日別アーカイブ: 2006-12-09

視聴率はどこへ向かう?

朝日新聞に3回シリーズで、「視聴率のふしぎ」という記事が連載されていました。
(2006/11/30,12/5,12/6)

2003年でしたでしょうか、視聴率買収事件が起こり、にわかに注目を浴びた「視聴率」。朝日の記事は、今一度、「視聴率」がどのようなもので、いまどのような問題を抱えているのかを整理しています。
(2003年の事件のとき、同時に「調査」自体も注目をされたと記憶しています。サンプル数と精度の問題で。ビデオリサーチさんが一生懸命説明してくれましたが、一般的にはサンプル数が多ければ多いほど、単純に精度が高まるという認識が強いようです。それにかかるコストを度外視して・・・。)

テレビ局にとっては、唯一で最大といっていい営業指標となる視聴率。視聴率によって、スポット広告の料金が決定するのですから。
しかし、

世帯視聴率への疑問が広告主に広がり始め、さらにゴールデンの帯の視聴率も下がり始める。広告主は、どこにCMを投下すれば必要な購買層に効果があるのか根拠を求めたい。加えてネット上での広告効果に注目が集まる時代。(11/30記事)

「個人視聴率」や「視聴質」の問題は、何も今にはじまった問題ではないですが、今後一層「視聴率」の捉え方についての議論が深まるのは自明でしょう。インターネット広告の拡大、ハードディスクレコーダーやPCなど大量録画や検索が可能なツールの登場、そしてテレビ自体も地上デジタル放送、ワンセグへと移行することになります。他にも、ケーブルテレビや、スカパー/WOWWOWなどの衛星放送に、GYAOのようなインターネット放送・・・。
一昔前のような、『CMを見るのは民放テレビで』という時代は、過ぎ去ろうとしているのですから。

まず、いま現在、新聞等で発表される「視聴率」はどのように調べられているのでしょうか?この点を確認しておきます。
ビデオリサーチのホームページに、詳しい説明が出ています。
TV RATING GUIDE BOOK (ビデオリサーチ社)

この説明をみると、すでにビデオリサーチでも「個人視聴率(個人ベースでの視聴率)」への対応は行っているようです。
(そもそも、視聴率が『世帯ベース』であることを、どれくらいの人が認識しているかという問題もあります。決して、『日本人の○○%が見た』ではないのです。調査データを読むときは、このような点も注意が必要です。)

そして、「視聴質(番組がどのように見られているのか)」への取組としては、テレビ朝日と慶應義塾大学による共同プロジェクトがあります。
リサーチQ (テレビ朝日)
  (詳細については、フレーム下の「リサーチQ概要」を参照)

リサーチQへ登録した人を対象者としたインターネット調査で、一日の回答者数は4500程度のようです。ビデオリサーチが行っている視聴率調査と比べてしまうと、対象者の代表性についての厳密性はありませんが、検証上は実用に耐えるものになっているとしています。

そして、アメリカの事例ですが、広告について次のような記事もありました。
トヨタが米テレビ界に一撃、「印象に残らない番組はダメ」 (NBニュース2006/8/7)

米国トヨタ自販が、広告費を支払うにあたって「番組関心度」による保証を求めるというものです。いってみれば「視聴質」によって、広告費を変動しようということです。この動きが実際に行われているのかどうかは定かでではありませんが、すでにこのようなニュースもでるようになっています。

ここで少し視点を変えて。
実は、「CMそのもの」についての評価を行っている企業もいくつかあります。
代表的なのは、「CM DATABANK」でしょう。ここで、年間アワードを獲得すると、企業サイドでもホームページ等で、受賞したことを発表するくらいですから。
CM DATABANK (CM総合研究所)

他にも、CM放送回数を指標にしている
CM@Navi (宣伝会議&ビデオリサーチコムハウス)

「印象に残った」という指標でランキングを行っている
MC-CMインパクト (マーケティングセンター)

などがあります。
興味がある方は、それぞれのサイトを訪問してみてください。

「個人視聴率」「視聴質」「CMそのものの評価」・・・。
このように、これまで唯一最大の指標といわれていた「視聴率」がゆらいでいる今、「視聴率」がどこへ向かうのかについては、関心をもってみていきたいと思います。
(どこの調査会社がつぎの覇権を握るのか、という意味でも。ビデオリサーチさんだとは思いますが・・・。)

朝日の記事では、つぎのように締めくくっています。

広告主や民放、広告会社の3者は、デジタル時代の視聴率調査の研究に取り組み始めた。しかし「ビジネスモデルが確立されていない以上、どんなデータが必要なのかもわからない」といった本音も聞こえる。
視聴者とテレビとの関係を示す最大の指標、視聴率。姿、形や存在価値はどう変わるのだろうか。(2006/12/6記事)