月別アーカイブ: 2007年1月

世界のリサーチ企業ランキング

世界での、リサーチ企業売上高ランキング(2005年時点)が、JMRAのホームページにありましたので、参考までにリンクしておきます。

世界売上高トップ企業25(2005)

興味のある方は、こちらを参照してください。

【追記:2007/2/7】

このリストをみて、「ニールセン」がない、と思われた方がいらっしゃると思います。
ニールセンは、トップのVNUグループが買収していたので、ランキングには出てこなかったのです。
ところが今年、VNU社が社名を「Nielsen」に変更していたようです。
VNUといわれてもどんな企業?と思いますが、Nielsenといえばリサーチ会社としてのブランド力は高いですから(世界的にも、そうだったということのようです)。
リリースは、こちら↓を参照してください(英語です)。

VNU Changing Name To The Nielsen Company

(この追記は、Survey MLの萩原さんの投稿<2007/2/7>を参照させていただいています。)

【追記2:2008/5/1】

2006年のランキングを、こちらの記事に投稿しています。

『経営戦略を問いなおす』

経営戦略を問いなおす 経営戦略を問いなおす
価格:¥ 735(税込)
発売日:2006-09

前のエントリー(「業界再編の予感・・・」)で、「対して、民族系(日本資本という意味)・独立系・非装置系のリサーチ会社は、どのような戦略を描くのか・・・。」などと書いてしまいましたが。。。

では、「戦略」とはなんぞや?

買ったままで未読だったこの本を思い出し、さっそく。
すでに多くのblogでも紹介されていますので、詳しい内容については、つぎのblogなどをあわせてご覧ください。

経営の戦略と自らのビジネスライフ戦略(大西宏のマーケティングエッセンス)

経営戦略を問いなおす(Outlogic)

自分自身、これまでも戦略系の本を多少かじってきましたが、これまでのものに比べ、腑に落ちることが多かった本です。
いつものように、まずもくじから。

第1章 誤信
     1.いつでも誰でも戦略?
     2.何が何でも成長戦略?
     3.戦略はサイエンス系?
第2章 核心
     1.立地
     2.構え
     3.均整
第3章 所在
     1.戦略は部課長が考えろ?
     2.我が社には戦略がない?
     3.戦略は観と経験と度胸!
第4章 人材
     1.企業は人選により戦略を選ぶ
     2.傑物は気質と手口で人を選ぶ
     3.人事は実績と知識で人を選ぶ
第5章 修練
     1.文系学生に送るメッセージ
     2.中堅社員に送るメッセージ
     3.幹部社員に送るメッセージ

このもくじ、きちんと「?」と「!」の使い分けには注意してみてください。でないと、著者が伝えようとしていることと逆のメッセージを受け取ってしまうので。

引用したい箇所が多すぎます。
それだけ、「つぼ」にはまった本です。
「戦略」とは何か?、そして、日常的に組織で行われている「戦略論」というものが、いかに本質をはずれたものであるかを納得させられます。(ただし、少しは社会人経験があり、組織・企業というものの不可思議さや理不尽さを経験していないと、この本のほんとのよさはわからないかもしれません。。。)
それは、『既存の戦略論が形から入る一般論だとすれば、これは戦略の現場から発想した実践論のつもりです』(「あとがき」より)、だからでしょう。

本文からの引用は難しい(長くなる)ので、著者自身が各章の扉でまとめているエッセンスを中心に、いくつかを紹介します。

・本当の戦略は、戦略の限定性を認識するところから始まる
・本当の戦略は、売上を伸ばすことを目指すものではなく、売上を選ぶもの
・本当の戦略は、主観に基づく特殊解
・戦略とは、「立地」「構え」「均整」
・戦略を実行部隊に委ねるのは話が違う、戦略まで決めろというのは行き過ぎ
・日本企業は、本社経営陣とミドルに挟まれた事業部長の職に矛盾が集中
・戦略は次々と飛び込んでくる情報への処し方で決まる
・戦略は頂に座する人(=経営者)に宿る
・戦略が人に宿るとすれば、戦略そのものを選ぶことはできない、そのかわり、人を選ぶことで戦略を間接的に選ぶという図式が成立する
・人選の基準は、幼少期や学齢期に身につける「気質」と、30代の仕事を通して身につける「手口」
・学生時代にしかできないこと、それは一般教養を体系的に身につけること
・愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
・経営職を目指すならば、中堅社員と呼ばれる時期(30代前半)に、個人としての精神の自立を遂げておくべき
・いくら今いる世界が地盤沈下を起こしていても、そこが知り尽くした明るみである以上、人はなかなか暗闇(無知の世界)へ足を踏み入れようとはしない⇒ジリ貧へ

そして、著者の戦略論の本質。それは、「経営の営為」が「結果(業績)」につながるということではなく、『結果につながる本当の原因は、営為の背後に控える「事業観」にあるのではないかという見方が浮かんできたのです』(「あとがき」より)。
だから、「戦略」を語れるのは、事業観をもった経営者だけだといえるのだと思います。

いかがでしょう?
少しでも興味をもたれた方は、ぜひ本書をお読みください。
決して、読みにくい本ではありませんので。
(大西さんのblogにあるように、自分のビジネスライフ戦略のために読むのも、有益だと思います)

(少し、寄り道してしまいました。次回からは、寺子屋に戻ります。今週中には・・・)

業界再編の予感・・・

このblogでも、何度かマーケティング・リサーチ業界は再編すべきではないかというような事を書いてきましたが、ここにきてその予兆が、かなり現実的なものになってきたといえそうです。
(かなり長いエントリーですが、業界再編論については、こちらをご覧ください。)

■予兆その1

本日(2007年1月24日)、Yahoo!(ヤフー)社から、つぎのようなリリースが発表されています。

株式会社インタースコープの株式の取得(子会社化)に関する基本合意について

Yahoo!社は、すでに一昨年、インフォプラントの株式も取得しています。

株式会社インフォプラントの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

さらに、その前(2002年)には業界最大手のインテージと、新会社を設立しています。

Yahoo! JAPANがインターネットリサーチ事業の新会社「インテージ・インタラクティブ」を設立

さすがYahoo!社というべきでしょうか、機を見るに敏、疾(はや)きこと風の如し。

ただ、よくわからないのは、子会社化してシナジーが得られるのかということ。Yahoo!単独でも、事業部として活動を行っているようですし、4社が並列に営業をしたり、システムを抱えていても無駄ではないかと。。。
それぞれの関係がどうなっているのかは、中にいないのでわかりませんが、1社に統合すればこそ、4社のパワーが発揮できるのではないかと思います。
Yahoo!のモニター構築・管理力と顧客基盤、インフォプラントのシステムとネットリサーチ先駆者としてのノウハウ、インタースコープの分析力、インテージのマーケティング・リサーチ理解力。(ただ、インテージはこのグループに入らなくても、単独で世界のマーケティング・リサーチ業界で11位ですが・・・)

とくに今回は、以前からHPを見ていて、研究・開発力に一目置いていたインタースコープだけに、今後このグループがどのような展開を見せるのか、注目してみていきたいです。

■予兆その2

「その1」は、インターネット・リサーチ業界主導の再編ですが、そういえば海外主導の再編もあったなと思い、リサーチ・インターナショナルになったのはいつ頃だったかを確認するためにHPに行ってみたら、つぎのようなリリースがありました。

Research International in Japan becomes part of Japan Kantar Research

少し前には、やはり世界的なリサーチ会社であるテイラー・ネルソンも、こんなリリースを。

TNSとインフォプラン、合併に合意

また、少し古くなりますが、2005年には日本での古くからのリサーチ会社であった日本統計調査社も。これは、結構衝撃的でした。

IPSOS グループへの参加について

世界トップ10のリサーチ企業で、日本に参入していない会社があるかどうか・・・。
ここらへんの事情はあまり詳しくないのですが、やはりクライアントのグローバル化と相俟って、国際的なリサーチ業界の再編もまったなしというところのようです。
(すでに、終わっているのか?)

■考察・・・

このように、マーケティング・リサーチ業界は、確実に再編の過程にあるといえそうです。
その主導権を握っているのは、インターネットリサーチ会社と外資系リサーチ会社。

おそらく今後、日本での業界TOP10は、断トツ1位のインテージ、インターネットリサーチの雄・マクロミルとYahoo!グループ(ただ合計売上とはならないので、ランキングには上がってこないと思います)、外資系リサーチ会社グループのカンター、TNS、ACニールセン(業界団体に加盟していないので正確な売上はわかりませんが)、IPSOS、そして親会社のしっかりしているビデオリサーチ、電通リサーチ、日経リサーチということになるのでしょう。。。

対して、民族系(日本資本という意味)・独立系・非装置系のリサーチ会社は、どのような戦略を描くのか・・・。
クライアントにしてみれば、調査手法によってリサーチ会社を使い分けるのではなく、一社に大半のリサーチを任せることのできる実査力・技術力を持ち、コンサル的な機能をも果たしてくれる日本資本の総合マーケティング・リサーチ会社も望んでいると思うのですが。リサーチの実施には、クライアント理解力も重要な要素ですので、真のパートナーとなり得る会社を望んでいると思うのです。
それに、資本力。上記のTOP10企業の資本力との差を考えると、現状のままでは、新たな手法・分析研究や、海外展開(とくにアジア)、さらに進むリサーチのIT化へ対応する資金、人材・・・、どれをみても差をつけられるばかりになるのではと思います。
ここはひとつ、合従連衡して、「日本資本の総合マーケティング・リサーチ会社」を目指す動きにならないだろうかと期待(妄想?)しています。
(ただこの際、ネットリサーチ会社も巻き込まないと、意味ないですが。)

民族系・独立系・非装置系のリサーチ会社が取りうる、もうひとつの選択肢も、あるにはあります。実は、こちらの方が現実的ですが。
おそらく、マクロミル、Yahoo!がつぎに考えるのは既存の調査手法をベースとした会社の買収・連携だと思うのです。そうすることで、リサーチノウハウを手に入れ、総合リサーチ会社として飛躍できますから。
また、海外資本のリサーチ会社にしても、まだまだ規模を拡大していく志向もあるかもしれません。
自ら動くことなく、このような流れ(買収?)に身を任せていれば、ある意味、安泰でもあります。(彼らの選択肢に入れば、ですが。)
ただ、この時に、1970年前後から培ってきた各社のリサーチに対する知見やノウハウが、どの程度、顧みられるのか。経営を支配できるのは、当然、買収する側ですから。
この点に、一抹の不安がないではありません。。。

(「考察」に関しては、執筆者個人の私見であることをお断りしておきます。)

追記(2007.1.26):
『マーケティング千日回峰』さんのblogでも、少し異なる視点からエントリーされています。
こちらもご参考ください。

⇒ 『ネット調査業界再編か』

調査の目的とタイプ?

Q子 今日のテーマはなんですか?^^

owl 調査・リサーチの分類について。とくに、リサーチテーマの視点からみた分類。
前回、「目的にあわせてリサーチをしないといけない」といったよね、そのことについて。
さてP夫君、調査・リサーチって、どのように分類できると思う?

P夫 ネット調査とか、グルインとか、CLTとか、そういうことですか?

owl 確かに、それも調査・リサーチの分類方法のひとつだよね。
では、質問を換えてみるよ。調査・リサーチするとき、どんな目的ですることがあるかな?
商品開発とか、消費者調査とかじゃなくて、大きな括りで考えると。

P夫 え・・・。う~ん・・・。定量調査と定性調査?

owl それも、違うな。では答え。
マーケティング・リサーチの教科書的な本でよくあるのは、

・探索的リサーチ
・記述的リサーチ
・因果的リサーチ

の3つの分類方法だね。前に紹介した「マーケティング・リサーチの理論と実際」でもこの分類方法を使って章立てしている。
でも、正直なところ、私にはこの分類はいまひとつぴんと来ない感じがあるんだよね。。。

Q子 どんなところですか?確かに、名前だけみてもよくわかりませんけど・・・。

owl なんと言ったらいいかな・・・。まず、記述的リサーチがよくわからない。
説明をみると、『検証的なリサーチのひとつ。何らかのもの-通常、市場の特徴や機能-を記述することが主な目的である』(「マーケティング・リサーチの理論と実際」)とあるんだけど、わかったような、わからないような。まず、どうしてこれが「検証的」なのかがわからないんだよね。それと、記述するって何?どういうこと?って感じ。
で、因果的リサーチ。これは、『検証的リサーチのひとつ。因果関係の証拠を得ることが主な目的である』(「マーケティング・リサーチの理論と実際」)とあるんだけど、因果関係といわれると仮定が強すぎるように感じて、しっくりこない。

P夫 そういわれるとそうですね・・・。そもそも、因果関係とはなんぞやというところから勉強しないと、なんともいえませんけど^^;

owl そこで、自分なりの分類をしてみたんだ。

・実態把握型
・仮説探索型
・仮説検証型

の3つ。

P夫 言葉としては、なんとなくイメージしやすくなったかも。。。
実態を把握する、仮説を探す、仮説を検証する、ということですよね。なんとなく、リサーチのフローにも合っているような気がするし。

owl そう言ってくれるとうれしい^^

Q子 で、それぞれは、どのような調査・リサーチになるんですか?

owl うん、比較的、読んで字の如しではあるけど。

まず、「実態把握型リサーチ」。
これは、さっきの分類でいうと記述型に近い。いまの市場がどうなっているのか、消費者がどうなっているのか、自社のブランドや商品はどうなっているのか、競合との比較ではどうなのか、といったように、とにかく実態を把握しようというタイプのリサーチ。比較的、広く浅く、実態をみてみようという感じかな。何を始めるにしても、まず、実態がわからないと、何から手をつけるべきかわからないからね。
調査手法としては、やはり定量調査で、きちんと数字で押さえることが必要になるね。
いろいろな調査会社やシンクタンクで販売しているデータも、基本的にはこのタイプに分類されると思う。

P夫 うちでは、あまりやっていないかな・・・。あ、商品開発の前なんかにやっているかな。それと、商品を販売した後や広告を出した後で認知率を調べたりしてる。これなんかも、そうですよね?

owl そうだね。確かに、実態把握型だと思う。
けど、必要に迫られて、その都度やっているんでしょ?それでは、せっかくの実態把握型調査も、威力半減になるような気はするけどね。。。

P夫 なんでですか?

owl 実態把握型の調査・リサーチは、定期的に継続して行ってこそ、意味があると思うんだ。このあたりは、また日をあらためて説明するけど、どうしてだか考えておいてね。

つぎに、「仮説探索型リサーチ」。
これは、あるテーマに対しての仮説を開発したり、消費者の本質・インサイトを発見したりというタイプのリサーチ。やっぱり、実態の把握ではあるんだけど、実態把握型よりはテーマを絞り込んだ深いリサーチ、いわゆる洞察を得るためのものと言ったらいいかな。
調査手法としては、インタビューとか、自由回答中心のアンケートとか定性的調査が多くなるよね。ひとつのテーマに対して、深く探ることが必要だし、数字的な確証はまだ必要ないから。それと、オープンデータ(二次データ)分析や専門家に対するヒアリングなんかも、手法としては有効だろうね。

最後に、「仮説検証型リサーチ」。
これは、実態把握型リサーチや仮説探索型のリサーチで得られた洞察に基づいて考えられた仮説について、ほんとうに消費者の支持が得られるのかどうかを検証するための調査・リサーチ。「因果」というほど強い仮定を前提とせずに、とにかく次のステップへ移る前に、いまの段階でチェックをしておこう、というのも含める。コンセプトチェック、プロダクトチェック、パッケージチェック、ネーミングチェック、広告表現チェックといろいろあるよね。
また、狭い意味では、さっきの分類にあった「因果関係」を検証するのもこのタイプと思っていい。
調査手法としては、やっぱり数字的な裏づけが欲しいわけだから、定量調査になる。それも、ある意味、実験的な側面が強くなるから、課題に対する影響要因をコントロールできるような手法が必要になるよね。

Q子 実験的って・・・?

owl それも、日をあらためて。ここで話し始めると、長くなっちゃうから。

P夫 あの・・・。
この、調査・リサーチの分類を知っておくことが、なんで必要なんですか?別に、CLTの注意点とか、それぞれの調査手法別に理解しておけばいいことのような気もするんですが・・・。

owl 確かに、この3つの分類を記述していないマーケティング・リサーチの本も少なくないと思う。でも、

”今回の調査は、どのような目的で行うのか、結果はどう使うのか。そのためには、どんなタイプの調査が必要か。その方法は。”

ということを意識しておくことは大切なことだと思うんだ。そうでないと、実態把握型のリサーチをしているはずなのに代表性をまったく無視したり、仮説探索型のリサーチをしているはずなのにサンプル数に拘ったり、仮説検証型のリサーチをしているはずなのに、要因のコントロールについて全然考えていなかったりということが起こるからね。

P夫 確かに、そうかもしれませんね・・・。グルインって、いろいろな仮説を出すためにやっているはずなのに、%の数字を求められたりすることもあったりしますからね。

owl グルインが仮説探索型と決め付けるのもどうかと思うけど、まあいいや。
もうひとつ、一般的には、実態把握→仮説探索→仮説検証→(上市)→実態把握という繰り返しになっているということも覚えておくといいよ。
実態把握型の調査を継続して市場変化の萌芽をみつける→なぜそうなのかを探索する→仮説をつくる→検証してみる→商品として販売する→計画どおりになっているかどうかを把握するというサイクルだよね。
別に、商品だけでなく、広告やお店の出店とかでも、同じだけどね。
これを、昔からきちんとやっているといわれているのが花王だよね。
それと、この前紹介した本にある『からだ巡茶』『伊右衛門』の事例をみても、このサイクルがきちんと行われていることはわかると思うよ。

Q子 3つの調査・リサーチは、この順番で行えばいいんですね?

owl 「一般的に」と言ったでしょ?
市場について十分に把握しているなら、実態把握や仮説探索はいらないかもしれないし、仮説検証で得られた結果について理解できないような時は、もう一度仮説探索型の調査をやるかもしれないからね。
よく、グループインタビューで仮説をつくってから質問紙調査といわれるけど、質問紙調査をしたけど結果の解釈が難しいと思ったら、そこで探索型のグルインを行うというのも、結構有効な方法だと思うし。少なくとも、勝手な事後解釈をするよりはいいよね。
では、今日のまとめ。Q子さん。

Q子 調査・リサーチには、目的にあわせて、「実態把握型・仮説探索型・仮説検証型」の3つのタイプがある。
調査・リサーチを行う場合は、どのような目的で行うのか、結果をどう使うのかをまず考え、どのタイプの調査・リサーチなのかを決めること。

owl OK!では、次回からはこの3つのタイプについて、もう少し詳しくみていこう。

『サントリー、知られざる研究開発力』

サントリー 知られざる研究開発力―「宣伝力」の裏に秘められた強さの源泉 サントリー 知られざる研究開発力―「宣伝力」の裏に秘められた強さの源泉
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2006-11-03

理論ではなく、もう少し事例よりの本も紹介しておきます。
ここ数年、「伊右衛門」や「-196℃」「ザ・プレミアム・モルツ」など、ヒット商品が続くサントリーですが、その研究開発がどのように行われてきたのかを紹介した本です。
これまで、サントリーといえば宣伝広告力に焦点があてられることが多かったですが、本書は研究開発の視点で書かれています。

取り上げられているテーマ(商品)が多いので、それぞれについては食い足りない面もありますが、やはりいくつかのところで、リサーチが活用されていることが見て取れます。

もくじは、つぎのようになっています。

第1章 「伊右衛門」の記録的な快進撃
第2章 プレミアムビールで躍進するビール事業
第3章 「-196℃」が低アルコール飲料市場を拡大
第4章 トップブランドを急追する「BOSS」
第5章 急拡大が続く健康食品事業の戦略
第6章 世界で初めて咲かせた「青いバラ」
第7章 水と生きる-佐治信忠社長に訊く

この中でおもしろいのは、やはり「伊右衛門」でしょうか。
消費者調査のどのようなファインディングから「福寿園」との共同開発に至ったのか、味に対する消費者ニーズをどのように商品として成立させていったのか、ネーミングはどのように決定していったのか、などが明らかにされています。

中でも、共同開発者である福寿園の主任研究員が語るつぎの言葉に、やはりトップメーカーのリサーチに対するスタンスが、うかがえると思います。

私たちも消費者調査をしますが、今回のサントリーさんほど徹底してやることはありません。私たち生産者が考えて作ったお茶商品を「これでどうですか」と提案する形で販売してきましたが、サントリーさんの商品づくりは違うと痛感しました。お客様の声をこれほど執拗に聞きだし、それを商品開発に反映させようとする執念には圧倒され、凄みすら感じました。その一方で、お客様はお茶の専門家ではないので、お客様の主張をそのまま反映するわけではなく、お客様の意見を入れながらも、それによって変わるバランスをより高い次元でまとめていく。その味はお客様にとっても、新たな驚きや納得感になるというわけです。このあたりの執拗な改善努力はすばらしいと思いましたね。

このような企業本につきまとう「まとまり感」「きれい感」はありますが、リサーチを徹底的に行い、しかもただ「聞く」だけではない、振り回されない。この姿勢こそが重要だと思います。
やはり、「新たな驚きや納得感」を、リサーチを使いながら、どのように出していくのか。
ここがリサーチが使える、使えないの差になるのではないでしょうか。

「伊右衛門」だけに焦点をあてた本も出ているようです。
興味のある方はこちらもどうぞ。
(ただ、どの程度開発について明らかにされているかはわかりません。。。)

なぜ、伊右衛門は売れたのか。 なぜ、伊右衛門は売れたのか。
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2006-04-20

『新製品・新事業開発の創造的マーケティング』

新製品・新事業開発の創造的マーケティング―開発情報探索のマネジメント 新製品・新事業開発の創造的マーケティング―開発情報探索のマネジメント
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2006-12

前回寺子屋で、「調査(リサーチ)は役にたたない?」と題してアップしましたが、開発プロジェクトをどのように進めるのかについて論じている本が、ちょうど出版されていました。
内容は、『主として大学テキストとして、また企業経営者、行政管理官、さらにはこれから事業を起こそうとしている人々などを対象に』と書かれているように、ベーシックに研究開発や新製品開発、新事業開発についてまとめたものです。

もくじは、つぎのようになっています。

序章 プロローグ
第2章 戦略計画と研究開発管理
第3章 研究開発プロジェクトの計画、選択及び評価法
第4章 情報の新しい体系化と戦力化
第5章 研究開発の進め方と考慮すべき要件
第6章 『からだ巡茶』の開発における情報探索
第7章 Webリコメンデーション・エンジンを搭載した商品お勧めサイト
      『教えて!家電』の開発
第8章 ロボットの開発事例-感性と機能からのアプローチ
第9章 製品事故における企業組織内外コミュニケーションとマネジメント
      -M社、P社の一酸化炭素中毒事故を事例に

研究開発や新製品開発についての概論書としてもよくまとまっていると思いますが、「リサーチは新製品開発にどのように寄与するのか?」あるいは「新製品開発に役立つリサーチは?」という視点では、第6章の『からだ巡茶』の開発事例がとても参考になると思います。
開発キーワードの整理、開発与件の整理から、製品化にむけての過程まで、比較的ていねいに紹介してくれています。詳しい内容は、本書をお読みいただくとして、さすが飲料トップメーカーだけあり、いたるところでリサーチを活用していることがうかがえます。

この中で、開発にたずさわった日本コカ・コーラ㈱の経営情報部統括部長のコラムから、今後のリサーチを考える視点となる一文を引用しておきます。

さて、上記の復権は誤解を恐れずに極論すればリサーチの現場に「調査票との決別」、また言い換えれば、リサーチの軸足を「見えるものの計測とその組み合わせによる推計」から、「人間の本質的な共通性の理解とそこに存在するモチベーション仮説の構築」へ移行するという変化を興す。生活者にとって認知、認識できる領域、マーケターにとって理解しやすい領域の中だけでグルグルと表面的な現象を追いかけ回すことよりも、生活者自身も理解・説明困難な領域に果敢に踏み込み、リサーチャー自らがコンテクスト化し、逆に生活者に気づきとして還元することが、製品開発やマーケティング戦略への近道になるからである。「ニーズを創りだすリサーチ」の誕生である。

(*注:「上記」とは、モチベーショナルリサーチ、オブザベーショナルリサーチを指しています)

おそらくリサーチを活用している企業では、あたりまえの視点になっていることだと思いますが、あらためてこのように提示されると、今後のリサーチの方向性がクリアになってきます。決して、対象者に「なにがほしいか」を聞くことだけが新製品開発のリサーチではないということです。

蛇足ながら・・・
ひるがえって調査業界をみるに、このような環境変化が起こっている中で、「人間の本質的な共通性の理解とそこに存在するモチベーションの仮説構築」に寄与する調査技法とか分析技法の開発が行われているのかどうか・・・。
調査業界こそ、この本で研究開発のなんたるかを学ばなければならないのかもしれません。
(ただ、人にしろ、金にしろ、モノにしろ、情報力にしろ、いまの調査業界で資本力のある会社が限られているのも事実です。なので、いつか書いたこともあるのですが、そろそろ調査業界の再編も必要ではないかと思ったりしています。1社ではできないことも、数社が共同で行えばできることもあるでしょうから・・・。)

さらに蛇足・・・
この章の最後に『本製品の開発にあたり、良き議論の相手がいなければ決して成功に導けなかった』謝辞として、関与者の氏名が並んでいるのですが、この中に調査会社は含まれていません。広告代理店やデザイン会社は紹介されているのに・・・。
おそらく、いくつかの調査会社を使っているでしょうし、議論の相手にもならなかったのでしょうが、このような時に、きちんと議論の相手になれる調査会社がないというのも寂しいかぎりです・・・。

調査(リサーチ)は使えない?

owl 2007年も、10日以上経ってしまったね。。。
寺子屋を再開します!

Q子 やっとですね^^

owl うん・・・。なかなか、まとまらなくて・・・。
でも、考えるより走り出した方がいいかなと思うから、再開することにした。

P夫 マーケティング・リサーチの具体的な話に入っていくんですよね?最初のテーマは何ですか?

owl 最初は、テクニックの話ではなく、概論的なところから始めようと思うんだ。
概論といっても、マーケティング・リサーチとは何ぞやといった教科書的なことではなくて、
マーケティング・リサーチ、市場調査を行う上で、はずして欲しくないと思っている視点がいくつかあるから、まず、そのことを理解しておいてもらおうと思う。
テクニックを覚えるよりも先に、このことを理解しておく方が、P夫君のようなリサーチユーザーにとっては大切だと思うから。
で、今日のテーマは、「マーケティング・リサーチ、市場調査は役に立つのか?」

Q子 え?役に立つんですよね?だから、みんなやっているんじゃないんですか?

owl P夫君はどう思う?

P夫 そうですね・・・。正直なところ、よくわからないというのが本音です。自分が、マーケティング・リサーチのことをよく理解していないからだとも思うんですが。。。
実は以前、商品開発では調査をしてもアイデアを得ることはできない、みたいな記事を見たことがあって、確かに、調査をしても商品開発に役立たないというか、結果がはっきりしないというか、そんなことを感じるときもあります。
(記事の詳細はこちら→「新商品開発にアンケートは役立たない」日経BP社ITPro)

owl あぁ、この記事をきっかけに、あるMLでは「調査は役に立つのか」論争になったことがあるね。

Q子 そうなんですか?ほんとに、アンケートではアイデアを得ることができないんですか?

owl それは、断じて違うと言いたい。
まず、この記事の前提にあるように、「アンケート」で「次は何がほしいですか?」と聞いたところで、まともな答えが返ってくるはずがない。けど、これは何も今にはじまったことではなく、以前から同じだと思うけどね。もしも、こんな馬鹿げた質問をほんとうにしているんだとしたら、その会社にはまともなリサーチャーはいないということだよ。
ただ、この記事にもあるように、「顧客にニーズがなくなったわけではない。自分で自分のニーズに気づかなくなってきただけ」という面は確かにあると思うし、この傾向はどんどん強まっている。商品はどんどん高度化・細分化されているし、技術もどんどん進化&深化しているんだから、専門家でもない消費者に、どんな商品がほしいですかと聞いて答えられるはずがない。答えたとしても、すでにあるものだったり、まだ技術的に難しいものだったりするだろうね。

Q子 確かに、何がほしいと聞かれても、答えられないな・・・。カルティエの時計が欲しいとか、ヴィトンの新しいバッグがほしいとかは、答えられるけど^^;
でも、たとえばWiiがでると、「これよ!私が欲しかったのは!」って思うし、売れているっていうことは、多くの人がそう思っているっていうことですよね?

owl そうだね。けど、何がほしいかと聞かれて、Wiiのようなゲーム機が欲しいとは発想できないでしょ?任天堂が、Wiiの開発のときにリサーチをしているかどうかは知らないけど、たぶん「次にどんなゲーム機が欲しいですか?」なんてことは聞いていないと思うよ。
ただ、PS3やX-boxとのマーケティングの違いを見ると、きっと、きちんとした調査はやっているんじゃないかと感じるんだ。PS3は、よくも悪くもソニー的で、マーケティングでも技術偏重的な側面が感じられる。こんなにすごいんです、だからこの価格でもお得なんです、って。
けど、Wiiは、みんなで遊べるんですよ、体を使って楽しめるんですよ、価格もがんばりました、って感じでしょ?けれど、機能的にはWEBにも接続できてインターネットもできるらしいし、ゲーム機以外の機能も結構なものがあるみたいなんだ、持っていないからよくわからないけど(欲しい・・・)。
きっと、Wiiのどんなメリットを訴求すると消費者に「あ!これ!」って思ってもらえるか、この値段だったら買ってもいいなと思ってもらえるかを、リサーチしていると思うんだけどね。もしも、やっていなかったとしたら、プロマネはすごい人だと思う・・・。

P夫 Wiiみたいな、ある種耐久消費財みたいなものだったら、開発にそれなりのお金や時間もかけられると思うから、リサーチも使いようがあると思うんですよ。でも、食べ物とか、家庭用品とか、FMCGと言われる商品だと、ほんとに差別化は難しいですよね。それでも、リサーチって意味があるんですか?

owl そうだね。でも、実際にリサーチを多く行っている業界は、FMCGを扱っている業界だったでしょ?食品とか化粧品・家庭用品とか。ただ、これまでの方法ではなかなか通用しなくなって、新しい方法を模索している面は確かにあると思うけどね。

P夫 それと、調査で購入意向って聞くじゃないですか。あの数字、ほんとに信じていいんですか?よく、調査して購入意向が高かったのに、実際はそれほど売れなかったという話も聞きますけど。。。

owl それは、データをどう読むか、どうマーケティングに活かしていくかの問題だね。購入意向の聞き方にも問題があるのかもしれないけど。たとえば、新しい飲み物の説明が書いてあって、あなたはこの飲み物を買ってみたいですか?と聞かれたら、Q子さんなら、どう答えると思う?

Q子 う~ん・・・、具体的な商品を見せてもらわないとわからないけど、お茶だったらとりあえず買ってみたいって答えるかな・・・。

owl そうだよね。これまでとは違う新しそうな商品で、とりたてて欠点がなさそうに見えるものだったら、だいたいの人は「買ってみたい」って答えると思うんだ。
でも、だからと言って本当に買うかどうかは、なんとも言えない。たとえば、どれくらいお茶が好きな人なのか、いま飲んでいる商品にどれくらいの愛着をもっているのか、新商品にスイッチしてもいいと思っているのか、というようなことまで含めて考えないと、正しい結論はだせないと思うんだ。

P夫 う~ん。。。そんなに考えないと、いい調査ってできないんですか?

owl そう思う。安易に調査をやって、「調査しなくてもわかっていることばかりだ」とか、「調査をしても答えが得られない」とか、「調査の結果なんてあてにならない」とか、そんな議論をされるのは、とても腹立たしい(-"-)

Q子 そんなに、怒らないでください^^;
じゃあ、いい調査をするためには、どんな勉強をすればいいんですか?

owl まずは、目的にあわせて、リサーチを使い分けることだろうね。それと、はずしてはいけないポイントを常に頭の中においてデータをみること、リサーチの限界を認識することかな。
次回からは、このあたりを勉強するね。

Q子 は~い。

P夫 ちょっと、気が重くなってきた・・・。

「NO1」が、そんなにいいのか?・・・

広告βさんは、最近のCMについて、つぎのように書いています。

ほとんどのTVCMが説明口調なんですよ。商品の説明をずっとしてる。つまんない。
なんか最近、その傾向がどんどん増しているように感じます。
(『宣伝部はナンパの厳しさを知っているか』)

ここでいう説明口調のCMには含まれないかもしれないし、もしかしたら広告βさんの趣旨に反するのかもしれませんが、最近のCMでとても気になることがあります。

それは、「○○調査で一番になりました」「みんなに支持されています」というニュアンスのCMの多さです。
以前から、某通販化粧品会社はこの「NO1」訴求を行っていて、そのときからかなり違和感を感じていたのですが、最近、とみにこの手法を使うCMが増えてきている気がしてなりません。

広告βさんのナンパの比喩にたとえるなら、

「俺って、みんなの人気者なんだよね。一度、つきあってみない?」

って言っているようなものですよね?
こんな口説き文句で付き合う人がいるのか・・・?
そもそも、「みんな」って誰だよ!、どうやって調べんたんだよ!って突っ込みたくなります。小さい子供に、「みんなが持ってるから、あなたもこれにしなさい!」と言う論理と、まったく代わらないのではないかと思ってしまいます。
消費者は、そんなに分別がないのですか?

「NO1」CMに違和感を感じる要因は、3つあります。

まず、「消費者は、みんなが買っているといえば、買うんだよ。どうせ、商品の良しあしなんてわからないんだから」というように言われている気がするのです。
自分の商品に自信がないからなのか、ほんとうに消費者をバカにしているのかわかりませんが、このようなコミュニケーションが相手に伝わるとは思えません。
(でも、効果があるから広告代理店も、このようなCMを作るのかもしれませんが・・・)

ふたつめは、テレビCMで行うことについての違和感です。
商品を検討している人が、自分の意志でランキングや調査結果を参考にするというのはいいことだと思います。しかし、企業自らがランキング一位だということを、それも情報の根拠を確認する術のないテレビCMで喧伝するというのは、どうなんだろう?ということです。
テレビCMでデータの背景を説明することは、まず無理でしょう。ということは、あまりにも無責任ではないか?と思います。

そして、調査をこのように使うことについての違和感が3つめです。
これは、なにもCMでの取り上げ方に限ったことではなく、世にあふれる「調査結果」というもの全般にも感じることなのですが。
数字は一人歩きします。しかし、その数字の根拠=誰に聞いたのか、どのように聞いたのかを確認する術を提示することなく、数字のみを発表するというのは、自覚的にであれ、非自覚的にであれ、かなり罪が重い行為だと思うのです。
極論すれば、調査結果なんて、自分の都合のよいように操作することはできるからです。
このようなCMを見た人が「ほんとかな?、自分の感じじゃそんなことないけどな?」と思えば、やっぱり調査なんてあてにならないな・・・、ということに繋がるんじゃないかと危惧もします。

「なにも、そんなに肩肘張って言うことでもないんじゃないの?」という意見もあると思います。「しょせん、CMなんてそんなもんでしょ?」というように思っておけばいいのかもしれません。
でも、こんなんでは、広告βさんが言うように、やっぱり「つまらない」。
そして、調査にとっても、CMにとっても、さらにいえばマーケティングも、消費者に見向きもされなくなるんではないかと思うのです。

みなさんが、「そんなCMは、気にしてないよ」と言ってくれれば、それでいいのかもしれませんが・・・。
(だとしたら、なおさら、こんなCMはなくなってほしい。もっと、面白いCMが増えて欲しいとも思うんですけど・・・。)






『故事成語でわかる経済学のキーワード』

故事成語でわかる経済学のキーワード 故事成語でわかる経済学のキーワード
価格:¥ 882(税込)
発売日:2006-11

ついでに、もう1冊。
行動経済学関連の本を読んでいる時に、見つけた本です。

題名のとおり、故事成語を引用しながら、経済学のキーワードを学んでしまおうというものです。まさに、「一石二鳥」です。
本書の狙いについて、「温故知新~はじめに」でつぎのように書いています。

私がこの本で試みたのは、ともすれば難解であると敬遠されがちな経済学的な考え方と経済学のキーワードを、故事成語を用いて格調高くしかも心に残るように解説することである。

とりあげられている故事成語と経済学のキーワードは28個で、たとえばつぎのような感じです。

覆水盆に返らず~サンク・コスト
矛盾~トレードオフ
他山の石~分業と専門の経済効果
洛陽の紙価を貴ぶ~価格理論
朝三暮四~フレーミング効果
完璧~データの経済学的解釈
敗軍の将は兵を語らず~結果論はなぜいけないのか
三顧の礼~長期的関係とインセンティブ

行動経済学を学ぶにしても、ベースにあるのは経済学であり、経済学の考え方をまったく知らずには、理解も難しいと思います。
そこで、本書で経済学の考え方の雰囲気を学んでおくのはどうでしょう?

それと、関心したのは、見事な「読み替え」です。
本などを通じて事例を学ぶことの意味は、読み替えだと思っています。「所詮、他の会社の事例でしょ?それに、どうせ良いように書いてあるんだろうし」ということで、事例を学ぶことに懐疑的な意見も聞かれますが、そこに書いてあることから、何を学ぶか、どう活かすかということを考えることが大切なんだと思います。
古典や事例を、どのように他の事象にあてはめて考えるのか?、この本はこんな視点でも読むことができるのではないでしょうか。

そして、中国古典が好きな方=宮城谷氏の本や三国志にはまったことがある方も、様々なストーリーに隠された故事成語をもう一度確認してみるのも、また楽しいですよ。

通勤通学や、夜寝る前などに気軽に読んで、故事成語と経済について学ぶことのできる本書は、お勧めです。

『欲望解剖』

欲望解剖 欲望解剖
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2006-12

最後に、もう1冊。
こちらは、行動経済学というよりも、さらに脳科学の視点から経済学(というか、マーケティング)に迫ろうという内容になっています。

著者は、脳科学者の茂木健一郎先生と法政大学の田中洋先生。
ただし、「電通ニューロマーケティング研究会・編」となっているとおり、バックにいるのは電通ですが。

「まえがき」で、茂木先生は、この研究会についてつぎのように書いています。

電通のニューロマーケティング研究会は、消費者研究センターの佐々木厚さんを中心に構想された。「ニューロマーケティング」は、神経経済学のような新しい脳科学の動きを受けて、脳の働きという視点からマーケティングにかかわる諸問題を検討し、ひいては人間性の本質を理解しようというアプローチである。

本書の内容は、茂木先生が脳科学の立場から「欲望」を説明するパート、田中先生がニーズ・ウオンツ・デマンドというマーケティングの視点から「欲望」を説明するパート、そしてお二人の対談という3部構成となっています。
この中で、茂木先生の脳科学の視点からの「欲望解剖」は、なかなかおもしろいものがありました。

「ニューロマーケティング」「神経経済学」って何?、あるいはちょっと斜に構えて、「電通は、つぎに何を考えているんだ?」ということに興味をもたれた方、一読してみてください。

蛇足。

朝日新聞2007年1月1日第4部「Oh!脳」でも、アメリカの研究として、ペプシ・コーラとコカ・コーラの飲み比べで、ブランド名を知らずに飲む時と、知って飲んだ時では脳の活動が異なるという事例も紹介されています。(個人的には、最終商品テストで「ブラインド・テスト」をすることに意味はないのでは?、と思っていましたが・・・。)
また、fMRI(機能的磁気共鳴断層撮影)試験によってデザインされたホンダのオートバイの事例も紹介されています(→ホンダのリリース。「二輪車技術<FACEデザイン>」参照)。

また、少し前に、「心脳マーケティング」という本が出版され、結構売れましたし、この本で紹介されている方法を実際に活用している調査会社もあるようです。
(私個人は、立ち読みで「どんなもんかな・・・」という感想を持ち、まだ読んでいませんでしたが。これを機に、読んでみようかな。。。)

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press 心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-02-10