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『マーケティング・リサーチ業界・新版』

マーケティング・リサーチ業界 新版―その仕事と働く人たち マーケティング・リサーチ業界 新版―その仕事と働く人たち
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-04

以前ご紹介した『マーケティング・リサーチ業界』の新版です。

内容をみると大きな変更はないようですが、データが最新のものに差し替えられていることと、インターネットリサーチや業界再編についての記述が現状にあわせて書き換えられています。
また、第3章「現場で働く人たち」の顔ぶれは一新され、ネット調査のマクロミル、外資系のIPSOS日本統計調査の方などがコメントしており、「いま」の業界の流れに沿っています。

前回の記事(こちら)でも書いたのですが、少しきれいにまとめられすぎ&将来の希望を持ちすぎでは?、という感じは否めないですが、リクルート本でもありますので、このあたりは大目に見ていただいて。。。
とはいえ、マーケティング・リサーチ業界、市場調査業界に興味がある人は、リサーチという仕事の雰囲気、リサーチャーに求められていることなどを、この本でしっかりと理解しておいていただきたいものです。

◆マーケティング・リサーチ業界売上ランキング
(最近、業界売上ランキングの検索が多いのですが。。。就職活動の影響?)

旧版と新版で、業界ランキングを比べておきましょう。

まずは、世界ランキング。
(順位は2006年、かっこは2001年順位。社名の*は、日本進出企業)

1位(1位):The Nielsen Company*
2位(2位):IMS Health*
3位(4位):Taylor Nelson Sofres*
4位(3位):The Kantar Group*
5位(6位):Gfk*
6位(8位):Ipsos Group *
7位(-):Synovate*
8位(5位):IRI
9位(10位):Westat
10位(-):Arbitron

このリストで順位を上げている企業は、多くが何らかの形で合併を行なった企業のようです。さらに、萬さんのコメントでは3位:TNSと5位:Gfkに合併の可能性もあるとか。。。
そして、世界上位7社の企業がすでに日本に進出しています。(このリスト外では、12位のJ.D.Power and Associates、13位のHarris Internationalも日本で営業を行なっています。)

では、日本でのマーケティング・リサーチ会社ランキング。
(「宣伝会議」推定、2006年。かっこは2001年順位。)。

1位(2位):インテージ
2位(1位):ビデオリサーチ
3位(3位):電通リサーチ
4位(-) :マクロミル
5位(5位):日経リサーチ
6位(6位):サーベイリサーチセンター
7位(-) :ジャパン・カンター・リサーチ
8位(-) :ヤフーバリューインサイト
9位(7位):日本リサーチセンター
10位(-):TNSインフォプラン

この中で、インテージは世界ランキング11位、ビデオリサーチは16位、電通リサーチ、日経リサーチ、マクロミルもトップ30位圏内にあります。
このリストをご覧頂くと一目瞭然、インターネットリサーチと外資系リサーチの躍進が目に付きます。日本資本&独立系で10位以内に踏ん張っているのは、インテージを別格とすると、SRCとNRCだけ。。。(そういえば、スミスがNTTデータグループの傘下に入っていたんですね、知らなかった。)
ここから、マーケティング・リサーチ業界が変革期(ほぼ終了?)にあることはお判りいただけると思います。

「その程度では顧客の声を聞いているとは言えない」

(また、日経系の雑誌の紹介になってしまいますが、個人的な備忘録も兼ねてますので、ご容赦を。。。)

日経情報ストラテジーの今月号(2008年4月号)の特集が「VOC経営」のようです。
この号の紹介記事が、こちら↓にありました。

その程度では顧客の声を聞いているとは言えない(ITPro)

会員制のサイトだと思いますので、アクセスできない方のために、少しだけ引用をさせていただき、内容紹介を。

「お客様の声にきちんと耳を傾けよう」――。今やあらゆる企業の様々な部署で当たり前のように使われるセリフだ。IT(情報技術)化が進んだ今の時代,その気になれば短期間で大量のVOC(ボイス・オブ・カスタマ=顧客の声)情報を比較的簡単に集めることはできる。だが,ビジネスの目的に合致した形で,VOCを経営にきちんと取り入れている企業がどれだけあるだろうか。

というのが問題提起。確かに、いまの時代は、マーケティング・リサーチによらずとも、様々な情報を簡単に収集することができます。(その中での、リサーチ会社の立ち位置は???、というのも気になりますが・・・)

「情報を、真に経営に取り入れていますか?」ということです。
この紹介記事で事例としてあげられているのが、日産。このblogでも何度か紹介している星野氏の事例ですね。

 日経情報ストラテジー2008年4月号では,日産自動車の市場情報室の活躍ぶりをはじめ,「これぞ,究極の顧客志向だ」と思わずひざを打ちたくなるような事例を厳選した特集記事「究極のVOC経営」を掲載している。例えば,積水化学工業ハウジングカンパニーではもう2年以上,幹部50人が手分けして毎週,多数の既存顧客の家を訪問している。顧客の住宅に関する要望や不満を聞き出し,素早く経営に反映させ続けるためだ。日産や積水化学などの,こうした事例にすべて共通して言えることは,「顧客の声に真摯に耳を傾けるのは経営者の仕事だ」と経営者自身が熱い思いを持っていること。その先には,生涯顧客の獲得という狙いがある。

つまりは、「経営者の仕事」というのが結論になるようです。経営者がどれだけ理解しているか、は何もVOCに限らず、何でもそうだと思いますけど・・。この点は置いておいて。。。
(この提言通り、経営者がきちんとリサーチや情報というものの重要性に理解を示してくれることが重要だということはそのとおりだと思います。でも、それは無理と感じている人でも)、

他社の事例に興味がある方は、一読してみてはいかがでしょう?
情報とはなんぞ、情報を生かすとはなんぞ、という答えが少しは見つかるかもしれません。

PS.
『マインドリーダーへの道』さんのblogでも、同じ記事を取り上げていますので、あわせてご参考にしてください。

調査の付加価値とリサーチャーに求められること

ついでにこちらの記事も、ぜひ!。

調査のウソを見抜くには?

統計の基礎~HP紹介~

サイドバーでもリンクしている 「Insight for SiteMeasure and WebAnalytics」 というblogを書いていらっしゃる衣袋さんが、統計に関する連載を始められたようなので、紹介しておきます↓。

社会人に必要なリサーチ/データリテラシー5原則——調査・リサーチ・統計の基礎
(Web担当者Forum by インプレス)

まだシリーズが始まったばかりですが、blogで指摘されている統計的内容が、かなりしっかりしたものなので間違いないと思います。
また、内容はアクセス解析等web系の事例が中心になりそうですが、「統計のポイント」という点では、変わりないので、マーケティング・リサーチを中心にしている人でも参考になると思います。

これまで、衣袋さんがblogで書いてらっしゃる統計関連のエントリーは、↓のHPからご覧になれるようになってます。

データ分析の豆知識(株式会社クロス・フュージョン)

『%と%を比較する時は「ポイント」といおう』なんて、いいテーマですよね。教科書ではあまり書かれていないけど、結構重要なポイントです。重要なのに、これが守られていないことが多いんですよね。

とりいそぎのご紹介でした。

【関連エントリー:
「データをざくざく処理するためのグラフの読み方、使い方」(2009.1.20)

『経営の美学』

経営の美学―日本企業の新しい型と理を求めて 経営の美学―日本企業の新しい型と理を求めて
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2007-11

続けて、もう一冊。
こちらは、まさに「経営書」です。トップの心得レベルの話です。
なぜ、連投でこの本も紹介しようと思ったかというと、前の本(『マーケティング優良企業の条件』)で取り上げられている企業で、こちらの本でも取り上げられている企業が多いからです。
前の本は、マーケティングの現場の話でしたが、こちらの本をあわせて読んでいただくと、より背景の部分も理解できるのではないかと思って、連投でご紹介しています。

以前(まだ若かりし頃)、マーケや経営をやっている先生や実務家がお年を召してくると、「愛」とか「美」とか、かなり抽象度の高い話をし始めるのはなぜなんだろうと思っていました。
最近、なんとなくその気持ちがわかるようになってきました。(とくに、90年代後半から今にかけての、様々な企業の不祥事や栄枯盛衰等を見るにつけ・・・)
この本も、まさにこのようなテーマの本だといえます。(そんなに抽象度が高いわけではありませんが)

もくじを。

序章 価値創造の構造と基軸
第1章 価値創造を語る ~福原義春、小林陽太郎、井関利明
第2章 相対から絶対の競争へ ~坂田藤十郎+野中郁次郎、中谷巌、嶋口充輝
第3章 市場原理と人間原理の綜合 ~野中郁次郎、槍田松瑩
第4章 環境変化への柔軟かつ機敏な対応 ~竹内弘高、武藤信一、前田新造
第5章 社会に対する価値創造 ~伊藤邦雄、大星公二、寺島実郎
第6章 イノベーションへの情熱 ~宮田秀雄、米倉誠一郎、岩田彰一郎
第7章 価値創造の実践 ~岩沙弘道、藪土文夫、長島徹
第8章 価値創造のリーダーシップ

本書はフォーラムでの講演を元に書かれていますので、内容は思ったほど難解ではありません。むしろ、この手の本の中では、わかりやすい、読みやすい本ではないかと思います。

将来的に、いわゆる「上」を目指す方には、ぜひ本書は読んでいただければと。。。
やはり経営は、テクニックではなく、考え方・志だと思うんですよね。
「まえがき」から、本書のスタンスをご紹介しておきます。

未来の経営は、ますます量から質の経営に移行し、そこではかつてのような戦争型の相対競争時代から社会や顧客の価値を追求する絶対競争の時代になる。この絶対価値の創造と追求は、時代の進展とともに新しい形態となって出現するため、絶えざるイノベーションが不可欠になる。しかし、企業はそのイノベーションの実行においても、自らの経営の型を常に確認・精緻化し、市場原理と人間原理を統合・融合させながら永続性を追及する。ここにこそ未来の日本的経営の美学がある。

『マーケティング優良企業の条件』

マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦 マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-01

「エスノグラフィという手法」という記事で、手法は手法として大切だけれども、リサーチの結果を使いこなす体制も重要だということを書いたと思います。
この点について、ケースで学ぼうというのが、本書のテーマです。

取り上げられている9社は、あちらこちらで取り上げられたり、語られたりしている優良企業といえるでしょう。

その9社、もくじで確認しましょう。

序章 マーケティング優良企業を求めて
第1章 マーケティングリテラシーのための論理
第2章 調査の独立性が意味すること(花王:調査部)
第3章 市場情報を循環させる「心臓」(資生堂:お客さまセンター)
第4章 他社との連携による新製品開発(アスクル)
第5章 失敗から学ぶ組織文化(サントリー:マーケティングサポートセンター)
第6章 情報の多重展開(積水ハウス:納得工房)
第7章 経路依存的に構築される仕組み(カルビー:営業部門)
第8章 反応スピードを加速するSAPS(ユニ・チャーム)
第9章 マーケティングの持続力(ネスレコンフェクショナリー:「キットカット」)
第10章 ターゲットを絞り込んで反応する(松下電器産業:「レッツノート」)
終章 市場への創造的適応

いかがですか?いくつのケースをご存知でしたか?
結構、知っているケースばかりかもしれません。逆にみると、マーケをやっているなら知っておくべきケースばかりとも言えるかもしれませんが。。。

本書のテーマは、「市場志向の組織と戦略」です。
表紙とびらの折込から引用します。

マーケティング優良企業9社の市場情報の活用と展開の仕組みを徹底解剖

・把握
市場調査の結果などが組織的に理解され、
必要な時に必要な形で把握されているか?

・普及
市場から集められた情報が、
マーケティング部門だけでなく、
製品開発部門などの組織全体に行き渡っているか?

・反応
反応すべき顧客の声を見極め、
適切な意思決定やマーケティング展開に活かしているか?

これらを組織的に展開できている企業が、市場の声に応え続けられる強い企業であるという結論になります。
引用したいポイントも多かったのですが、本書を読んで、皆さんご自身で確認してください。

そして、ケースを読むときの注意点を。
ケースは、あくまでケースであり、この本に書かれているケースと同様のことを実施したからといって決してうまくいくとは限りません。むしろ、失敗することが多いのではないかと思います。(同じことを実施すること自体が、まず難しいのですが。。。)
ケースは、その背景にある考え方を理解するためのものだと思います。何をやっているのか、どうやっているのかといった表層ではなく、何を目的に、キーとなるポイントは、を見つけることが重要だと思います。
学ぶのは「方法、ノウハウ」ではなく、方法『論』である、という気持ちで。

『視聴率調査はなぜウチに来ないのか』

視聴率調査はなぜウチに来ないのか (青春新書INTELLIGENCE 189) 視聴率調査はなぜウチに来ないのか (青春新書INTELLIGENCE 189)
価格:¥ 767(税込)
発売日:2008-01-08

今回紹介するのは、上記の本。
amazonのコメントにもあったのですが、この本のタイトル、はたしてこれでよかったのか。。。
「さおだけや~」以降、こんな感じのタイトルが多いですけど。

この本は、決して「視聴率調査」について書いた本ではありません。テーマは、マーケティングです。タイトルだけ見て手に取らない人もいるかも、と思いここで紹介しておきます。
著者は、日経文庫で「コトラーを読む」という本も書いている酒井さん。難しいことを、やさしく説明するのは、たいへんなことですが、「コトラー~」にしても、本書にしても、この壁を乗り越えているのではないかと感じました。
(あ、よくマーケティング・リサーチの本を書いていらっしゃる酒井(隆)さんとは、別の酒井(光雄)さんです。念のため。)

内容は、マーケティングの様々なテーマを、日常の事例を取り上げながら、コラム的に紹介しています。すでに、マーケティングの奥底に関わっている人には、もの足りないと思いますが、学生さんや、社会人1年生、いままでマーケティングについてあまり考えたことがないけど興味がある、という人にとっては、いい導入になるのではないかと思います。
(730円なんだから、これくらいの本は読もうね>社会人1年生のみなさん)

では、もくじ。(どのレベルで紹介しようか迷いましたが、本書の内容を理解してもらうには、項目レベルで紹介したほうがいいだろうと思い、長くなりますが30項目を並べます。)

1章 「エルメスのケリーバックが1万円」はありうるか?~市場と顧客を知る
1.BMWと「洋服の青山」のマーケティングの違い(顧客の設定と市場規模)
2.銀座・表参道と「かっぱ橋」の共通点(エリア特性・商圏特性)
3.女性をとりこにする店の「商品の秘訣」とは?(ブランド・コンセプト・哲学)
4.スウォッチの「4千円から数百万円まで」という発想(想定顧客層)

2章 「20代のモデルが広告している化粧品」を買っている世代とは?~商品開発
5.「永遠に売れる」4つのテーマ(商品開発のテーマ)
6.売れる”サプライズ”を生むプロの共通点(仮説立案の重要性・定量調査と定性調査)
7.プロは、いつどのようにお客さんを観察しているか(潜在欲求の発見)
8.お客さんの実際の年齢ではなく「マインドエイジ」で考える(顧客年齢の設定)
9.ヒット商品をロングセラーに育てるカラクリ(顧客の価値・商品の陳腐化防止)
10.アサヒビールとDHCの”強みを生かす”方法(商品のポジショニング・マーケティングの戦略)

3章 「婚約指輪は給料の3か月分」は日本だけの”常識”~マーケティングプランの立案とブランドづくり
11.「限定商品」はなぜ生まれるのか(マスプロダクトとセグメントプロダクトの違い)
12.スーパーや量販店は、どうしてどこでも同じものを売っているのか(マスプロダクトとマスメディアの関係)
13.同じものでも、どこで売るかで運命は分かれる(販売チャネル・販売方法)
14.「あなただけにお知らせします」という広告、販促の効果(広告・販促)
15.日本中をその気にさせた、デ・ビアスのすごい発想(市場に商品を導入するタイミング・世論をつくるコミュニケーション)
16.権威志向の男性こそ”最高のお客さん”になる理由(男性心理と女性心理の違い)
17.「バレンタインデー=チョコレート」の必要はあるか(商品の選択肢)

4章 スターバックスが広告しなくても流行る理由~メディア特性とコミュニケーション
18.売れる商品は「情報の塊」だ(企業と商品の情報力)
19.無料のメディアは、どうして経営が成り立っているのか(無料メディアが見られる仕組み)
20.メディアの特性に合わせた広告のいろいろ(コンテンツと広告の関係性)
21.マスメディアを使わず成功したクリスピー・クリーム・ドーナツ(街のメディア化)
22.テレビ通販会社が広告費で潰れないカラクリ(反復してアピールする力・年配の人たちの新たな需要)
23.女性が「洗濯したあと、においをかぐ」という大発見(広告心理)
24.”検索すると出てくる情報”の質と量が、企業の信頼度を高める(マスメディア社会からネット社会へ)

5章 レクサスを「トヨタ」で売ったら、どうなるか~プロモーションプラン
25.1円も割引せずにファンをつくったお店の秘密(生涯顧客づくり)
26.意外に知らない「マイレージ」の裏側(固定費がかかる企業と一般企業との割引制度の違い)
27.ネット予約で、シティホテルが安く泊まれるしくみ(サービス業のプロモーション)
28.オマケ付きキャンペーンはどうして減ってきたのか(サンプリング)
29.「セルシオ」をやめて「レクサス」にしたトヨタの戦略(付加価値・ブランド)
30.クチコミが生まれる4つの条件(パブリシティ活動)

(ふぅ~)

さて、気づいた方、いらっしゃいますか?本書のタイトルである「視聴率調査はなぜウチに来ないのか」が、ありません・・・。実は、このテーマは「はじめに」で書かれています。。。

本書でマーケティング・リサーチについて書かれているのは「6」です。内容は前回紹介したエスノグラフィに通ずるものがあるかもしれません。

調査ではお客さんの反応がとても良く、「これなら買いたい」という結果が出ているのに、発売してみたら売れないということがあります。
人はアンケート調査に答えるときには積極的で肯定的に答えますが、実際に行動を起こす時には消極的で否定的に行動する傾向が強いからです。お客さんに調査をして、「答」を教えてもらうのは難しい時代になってしまったのです。

ほんと、そうですよね。(そもそも、「お客さんに答えを直接聞こう」という前提自体が、間違っているとも思いますけど。)

本書の紹介は以上にして、ほんとうに「視聴率」について知りたい人は、↓の本がお勧めです。

視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) (朝日新書 42) 視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) (朝日新書 42)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2007-04-13

著者はビデオリサーチに在職したことがある方のようなので、内容は確かだと思います。
一応、もくじを紹介しておきます。

第1章 視聴率・5つの神話
第2章 視聴率はどう調べているか
第3章 視聴率で何がわかるか(入門編)
第4章 視聴率で何がわかるか(実践編)
第5章 視聴率の限界と課題
第6章 視聴率調査の未来

ね、本格的でしょ?

ついでに、酒井さんの「コトラー~」は、↓の本です。

コトラーを読む (日経文庫 F 56) コトラーを読む (日経文庫 F 56)
価格:¥ 903(税込)
発売日:2007-04-14

「ユーザーの体験を設計する」~エスノグラフィという手法

標題の『ユーザーの「体験」を設計する』は、日経エレクトロニクスの2008.1.28号の特集タイトルです(詳細は、↓のHPで)。

日経エレクトロニクス2008年1月28日号

詳細は、本誌を購入していただくとして。。。
(実は自分もまだ未読です、購入ボタンはクリックしましたが。いわゆる思惑買い。なので、以下の記事も、HPの内容と「特集の立ち読み」から着想したものです。厳密には、本書の紹介にはなっていないことをご了承ください。雑誌なので、情報鮮度を優先しました。)

特集の背景は、

デジタル機器の分野では、新技術や高い性能、豊富な機能を訴えても、消費者は大した金額を払ってくれなくなった。ネットワークの時代、この傾向はさらに強くなる。「軽薄短小」に代表される技術を起点にした発想から、思考を切り替えない限り、電機メーカーに明るい未来はない。

ということにあるようです。

「SONYのテレビ」と言われてもわくわくしないけど、「Googleのテレビ」と言われると、なんとなくわくわくする。そういうことです。

もうひとつ思い出すのが、「Wii」vs「PS3」。技術的には、「PS3」の方が最先端の技術を搭載しているといわれています。しかし、現実に市場に受け容れられたのは「Wii」。
ユーザーのニーズを、技術が超えてしまっているので、技術優位で製品を開発しても、必ずしも市場に受け容れらることにはならない。まさに、「イノベーションのジレンマ」です。

では、この壁を乗り越えるためには、どうすればいいのか。
消費者の生活に入り込んで、実際に機器をどのように使っているのかを、つぶさに観察し、その中から、インサイトとなる気づきを得て、製品の開発に繋げていくことが必要になります。
そのために注目されている調査手法が、「エスノグラフィ」、民俗誌学の手法だというのです。
主に社会学や文化人類学で使われてきた質的な調査手法、フィールドワークの技法です。(確か、JMRAのデータでも、この手法が注目されているのではないかという仮説に結びつくデータがあったように記憶しています。この点は、あらためて検証してみます。)

ただ、この手法は、実はかなり難しい手法だと思っています。
誰がやっても、同じ答えが得られるかというと、なかなかそうはいきません。この特集でも<手法>として、各社の事例が紹介されているようですが、実際に使いこなすには、それなりの工夫(あるいは人、かもしれません)が必要でしょう。

そして、この特集でもうひとつ強調しているのは、調査で得られた気づきを実現するための<体制>です。『ユーザーの観察から発想を膨らませるだけでは,消費者をとりこにする製品は作れない』ということです。これは、エスノグラフィに限らず、あらゆる調査に付きまとう課題だとも思います。データ、情報だけがあっても、それをどう活かすかは、やはり組織・体制の問題に行き着きます。(この点に関しても、おもしろい本があったので、これも後日紹介します。)

技術オリエンテッドの製品開発に限界を感じている方、ユーザーの「体験」を知るにはどうしたらいいのか考えている方、開発に結び付ける体制はどうしたらいいのか悩んでいる方、このような課題を抱えている方、この特集がヒントになるかもしれません。

関連して、「エスノグラフィ」について、紹介・解説しているHPを紹介しておきます。
(ただし、各社の提供サービスの内容・質については、このblogでは一切、関知しません。単に、「エスノグラフィ」の理解を助けるための紹介であるということを、前提としてご覧ください。)

そういえば↓の本でも、エスノグラフィとはいっていませんが、ケーススタディのひとつとして、ビデオ撮影による調査の事例があげられていました。(完全に学術論文の体裁です)

顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス 顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2005-08

エスノグラフィ的な手法、フィールドワークの技法について、学術的に勉強したい方は、つぎの本を。

フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ) フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2006-12-20

一応、「イノベーションのジレンマ」についても。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press) イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2001-07

【関連エントリー】「マーケティング・エスノグラフィー」(2009.1.9)

さぼっていたら・・・<blog紹介>

2008年も、すでに1月が終わろうとしています。。。
前回のエントリーから、1ヶ月以上もさぼってしまいました。
(その間も、毎日訪問してくださる方がいます、感謝。)

その間に、このようなblogが始まっていました↓。

筆者は、「マーケティング千日回峰之記」で見事千日にわたりblogを書き続けた方。
メルマガの頃から追っかけていたのですが、マーケティングやリサーチの視点はかなり共感できることが多い方です。
(今は、「とみざわのマーケティングノート」というblogを、やはり毎日更新で続けていらっしゃいます。)

内容は、マーケティング・リサーチに関して、これまでの経験を元に、本などではわからない「勘どころ」を書いていこうというもののようです(かぶってます・・・)。
まだ、数回しかエントリーされていませんが、やはり本物です。
このblogに興味を持っていただいた方には、きっと役立つと思います。
ぜひ、訪問してみてください。

って、人様のblogを紹介しているばかりでは、だめですね。。。
こちらも、再度スイッチを入れないと。
とりあえず、休眠期間に読んだ本の紹介くらいから再開しようと思いますが、今度こそ、寺子屋の再開をします!
とみざわさんのblog同様、こちらも引き続きよろしくお願いします。






「経済学ってこんなにおもしろい」

ほぼ1年前、「行動経済学?、経済心理学?、神経経済学?」というエントリーを書きました。
そこそこアクセスのあるコンテンツで、「行動経済学」に関心がある人も結構いるんだなと思ったしだいです。

さて、今回紹介するのは雑誌なのですが、週刊東洋経済の今週号(2007年12/15号)の特集が「経済学ってこんなにおもしろい」と題し、行動経済学をはじめとした経済学の新しい学説を紹介しています。
もくじの詳細は、こちら↓でご覧ください。

週刊東洋経済HP

もくじをご覧いただければおわかりのとおり、25のQuestionに対し、経済学説を用いて回答を行なうという内容になっています。「行動経済学」に興味はあるけど、専門書を読んでもよくわからないとか、実際の社会現象にどのように応用しているんだろうと思う方には、入門編として手ごろな内容だと思います。

それぞれのQ&Aで使っている経済学のキーワードが、ごく簡単に紹介されているのですが、つぎのようなものが取り上げられています。

  • 行動経済学、確率加重関数、フレーミング効果、現在志向バイアス、プロスペクト理論、法と経済学、サンクコスト効果、保有効果、トレードオフ、ネットワーク外部性、完全競争市場、経済の外部性、選好の内生性、ナイトの不確実性、行動ファイナンス、金融工学の誤り、共有地の悲劇、情報の非対象性、進化心理学、囚人のジレンマ、神経経済学

いまでしたら、まだ書店にも並んでると思いますので、興味のある方はどうぞ。

直接、行動経済学とは関係ないですが、↓の本も、いろいろな社会の仕組みを経済学的な視点から解説を行っていて、結構おもしろかったですので、あわせてご紹介を。(結構、売れている本のようですので、すでにお読みになった方も多いかと思いますが)

スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学 スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2007-09-14

また、このblogでの過去エントリーで関連するものを以下にあげておきますので、よろしければこちらもどうぞ。

QPR by マクロミル&東急エージェンシー

(ほぼ一ヶ月、更新せず・・・。少々さぼりぎみでした、すいません・・・)

萬さんから、コメントで情報をいただいています。
コメントに埋もれさせるのはもったいない情報ですので、あらためてエントリーとして取り上げます。

以前リリースがありました、マクロミルと東急エージェンシーによる共同事業が稼動のはこびとなったようです。
以下は、萬さんからのコメントをそのまま引用させていただきます。

東急エージェンシーとマクロミルが新しいホームスキャンを行うようです。

◇携帯型バーコードスキャナを用いた商品購買調査『QPR』サービス開始
http://www.macromill.com/client/corporate/release/20071128_qpr/index.html

パネル数も1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)、2府4県(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀)エリアの16~69歳の男女5,000人と拡大ということも着目ですが、
*携帯型のバーコードスキャナ
  http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200711290024a.nwc
*アンケート調査

というのはいいですね。
これなら、家庭内に於ける消費行動を量的にかなり実態に近く把握できます。

前々から似たような手法がありましたが、マクロミルが本格的に参入すると、機械的にも進歩が見られますね。
うん、凄い。

詳しくはリンクを辿っていただくとして、少し説明を。

「QPR」というのは、東急エージェンシーがかなり以前から実施していた調査です。
調査協力者の方に、バーコードリーダーを貸与して、買物した商品をすべてスキャンしてもらうことで、実際に売れている商品と実売価格を追うというもの。
ただし、コンビニとか自販機のように、購入&そのまま外で消費される商品については、追うことができないという欠点がありました。
この調査に、今度マクロミルも共同実施者として参画することになり、対象者の拡大とともに、スキャナーをハンディタイプにすることで、この欠点を克服することができるようになったのがひとつのメリットです。

そして萬さんもおっしゃっているように、対象者に対して、追跡的な「アンケート調査」を実施することができるようになったのが、ふたつめのメリットです。おそらく、これまでもベーシックな属性データ等は収集していたと思いますが、「インターネット調査の機動性」を最大限に活用することで、リアルデータ(誰が、何をかったのか)に、コーザルデータ(なぜかったのか?など)を結びつけることが容易になるというのが大きいです。

それも、確実に購入者を捉えられるのは元より(実は、スクリーニングで確実に購入者を捉えるというのは結構たいへんだったりします。人の記憶はあいまいで・・・)、初期ユーザーを捉える、購入サイズ別に捉える、購入チャネル別に捉える、ということも技術的には可能なのではないでしょうか?(あくまでも推測です。興味を持った方は、直接マクロミル社に問合せください。)

小売店パネル(POSデータパネル)では少々ミソをつけてしまいましたが、消費者を対象とした分野においては、やはり強みを発揮しますね。
できることなら、少しはオープンデータとして公表していただけるとうれしかったりしますが・・・。