月別アーカイブ: 2008年6月

『ネットリサーチ活用ハンドブック』

ネットリサーチ活用ハンドブック―ケースに学ぶマーケティング担当者必携本 (宣伝会議Business Books) ネットリサーチ活用ハンドブック―ケースに学ぶマーケティング担当者必携本 (宣伝会議Business Books)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2008-06

ほんと、リサーチ関連の本が続々と出版されてますね。とくに、ここ1~2年での出版数はかなりのものになるのでは?(このblogで紹介していない本も、もちろんありますので、書店で眺めてみてください)
マーケティング・リサーチを取り巻く環境が大きく変わった、ネットリサーチの普及でリサーチユーザーが増えた、などさまざまな要因があると思いますが、とりあえずはリサーチ関連本の出版が賑わいを見せていることは喜ばしいことなのでしょう。。。
ただ、これだけ増えると内容もさまざま(取り上げている範囲、難易度、説明の深さなど)なので、この点は注意した方がいいかもしれませんね。実際に店頭で手にとって、内容を検討してから購入されることをお勧めします。

さて、今回紹介するのは、↓の本の改訂版といえる本(タイトルを変えていますので、改訂版という印象はないかもしれませんが)。
前回の出版から5年近く、すっかりネットリサーチも普及しています。「実践しましょう(≒使ってみましょう)」から、「活用しましょう」にタイトルが変わるのも、むべなるかな。。。

実践!!ネットリサーチ 実践!!ネットリサーチ
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2003-10-20

あ、前回同様、編集:宣伝会議、監修・編集協力:マクロミルですので。内容はネットリサーチに関する一般的なものともいえますが、マクロミルでしかできないこと&やっていないこともあると思いますし、逆に他社ではできるがマクロミルでは対応していないことは記載されていないかもしれませんので、この点は念頭に。

では、もくじの紹介を。

1.進化するネットリサーチ
2.ネットリサーチ活用の基礎
3.ネットリサーチ実践ワークフロー
4.事例に学ぶ!ネットリサーチ活用法

中でも参考になるのは、やはり「4」の事例でしょう。以下の12の事例が紹介されています。

1.商品開発(ダイキン工業)
2.トラッキング調査(キリンビール)
3.広告効果測定(ユニクロ)
4.日記式調査・写真調査(松下電工)
5.ブランドイメージ調査(ソニーマーケティング)
6.クラスター分析・ホームユーステスト(コンデナスト・ジャパン)
7.レアターゲット・施策に活かす(新潟県庁)
8.モバイルリサーチ(ダスキン)
9.海外調査(ヤマハ)
10.パブリシティ調査(バイエル薬品)
11.BtoB調査(ネクスウェイ)
12.社員意識調査・ES調査(インテリジェンス)

正直に言わせてもらうと、ところどころ、ちょっと気になる記述が無いわけではありません。
しかし、とくに事例をみると、ネットリサーチのくせや限界を理解した上での活用が行なわれているなという印象も、強く持ちました。
たとえば、キリンビールの方のつぎのコメントは、まさに。

「昨今はネット普及率の向上により、だいぶ解消されてきましたが、ネットリサーチは、今でも、居住エリアや年収、価値観などにネットユーザ特有の傾向が見られることがあります。このような特性を踏まえた上で結果を読むことが重要です。トラッキング調査では、前回調査と比較してどのような変化があるのかを見ます。数値が3%なのか5%なのかが重要なのではなく、時系列で相対的な変化を捉えることがポイントですね」

低コスト&スピードがネットリサーチの大きな強みであることはその通りなのですが、このあたりの意識を持って使っているかどうかで、結果が有益な情報になるかどうかの差が出てくるのではないかと思っています。
(これは、ネットリサーチに限ったことではないです。訪問調査だろうが、郵送調査だろうが、会場調査だろうが、あらゆる調査手法はメリットとデメリットを持っているわけですから、このあたりの理解は、リサーチデータを使う人には欠かせない知識だと思います。)

ふだんネットリサーチを利用している方も、今一度、ネットリサーチの限界と可能性を確認してみては?
(すでに十分に理解して活用している、という方には、入門的すぎると思いますが・・・)






「ヤマト運輸と日経リサーチ、サービス産業動向調査を受託」

以前このblogで、↓この2つのエントリーをご紹介しました。

統計調査の民間開放・市場化テストに関する研究会

ヤマト運輸が調査事業開始?!

で、結局「日経リサーチ+ヤマト運輸」で政府統計調査を受託したようです。
ニュース記事と日経リサーチのリリースを紹介しておきます。

ヤマト運輸と日経リサーチ、サービス産業動向調査を受託(NIKKEI NET)

「サービス産業動向調査」実施のお知らせ(日経リサーチ)

「サービス産業動向調査」は、今年から始まる月次統計調査です。
サービス産業化の進展度合を考えると、少々開始が遅かったかなとも思えますが・・・。
調査の詳細については、↓のHPを参照してください。

サービス産業動向調査(総務省・統計局)

さて・・・
この件に関して、いくつかおもしろいペーパーもありましたので、一応紹介を。

最初は、どういう経緯で出されたものか分かりませんが、日経リサーチから政府あてのペーパーです。今回の事業を受託するにあたっての苦労がしのばれます。。。

第14回公共サービス改革小委員会 統計調査分科会の会議資料等
(内閣府・官民競争入札等監理委員会)

(なんだか、おどろおどろしい委員会名ですが・・・)
この中の「資料3」が、日経リサーチからの提出資料です。

そして、サービス産業動向調査を民間委託とすることについての委員会検討資料と議事録。

第9回 公共サービス改革小委員会 統計調査分科会の会議資料等
(内閣府・官民競争入札等監理委員会)

この中の「資料2」で、どのような実査フローが想定されているのか、調査票はどのような内容かがわかります。

この2回の委員会のほかの資料をみるだけでも、統計調査の民間委託案件はまだまだあることがうかがえます。
↓このページで、「統計調査分科会」を追っていくと、統計調査の民間開放の流れや詳細を追えると思います。

内閣府・官民競争入札等管理委員会「過去の更新情報一覧」

これらをみると、統計調査の民間開放は本気のようです。
となると、他の調査会社は、どのような対応をとるのか・・・。今回の日経リサーチはヤマト運輸と組むというスキームを使いましたが。。。
調査会社にとって、「政府統計を実施しているという信用力」と、「売上の大きさ」「安定的な売上基盤」はかなりの魅力ではないかと思います。(利益面はどうかという面がありそうです。ただ、回を重ねることで、ある程度利益率は上がっていくとも思います。)

いずれにしても、日経リサーチには今回の受託調査をきっちり仕上げていただき、これからの統計調査民間開放のよき先例となっていただきたいです。

『マーケティングリサーチの論理と技法・第3版』

マーケティングリサーチの論理と技法 第3版 マーケティングリサーチの論理と技法 第3版
価格:¥ 3,675(税込)
発売日:2008-06

以前ご紹介した『マーケティングリサーチの論理と技法』の第3版が出版されていました。
第2版から、ほぼ4年を経ての改定です。

内容は、ほぼ全面改訂ではないでしょうか?
ページ数は、第2版が368ページだったのに対し、第3版は472ページと、なんと100ページの増加!構成も第2版とは大幅に変更になっており、もはや別の本といってもいいくらい改定が施されていますので、第2版を持っている人が改めて購入しても損はないと思います。
(ただ、第2版も手元に置いておいた方がいいかもしれません。実験法など、今回の改訂で削除されている項目もありますので。ちなみに、第2版の紹介は、こちら にエントリーしてますので、もくじを比較してみてください。)

ということで、もくじを紹介しておきます。

第1部 マーケティングの考え方とマーケティングリサーチ
 第1章 マーケティングとは、マーケティングリサーチとは
 第2章 マーケティングリサーチの新しい動き
第2部 マーケティングリサーチのプロセス
 第3章 調査計画書の作成
 第4章 調査票の設計
 第5章 母集団・標本・サンプリング
 第6章 データの集計
 第7章 分析・報告書の作成・プレゼンテーション
第3部 マーケティングリサーチの手法
 第8章 定性調査とGI
 第9章 定量調査のデータ収集方法と特徴
 第10章 インターネット調査
 第11章 サービス業にとっての調査
 第12章 B2B調査
第4部 マーケティングリサーチの2つの専門技法
 第13章 区間推定と有意性検定
 第14章 多変量解析
第5部 マーケティングリサーチの応用
 第15章 新製品開発のためのマーケティングリサーチ
 第16章 市場とブランドに関するマーケティングリサーチ
 第17章 マーケティング・コミュニケーションと広告に関するマーケティングリサーチ
 第18章 マーケティング・リサーチの管理

この4年間での、マーケティング・リサーチを取り巻く環境がいかに変化したかを感じさせられる構成・内容です。著者が「まえがき」で書いている以下の考え方に、同感です。

こういった構造変化(owl注:インターネット調査へのシフト)は、リサーチャーのみならず、調査結果を利用するマーケターの意識やデータの利用の仕方にも影響を与えている。著者が見る限り、品質至上主義・統計学重視から意思決定至上主義・認知科学重視へ、さらに、調査報告を時間をかけてつくりあげる気風から情報をリアルタイムに処理する方向に、それぞれ重心が移ってきているようである。

インターネット調査については、10章で34ページを費やして、丁寧に検証しています。ほぼ同じ論点で論文を書ければと思っていたので、ここで書かれている視点についても、同意です。(内容については、購入してお確かめください)

もくじをご覧いただくとお判りいただけると思いますが、第2版に比べ、かなり網羅性が高まっています。ただ、マーケティング・リサーチに関することを、これだけ網羅的に詰め込むと、一方で内容の深さは犠牲にせざるを得ません。
ですので、マーケティング・リサーチの全体像とポイントについて、この本で押さえた上で、それぞれの個別テーマについては、さらに専門的な本でカバーしていくのがいいと思います。

おすすめです。

【追記:2010.4.15】

さらに、第4版が出版されています。

マーケティングリサーチの論理と技法 マーケティングリサーチの論理と技法
価格:¥ 3,465(税込)
発売日:2010-03

雑誌『プレジデント』石井先生のコラム part2

以前、雑誌『プレジデント』での石井淳蔵先生(前・神戸大学、現・流通科学大学)のコラムを、マーケティング・コラム(備忘録) としてまとめました。
その後も、エントリーが増えているようなので、ふたたび備忘録として整理しておきます。
いずれも、雑誌『プレジデント』のHP へのリンクです。
(もしかしたら、前回とダブリがあるかもしれません。今の私の関心でピックアップしてますので・・・)

消費者の生活に深く入り込む「経験価値マーケティング」(2006/1/30)

マス・マーケティングの反省の中から生まれたのが、ブランド・マネジメントである。しかし、その落とし穴はブランドのアイデンティティの議論が抜け落ちてしまうことにあった。そこで筆者は、「経験価値マーケティング」という新しい手法を提案する。

競争優位の切り札「知識のダム」効果とは(2007/4/2)

優秀な営業マンを何人かき集めても、つくることができない力──。
積水ハウスの「納得工房」での取り組みを例に、筆者は、競争優位の第三、第四の条件を提示する。

成長持続の鍵「マーケティング・リテラシー」(2007/6/4)

独立したリサーチ部門をもたなければ、マーケティングの経験を長期的に蓄積することは難しい。筆者は、「マーケティング・リテラシー」を改善する手法を提案する。

「米国流マーケティングマネジメント」の限界(2007/7/30)

P&G、ナイキといった米国企業の成功の背景には、マーケティングへの大規模な投資がある。がしかし、流通市場が異なる日本において、その手法を応用することは難しいのだ。

営業効率をあげる市場プロセスマネジメント(2007/10/1)

消費者や取引相手と共生的な価値をつくるにはどうすればよいか。
筆者は、市場のプロセスをマネジメントする方法論を紹介する。

ブランドの健康管理「プロセス・マネジメント」の効能(2007/12/3)

不特定多数の顧客を相手にするとき、企業がとるべき戦略とは何か──。
筆者は、ブランドを場とした「プロセス・マネジメント」が、そのカギを握ると説く。

「関係の脱構築」で予想外の感動を起こせ(2008/2/4)

フランスの哲学者ジャック・デリダが唱えた「脱構築」という理論。
筆者は、これをビジネスの世界に応用することによって、「共生的価値」が生まれると説く。

7社の事例に見るマーケティング優良企業の条件(2008/3/31)

マーケティング戦略の優れた企業に共通するキーワードは、「市場志向」だ。
では、「市場志向」とは何か?筆者は、三つのプロセスからそれを解明する。

本質を見抜く力「ビジネス・インサイト」を磨け(2008/6/2)

ある一つの事象から、新しいビジネスの価値を生み出す能力──。
筆者は、二つの事例を交えて、この能力を身につける方法論を説く。

いずれのコラムも、先生の最新共著である、↓の本と主題は一緒かもしれません。
(この本についての、エントリーは →こちら にありますので、参考にしてください。)

マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦 マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-01

それと・・・
石井先生が以前書かれた本で、ぜひ紹介しておきたい本があるので、あらためてエントリーをすることにします。