日別アーカイブ: 2006-11-14

調査、リサーチパートナーの選び方(調査会社はどうやって選ぶ?)

P夫 コメントで、ぐらさんから質問が来てましたね。調査、リサーチを頼む時に、誰に最初に頼むべきか。
ひとつ疑問だったんですけど、代理店が調査会社に実際の調査をさせるのはわかります。けど、調査会社が、分析を外部の会社や人に頼むことってあるんですか?なんか、納得できないものを感じるんですけど・・・。

owl うん、実際にあると思うよ。とくにインターネット調査の会社では、報告書を外注することがあるという話を聞いているね。ただ、今ではリサーチ経験者を採用して、分析を内製化しようと努力しているという話も聞いているけど。
それ以外にも、多変量解析といった特殊な集計を外注したり、グループインタビューのモデレーター(座談会の司会をする人)やリクルート(座談会に参加してくれる人を集めること)を外注したり、さらに実査そのものを外注したり・・・。こんなことは、日常茶飯事じゃないかな。

P夫 へぇ、そうなんですか。。。でも、それってありですか?

owl もちろん、クライアントに黙ってやるのはルール違反だと思う。情報管理上の問題があるからね。ただ、クライアントにとっても、外注してもらった方がよりよいアウトプットが得られるなら、その方がいい場合もあるだろうしね。お互いが納得していれば、いいと思うよ。

Q子 で、ぐらさんの質問の答えは?調査会社に頼むのがいいのか、プランナーがしっかりしている会社、もしくは人に頼むのがいいのか?

owl うん、個人的にはプランナーがしっかりしている会社、あるいは人に頼むべきだと思う。
調査って、企画・設計の段階で、どれだけ内容を検討したか、吟味することができたかが、得られる結果が役立つかどうかを決定付けるひとつのポイントだから。調査のテーマにないことは、そもそもデータが無いんだから、どんな分析をしてもわからないでしょ?時々あるんだけど、担当者の上司を含めて報告会をしていると、上司の人が「で、○○についてはどうなの?」って、調査テーマになかったことを聞いてくることがあるんだ。クライアントの担当者も気づいていなかった視点なんだから、非は調査会社にないかもしれない。けど、最初のテーマ打合せの時に、調査会社からのフォローがあれば気づいていたかもしれないよね。言われたままをやるのではなく、議論や提案を行えるかどうかが、調査のプランナーがしっかりしているかどうかのポイントだと思う。
それに、分析ができない調査会社は、そもそも企画・設計の時点で十分な内容の検討ができるとは思えないんだよ。だいたい、どのような分析やアウトプットを出したらいいかがわからないのに、調査の設計なんかできっこないと思うからね。
あと、調査会社を先に決めてしまうと、テーマによっては他によい調査手法があるかもしれないのに、そこの会社ではできないとか、やったことがないばかりに、次善の方法でしか調査ができないということも起こると思うんだ。こればっかりは、プランナーにはどうしようもないことだから。

Q子 でも、この前の話だと、マーケティングに長けている調査会社はそんなに多くないのでは?、という話だったじゃないですか。ぐらさんも、そう感じているみたいだし。

owl そう、そこが問題。だから、ぐらさんもプランナーがしっかりしている会社や人に出会いにくいと悩んでいるんだと思うんだ。数だけでなく、いわゆる営業の問題もあるけどね。インターネット調査会社は、営業が積極的だから。。。
じゃあ、そういう会社や人をどうやってみつけるか?正直なところ、地道に探すしかないと思っている。今は、blogやHPでPRしている人もいると思うし、あとは学会やセミナーでの発表内容や、「マーケティング・リサーチャー」「マーケティング・ジャーナル」といった業界誌を見ながら、これはと思う会社や人にコンタクトを取るしか方法はないと思う。

P夫 でも、その会社や人がほんとうにできるかどうかは、また別の問題では・・・。

owl そうだね。あとは、実際に仕事を頼んでみるしかないと思うよ、身も蓋もない答えだけど・・・。とくに、会社の場合は要注意なんだ。
総合調査会社であれば、マーケティングの視点を持ったプランナーが、必ず何人かはいると思う。前に紹介した星野朝子さんみたいにね。でも、その会社に仕事を頼んだとして、担当になってくれる人が、できる人かどうかはやっぱり仕事をしてみないとわからないんだよ。それに、最初はその”できる人”が顔を出してくれても、そのうちにフェイドアウトして、こちらの期待どおりじゃなかった、ということもあるし。その“できる人”が、部長とか役員だったりしたら、とくに注意ね。
ここがサービスである調査、リサーチの難しいところだよね。モノであれば、メーカーの評判がよければ、だいたいその商品に外れはないけど、サービスは人が提供するものだから。。。会社の規模や歴史で、一概に決められない。

P夫 でも、実際にデータを集める段になれば、規模が影響しますよね。

owl 確かにデータ収集部分では、ある程度、規模が影響する。ただ、企画・分析と実査(=データの収集パート)を分離するつもりがあるのであれば、問題はないでしょ?広告代理店やシンクタンク、マーケティング・エージェンシーに頼むとか、分析に重きをおいたリサーチ会社に頼むとかすれば、実査については彼らが選定、コントロールしてくれるから。

P夫 う~ん・・・。なんだか、少し混乱ぎみなんですけど。

owl 少し整理をしよう。
調査会社、というかリサーチの外注先を選ぶ時に、考えるべき視点が2つあるんだ。ひとつめは、調査を頼む側、つまり自分の会社に、どれだけ調査についてのノウハウがあり、調査に携われるスタッフがいるかということ。ふたつめは、どうやって外注先を見極めるのかということ。

ひとつめ、自社(=クライアントサイド)のリサーチ能力。
自社で、リサーチに対する意識も高く、ノウハウも十分にもっていて、スタッフも十分にいるのであれば、企画・設計や分析は自社内で行えばいいわけだから、外注するのは実査と集計部分だけでいいよね。ところが、社内に十分なリサーチノウハウがなかったり、企画や分析に時間をかけられるスタッフがいないとなると、企画や設計の段階から外注しなければならなくなるし、当然分析を行った上で報告書も作ってもらわないと困る。あるいは、これまでに経験のないテーマや分析方法、調査手法でやってみたいという時も、企画・設計や分析については相談したり、サポートしてもらう必要がある。
自社でできることを見極める、今回のテーマはどういうテーマなのかを考える、結果として、どこからどこまでの範囲を外注に出すのか決める。調査の発注先をどこにしようかと考える前に、まず、これらのことを検討しておく必要があるんだ。
外注の範囲が決まれば、自ずと外注先も決まってくるよね。実査部分をメインに頼むのであれば、それなりの規模があって、調査員さんとかモニターの数が多いとか、会場調査やグループインタビューの会場を自前で持っているとか、紙でなくてPCで回答を集められるとか。このような会社の方が、しっかりとデータを集めてくれる確率は高い。また、グループインタビューであれば、それを専門にしている会社もあるから、そこに頼めばいい。
けれど、企画・設計や分析も含めて頼みたいのであれば、プランナーがしっかりしているところに頼むべきだろう。それが、広告代理店なのか、シンクタンクなのか、マーケティング・エージェンシーなのか、調査会社なのか、個人のプランナーなのかは、やはりテーマによるだろうし、これまでの付き合い方にもよると思う。ただこの場合は、会社ではなく、担当する「人」を見極めることが、より重要になるということを忘れずに。

そして、ふたつめ。外注先の見極め。
前にも言ったけど、具体的な仕事を発注してみるのが最善の方法だとは思う。でも、なかなかそういうわけにもいかないだろうから、いくつかの会社に声をかけて、実際に会って話をしてみる、企画書と見積りを出してもらう、これだけでもある程度の感触はつかめると思う。
まず、実査面について。調査会社だったら、調査員さんやモニターはどのように募集しているのか、どのように管理しているのか、集まった票をどのようにチェックしているのか、といったことを確認する。グルインの場合、モデレータは誰がやるのか、どのようにリクルートをするのか、会場はどうするのかなど。そのほか、その会社で得意としている調査テーマや調査手法は何か、といったことを確認すればいい。調査会社以外に頼むなら、実査はどのように行うのか、どのような管理をするのか、といった点の確認が必要になる。
つぎに、企画・設計や分析の面。たとえば、テーマについての話をマーケティング的な視点も含めて話をしてみて、なかなか話に乗ってこない(乗ってこれない)ようでは難しいだろうし、「もう少し具体的になってから」というような話を出してくる場合は、「仕様がもっとはっきりしないと、動けない」と言っているようなものだから、これも難しい。「なんでもできます」といのも、何も特徴がないといっているようなものだし。その場で、ある程度、テーマの視点とか、調査の仕様について話が出るくらいが望ましいと思う。で、企画書と見積りを依頼して、内容を検討すれば、ある程度の判断はできると思う。ただ、無償で調査票まで求めるのはルール違反だからね。ほんとうは、企画コンペでもある程度の費用は見てあげる方がいいんだけどね・・・、元調査会社の人間としてはそう思う。

P夫 で、企画書や見積りは、どう判断すれば?

owl 企画書は、まずテーマの整理ができているか、そのテーマにあった設計がなされているか、アウトプットまで視野にいれているかといったあたりかな。ただ、これは慣れないと難しいかもしれないね。
見積書は、安ければいいというものではないので、その点は注意して。とくに、調査の場合、コストダウンの余地は、正直いってあまりないと思う。極端に低い見積りの場合は、どこかで手を抜いていると思っても間違いない。なので、安いからいいやと思うのではなく、他社との比較やこれまでの経験からみて安い場合は、なぜこの価格になるのかの説明を受けた方がいい。納得のいく理由であれば問題ないけど、理由が明確でなかったり、がんばりますといった場合は、疑ってかかるくらいの方がいい。高い場合も同様だけどね。それと、企画とか分析に、どれくらいの費用を当てているかでも、会社のスタンスはある程度わかる。企画、分析にそれなりの費用を載せているところは、企画や分析をする意思があると思っていいと思う。ただ、これも必ずしもそうではなく、単に高いだけという場合もあるけど・・・。

Q子 あの・・・、クライアントって、調査会社をいつもそうやって選んでいるんですか?同じとこに頼むんじゃなくて?

owl 同じ会社に頼むことが多いと思うよ。というか、そうした方がいい。何回か仕事をしてみて、信頼できるし、対応力もあるし、アウトプットの質もいいという会社があったら、できるだけその会社と一緒に仕事を続ける方がいいんだ。そうやって、一緒に仕事をしていると、経験値が上がるからお互いに効率もよくなるし、なによりテーマをより深く検討することができるようになるからね。発注者、受託者という関係を超えて、パートナーとして付き合えるようになることが、理想だと思うよ。
これは、P夫君に、とくに言いたいことなんだけど・・・(^^。

P夫 はい・・・。心しておきます。。。
では、調査会社に仕事を頼む時の心得があれば、ぜひ。

owl そうだね、ではそれは次回に。

・・・おっと、大切なことを忘れていた。クライアントと調査会社のパートナー関係に関連して、調査会社を見極める方法を。
担当者をころころ変える調査会社は、そのクライアントをあまり重視していないと思った方がいいだろうね。たとえば年度代わりに、実務担当者が全員これまで会ったこともない人ばかりになりますと言われるようなことがあれば、論外。早々に次の会社を探した方がいい。こちらがパートナーになろうと思っても、相手はそう思っていないということなんだから。
リーダー格の人と実務をやる人数人がチームになっていて、これまで実務をやっていた人の中から新しいリーダーがでてきて、代わりに新しく実務をやる人も入り、これまでのリーダーは社内できちんと新リーダーの相談にのったり、ポイントとなる場面では同行したりというのが理想的な引継ぎ方だと思うよ。こういう関係になっていれば、その調査会社は大丈夫。

P夫 なるほど。これも、心しておきます。
では、次回は、クライアントサイドが、調査会社に仕事を頼む時の心得について。