P夫 今日は、マーケティング・リサーチや調査を「頼む」側が、調査会社とどうつきあうべきか?、でしたよね。
owl そうだね。ただ、私の話からはじめても、「調査会社に都合のいいように言っているだけでしょ?」といわれるかもしれないので、いくつかの本を参考にしながら考えていこう。
最初は、「マーケティング・リサーチの論理と技法」という本から。この本の著者は、広告代理店やメーカーでマーケティング・リサーチを実務として経験してきた方なんだ。この本の中で、調査会社を管理運営する上での心得として、つぎのように書いている。
調査会社とのコミュニケーションを密にして、相手に自分のためにやってやろうという意欲を持ってもらうことが、何よりも大切な管理運営上の心得である。管理は厳しくすべきであるが、相手の意欲を低下させないように心がけたい。
1.自社のリサーチャーが調査会社に対して、すべてのリサーチプロセスにおいて、正しい方向付け・ディレクションを実行する。ディレクションの悪さが、相手の作業のやり直しやスケジュールの遅れをよび、労力、時間、経費の無駄になり、相手からの信頼も損ないやすい。
2.調査会社に対し、調査の結果が自社のマーケティングの展開に生かされている点を可能な限り相手に説明する。そのことは、リサーチャーの職業的喜びを充たせるかもしれない。
3.調査会社との共同研究作業を実施する。
また、『リサーチ業務を正しく効果的に遂行し、意味のある調査結果をフィードバックしていくには、マーケターに期待することが少なくない』として、つぎの7つのポイントをあげている。ここでの「リサーチャー」は、調査会社にいる人間ばかりでなく、自社内のリサーチセクションの人もイメージしていると思うので、調査会社との付き合い方とは少し異なるかもしれないけど、大切なことを指摘しているので、紹介しておくよ。
1.マーケターは、リサーチャーを従属関係におくのではなく、対等のパートナーであることを十分に認識すること
2.マーケターは、リサーチャーが効果的に業務を遂行できるように、つねに必要な情報を継続してインプットしていくこと
3.マーケターは、調査企画時に、リサーチャーとの間で十分な時間を設け、解決すべきマーケティング問題、リサーチ目的、調査結果の活用法などを検討すること
4.マーケターは、積極的にグループインタビューや調査票の点検に立ち会うことによって、消費者の生の声を発見するとともに、リサーチャーの主張を理解できるようになること
5.マーケターは、マーケティングの一番バッターはリサーチャーであることを認識し、彼らからの提案を尊重すること
6.マーケターは、調査結果のほとんどは、自分たちの常識(仮説)の確認であることを承知しておくこと
7.マーケターは、リサーチャーから奇跡や救済を求めないこと
6や7は、言いえて妙だね(^^;。
なかなか、ここまではっきりと書いているものは少ないけど、ある意味真実だと思うよ。
つぎは、「マーケティング・リサーチはこう使え!」という本から。この本の著者も、大手広告代理店のリサーチディレクターで、現場で常に調査会社と付き合っている人だね。
この本の8章が「調査会社に依頼する際のポイント」となっていて、具体的な事例を交えながらポイントを整理しているんだけど、ここではとりあえず見出しだけを引用しておくよ。具体的な内容については、直接本を読んでもらう方が理解できると思うので。
・まずは、自分で企画の大枠を考えてみる
・どの調査会社と組むかで雲泥の差
・問題意識、狙いを明確に伝える
・提案を受ける/一緒に考える/そのための「ゆとりあるスケジュール」
・予めアウトプットイメージを共有する
ふたつめの「どの調査会社と組むかで雲泥の差」では、以前このブログで取り上げたことと一緒のテーマだけど、内容は近いものがあると思うから、ほっとしている。。。
どうだろう?イメージできたかな?
P夫 とにかくコミュニケーションを密にして、課題や問題意識、アウトプットを共有しながら作業を進めることが大事だということですね。それと、ディレクションをしっかりと、かな。
owl そう、その2つがポイントになる。
まずは、コミュニケーション。よくあるパターンが、「黙って言われたとおりにやればいいんだ」というスタンスで、自分の考えだけを押し付ける人。それと、最初に課題や目的、アウトプットの共有をせずに、調査会社から提出されたものについて、あれこれと文句をいう「後出しジャンケン」のパターン。これは、調査会社の意欲を失わせることになるから、このような言動は慎んだ方がいい。
それと、ディレクション。調査会社から事前に確認を求められているにもかかわらず、実査ぎりぎりになってから、ここを直せ、あそこを直せと言って来るパターンも、少なく無いんだ。これをやられると、調査会社にとってはそれまで準備してきたものがすべて無駄になってしまうし、短い時間でやり直しをしなければいけないので、当然ミスも発生しやすくなる。調査会社のスタッフだけでなく、調査員さんが必要な場合とか、グループインタビューの対象者をお願いしていた場合などは、「なんていい加減なんだ」と思われることで、彼らの協力の意欲も阻害してしまう。だから、急なスケジュールや内容の変更は、百害あって一利なしなんだ。調査は、始めるまでに結構ろいろな準備が必要になるから。紹介した2人の著者もいっているように、きっちりとしたディレクションとゆとりをもったスケジュールは、とても大切な要素になる。
P夫 そうはいっても、すぐに調査したいとか、上司に確認したら変更が必要になったということも少なく無いですよね。。。
owl そうだね、その点は調査会社も理解しているよ。だから、程度問題でもあるし、やはりコミュニケーションとディレクションだよね。詳細は決まっていなくても、これくらいの時期にこんな調査をやる予定があるとか、いつまでには内容を必ず詰めると連絡するとか、そんなやりとりをすることで、お互いの信頼関係は高まると思うんだ。
P夫 それに、調査会社の方も、大切なことを言ってこなかったり、聞いてこなかったりということもありますよ。
owl それも否定しない。調査会社も、結構コミュニケーションが下手なところはあるからね。。。
けれど、お互いに、「相手が悪い」と言い合っていても仕方がないと思うんだ。調査を頼む方も、頼まれる方も、コミュニケーションを取りあっていく、それしかないよね。これは、調査に限らず、ビジネスの基本だと思う。
ただ、いくら情報を共有しても、それに対する意見を言ってくれなかったり、相手の指示を待つだけの調査会社や人がいることも事実だけど。その場合は、あきらめて他の会社や人を探すか、あるいは一から十まで指示を与えるしかないんだけどね。。。
P夫 そうですね。。。よく、覚えておきます。
Q子 あの・・・。これからリサーチ会社に入りたいと思っている、私のような人が心がけることってないんですか?
owl そうか(^^;
このブログも、就職でマーケティング・リサーチ業界に入りたい人が、結構見に来てくれているようだし、つぎは、リサーチ業界に入りたい、調査会社への就職を考えているという人達へのメッセージを話そうか。
Q子 はい、お願いします!