サントリー 知られざる研究開発力―「宣伝力」の裏に秘められた強さの源泉 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2006-11-03 |
理論ではなく、もう少し事例よりの本も紹介しておきます。
ここ数年、「伊右衛門」や「-196℃」「ザ・プレミアム・モルツ」など、ヒット商品が続くサントリーですが、その研究開発がどのように行われてきたのかを紹介した本です。
これまで、サントリーといえば宣伝広告力に焦点があてられることが多かったですが、本書は研究開発の視点で書かれています。
取り上げられているテーマ(商品)が多いので、それぞれについては食い足りない面もありますが、やはりいくつかのところで、リサーチが活用されていることが見て取れます。
もくじは、つぎのようになっています。
第1章 「伊右衛門」の記録的な快進撃
第2章 プレミアムビールで躍進するビール事業
第3章 「-196℃」が低アルコール飲料市場を拡大
第4章 トップブランドを急追する「BOSS」
第5章 急拡大が続く健康食品事業の戦略
第6章 世界で初めて咲かせた「青いバラ」
第7章 水と生きる-佐治信忠社長に訊く
この中でおもしろいのは、やはり「伊右衛門」でしょうか。
消費者調査のどのようなファインディングから「福寿園」との共同開発に至ったのか、味に対する消費者ニーズをどのように商品として成立させていったのか、ネーミングはどのように決定していったのか、などが明らかにされています。
中でも、共同開発者である福寿園の主任研究員が語るつぎの言葉に、やはりトップメーカーのリサーチに対するスタンスが、うかがえると思います。
私たちも消費者調査をしますが、今回のサントリーさんほど徹底してやることはありません。私たち生産者が考えて作ったお茶商品を「これでどうですか」と提案する形で販売してきましたが、サントリーさんの商品づくりは違うと痛感しました。お客様の声をこれほど執拗に聞きだし、それを商品開発に反映させようとする執念には圧倒され、凄みすら感じました。その一方で、お客様はお茶の専門家ではないので、お客様の主張をそのまま反映するわけではなく、お客様の意見を入れながらも、それによって変わるバランスをより高い次元でまとめていく。その味はお客様にとっても、新たな驚きや納得感になるというわけです。このあたりの執拗な改善努力はすばらしいと思いましたね。
このような企業本につきまとう「まとまり感」「きれい感」はありますが、リサーチを徹底的に行い、しかもただ「聞く」だけではない、振り回されない。この姿勢こそが重要だと思います。
やはり、「新たな驚きや納得感」を、リサーチを使いながら、どのように出していくのか。
ここがリサーチが使える、使えないの差になるのではないでしょうか。
「伊右衛門」だけに焦点をあてた本も出ているようです。
興味のある方はこちらもどうぞ。
(ただ、どの程度開発について明らかにされているかはわかりません。。。)
なぜ、伊右衛門は売れたのか。 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2006-04-20 |