日別アーカイブ: 2008-02-03

「ユーザーの体験を設計する」~エスノグラフィという手法

標題の『ユーザーの「体験」を設計する』は、日経エレクトロニクスの2008.1.28号の特集タイトルです(詳細は、↓のHPで)。

日経エレクトロニクス2008年1月28日号

詳細は、本誌を購入していただくとして。。。
(実は自分もまだ未読です、購入ボタンはクリックしましたが。いわゆる思惑買い。なので、以下の記事も、HPの内容と「特集の立ち読み」から着想したものです。厳密には、本書の紹介にはなっていないことをご了承ください。雑誌なので、情報鮮度を優先しました。)

特集の背景は、

デジタル機器の分野では、新技術や高い性能、豊富な機能を訴えても、消費者は大した金額を払ってくれなくなった。ネットワークの時代、この傾向はさらに強くなる。「軽薄短小」に代表される技術を起点にした発想から、思考を切り替えない限り、電機メーカーに明るい未来はない。

ということにあるようです。

「SONYのテレビ」と言われてもわくわくしないけど、「Googleのテレビ」と言われると、なんとなくわくわくする。そういうことです。

もうひとつ思い出すのが、「Wii」vs「PS3」。技術的には、「PS3」の方が最先端の技術を搭載しているといわれています。しかし、現実に市場に受け容れられたのは「Wii」。
ユーザーのニーズを、技術が超えてしまっているので、技術優位で製品を開発しても、必ずしも市場に受け容れらることにはならない。まさに、「イノベーションのジレンマ」です。

では、この壁を乗り越えるためには、どうすればいいのか。
消費者の生活に入り込んで、実際に機器をどのように使っているのかを、つぶさに観察し、その中から、インサイトとなる気づきを得て、製品の開発に繋げていくことが必要になります。
そのために注目されている調査手法が、「エスノグラフィ」、民俗誌学の手法だというのです。
主に社会学や文化人類学で使われてきた質的な調査手法、フィールドワークの技法です。(確か、JMRAのデータでも、この手法が注目されているのではないかという仮説に結びつくデータがあったように記憶しています。この点は、あらためて検証してみます。)

ただ、この手法は、実はかなり難しい手法だと思っています。
誰がやっても、同じ答えが得られるかというと、なかなかそうはいきません。この特集でも<手法>として、各社の事例が紹介されているようですが、実際に使いこなすには、それなりの工夫(あるいは人、かもしれません)が必要でしょう。

そして、この特集でもうひとつ強調しているのは、調査で得られた気づきを実現するための<体制>です。『ユーザーの観察から発想を膨らませるだけでは,消費者をとりこにする製品は作れない』ということです。これは、エスノグラフィに限らず、あらゆる調査に付きまとう課題だとも思います。データ、情報だけがあっても、それをどう活かすかは、やはり組織・体制の問題に行き着きます。(この点に関しても、おもしろい本があったので、これも後日紹介します。)

技術オリエンテッドの製品開発に限界を感じている方、ユーザーの「体験」を知るにはどうしたらいいのか考えている方、開発に結び付ける体制はどうしたらいいのか悩んでいる方、このような課題を抱えている方、この特集がヒントになるかもしれません。

関連して、「エスノグラフィ」について、紹介・解説しているHPを紹介しておきます。
(ただし、各社の提供サービスの内容・質については、このblogでは一切、関知しません。単に、「エスノグラフィ」の理解を助けるための紹介であるということを、前提としてご覧ください。)

そういえば↓の本でも、エスノグラフィとはいっていませんが、ケーススタディのひとつとして、ビデオ撮影による調査の事例があげられていました。(完全に学術論文の体裁です)

顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス 顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2005-08

エスノグラフィ的な手法、フィールドワークの技法について、学術的に勉強したい方は、つぎの本を。

フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ) フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2006-12-20

一応、「イノベーションのジレンマ」についても。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press) イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2001-07

【関連エントリー】「マーケティング・エスノグラフィー」(2009.1.9)