標題の『ユーザーの「体験」を設計する』は、日経エレクトロニクスの2008.1.28号の特集タイトルです(詳細は、↓のHPで)。
詳細は、本誌を購入していただくとして。。。
(実は自分もまだ未読です、購入ボタンはクリックしましたが。いわゆる思惑買い。なので、以下の記事も、HPの内容と「特集の立ち読み」から着想したものです。厳密には、本書の紹介にはなっていないことをご了承ください。雑誌なので、情報鮮度を優先しました。)
特集の背景は、
デジタル機器の分野では、新技術や高い性能、豊富な機能を訴えても、消費者は大した金額を払ってくれなくなった。ネットワークの時代、この傾向はさらに強くなる。「軽薄短小」に代表される技術を起点にした発想から、思考を切り替えない限り、電機メーカーに明るい未来はない。
ということにあるようです。
「SONYのテレビ」と言われてもわくわくしないけど、「Googleのテレビ」と言われると、なんとなくわくわくする。そういうことです。
もうひとつ思い出すのが、「Wii」vs「PS3」。技術的には、「PS3」の方が最先端の技術を搭載しているといわれています。しかし、現実に市場に受け容れられたのは「Wii」。
ユーザーのニーズを、技術が超えてしまっているので、技術優位で製品を開発しても、必ずしも市場に受け容れらることにはならない。まさに、「イノベーションのジレンマ」です。
では、この壁を乗り越えるためには、どうすればいいのか。
消費者の生活に入り込んで、実際に機器をどのように使っているのかを、つぶさに観察し、その中から、インサイトとなる気づきを得て、製品の開発に繋げていくことが必要になります。
そのために注目されている調査手法が、「エスノグラフィ」、民俗誌学の手法だというのです。
主に社会学や文化人類学で使われてきた質的な調査手法、フィールドワークの技法です。(確か、JMRAのデータでも、この手法が注目されているのではないかという仮説に結びつくデータがあったように記憶しています。この点は、あらためて検証してみます。)
ただ、この手法は、実はかなり難しい手法だと思っています。
誰がやっても、同じ答えが得られるかというと、なかなかそうはいきません。この特集でも<手法>として、各社の事例が紹介されているようですが、実際に使いこなすには、それなりの工夫(あるいは人、かもしれません)が必要でしょう。
そして、この特集でもうひとつ強調しているのは、調査で得られた気づきを実現するための<体制>です。『ユーザーの観察から発想を膨らませるだけでは,消費者をとりこにする製品は作れない』ということです。これは、エスノグラフィに限らず、あらゆる調査に付きまとう課題だとも思います。データ、情報だけがあっても、それをどう活かすかは、やはり組織・体制の問題に行き着きます。(この点に関しても、おもしろい本があったので、これも後日紹介します。)
技術オリエンテッドの製品開発に限界を感じている方、ユーザーの「体験」を知るにはどうしたらいいのか考えている方、開発に結び付ける体制はどうしたらいいのか悩んでいる方、このような課題を抱えている方、この特集がヒントになるかもしれません。
関連して、「エスノグラフィ」について、紹介・解説しているHPを紹介しておきます。
(ただし、各社の提供サービスの内容・質については、このblogでは一切、関知しません。単に、「エスノグラフィ」の理解を助けるための紹介であるということを、前提としてご覧ください。)
そういえば↓の本でも、エスノグラフィとはいっていませんが、ケーススタディのひとつとして、ビデオ撮影による調査の事例があげられていました。(完全に学術論文の体裁です)
顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス 価格:¥ 3,150(税込) 発売日:2005-08 |
エスノグラフィ的な手法、フィールドワークの技法について、学術的に勉強したい方は、つぎの本を。
フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ) 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:2006-12-20 |
一応、「イノベーションのジレンマ」についても。
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press) 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2001-07 |
【関連エントリー】「マーケティング・エスノグラフィー」(2009.1.9)