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マーケティング・リサーチ業界の歴史1

owl では、日本のマーケティング・リサーチの成り立ちを少し勉強してみよう。
「マーケティング・リサーチ業界」の本にも少し触れられているけど、今回は「マーケティング・リサーチ入門(第2版)」という本を参考にしながら進めるね。
(注:「マーケティング・リサーチ入門(日経文庫)」は、現在すでに第3版になっています。この版では、前の2版で記述されていた『マーケティング・リサーチの歩み』という章が削られているので、以下に記す内容は読むことができません。)

日本でマーケティング・リサーチが始まるのは、第二次世界大戦の後のことなんだ。だから、まだ50年と少ししか歴史がないんだよ。

P夫 え!そんなに新しいものなんですか?だって、戦前から企業はあっただろうし、マーケティングだって、あったのでは・・・?

owl ところが、戦後なんだね。アメリカによる技術指導があって、世論調査とか品質管理、サンプリング理論というのがもたらされたんだ。だから、日本におけるマーケティング・リサーチは、主にサンプリング・サーベイによる世論調査法の普及によって作り上げられたんだね。このころできた調査機関としては、1946年の輿論科学協会、時事通信社輿論調査室、47年の電通調査局、49年国立輿論調査所(現在の中央調査社の前身)がある。

Q子 ん?初歩的な質問かもしれませんけど、世論調査とマーケティング・リサーチって同じですか?違うんですか?

owl うん、そのあたりの定義も難しいけど、ここでは広い意味での「調査」としてひと括りで考えておいて。この点も、あとできちんと考えよう。
このように、政府や新聞社、広告代理店によって世論調査として調査が始まったんだけど、57年に日本生産性本部の視察団が、アメリカへマーケティング・リサーチの視察にいっているんだ。これによって、マーケティング・リサーチというものが日本でも啓蒙されていったんだね。
そうこうしている内に、50年代後半になると日本経済も復興し、企業でもマーケティング・リサーチが現実的な活動となってきたんだ。経済白書に「もはや戦後ではない」と記されたのが1956年。ちょうどこの頃から、今の大手といわれる調査会社が続々と創業しているんだよ。
1949年総合統計調査研究所(現・綜研)
1954年中央調査社
1957年市場調査社、JMRB(現・RI)
1958年日本マーケティング研究所(JMR)
1959年マーケティング・センター、マーケッティング・リサーチ・サービス
1960年社会調査研究所(現・インテージ)、日本リサーチセンター、ニールセン
1962年ビデオリサーチ
というようにね。

Q子 知らない名前ばかりですね・・・。インテージって、聞いたことがるような気がするけど。あと、ビデオリサーチって視聴率調査ですよね。他には、マクロミルってよく聞くんですけど。

owl そうだね、調査会社はどちらかというと黒子みたいな面があるから。今、名前の出たインテージやマクロミルは、調査会社では珍しく上場している会社だから聞いたことがあるのかもしれないね。

P夫 そのころも、まだ世論調査が主体だったんですか?

owl いや、多くの会社はマーケティング・リサーチが主だよ。とくに、50年代の後半くらいには、サンプリング・サーベイ主体のリサーチ技法が定着しつつも、「モチベーション・リサーチ」という手法も導入されてきたんだ。これは、誰が買ったとか、どのくらい買ったとかという事実だけでなく、「なぜ、買ったのか」という消費者の行動と心理を解明するために開発されたんだね。グループ・インタビューとか、デプス・インタビューとか、投影法、SD法などが主な技法で、量的なデータだけでなく、質的な面を明らかにしようとするものだったんだ。

P夫 う~ん・・・。前回いっていた調査会社の問題って、まだ見えてこないですけど。逆に、すごく先進的なイメージ・・・。

owl そう。このころは、まだ今の問題は出てきてないかもしれない。もう少し時代を経ると見えてくるんだけど、それは次回に。




マーケティング・リサーチ業界って?~イントロダクション

owl だいぶ日にちが経ってしまったけど、日本のマーケティング・リサーチ業界、調査業界について話をしようか。前回の本は読んでみたかな?

Q子 はい。「マーケティング・リサーチ業界」って本が面白かったです。この業界って、実際のところ、どんな業界なのか知る手段があまりなかったから。

owl そうだね、「業界初のリクルート本」と銘打っているくらいだから。で、どんなところが気になったかな?

Q子 やっぱり、現場の人達の声ですね。生活者の立場を忘れずにとか、メーカーとの橋渡しとか、自分のやりたいこともこれだ!って気になりました。ただ、意外にアナログだとか、泥臭いとかも書いてあって、その辺がよくわからなかったかな・・・。

P夫 僕は、実際に会っている調査会社の人とのギャップを少し感じたんですけど・・・。えーと、「これからマーケティング・リサーチを志す人にとっては、マーケティング・リサーチだけを知っていればいいということではなく、マーケティング活動全体を知っておくことが必要です」ってとこ。こちらも、まだマーケティングについてはよく知らないので、その点も相談したくて調査会社の人とも話をするんですけど、ほんとうに知っている人って少ないんじゃないですか?

owl うん、その点は難しい問題だね。たとえば、カルロス・ゴーンさんにスカウトされて、今は日産の市場調査部門を取り仕切っている星野朝子さんという人がいるんだけど、その人は元・社会調査研究所、今のインテージの人なんだ。他にも、調査会社出身でマーケティングの視点で本を書いている人もいる。だから、調査会社にマーケティングを知っている人がいない、というわけではないけど、絶対数としては少ないのかもしれないね。
(少し古いですが、星野朝子氏のプロフィール・インタビュー記事はこちら。調査会社の印象についても話しています。)

それと、マーケティング・リサーチ業界で働く人へのメッセージになれば、ということで調査会社の社長さんが書いているブログがあるんだ(→こちら)。この人の意見には賛同できることが多くて、その中でこんなことが書いてある。

マーケティング・リサーチという仕事は一体どういう仕事なのでしょう?
「消費者の声を様々なかたちで掬い上げ、企業の商品やサービス開発に生かす仕事」。その通りです。その通りだとしたらこんなにやりがいのアル仕事はないはずです。でもそれが「ただのアンケートをする会社」と言われればなにかレベルの低い業界の一員のようにしか見られませんよね。
調査依頼主である企業から、こうした企業の視線をマーケティング・リサーチ会社の若い人たちが肌に感じ始めた時から、悩みは始まります。同じ代理業者なのに、片や広告代理店はあこがれの的であり、一方で調査会社はお給料も他の業界から見れば安く、どちらかというと日陰の立場です。これは日本にマーケティング・リサーチが導入されたいきさつにも関係があるようですが、果たしてこれでいいのでしょうか?

ここが、日本の調査会社の難しいところなんだ。
あえて「日本の」といったのは、どうも欧米の調査会社では違うらしいということ。広告代理店の人と話をすると、向こうのリサーチャーはとても社会的なポジションが高いという話をよく聞くんだ。

P夫 確かに、調査会社がマスコミに出てくることって少ないですよね?出てくるのは、シンクタンクとか広告代理店の人が多いみたい・・・。なぜ、そうなったんですか?

owl うん、それには、日本の調査業界の成り立ちから見ていかないといけないんだ。
長くなりそうだから、これは別のページで。