日別アーカイブ: 2008-02-15

『経営の美学』

経営の美学―日本企業の新しい型と理を求めて 経営の美学―日本企業の新しい型と理を求めて
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2007-11

続けて、もう一冊。
こちらは、まさに「経営書」です。トップの心得レベルの話です。
なぜ、連投でこの本も紹介しようと思ったかというと、前の本(『マーケティング優良企業の条件』)で取り上げられている企業で、こちらの本でも取り上げられている企業が多いからです。
前の本は、マーケティングの現場の話でしたが、こちらの本をあわせて読んでいただくと、より背景の部分も理解できるのではないかと思って、連投でご紹介しています。

以前(まだ若かりし頃)、マーケや経営をやっている先生や実務家がお年を召してくると、「愛」とか「美」とか、かなり抽象度の高い話をし始めるのはなぜなんだろうと思っていました。
最近、なんとなくその気持ちがわかるようになってきました。(とくに、90年代後半から今にかけての、様々な企業の不祥事や栄枯盛衰等を見るにつけ・・・)
この本も、まさにこのようなテーマの本だといえます。(そんなに抽象度が高いわけではありませんが)

もくじを。

序章 価値創造の構造と基軸
第1章 価値創造を語る ~福原義春、小林陽太郎、井関利明
第2章 相対から絶対の競争へ ~坂田藤十郎+野中郁次郎、中谷巌、嶋口充輝
第3章 市場原理と人間原理の綜合 ~野中郁次郎、槍田松瑩
第4章 環境変化への柔軟かつ機敏な対応 ~竹内弘高、武藤信一、前田新造
第5章 社会に対する価値創造 ~伊藤邦雄、大星公二、寺島実郎
第6章 イノベーションへの情熱 ~宮田秀雄、米倉誠一郎、岩田彰一郎
第7章 価値創造の実践 ~岩沙弘道、藪土文夫、長島徹
第8章 価値創造のリーダーシップ

本書はフォーラムでの講演を元に書かれていますので、内容は思ったほど難解ではありません。むしろ、この手の本の中では、わかりやすい、読みやすい本ではないかと思います。

将来的に、いわゆる「上」を目指す方には、ぜひ本書は読んでいただければと。。。
やはり経営は、テクニックではなく、考え方・志だと思うんですよね。
「まえがき」から、本書のスタンスをご紹介しておきます。

未来の経営は、ますます量から質の経営に移行し、そこではかつてのような戦争型の相対競争時代から社会や顧客の価値を追求する絶対競争の時代になる。この絶対価値の創造と追求は、時代の進展とともに新しい形態となって出現するため、絶えざるイノベーションが不可欠になる。しかし、企業はそのイノベーションの実行においても、自らの経営の型を常に確認・精緻化し、市場原理と人間原理を統合・融合させながら永続性を追及する。ここにこそ未来の日本的経営の美学がある。

『マーケティング優良企業の条件』

マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦 マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-01

「エスノグラフィという手法」という記事で、手法は手法として大切だけれども、リサーチの結果を使いこなす体制も重要だということを書いたと思います。
この点について、ケースで学ぼうというのが、本書のテーマです。

取り上げられている9社は、あちらこちらで取り上げられたり、語られたりしている優良企業といえるでしょう。

その9社、もくじで確認しましょう。

序章 マーケティング優良企業を求めて
第1章 マーケティングリテラシーのための論理
第2章 調査の独立性が意味すること(花王:調査部)
第3章 市場情報を循環させる「心臓」(資生堂:お客さまセンター)
第4章 他社との連携による新製品開発(アスクル)
第5章 失敗から学ぶ組織文化(サントリー:マーケティングサポートセンター)
第6章 情報の多重展開(積水ハウス:納得工房)
第7章 経路依存的に構築される仕組み(カルビー:営業部門)
第8章 反応スピードを加速するSAPS(ユニ・チャーム)
第9章 マーケティングの持続力(ネスレコンフェクショナリー:「キットカット」)
第10章 ターゲットを絞り込んで反応する(松下電器産業:「レッツノート」)
終章 市場への創造的適応

いかがですか?いくつのケースをご存知でしたか?
結構、知っているケースばかりかもしれません。逆にみると、マーケをやっているなら知っておくべきケースばかりとも言えるかもしれませんが。。。

本書のテーマは、「市場志向の組織と戦略」です。
表紙とびらの折込から引用します。

マーケティング優良企業9社の市場情報の活用と展開の仕組みを徹底解剖

・把握
市場調査の結果などが組織的に理解され、
必要な時に必要な形で把握されているか?

・普及
市場から集められた情報が、
マーケティング部門だけでなく、
製品開発部門などの組織全体に行き渡っているか?

・反応
反応すべき顧客の声を見極め、
適切な意思決定やマーケティング展開に活かしているか?

これらを組織的に展開できている企業が、市場の声に応え続けられる強い企業であるという結論になります。
引用したいポイントも多かったのですが、本書を読んで、皆さんご自身で確認してください。

そして、ケースを読むときの注意点を。
ケースは、あくまでケースであり、この本に書かれているケースと同様のことを実施したからといって決してうまくいくとは限りません。むしろ、失敗することが多いのではないかと思います。(同じことを実施すること自体が、まず難しいのですが。。。)
ケースは、その背景にある考え方を理解するためのものだと思います。何をやっているのか、どうやっているのかといった表層ではなく、何を目的に、キーとなるポイントは、を見つけることが重要だと思います。
学ぶのは「方法、ノウハウ」ではなく、方法『論』である、という気持ちで。