月別アーカイブ: 2006年12月

『マーケティング・インタビュー』

マーケティング・インタビュー マーケティング・インタビュー
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2004-07-30

定性調査に関する本を、もう一冊。
梅沢氏の本は、グループインタビューについての最初=企画から、最後=分析・報告まで書かれていましたが、本書はもっと「聞き出す技術」に焦点をあてて書かれています。

グループインタビューにしても、一対一のインタビューにしても、企画・設計はできても、実際に対象者の本音を聞きだすことは、また別の技術がいることです。
著者も「はじめに」で、つぎのように書いています。

筆者はこのような調査のインタビュアー(専門的にはモデレーターと呼ばれる)として、この10年間で1万人以上にのぼる消費者・専門家の声に耳を傾けてきた。そうした経験から言えることだが、消費者の気持ちを「聞き出す」には工夫がいる。漠然と質問をぶつけているだけでは答えてくれない。インタビューの進め方、質問の投げかけ方、回答の受け止め方、そして人の意識を掘り下げる手法などを学び実践することで、聞きたかったことが「聞き出せる」ようになる。

本書では、この「聞き出す技術」について、事例を交えながら教えてくれます。
これからインタビューを行ってみたい方、これまで行ってきたけど、なかなかうまくいかないと感じている方、ぜひ本書を参考にしてください。きっと、「聞き出す技術」のヒントを得られると思います。
もくじを紹介します。

第1章 マーケティング・インタビューでわかること
第2章 言語以外の情報を読み取る
第3章 インタビュアーが守るべき3つの原則
第4章 インタビュー対象を選ぶ
第5章 「聞き出す」ための視点と枠組み
第6章 安心して話してもらうために
第7章 語りにくいイメージを探る方法

「聞く技術」は何も、グループインタビューやデプスインタビューなどの場面だけで必要になる技術ではありません。ちょっと気になることを、友人や知人、家族などに聞いてみるときにも役立つ技術(スキル)です。
また、私見ですが、インタビュアーは本来、テーマや課題を持っている人が、直接、対象者に問いかけるのが一番だとも思っています。なにも、調査会社に任せることはない、と感じています。
ぜひ、本書で「聞く技術」について理解をして、ご自身でインタビュー(などと構えずに、聞いてみる、でもいいです)を行うことが、皆さんのビジネスに大きな成果をもたらすと思います。

なお、このblogでも、これまで「インサイト」に関する本をいくつか紹介しています。
こちらの本も、あわせて読んでいただくと、よりよいと思いますので、こちらもご参考ください。

「リクルート創刊男の大ヒット発想術」
「アカウントプランニングが広告を変える」
「インサイト」「図解でわかるインサイトマーケティング」

『グループ・ダイナミック・インタビュー』

グループダイナミックインタビュー―消費者の心を知りマーケティングを成功させる秘訣 グループダイナミックインタビュー―消費者の心を知りマーケティングを成功させる秘訣
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2005-04

マーケティング・リサーチに関する本をいくつか紹介しましたが、これらの本で、なかなか理解できないのが、定性調査の技法です。
そこで、グループインタビューを理解するために参考になる本を、いくつか紹介しておきます。

最初は、グループ・インタビューの代表的な実践者のひとり、梅澤氏が代表執筆をされた本です。梅澤氏は、これまでにも何冊か、グループインタビューに関する本を出版されており、ずいぶん参考にさせていただきました。
(→代表的な本は、こちらです。

実践グループインタビュー入門―消費者心理がよくわかる ステップ別・原則・留意点・チェックリスト
価格:¥ 2,039(税込)
発売日:1993-06  )

これまでの本は、調査会社の実務者向けに書かれていましたが、本書は「発注者」を意識して書かれているようです。「はしがき」で、つぎのように述べています。

この本は前著と比べると、発注企業のマーケターやリサーチャー、および開発担当者や経営者を強く意識してまとめられています。それは、発注者企業の方々に深く理解していただくことが、マーケティングを成功に導く調査にとって非常に重要な要因であると考えるからです。

このblogでも、以前書かせていただきましたが(→こちら)、調査、リサーチは調査会社に任せておけばいいというものではなく、発注者側にも積極的に関わりをもっていただき、様々な情報を提供していただいたり、一緒に議論させていただかないと、真に役立つ結果を得ることはできません。
このような視点を、正面きって述べていることに敬意を表しますし、またこのような視点でリサーチに関する本を出すことは、とても大切なことだと思います。
なので、調査会社でグループインタビューを担当する方はもとより、グループインタビューを発注することのある方にも、ぜひ目を通していただきたい本です。

内容は、これまで長年にわたりグループインタビューを実施してきた著者だからこそ書ける、具体的で、体系付けられた内容になっています。
もくじを紹介します。

第1章 GDI成功の前提
第2章 GDIの企画
第3章 リクルート作業の重要性と行い方
第4章 GDIの司会
第5章 GDIの分析・報告書
第6章 GDIをスムーズに進行させるための業務
補章  GDIを支える梅澤マーケティング理論

ちなみに、本書の「補章」で書かれていることを、もっと詳しく知りたいと思った方は、こちらの本をあわせてどうぞ。
著者がこれまで、長年のグループインタビューの現場から得た消費者心理の知見を整理しています。

消費者心理のわかる本―マーケティングの成功原則55 消費者心理のわかる本―マーケティングの成功原則55
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2006-09

『レバレッジ・リーディング』

レバレッジ・リーディング レバレッジ・リーディング
価格:¥ 1,523(税込)
発売日:2006-12-01

今回は、リサーチを離れた本の紹介です。
以前、どこかで「乱読のすすめ」を書いたと思いますが、このことをうまく整理してくれている本が出ています。
副題に、「100倍の利益を稼ぎ出すビジネス書「多読」のすすめ」とあります。

著者は、本を読むことについて、つぎのように書いています。
(ただし、ここでいう「本」は、ビジネス書のことです)

ビジネス書には世界的な経営者や、さまざまなビジネスで成功した人のノウハウが詰まっています。熊谷さんのお父さんの言われるとおり、汗水たらし、血のにじむような努力をした人の数十年分の試行錯誤の軌跡が、ほんの数時間で理解できるよう、本の中には情報が整理されているのです。

実際のビジネスがスポーツ選手にとっての試合だとしたら、ビジネスパーソンが本を読むことは、スポーツ選手にとっての練習にあたります。つまり、本を読まないビジネスパーソンは、練習しないでいきなり試合に臨むスポーツ選手のようなものです。(・・・中略・・・)練習すればするほど上達するように、読めば読むほど、実践に使えるベースが貯まっていきます。この累積効果により、レベルアップして仕事ができるようになります。だからこそ、たくさんの本を読むことが必要なのです。

そして、誤解しないでほしいのは、たくさんの本を読み、いろいろな人の意見を参考にするからといって、決して他人の意見を鵜呑みにするわけではないということです。むしろ、一人の人間の言うことだけに耳を傾けても丸ごと信じてしまわないためにも、なるべくたくさんの本を読むのです。

いかがでしょう?
なるほどと思う方は、この本を読んでみてください。この本には、つぎのような内容が書かれています(カバー袖からの引用です)。

・速読とは違う多読のメリットとは?
・膨大な書籍から、良書を選び出すには?
・一日一冊を読みこなす効率的な本の読み方とは?
・読書のための環境と時間はいかにして作り出すか?
・読んだままで終わらせないための工夫とは?
・本のエッセンスを実践に結び付けるには?

人が、実際に経験できることなんて、たかが知れています。とくに、リサーチャーは、クライアントの仕事について実際に経験できることなど、ほとんどありません。
しかし、クライアントがどんな仕事をしているのか、その業界での現在の課題は何なのか、もっと広く今の世の中で焦点となっているテーマは何なのか。このようなことについては、常に意識していることが重要です。
そのために、本ばかりでなく、新聞や雑誌を読むことも必要ですし、テレビを見ることも、とても大切なことになると思います。

ただ、最後の方で著者も言っているように、知識だけで十分ということではない、ということも心に留めておいてください。稲盛和夫氏のつぎの言葉を、引用しています。

「知識に経験が加わってはじめて、物事は『できる』ようになるのです。それまでは単に『知っている』にすぎない。情報社会となり、知識偏重の時代となって、『知っていればできる』と思う人も増えてきたようですが、それは大きな間違いです。『できる』と『知っている』との間には、深くて大きな溝がある。それを埋めてくれるのが、現場での経験なのです」

『マーケティング・リサーチ・ハンドブック』

マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2004-12

「小難しい理論とか考え方はおいておいて、もっと実務で使える本はないの?」という方、本書をどうぞ。

「ハンドブック」というわりには、総ページ数437ページにも及びます。マーケティング・リサーチと統計解析もあわせて、網羅的に実務書を書くとこれだけの分量になります。
それでも、本書は左ページに文章、右ページに図表という形で、できるだけわかりやすく、マーケティング・リサーチの実務について整理している唯一の本だと思います。
とくに、実査とよばれるデータ収集の段階について、これだけていねいに書かれたものはないのではないでしょうか?

もくじを紹介します。

第1章 マーケティング・リサーチとは
第2章 マーケティング・リサーチの種類
第3章 2次データ収集分析調査
第4章 定性的調査
第5章 観察調査
第6章 実験やテスト
第7章 アンケート調査の種類
第8章 アンケート調査の企画
第9章 アンケート票の作成
第10章 アンケート調査の実査
第11章 調査データの集計
第12章 報告書の作成
第13章 個人情報の保護
第14章 統計解析の基本
第15章 需要予測
第16章 多変量解析

著者は、調査会社の現場で長らくリサーチを行ってきた方ですので、本書のような実務書が書けたのだと思います。
本文ももちろんポイントをついて整理されていますが、なかなか味があるのが、各章の最後に書かれている「Coffee break」です。実務を行う上で、見失いがちになったり、忘れかけてしまうような点を指摘してくれています。
たとえば、

・スローリサーチとファーストリサーチ
・2次データの鑑定眼を磨こう
・実験やテストは繰り返しで信頼性が高まる
・アンケート調査の「その他」
・数を追う猟師、山を見ず

といった内容です。
このコラムだけでも、一見の価値があるかもしれません。

マーケティング・リサーチの実務に携わっている人は、新たな手法に取り組まなければならないときや、わからない言葉に出会った時などの検索用に、デスクに常備しておくのによい本だと思います。

『社会調査ハンドブック』

社会調査ハンドブック
価格:¥ 1,937(税込)
発売日:1987-09

題名は「社会調査」となっていますが、かなりマーケティング・リサーチ寄りに書かれている本です。また、「ハンドブック」とありますが、決してノウハウ一辺倒ではなく、かなり本質論に触れている本です。

「マーケティング・リサーチはやっているけど、ほんとうに役立っているんだろうか?」「マーケティング・リサーチって、こんなものなんだろうか?」という壁にぶつかっている方には、とくに読んでおいていただきたい本です。
(とはいえ、マーケティング・リサーチについてあまり知らない方が読んでも、十分に使える内容になっています。)

調査には「仮説」が必要だということがよくいわれます。では、「仮説」ってなんでしょうか?なぜ「仮説」が必要なのでしょうか?「仮説」はどう導けばいいのでしょうか?
それに対する答えが、本書で得られるのではないでしょうか。
著者の飽戸先生も、はしがきで本書を執筆するに至った理由を、つぎのように述べています。

「市場調査」「世論調査」をはじめとする種々な「社会調査」に関する書物は、すでに数十冊近く刊行されている。にもかかわらず、あえて本書を執筆した理由は2つある。まず第一に、これらの社会調査に関する多くの書物が、あまりに技術的説明に終始した無味乾燥なものが多いこと、もっと調査というものについての哲学をもち、かつ調査に対する愛情が芽生えるような本がぜひ必要だと考えていたこと。そしてもう1つは、筆者が主張し続けてきた仮説検証的調査というものを実際に設計できるような理論と参考資料集をまとめておきたかったことだ。

すべての調査が、仮説検証を目的としたものではないという指摘もあると思いますし、正しいと思います。
しかし一方で、思いつきの質問を対象者にたずね、「得られるものがない」などと言っている人も少なくないことも、また事実です。

本書を通じて、一度、「仮説」ということをしっかりと理解してほしいと思います。
もくじを紹介します。

1章 社会調査とは何か
2章 社会調査の技法
3章 科学としての調査
4章 テーマをいかに設定するか
5章 ウソとマコトを見わける法
6章 標本設計の理論と方法
7章 信頼できるデータをとる方法
8章 調査結果の正しい分析
9章 調査の積み上げと活用
10章 調査と理論の結びつき
11章 調査に理論を導入する
12章 調査を理論に仕上げる
13章 仮説検証法の功罪
14章 仮説のつくり方とその検証法
15章 調査票作成の方法と問題点
16章 市場調査、世論調査、ライフスタイル調査の設計
17章 調査機関の選び方
18~20章 調査項目の実例

最後に、本書の欠点をひとつ・・・。
それは、出版年が1987年と古いことです。インターネット調査については、まったく言及されていません。現在の調査環境の激変についても、ふれらていません。

それでも、「仮説」についての言及は、古くなることはありません。
調査、リサーチに真剣に取り組みたいという方には、ぜひ、読んでおいていただきたい本です。

『社会調査へのアプローチ』

社会調査へのアプローチ―論理と方法 社会調査へのアプローチ―論理と方法
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2005-02

この本は、大学のテキストをイメージして書かれている社会調査の本です。
マーケティング・リサーチといっても、その基盤は「社会調査」です。なので、マーケティング・リサーチをしっかり基礎から学ぼうと思うと、社会調査の論理や方法論は避けて通れないテーマです。

そして、この本の中でも最初に指摘されているとおり、

社会調査は特別の人の特殊な知識ではない。我々すべてが「する人」「読む人」そして「協力する人」として、日常的に社会調査に関わりを持っている。社会調査の基礎知識は、現代を生きるための必須アイテムである。

と思います。
新聞、テレビ、雑誌、そしてWEB、調査データを見ない日はないといってもいいほどです。
ですから、少しでも「なんのために調査をしているんだ?」「調査ってどんなふうにやっているんだ?」「このデータって、信じられるの?」などと思ったことがある人にも、読んでおいてもらえるといいかもしれません。
(いきなり専門書ではなく、まずは新書くらいから・・・、という方にはこちらの本がお勧めです。
⇒『社会調査のウソ~リサーチ・リテラシーのすすめ』 )

ただ、大学のテキストと聞くと、「わかりずらい、読みづらい」という印象をもつ人も少なくないと思いますが、この本は大丈夫だと思います。語り口が、とても柔らかいです。異色です。
一例として、本文の最初の出だしをみると、

「社会調査なんて俺には関係ないよ」と思っているそこの人、そんなことでは現代を生きる立派な市民になれないよ。手始めにちょっと新聞を見てみよう。・・・

という感じです。
内容も、『講義のテキストとして実際に使いやすい本』『学生が実証的な調査(卒論)研究を独学で進めていける本』をめざしたというように、いたるところで、語句の解説やコラムを積極的に入れることで、理解を助けています。

もくじを紹介しておきます。

第Ⅰ部 社会調査の論理
 第1章 社会調査へようこそ
 第2章 情報資源の発掘調査-社会調査のファーストステップ
 第3章 社会調査の基本ルールと基本の道具
第Ⅱ部 調査票調査の方法
 第4章 調査票を作ってみよう
 第5章 サンプリングの理論と実際
 第6章 調査票調査のプロセスとデータ化作業
 第7章 調査結果を分析しよう
第Ⅲ部 質的調査の方法
 第8章 質的調査の魅力
 第9章 質的調査の実践
第Ⅳ部 補修と実習

とくに、これまで社会調査について全く勉強せずに調査会社に入ってしまったという方は、まずここから学んでおくことをお勧めします。
何事も、基本を理解しておくのは大切なことですので。

『マーケティング・リサーチの実際』

マーケティング・リサーチの実際 マーケティング・リサーチの実際
価格:¥ 872(税込)
発売日:2004-04

過去にも、マーケティング・リサーチに関する本として、つぎの3冊を紹介していますが、さらにいくつかの本を紹介しておきます。

『マーケティング・リサーチの論理と技法』
『マーケティング・リサーチはこう使え!』
『マーケティング・リサーチの理論と実践~理論編』

最初は、これまでマーケティング・リサーチについて、ほとんど知らなかったという方への入門書から。

まずはもくじをご紹介しておきます。

Ⅰ.マーケティング・リサーチは課題解決の手段です
Ⅱ.知っておきたい調査手法の種類と特徴
Ⅲ.マーケティング・リサーチを進める手順
Ⅳ.リサーチ課題にどのようにアプローチするか
Ⅴ.リサーチをとりまく環境

とくにⅢ章では、リサーチプロセスに沿って解説していますし、「チェックポイント」として、リサーチを進める上での確認事項も整理されていますので、ポイントを押さえるには便利です。
またⅣ章では、4つのテーマをあげながら、具体的にリサーチの流れに沿って事例を示していますので、具体的なイメージもつかめると思います。

ただ、いかんせん新書ですので、内容の深いところまでは提示されていません。
「マーケティング・リサーチってどんなことするの?」という、初歩の初歩について概要を知りたい方向けの本であることは、お断りしておきます。
さらに詳しい内容について知りたいという方は、他の本で理解を深めてください。

『顧客理解の技術』

顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する 顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2005-09-08

心理学からは離れますが、「顧客理解」という視点から、もう一冊紹介します。

著者は、シンクタンクのコンサルタントです。『消費者行動論』がフレームの理解だとすると、この本は、そのフレームを理解した上で、どのように顧客理解を行うかの技術=テクニックについて述べたものになっています。
「はじめに」で、『この本は、私たちの顧客に関する、数多くのコンサルティングの「実践の場で創出し、培ったノウハウ」を汎用化して書き上げたものである』と記されていることからも、わかると思います。

もくじを紹介します。

序章 成熟社会の顧客変化をとらえる技術
第一部 身につける、活用する
 第1章 5つの<顧客理解の技術>
      1.顧客変化理解の技術
      2.背景理由理解の技術
      3.顧客価値理解の技術
      4.顧客行動理解の技術
      5.顧客情報活用の技術
第二部 知見を深める
 第2章 顧客価値の理解を深める
      1.価値ポジショニングを考える
      2.差別化価値を深める
 第3章 <顧客理解の技術>参考データ集
      1.人口変化の基本データ
      2.世帯変化の基本データ
      3.バリューセグメント分析参考データ<サマリーデータ編>
      4.バリューセグメント分析参考データ<詳細データ編>
      5.消費トレンド分析参考データ<サマリーデータ編>
      6.消費トレンド分析参考データ<詳細データ編>

マーケティング・リサーチというと、「アンケートとかインタビューを行うこと」というような認識も少なく無いですし、実際、調査会社で行っているのは一次情報の収集が主です(本書の1章3~4の部分)。
しかし、一次データの収集だけがマーケティング・リサーチではなく、二次データ(オープンデータ)をどのように使いこなし、分析するのか(1章1~2)、というのも大事なスキルになるのではないでしょうか?また、第3章で取り上げている基本的な構造変化や、消費トレンドデータをどの程度理解しているのかということも、重要な視点です。
(とはいえ、第3章で取り上げられているデータは、ごく一般的なデータですので、何か新しいデータはないかと探している人にとっては物足りないものだと思います。)

シンクタンクがどのようなフレームで顧客分析を行っているかを知っておきたい方、オープンデータからどのような読み取りを行うかを知りたい方、そして、消費者や世代についての基本的なことを知っておきたい方、お勧めです。

『消費者行動論』

消費者行動論 消費者行動論
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-05-19

こちらの本も、執筆は大学の先生ですが、専攻がマーケティングですので、よりマーケティングの視点から消費者行動を整理しています。
「まえがき」でも、『本書は社会心理学の理論をマーケティングに応用し、ビジネスマンの立場で書かれている。理論とは型(フレーム)である。』と書かれています。ただ、同時に『最初に断っておくが、型はテクニックでない。』とも言っていますが・・・。

もくじを、各章扉に書かれているフレーズと共に紹介します。

第1章 消費者行動論とは何か?
 ~あなたは顧客がどのような行動を取るか考えたことがありますか?
第2章 個人的影響要因
 ~あなたは顧客の属性、行動、ライフスタイルを研究したことがありますか?
第3章 個人的要因:パーソナリティとセルフイメージ
 ~あなたの典型的な顧客がどのようなパーソナリティを持っているか知って
   いますか?
第4章 消費者関与
 ~あなたは顧客の関与を深めるような努力をしていますか?
第5章 問題認識
 ~顧客はどのような問題を解決するために、あなたの会社の製品を購入する
   のだろうか?
第6章 動機付け
 ~消費者に自社製品を購入する動機づけをしたことがありますか?
第7章 情報収集
 ~あなたは顧客がどのように情報検索を行い、どのように商品について学んで
   いるか研究したことがありますか?
第8章 学習
 ~あなたは、顧客がどのように自社製品やブランドについて学習するか考えた
   ことがありますか?学習を助ける活動をしていますか?
第9章 消費者の知覚
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような印象を抱いているのか
   調べたことがありますか?
第10章 消費者の態度
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような態度をもっているか知って
   いますか?その態度の形成には何が影響を与えたのでしょう?
第11章 社会的要因-グループの影響
 ~あなたは顧客の購買活動に影響を与えるグループの存在を認識して
   いますか?このグループを有効利用していますか?
第12章 選択肢の分類
 ~あなたの顧客は合理的な商品選択をしていますか?
第13章 評価選択
 ~あなたの顧客は何を基準に購買の意思決定をしているか知っていますか?
第14章 購買と購買後評価
 ~あなたは、顧客とどのようにリレーションシップを結ぼうとしていますか?

いかがでしょう?
それぞれのフレーズは、リサーチ目的としてもよいようなものばかりではありませんか?
このようなリサーチ目的のときに、どのような消費者行動理論があるのか?このことを学べる一冊です。また、それぞれの理論を比較的コンパクトにまとめていますので、事典的な活用もできると思います。

ただ、最初に著者が断っているように、この本に書かれているのは「理論=型(フレーム)」であってテクニックではない、ということは忘れないでください。
とはいえ、フレームを知っているのと、知らないのとでは仕事をしていく上で、大きな差になるというのも、また真実だと思います。

『ロジャースの普及理論、関与の種類、マズローの欲求5段階説、コンフリクト、IMC、閾値、認知的不協和、均衡理論(バランスセオリー)、準拠集団、オピニオンリーダー、想起集合(イボークトセット)、多属性態度モデル、サンクコスト・・・』

これらは、この本に出てくるフレームの一部ですが、いくつご存知ですか?
すべて知っているという方は、この本は読む必要はないでしょう・・・。
知らない言葉が多いという方は、ぜひ、この本を読んでみてください。

『消費者理解のための心理学』

消費者理解のための心理学 消費者理解のための心理学
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1997-06

前回に引き続き、心理学に関する本を紹介します。
少しでも心理学に興味を持った方、心理学も勉強しておこうかなと思った方には、こちらの本が最適だと思います。

もくじを引用します。

1章 消費者行動とマーケティング
2章 消費者行動への心理学的接近
3章 消費者の問題認識と購買意思決定
4章 消費者の情報探索と選択肢評価
5章 購買決定後の過程
6章 消費者の知覚
7章 消費者の知識と記憶
8章 消費者の学習
9章 消費者の動機付けと感情
10章 消費者の態度形成と変容
11章 消費者の関与
12章 消費者の個人特性
13章 消費者行動における状況要因
14章 家族の消費行動
15章 対人・集団の要因と消費者行動
16章 文化的要因と消費者行動

執筆は心理学の先生が複数名で分担されており、どちらかというと大学生・大学院生を想定して書かれています。
しかし、網羅的に、広く消費者理解という視点で心理学を学んでおこうという方には、お勧めの本です。少し古い本ですが、ベーシックな理論を学ぶ上では、問題ありません。というか、いまのところ、これ以上の本は見当たらないと感じています。

リサーチャーやリサーチャーをめざす人にとっては、基礎教養として、ここに書かれている程度の知識は持っていた方がいいと思います。ただ、マーケティングを仕事としている人にとっては、少々、学術的過ぎるという感じもあるかもしれません。

そのような方には、つぎの本を紹介します。