスマンのための心理学入門
価格:¥ 730(税込)
発売日:2004-09

マーケティングやリサーチを行っていく上で、心理学の知識はとても重要です。
ほんと?、と思っている人には、まず、この本からどうぞ。
著者は、様々な著作を出している精神科医の和田先生で、ビジネスの場面で心理学がどのように役立つのかについて書かれている「心理学入門」です。

この本は、大きく3つのテーマで書かれています。

  • 職場の心理学の視点
  • マーケティングで使う心理学の視点
  • そして、心理学を学ぶにはどうするのか

なので、マーケティングやリサーチに役立つ視点での記述は、全体の1/3程度です。
もくじを引用すると、こんな感じです。

序章  サイコロジカルビジネスとは何か?
第一章 心理学を学ぶと世の中が正確に見えてくる
第二章 心理学を使って相手をコントロールする
第三章 心理学をどこで学べば良いのか
第四章 たった6作で学べる「ビジネス心理学理論」
第五章 ビジネスの場面での仮説の立て方
第六章 日本の未来はどうなるのか
終章  世界中でサイコロジカルビジネスが必要になる

「ビジネスと心理学ってどう結びついているの?」「心理学って、ビジネスに本当に役立つの?」と思っている方には、参考になる本だと思います。
また、マーケティングやリサーチ以外でも、職場でのマネジメントに悩んでいる方にもヒントとなることがあると思います。

著者もあとがきで、つぎのように書いています。

患者にしろ、心理ビジネスのクライアントにしろ目の前にいる人を助け、成功に導くためには、なるべく多くの処方を用意しておいたほうがいい、それだけの話である。
だから、本書の内容も少なくとも知っていることが邪魔になるとは思えない。たった一つでも二つでも使えそうだと思えるものがあれば、それだけでも頭に残してもらい、使う機会があれば、本の値段と、それを読むのにかけた時間のもとくらいは取れるだろうし、ひとつのアイデアで押したものと比べるとリスクは少ないはずだ。

同意です。
リサーチを究めようとするなら、様々な視点での知識が必要になります。
そのためにも、乱読は必要だと思っています。
とくに、いまは新書がつぎつぎに出版される、幸せな時代です。
(書籍の紹介なのか、乱読のすすめなのか、わからなくなってしまいましたが・・・)

これまでビジネスを行う上で心理学についてあまり考えたことがなかった人、本書をきっかけとして、心理学にも興味をもってもらえると、仕事の幅も広がると思います。

intermission

「寺子屋」お待ちの皆様(いるんでしょうか・・・?)、次の展開に向けてしばらく幕間とさせていただきます。
次回からは、リサーチの具体的なことについてやっていこうと思うのですが、どのような内容にしようかと思案中です。。。

構成は、どうしようか・・・。
教科書的にしても、つまらないし・・・。
とはいえ、ばらばらにやっても理解しずらくなるか・・・。

内容はどうしようか・・・。
これだけ、調査環境が変わっているのに、教科書的にやってもしかたがないな・・・。
でも、原理原則を知らずに応用だけやっても、確かな理解にならないし・・・。

事例、エピソード・・・。
どこまで踏み込もうか・・・。
創作で、どこまで真実味が出せるか・・・。

などなどと、考えております。
年明けから新シリーズとしてはじめようと思いますが、「こんな内容を期待している!」「こんなことが知りたい!」というようなことがありましたら、どんどんコメントください。
参考とさせていただきます。

それまでは、本紹介をメインに進めていきます。
⇒「マーケティング・リサーチの寺子屋~出張書店」で紹介している本を中心に)

寺子屋にあわせて紹介しようかと思っていたのですが、それではいつのことになるやら・・・、なので、ベーシックなものから、そうでないものまで、マーケティング・リサーチや市場調査に参考になると思われるものを、どんどん出していこうと思っています。
あらかじめ、こちらで興味があるものを読んでおいてもらった方が、blogの内容もより理解しやすくなると思いますし。。。
(年末年始の休みにも入りますし・・・)

話はかわりますが・・・
今日の「カンブリア宮殿(テレビ東京)」は、医師の鎌田實さんでした。
以前から個人的に思っていたことに、リサーチャーはお医者さんと同じ気持ち、姿勢が必要ではないか、ということがあります。
相手が、人間か、企業や組織か、という違いはありますが、どこに問題があるのかを適切に判断できることが必要ではないかと。そして、問題や課題を適切に伝え、クライアント(患者さん)のよくなりたいという気持ちに応え、よくなるための行動を手助けすることが大切なのではないかと。
ただ、お医者さんは自分で処方や施術を行うことができますが、リサーチャーはこれらのことを自分で行うことはできません。これは、大きな違いですが。

今日の鎌田さんの発言で、強く同意したことはつぎのことです。
カンブリア宮殿のHPより引用させていただきました)

「医学は生物学とは違い、人間科学である。人間の疾病を部品の故障というようなデカルト的なとらえ方をせず、対象の個別性やその人が生きてきた歴史に配慮し、それぞれの『生きている意味』を尊重して、治療していくべきではないだろうか」
「ぼくら医療者はつい、肺炎という疾患だけをとり出して、入院が必要という常識を振りかざしてしまう。彼は自分の命全体を見つめながら、多様なファクターを多重に分析し、入院が必要かどうか考えていた。ぼくら医療者はこの患者のわがままをもっと大切にしなければいけない」

よく、西洋医学と東洋医学の違いなどと議論されることですが、患部にだけ注目し要素還元主義的な治療を行うのか、人体を小宇宙とみたててホリスティックな立場で治療を行うのか。。。
医療にかかわらず、哲学でも西洋と東洋の違いとしていわれていることですよね。
(たぶん・・・です。医学も哲学も専門ではないので、間違いがありましたらご指摘ください)

で、リサーチ。
ひとつのデータや、特定の事象にとらわれ、木を見て森を見ずになってしまうことがあります。また、クライアントの背景や周辺情報、これまでの過程や結果を見ずに分析を行い、ピントはずれの結論を導きだすこともあります。
いずれも、戒めたいことです。
クライアントにとってのリサーチャーは、かかりつけのお医者さんのように、そのクライアント全体を視野に入れ、過去のリサーチ結果もふまえながら、仕事をしていくべきだと思っていますし、そうありたいと思っています。
(リサーチャーとお医者さんを一緒にするのは、失礼かもしれませんが・・・)

なので、「コトー先生」や「医龍」や「救命病棟24時」や「白い巨塔」や・・・、
医療関係のドラマを見るのが好きなowlなのでした・・・。

視聴率はどこへ向かう?

朝日新聞に3回シリーズで、「視聴率のふしぎ」という記事が連載されていました。
(2006/11/30,12/5,12/6)

2003年でしたでしょうか、視聴率買収事件が起こり、にわかに注目を浴びた「視聴率」。朝日の記事は、今一度、「視聴率」がどのようなもので、いまどのような問題を抱えているのかを整理しています。
(2003年の事件のとき、同時に「調査」自体も注目をされたと記憶しています。サンプル数と精度の問題で。ビデオリサーチさんが一生懸命説明してくれましたが、一般的にはサンプル数が多ければ多いほど、単純に精度が高まるという認識が強いようです。それにかかるコストを度外視して・・・。)

テレビ局にとっては、唯一で最大といっていい営業指標となる視聴率。視聴率によって、スポット広告の料金が決定するのですから。
しかし、

世帯視聴率への疑問が広告主に広がり始め、さらにゴールデンの帯の視聴率も下がり始める。広告主は、どこにCMを投下すれば必要な購買層に効果があるのか根拠を求めたい。加えてネット上での広告効果に注目が集まる時代。(11/30記事)

「個人視聴率」や「視聴質」の問題は、何も今にはじまった問題ではないですが、今後一層「視聴率」の捉え方についての議論が深まるのは自明でしょう。インターネット広告の拡大、ハードディスクレコーダーやPCなど大量録画や検索が可能なツールの登場、そしてテレビ自体も地上デジタル放送、ワンセグへと移行することになります。他にも、ケーブルテレビや、スカパー/WOWWOWなどの衛星放送に、GYAOのようなインターネット放送・・・。
一昔前のような、『CMを見るのは民放テレビで』という時代は、過ぎ去ろうとしているのですから。

まず、いま現在、新聞等で発表される「視聴率」はどのように調べられているのでしょうか?この点を確認しておきます。
ビデオリサーチのホームページに、詳しい説明が出ています。
TV RATING GUIDE BOOK (ビデオリサーチ社)

この説明をみると、すでにビデオリサーチでも「個人視聴率(個人ベースでの視聴率)」への対応は行っているようです。
(そもそも、視聴率が『世帯ベース』であることを、どれくらいの人が認識しているかという問題もあります。決して、『日本人の○○%が見た』ではないのです。調査データを読むときは、このような点も注意が必要です。)

そして、「視聴質(番組がどのように見られているのか)」への取組としては、テレビ朝日と慶應義塾大学による共同プロジェクトがあります。
リサーチQ (テレビ朝日)
  (詳細については、フレーム下の「リサーチQ概要」を参照)

リサーチQへ登録した人を対象者としたインターネット調査で、一日の回答者数は4500程度のようです。ビデオリサーチが行っている視聴率調査と比べてしまうと、対象者の代表性についての厳密性はありませんが、検証上は実用に耐えるものになっているとしています。

そして、アメリカの事例ですが、広告について次のような記事もありました。
トヨタが米テレビ界に一撃、「印象に残らない番組はダメ」 (NBニュース2006/8/7)

米国トヨタ自販が、広告費を支払うにあたって「番組関心度」による保証を求めるというものです。いってみれば「視聴質」によって、広告費を変動しようということです。この動きが実際に行われているのかどうかは定かでではありませんが、すでにこのようなニュースもでるようになっています。

ここで少し視点を変えて。
実は、「CMそのもの」についての評価を行っている企業もいくつかあります。
代表的なのは、「CM DATABANK」でしょう。ここで、年間アワードを獲得すると、企業サイドでもホームページ等で、受賞したことを発表するくらいですから。
CM DATABANK (CM総合研究所)

他にも、CM放送回数を指標にしている
CM@Navi (宣伝会議&ビデオリサーチコムハウス)

「印象に残った」という指標でランキングを行っている
MC-CMインパクト (マーケティングセンター)

などがあります。
興味がある方は、それぞれのサイトを訪問してみてください。

「個人視聴率」「視聴質」「CMそのものの評価」・・・。
このように、これまで唯一最大の指標といわれていた「視聴率」がゆらいでいる今、「視聴率」がどこへ向かうのかについては、関心をもってみていきたいと思います。
(どこの調査会社がつぎの覇権を握るのか、という意味でも。ビデオリサーチさんだとは思いますが・・・。)

朝日の記事では、つぎのように締めくくっています。

広告主や民放、広告会社の3者は、デジタル時代の視聴率調査の研究に取り組み始めた。しかし「ビジネスモデルが確立されていない以上、どんなデータが必要なのかもわからない」といった本音も聞こえる。
視聴者とテレビとの関係を示す最大の指標、視聴率。姿、形や存在価値はどう変わるのだろうか。(2006/12/6記事)



リサーチャーをめざす人へ(2)

owl 前回は、Q子さんにつられて、だいぶ実利的な話になってしまったけど、今回は、調査会社がどんな仕事をしているのか、どういう資質や能力が求められているのかについて。

Q子 お願いしま~す(^^)

owl ・・・。
では、調査会社の仕事。調査会社の主な仕事は、一般的には、クライアントの課題解決のために、リサーチの企画・設計をして、実際にデータを収集・分析・報告すること。だから、必ず実査を伴うことになるし、この実査をいかに正確に、効率的に行うことができるかが大切になる。そして、忘れないでおいて欲しいのが、適切なリサーチデザインを企画・設計するには、実査の現場を知らないといけないということ。学術的な正確さとか、理想の調査は確かにあるんだけど、現場では様々なことが起こるからね。「データを集める」と一言で簡単に言うけど、いろいろな作業工程がある。どのような作業が行われていて、どんなことに留意しなければならないのかについて、理想と現実のギャップを認識して、それをリサーチの企画・設計にどれだけ反映できるかということが、とても大切なことになる。
だから、調査会社に入ったら、一度は実査セクションを経験することはとても大切なことだと思う。

Q子 でも、実査って、泥臭いって書いてあったような・・・。嫌だな・・・。

owl どんな仕事でも、泥臭い部分はあるし、そんな仕事をしてくれている人がいるから、企業が成り立つんだよ。どうも、表面的なかっこよさとか、きれいなところしか見ない人が少なく無いし、そういう泥臭いところを嫌がってすぐに会社を辞める人もいるけど、それは違うと思うよ。
メーカーだって、工場で商品を製造してくれている人がいるし、営業で商品を売ってくれる人がいてはじめて、商品がお客様に届けられるんだから。そういうことを知らずに、商品開発だ、マーケティングだといっても、現実を見ない机上の空論になってしまう。
調査も一緒だよ。正しいデータを集めて、はじめて分析ができるし、クライアントへの提案だってできるようになる。データ収集の現場で、何が行われていて、どんなポイントがあるのかを知らないと、浮ついた企画や提案しかできないからね。

Q子 はい・・・。

owl では、企画や設計、調査票の作成はどうするか。これも、一朝一夕でできるようになるわけではない。テーマも様々、商品も様々で、いくつかのフレームやパターンを覚えたからといって、なんでもできるようになるわけではないから。むしろ、覚えたフレームやパターンに囚われて、テーマや商品を無視して企画をしたり、調査票を作っても、使えない調査になる可能性の方が高いと思う。
だから、知識を得ることや、経験を積むことに対して、貪欲になってほしい。自分で実際に経験できることは多くないのだから、他の人の仕事を見たり聞いたりする、新聞、雑誌やテレビ、あるいはセミナーなどを通じて、いろいろな業界や商品について理解しようとする、どんなことが課題になっているのかを知ろうとする、そんな態度や姿勢が必要だよね。

P夫 で、分析は?

owl 分析も、まずは知識と経験が大切。それと、センスもけっこう大事。
センスというと先天的なもののように思うかもしれないけど、やっぱり知識と経験に裏打ちされたものでないと。野球のイチローしかり、サッカーの中田しかり、将棋の羽生しかり。みんな天才的だけど、それまでの練習や訓練、学習の積み重ねがあってこそ、だよね。
で、リサーチャーはどんな知識と経験を積まなければならないか?
プロです、スペシャリストです、というくらいになろうとしたら、かなり広い範囲でカバーすることが必要だと思う。調査理論、統計理論はあたりまえとして、さらにマーケティングや経営学、心理学は必須かな。プラス、論理力、表現力、コミュニケーション力もないと困る。いまでは、ネットワーク理論や脳科学、行動経済学なんて領域まで知っていると、なおいいだろうね。
それと、クライアントの業界、商品について知らないのも、お話にならない。。。

Q子 なんか、たいへんそう・・・。私、リサーチャーの資質、あるのかな・・・。

owl これまでの繰り返しになるかもしれないけど、いくつかの本で整理されている「リサーチャーの資質」を上げておくので、参考にして。
ただ、これをみてすぐに諦めないでね(^^;
皆がみんな、こんな人というわけではないし、仕事を通じて身に付くものだっていっぱいあるんだから。ただ、リサーチャーを目指したいという人は、ひとつの指針として、頭の中には入れておいてほしいんだ。
(のだめではないですが、「上」をめざすつもりのない人は別です・・・)

まずは、「マーケティング・リサーチの論理と技法」から。

<素養関係>
・企業行動を理解しマーケティング視点に立脚している
・消費者の心理や行動に強い関心がある
・論理的思考、科学的思考ができる
・チャレンジ精神が旺盛である
・サービス精神がある
・責任感が強い
<能力関係>
・リサーチの企画・設計に優れている
・実査・集計業務に明るい
・分析能力、洞察力、要約力に優れている
・文章表現が豊かである
・口頭プレゼンテーションに優れている
・数字に明るい
<態度関係>
・問題点を完全に解決しようとする気持ちが強い
・作業効率を高める努力をする
・自社内のリサーチ発注部門を支援しようとする気持ちが強い
(筆者注:「自社内のリサーチ発注部門」は、「クライアント」へ置き換え可)

続いて、「リサーチャーの仕事」から。

<知識>
・基本的な知識は何か
 →信頼できる情報にアクセスする、コンピューターの腹の中を知る、
   質的情報の分析技術をもつ
・リサーチの専門知識は何か
 →サンプル調査の常識とは何か、リサーチ内容の専門知識とは何か、
   テーマに影響する周辺知識を持つ、
<能力>
・情報整理術を身につける
 →引き出しをたくさん持つ、引き出しの関係性を体で覚える
・分析能力を磨く
 →重要性で順位をつける、因果関係をはっきりさせる
・表現力がいる
 →説得力のある文章を書く、表やグラフを活用する
・課題を解決する発想力がいる
 →データに基づいて考察する、問題点を浮き彫りにする

最後に、「マーケティング・リサーチ業界」から。

・第一に必要なのはリサーチ・センス
 →物事の因果関係や関連性を見極めることができて、なおかつそこに隠された
   課題や問題点を明らかにできる能力
・分析力を磨くこと
 →ある事柄を先入観なしに細かな要素に分解して、さまざまな角度から
   その内容や性質を分類し、再び統合して新たな情報を構築していくこと
・論理的な思考を養うことが分析力をつける
 →閃きをしっかりと理屈にできて、ちゃんとしたシナリオが書けるような
   論理的な思考が必要
・表現力=プレゼン力が調査の価値を高める
 →調査をやって得られた結果をどうクライアントに説明するか

どう?3つの本から引用したけど、共通することが多いでしょう?

Q子 そうですね。意外だったのは、プレゼンテーション力かな。
「調査」っていうと、なんか研究、地道にこつこつ、って印象があったから。

owl そうだね。調査会社に入る人には、人と話すのがあまり得意じゃなくて、こつこつと仕事をするのが好きだから、という人も少なく無いんだよ。とくに、男でね(^^;
ただ、調査会社って、サービス業なんだよね。人と接するのが苦手な人はNGだよね、基本的に。ここでは、対クライアント視点で書かれているけど、実査セクションだって、調査員さんや対象者の方と接しないといけないし、クライアントと接するよりも、こちらの方が難しいかもしれない。
ただ、集計セクションだと、たしかに地道にこつこつという面も無きにしも非ずだけど・・・。

Q子 リサーチャーって、結構たいへんですね・・・。
となると、待遇面が気になったりしますが・・・(^^;。

owl また、実利に戻る・・・。
待遇ね・・・。会社による差が大きいと思うし、公開されているデータがないから、正確なところはわからない。ただ、一般的には、スペシャリストという言葉ほどにはよくはないと思う。たとえば、広告代理店やシンクタンクと比べると低いと思う。といって、世間一般と比べて悪い、というほどではないと思うけど。。。
やっぱり、どれだけデータに付加価値がつけられるか=データの分析能力や提案力が高いか、によると思うよ。
それと、調査って土日や夜に行うことが少なく無いから、ふつうに土日に休めないこともあるし、クライアントがいるので納期がぎりぎりのときとか、実査前日とかは、残業で終電間近ということもあるよね。
あとは、この仕事にどれくらいやりがいを持てるか、かな。
または、調査会社でリサーチに必要な知識や能力を積んで、広告代理店とか企業にステップアップするか。

P夫 企業だって、いろいろですよ・・・。

owl そうだよね。だから、就職するにしても転職するにしても、自分のやりたい仕事ができるか、自分の提供している価値に見合った待遇を受けているか、他の会社に行けばその待遇を期待できるか、将来的にいまの会社で成長できるか、他の会社に行った方が成長できるか、こういうことを総合的に判断しないとね。
体力的、精神的にしんどいという場合もあるだろうけど・・・。

Q子 はい、よくわかりました。

owl さて、調査業界のことについて、長々とやってきたけど、やっと本題に入れそうだね。
では、次回からは、マーケティング・リサーチについて勉強していくことにしよう。

P夫 やっとだよ・・・。




リサーチャーをめざす人へ(1)

Q子 前の寺子屋から、2週間以上経っているんですけど・・・(-_-)

owl そうだね(^^;
実は、かなり迷っていたんだ。どのように伝えればいいのか・・・。
腹を括って、はじめるけど、これはowl個人の考え方として、聞いて欲しいんだ。たぶん、反論したい人もいると思う。ただ、このような情報はなかなか無いみたいだから、多少偏りがあるかもしれないけど、少しでも、マーケティング・リサーチャーとは?とか、マーケティング・リサーチに興味のある人、マーケティング・リサーチを仕事にしたい人、リサーチャーになりたい人の参考になれば。。。

P夫 歯切れ悪いですね・・・。

owl ・・・・。はじめるよ!

まずweb上で、マーケティング・リサーチの仕事について整理しているものを探すと、つぎのようなサイトがあるみたいだね(2006/12/7現在)。

ただ、いずれもマーケティング・リサーチャーって、どんな仕事をするのかはわかるけど、具体的に、どんな企業に入ればいいかは書かれていない。当然かもしれないけど。

Q子 そうですね・・・。で、どんな会社に入ればいいんですか?マーケティング・リサーチを仕事にしたいと思っている人は?

owl まず、「マーケティング・リサーチをやりたい」というのが、「リサーチに興味がある」のか、「マーケティングに興味がある」のか、ということを、きちんと整理してほしいんだ。いいかえれば、リサーチャーになりたいのか、マーケターになりたいのか?

Q子 う~ん・・・。リサーチャーとマーケターって、どう違うんですか?

owl そうだね・・・。とっても卑近な言い方をしてしまうと、リサーチャーは「リサーチそのものが仕事」、マーケターは「リサーチで得られたデータから、どう売れる仕組みをつくるかが仕事」。あるいは、リサーチャーは「論理的・分析的・客観的思考がメイン」で、マーケターは「情熱的・創造的・主観的思考がメイン」かな。

Q子 いまいち、よくわかりません・・・。

owl では、リサーチャーは「世の中や人に興味があり、その構造や気持ちを見つめていたい人向き」で、マーケターは「事業を行うことに興味があり、商品やサービスを開発して、多くの人に買ってもらいたい人向き」というのは?個人的な解釈だけど。

Q子 なんとなく、わかります。でも、これまでowlさんは、リサーチャーもマーケティングの知識がないといけないと言っていませんでしたか?だとすると、リサーチャーとマーケターを分けることは矛盾になりませんか?

owl そうだね、リサーチャーもマーケティングの知識は必要だし、マーケターもリサーチの知識は知っておいた方がいい。けれど、リサーチャーの仕事とマーケターの仕事は、実際に異なるんだよ。
よくあるのが、実はマーケターを志向しているのに、「マーケティング」リサーチだからといって、調査会社に入社して理想と現実のギャップを感じてしまうという誤り。調査会社では、マーケティングの実務には携わることはできないからね。クライアントと一緒に考えて、提言を行うことはできるけど、実際に商品を形にして、広告を考えて、売り方を考えるのは、クライアントの仕事だから。
だから、「マーケター」を志向している人は、「マーケティング・リサーチ」がやりたいというのとは違うので、これから話をすることは参考にならない。

P夫 たしかに、僕なんかはリサーチのやり方とかにはあまり興味がなくて、どんなデータが得られたか、それをどう使うかということが仕事ですからね。でも今度、うちの会社でも元リサーチ会社出身の人を中途採用しないといけないかな、なんて話をしていますよ。

owl それは、P夫君の会社で、リサーチを理解している人がいないからだろうね。クライアントサイドでも、リサーチを理解している人は必要だから。とくにこれからは、単純に「アンケートをしてみました~」というだけでは課題への答えが見つからない場合も増えてくるだろうし、そうなるとリサーチについての理解がしっかりしている人が必要になってくると思う。

Q子 私は、いまはリサーチに興味があると思っているんですけど、そのうちに自分で商品を作ってみたくなるかも。。。そんな人は、どうしたらいいんですか?

owl とりあえず、調査会社に就職して、その後に代理店や、企業のマーケティングセクションなどに転職するんだね。

Q子 ありえるんですか、そういう進路が。

owl あるよ。あるけど、調査会社で何をしてきたか、が大切になるんだけど。
では、リサーチャーの進路について、整理しよう。ここでは、マーケターではなく、「リサーチャーになりたい」と思っている人をメインに話をするよ。
リサーチャーになるためには、つぎの4つの道筋があると思う。調査会社、広告代理店、シンクタンク、企業のマーケティングセクション。

Q子 どう違うんですか?

owl 調査会社は、リサーチを主業務としている会社だから、入ってからリサーチができなかったということは、ほとんどないだろうね。でも、他の3つは、リサーチは他のいろいろな職種のひとつでしかなく、リサーチを担当できるかどうかは、入ってみないとわからない。とくに、企業のマーケティングセクションなんて、そこに行けるかどうかはまったくわからない。
ただし、いまの時点で「リサーチとマーケティングと、どちらか迷っている」という人は、広告代理店がいいかもしれない。あるいは、「研究がしたい、コンサルタントになりたい」という想いが強い人は、シンクタンクがいいだろう。そして、「好きな商品や業界があって、どうしてもその商品や業界に関わっていたい」というのであれば、企業のマーケティングセクションを目指すべきだろう。

Q子 なんだ。だったら、リサーチャーを目指したい人は、調査会社でいいんじゃないですか?何か問題でも?

owl うん・・・。こんどは、「リサーチャー」に何をイメージしているかが問題になる。
まず、ここ(マーケティング・リサーチ業界とは2)でも整理したけど、調査会社にもいろいろあって、それこそ実査しかしないところから、リサーチ&コンサルとして認められている会社まである。あるいはアンケートなどの量的調査がメインの会社と、グループインタビューなどの質的な調査がメインの会社という分け方もできる。
だから、自分がどんなマーケティング・リサーチをしたいのかで、選ぶべき調査会社は、まったく違ってくるんだ。ここで選択ミスをすると、こんなはずではなかった・・・、ということになる。
それと、調査会社も組織があって、実査をするセクション、集計をするセクション、営業をするセクション、企画・分析をするセクションと分かれていることもある。とくに、規模の大きな調査会社はそうだろうね。確かに、すべてリサーチに関わるし、企画・分析をするには実査や集計の経験があった方がいいけど、中にはセクション間の移動がなかなか無い会社もあるだろう。そうなると、企画・分析がしたいと思って調査会社に入ったのに、そういう仕事ができないということも起こりうるんだ。そして、企画・分析をしていないと、調査業界以外への転職はなかなか難しくなる・・・。

Q子 じゃあ、どうしたらいいんですか!(-_-)

owl 自分がやりたいリサーチは、どんなリサーチなのかをきちんと整理する。そして、いろいろな調査会社を調べてみる。これしか、ないかと・・・。
調査会社のリストは、JMRAにあるので、こちら(JMRA正会員社紹介)を参考にしてください。。。
それと、JMRA会員社以外にも、リサーチをしているところはあるので、あとは地道に検索してください。。。

Q子 具体的に(-_-)

owl はい(^^;
まず、自分のやりたいリサーチが、量的なものか、質的なものか、どちらもか。
数字に苦手意識がなくて、数字のデータをいろいろと分析してみたいというなら量的志向。人と話をするのが好きで、言葉を元に分析してみたいというなら質的志向。少し乱暴だけど、こんな感じです。
それと、調査そのもの=データを集めることやインタビューをすることが好きなのか、集計や分析をするのが好きなのか、マーケティング的な視点で提言までしてみたいのか、ということも考えておいた方がいいと思います。

Q子 で、調査会社を調べるには?(-_-)

owl う~ん・・・、実はこれが難題。。。
まずは、ホームページを見てみることだろうね。その内容が、自分の考えているリサーチとあっているかどうかが、最初だと思う。ホームページをみると、量的調査に力が入っているのか、質的調査に力が入っているのかは、すぐにわかる。それと、調査のことばかり書かれているのか、マーケティング・テーマ的な視点でも書かれているのか、新しい調査技術や分析技術を開発しているか、といったあたりをチェックすればいいと思う。

Q子 でも、それでは、入社してからどんな仕事をするかは、わからないですよね(-_-)

owl そう・・・。それは、その会社に実際に勤めている人に話を聞いてみるしかないよね・・・。もしくは、会社説明会の時に、配属の考え方とか、ジョブローテーションについて質問をしてみる。どこまで、本音で話をするかわからないけど・・・。あるいは、学生の時に、これはと思う会社でアルバイトをしてみるとか。。。
そうでなければ、あまり大きな調査会社を選ばない、かな。非装置型の調査会社は、一人でなんでもやらないといけないので、実査だけ、集計だけということはなく、最初から一通りのことを任せられる可能性も高いから。ただ、その分、仕事はハードになる可能性もあるし、やっぱり会社によってできることと、できないことの差が大きいというリスクはあるけど・・・。

って、そんなことばかり気にしてないで、もっと、どんな仕事をしたいのか、どんな適性が必要なのかとか、そういうことを考えないと!

Q子 てへ(^^;
では、つぎにその点について、お願いしま~す。

PS.
リサーチ業界がどういうところで、どんな仕事をしているのかを知りたい方、「マーケティング・リサーチ業界」という本を読んでみてください。。。

「インサイト」「インサイトマーケティング」

インサイト インサイト
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2005-02-17

「インサイト」について、もう少し知りたいという方に向けての本を2冊。

まず、その名もずばり「インサイト」。
入門書として読むには手ごろな本です。ただ、あまり奥行きはありません。
インサイトとは何か、インサイトを見つけるリサーチ手法は、発見したインサイトをどうマーケティングに結びつけるのかということと、ハーゲンダッツとシックをケーススタディとして取り上げています。

ただ、この本で一番共感してしまったのは、「はじめに」に書かれていたつぎの文章でした。

(グループインタビューで)
この日の座談会も司会者の仕切りのもと、「この点はいいと思います」「ここは、こういうふうに変えたほうがいい」など、理路整然と話し合いが進んでいた。ところが、話し合いの途中でたまたま、司会者がトイレか何かの急用で部屋を出た。そのときである。鏡の向こう側(座談会会場)で、とんでもないことが起きたのは。
司会者がいなくなったとたん、対象者たちがホンネで自由気ままに話し出したのだ。「この商品は売れないと思うな」「いままでのと変わらない」「私には必要なさそう」といった声が飛び交ったのである。
さっきまでの話し合いはいったい何だったのだろう、という感じだ。もし、司会者がいるときの発言だけを元にして新製品を出したとしたら・・・。想像するのも恐ろしい。司会者が部屋に戻ってくると、何事もなかったかのように話し合いが再開されたから、一同苦笑いだ。

あってはいけないシチュエーションですが、実際にあります。なので、私は謝礼を取りにわざと席をはずすようにしています。あるいは、謝礼を配る時や、帰り支度をしている時に核心の質問をしたりします、この時はふっと気が緩む瞬間ですから。

それと、クライアントの方。グルインは、必ず同じ瞬間に立ち会うようにしてください。その場での表情や、行間の雰囲気がとても大切ですから。あとでまとめられた報告書は、極論すれば報告書のための報告書であって、そこで雰囲気や行間を伝えることは難しいですので・・・。

インサイトの本題から横道にそれてしまいましたが、とりあえず、「インサイト」ってなんだという方の入門書として、どうぞ。

図解やさしくわかるインサイトマーケティング 図解やさしくわかるインサイトマーケティング
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-09-22

つぎに、「インサイトマーケティング」。図解とあるように、左ページ文章、右ページチャートで構成されています。
やはり、インサイトとは何か、脳科学とインサイトとの関係、インサイトマーケティングの進め方、インサイトを発見する技術、などで構成されています。いってしまえば、ノウハウ本です。
いまのところ、インサイトについて、ある程度、実務的に書いている本はこれだけだと思うので、実務でどう使うんだろうと思われる方は、こちらの本を。
ただ、読んだからといって、ほんとうにできるかどうかは別だということを心しておいてください。さきほどのグルインの事例にもあるように、彼ら、彼女らのほんとうの心を知ることは、簡単ではないので。

「マーケティングは消費者に勝てるか?」

マーケティングは消費者に勝てるか マーケティングは消費者に勝てるか
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2005-09-01

結構、あちこちのブログでも紹介されていましたし、評判もよかったので、すでに読まれている方も多いかもしれません。個人的にも、ここ数年では、かなり共感、納得をさせられた本です。

内容は、やはり、消費者の「心」を捉えるにはどうしたらいいのか、という視点で書かれています。ただ、古典的な消費者行動論や消費者心理学ではなく、脳科学やネットワーク理論などを用いて、こういう視点でみると、こういう解釈ができるのではないかというスタンスです。当時、なんとなくもやもやとしていたリサーチやマーケティングの限界のようなものについて、なるほどね、と思って読んだことを覚えています。
ただ、やはり鵜呑みは危険ですので、その点は注意しながら読んだ方がいいと思います。(すべての本にあてはまると思いますが・・・)

どの部分を引用すると、内容が伝わるかなと思ったのですが、カバー袖に書かれているものがいいかもしれません。

・アサヒ・スーパードライとニューコーク、同じことをしてなぜ成否が分かれたのか?
・消費者は理性的に考えて行動しているのか、そもそも人間の頭の中はどうなっているのか?
・直感的判断と客観的・科学的判断、どちらがあたるのか?
・大ブームや大ブーイングはどのようなプロセスで生まれるのか?
・流行に負けないマーケティングを行うことは可能か?
・消費者はどんな価格に納得するのか?
・CRMはどの企業にも必要なのか?
・企業ブランドと商品ブランド、どちらがより消費者の行動に影響を与えるのか?
・市場調査と仮説構築、どちらを先にやるべきか?
・これまでどんなマーケティングが行われ、今、どんなマーケティングが始まろうとしているのか?

一見、理論書のように見えますが、スーパードライとニューコーク、たまごっち、韓流ブーム、マクドナルド、ユニクロなど、日本人におなじみの事例を盛り込んでいますので、読みやすいと思います。

それと、リサーチャーの方。第1章だけでも読んでみてください。マーケティング・リサーチの歴史(どういう背景で、どういう手法が出てきたのか)とか、リサーチ界の神話とも言える「ニューコーク」や「アサヒスーパードライ」の事例が取り上げられていますので。
(1章を読めば、2章も読みたくなると思うんだけどな・・・)

「アカウント・プランニングが広告を変える」

アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実 アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2000-06

(今日は、一気にいきます。日々、チェックをされている方がいましたら、ゴメンナサイ)

今度は、「インサイト」つながりで。
この本、タイトルだけみると広告関連の本で、リサーチや調査とは関係ないやと思いそうですが、副題の「消費者をめぐる嘘と真実」の方が内容をより表していると思います。リサーチに関すること、満載です。

いま、よく耳にする「コンシューマー・インサイト」という言葉を使ったのは、おそらく日本ではこの本が最初ではないかと思います(間違いであれば、コメントをお願いします)。
(この本では、あくまで広告業界で、ですが)「インサイト」がなぜ必要で、どのような背景から出てきたのか。インサイトを探る上で、従来の調査がどのようなデメリットを抱えているのか、それをふまえた上で、ではどうしたらいいのかについて事例をふまえて紹介しています。

とくに、「3章・調査に基づいた広告が間違った方向へ」であげている様々な事例は、思わず、にやりとさせられてしまします(ほんとうは、してはいけないのですが・・・)。具体的な内容については、ご自身でお確かめいただくとして、「はじめに」で著者がこの章について紹介している部分を引用しておきます。

その前提となる考え方、すなわち消費者を喜んで受け入れる広告主や広告代理店があまりに少なすぎるという考え方に対して、我々は消費者の意見を受け入れている、なぜなら「非常に多くの調査を行っている」のだから、と異議を申し立てる企業は多い。そこで3章「調査に基づいた広告が間違った方向へ」では、そういう企業の多くは、消費者の意見を受け入れているどころか、ますます遠ざける結果を招いていると申し上げたい。
広告リサーチをすべて否定する気は毛頭無い。なぜなら、それが正しく行われたときの価値と威力を心から信じているからだ。ここでは、調査を無意味とするばかりか、まったく非生産的なものにしてしまいがちな誤った使い方を、いくつか提示する。内容はさまざまだ。調査が広告づくりのプロセスで果たすべき役割に対する時代遅れなニュートン主義的定義、そもそもの発想から間違っていて、でたらめとすら言える調査、果ては、調査自体はしっかりしているのに、解釈やデータの使い方が誤っている場合もある。

ここで誤解をしていただきたくないのは、「ほら、調査は使えないって言っているでしょ」とか、「インサイト発見は、調査をしなければだめなんだ」とか、デジタルな2分法で考えないでいただきたいということです。どちらも正しいし、どちらも間違っている、要は使い方次第なんだ、そのためにはどうするかということを意識しながら読んでほしいのです。

それと、ここで書かれていることは、何も広告に限ったことではありません。商品開発の調査にも、すべからく当てはまります。

ただ・・・。
私だけなのかもしれませんが、正直、翻訳書は苦手です。
訳がどうこうではなく、事例とポイントがごちゃごちゃに書かれていることが多いので・・・。
日本式マニュアル本になれているからかもしれませんが・・・。

そこで、
同じような趣旨の本と、もっと「インサイト」に的を絞った本を、つぎに紹介することにします。

「リクルート創刊男の大ヒット発想術」

リクルート「創刊男」の大ヒット発想術 リクルート「創刊男」の大ヒット発想術
価格:¥ 750(税込)
発売日:2006-08

「R25・藤井氏」つながりで、この本を。
以前から、リクルート出身者に興味を持っていました。なぜか、目に留まる人や、気になるブログの著者がリクルート出身者が多かったので、「リクルートというのは、一体、どうやって仕事をしているんだろう?」という想いがありましたので。
この本の著者のくらたまなぶ氏も、実は藤井氏と同じセミナーでプレゼンテーターをされたことがあり、その際の話が面白く、この本を読んでみようという気になりました。

著者は、リクルートで「とらばーゆ」や「じゃらん」など、それまで市場にない雑誌(=商品)を、14も世に送り出した方です。その際の仕事の流れについて、実体験を多く交えながら紹介してくれています。
まえがきで著者も書いてあるとおり、創刊にかかわらず、サイトの立ち上げ、企画、商品改良や新商品開発、既存事業の見直しや新規事業開発、新会社創業など、新たな市場を創造しようという場面で使えるノウハウが詰まってると思います。
ただ「リクルート」という組織だからできるのでは?と思うこともありますので、すぐにまねできるかどうかは別ですが、ヒントは与えてくれるのではないでしょうか。

もくじをみると雰囲気がわかると思うので、引用します。

1章 ちゃんとふつうに生活すること
2章 「人の気持ち」を聞いて、聞いて、聞きまくる
3章 「不」のつく日本語をもとめて
4章 ひたすらブレストをくり返す
5章 不平不満をやさしい言葉でまとめる
6章 まとめた言葉をカタチにする
7章 プレゼンテーション-市場への第一歩
8章 「起業」-夢を見すえて変化に即応する

この中で、2~3章がリサーチについて述べている章です。
いくつか、見出しを紹介しておきます。

・「マーケティング」とは、「人の気持ちを知る」こと
・ヒアリングのとっかかりは「算数」から
・とにかく「身近な人」から聞き始める
・用紙なし、録音なし、謝礼なし、90度の位置、友達感覚、2ショット
・「したこと」から、「思い」や「感じ」を引き出す
・いつでも、どこでも、誰でも、何でも、ヒアリング

4番目などは、ほんとうはグルイン、インタビューの理想型だと思うのですが、実践は難しいです。どこかの調査会社さん、グルインルームの改革をしてくれないでしょうか?会議室然としたものではなく、もっとサロン、居間のような感じのものに・・・。(もしも、そんなグルインルームを知っている方がいらっしゃっいましたら、教えてください。)

それと、6番目。これは、調査会社所属のリサーチャーに、とくに言っておきたいこと。ひとりでパソコンにしがみついているばかりでは、ダメ。テーマについて、もっといろんな人と話をしてみましょう、街へでましょう!

PS.
R25・藤井氏の話も、この本を読んでいたので、200人ヒアリングと聞いてもさほどの驚きは感じなかったです。リクルートならやるかも、と思っていました。。。