日別アーカイブ: 2008-02-08

『視聴率調査はなぜウチに来ないのか』

視聴率調査はなぜウチに来ないのか (青春新書INTELLIGENCE 189) 視聴率調査はなぜウチに来ないのか (青春新書INTELLIGENCE 189)
価格:¥ 767(税込)
発売日:2008-01-08

今回紹介するのは、上記の本。
amazonのコメントにもあったのですが、この本のタイトル、はたしてこれでよかったのか。。。
「さおだけや~」以降、こんな感じのタイトルが多いですけど。

この本は、決して「視聴率調査」について書いた本ではありません。テーマは、マーケティングです。タイトルだけ見て手に取らない人もいるかも、と思いここで紹介しておきます。
著者は、日経文庫で「コトラーを読む」という本も書いている酒井さん。難しいことを、やさしく説明するのは、たいへんなことですが、「コトラー~」にしても、本書にしても、この壁を乗り越えているのではないかと感じました。
(あ、よくマーケティング・リサーチの本を書いていらっしゃる酒井(隆)さんとは、別の酒井(光雄)さんです。念のため。)

内容は、マーケティングの様々なテーマを、日常の事例を取り上げながら、コラム的に紹介しています。すでに、マーケティングの奥底に関わっている人には、もの足りないと思いますが、学生さんや、社会人1年生、いままでマーケティングについてあまり考えたことがないけど興味がある、という人にとっては、いい導入になるのではないかと思います。
(730円なんだから、これくらいの本は読もうね>社会人1年生のみなさん)

では、もくじ。(どのレベルで紹介しようか迷いましたが、本書の内容を理解してもらうには、項目レベルで紹介したほうがいいだろうと思い、長くなりますが30項目を並べます。)

1章 「エルメスのケリーバックが1万円」はありうるか?~市場と顧客を知る
1.BMWと「洋服の青山」のマーケティングの違い(顧客の設定と市場規模)
2.銀座・表参道と「かっぱ橋」の共通点(エリア特性・商圏特性)
3.女性をとりこにする店の「商品の秘訣」とは?(ブランド・コンセプト・哲学)
4.スウォッチの「4千円から数百万円まで」という発想(想定顧客層)

2章 「20代のモデルが広告している化粧品」を買っている世代とは?~商品開発
5.「永遠に売れる」4つのテーマ(商品開発のテーマ)
6.売れる”サプライズ”を生むプロの共通点(仮説立案の重要性・定量調査と定性調査)
7.プロは、いつどのようにお客さんを観察しているか(潜在欲求の発見)
8.お客さんの実際の年齢ではなく「マインドエイジ」で考える(顧客年齢の設定)
9.ヒット商品をロングセラーに育てるカラクリ(顧客の価値・商品の陳腐化防止)
10.アサヒビールとDHCの”強みを生かす”方法(商品のポジショニング・マーケティングの戦略)

3章 「婚約指輪は給料の3か月分」は日本だけの”常識”~マーケティングプランの立案とブランドづくり
11.「限定商品」はなぜ生まれるのか(マスプロダクトとセグメントプロダクトの違い)
12.スーパーや量販店は、どうしてどこでも同じものを売っているのか(マスプロダクトとマスメディアの関係)
13.同じものでも、どこで売るかで運命は分かれる(販売チャネル・販売方法)
14.「あなただけにお知らせします」という広告、販促の効果(広告・販促)
15.日本中をその気にさせた、デ・ビアスのすごい発想(市場に商品を導入するタイミング・世論をつくるコミュニケーション)
16.権威志向の男性こそ”最高のお客さん”になる理由(男性心理と女性心理の違い)
17.「バレンタインデー=チョコレート」の必要はあるか(商品の選択肢)

4章 スターバックスが広告しなくても流行る理由~メディア特性とコミュニケーション
18.売れる商品は「情報の塊」だ(企業と商品の情報力)
19.無料のメディアは、どうして経営が成り立っているのか(無料メディアが見られる仕組み)
20.メディアの特性に合わせた広告のいろいろ(コンテンツと広告の関係性)
21.マスメディアを使わず成功したクリスピー・クリーム・ドーナツ(街のメディア化)
22.テレビ通販会社が広告費で潰れないカラクリ(反復してアピールする力・年配の人たちの新たな需要)
23.女性が「洗濯したあと、においをかぐ」という大発見(広告心理)
24.”検索すると出てくる情報”の質と量が、企業の信頼度を高める(マスメディア社会からネット社会へ)

5章 レクサスを「トヨタ」で売ったら、どうなるか~プロモーションプラン
25.1円も割引せずにファンをつくったお店の秘密(生涯顧客づくり)
26.意外に知らない「マイレージ」の裏側(固定費がかかる企業と一般企業との割引制度の違い)
27.ネット予約で、シティホテルが安く泊まれるしくみ(サービス業のプロモーション)
28.オマケ付きキャンペーンはどうして減ってきたのか(サンプリング)
29.「セルシオ」をやめて「レクサス」にしたトヨタの戦略(付加価値・ブランド)
30.クチコミが生まれる4つの条件(パブリシティ活動)

(ふぅ~)

さて、気づいた方、いらっしゃいますか?本書のタイトルである「視聴率調査はなぜウチに来ないのか」が、ありません・・・。実は、このテーマは「はじめに」で書かれています。。。

本書でマーケティング・リサーチについて書かれているのは「6」です。内容は前回紹介したエスノグラフィに通ずるものがあるかもしれません。

調査ではお客さんの反応がとても良く、「これなら買いたい」という結果が出ているのに、発売してみたら売れないということがあります。
人はアンケート調査に答えるときには積極的で肯定的に答えますが、実際に行動を起こす時には消極的で否定的に行動する傾向が強いからです。お客さんに調査をして、「答」を教えてもらうのは難しい時代になってしまったのです。

ほんと、そうですよね。(そもそも、「お客さんに答えを直接聞こう」という前提自体が、間違っているとも思いますけど。)

本書の紹介は以上にして、ほんとうに「視聴率」について知りたい人は、↓の本がお勧めです。

視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) (朝日新書 42) 視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) (朝日新書 42)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2007-04-13

著者はビデオリサーチに在職したことがある方のようなので、内容は確かだと思います。
一応、もくじを紹介しておきます。

第1章 視聴率・5つの神話
第2章 視聴率はどう調べているか
第3章 視聴率で何がわかるか(入門編)
第4章 視聴率で何がわかるか(実践編)
第5章 視聴率の限界と課題
第6章 視聴率調査の未来

ね、本格的でしょ?

ついでに、酒井さんの「コトラー~」は、↓の本です。

コトラーを読む (日経文庫 F 56) コトラーを読む (日経文庫 F 56)
価格:¥ 903(税込)
発売日:2007-04-14