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『行動経済学』

行動経済学 経済は「感情」で動いている 行動経済学 経済は「感情」で動いている
価格:¥ 998(税込)
発売日:2006-05-17

「行動経済学」と題名にある中では、最新の本(2007年1月現在)ではないでしょうか?
なので、前に紹介した『行動経済学入門』でまとめられていた当時に比べ、さらにモデルや理論の幅と深さが増していますし、初期のモデル・理論に対する反論・反証についても丁寧に取り上げられています。しかも、新書で。

はじめにで、つぎのように書かれています。

本書は、「勘定から感情へ」というテーマを通奏低音としつつ、行動経済学という新しい経済学の基礎について広く紹介し、検討することを目的としている。基礎といっても単なる入門という意味ではなく、構築物の土台・根元という意味を持つ。本書は、行動経済学の入門書であると同時に、経済行動の背後にある心理的・社会的・生物的基盤を探り、行動経済学の基礎を固めることをめざす。

もくじは、以下のようになっています。

第1章 経済学と心理学の復縁-行動経済学の誕生
第2章 人は限定合理的に行動する-合理的決定の難しさ
第3章 ヒューリスティクスとバイアス-「直感」の働き
第4章 プロスペクト理論1 理論-リスクの元での判断
第5章 プロスペクト理論2 応用-「持っているもの」へのこだわり
第6章 フレーミング効果と選好の形成-選好はうつろいやすい
第7章 近視眼的な心-時間選好
第8章 他社を顧みる心-社会的選好
第9章 理性と感情のダンス-行動経済学最前線

これだけ丁寧に行動経済学について書かれている(新書なのに400ページ近く!)のに、しかも新書なのに、なぜこちらを最初の1冊として取り上げなかったのか?
『行動経済学入門』と比べて、さらに読みにくいという印象があったからです。
今の時点でも、行動経済学は体系化はされていないので、やはり、実験やそこからのモデル化を並べざるを得ず、そうなると、時間を経て様々な検証やモデル化が行われた故に、実験→モデル化→反論や反証実験→モデル化→整理といったような構成になってしまい、まとまり感が得られません。また、著者がはじめにで書いているように、「広く紹介」しすぎている感もあります。
さらに、実験を丁寧に記述しているあまり、読みながら考え・・・、ということもあります。
しかし、これは行動経済学というものがはらんでいる限界でもあると思うので、いたしかたないと思うのですが。。。

とはいえ、新書で、これだけの内容を書かれたことには敬意を表します。本来なら、単行本でもいいのではと思うくらいです。
行動経済学の現在の到達点について、しっかりと学びたいという人には、とても有益な本です。

行動経済学に興味をもたれた方は、これまで紹介した3冊を、つぎのような視点で読み進むことをお勧めします。

最初に、『おまけより割引してほしい』→経済学と心理学の結びつきを実感する
つぎに、『行動経済学入門』→基本的な、行動経済学のモデルを理解する
そして、『行動経済学』→行動経済学の到達点、背景の様々な基盤を理解する

さらに深く行動経済学について学びたい人は、この本『行動経済学』で詳細な主要参考文献リストが紹介されていますので、こちらから英語の原書に戻って学んでいくのがよいと思います。

『行動経済学入門』

行動経済学入門 行動経済学入門
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2003-12-11

2003年と少し前の本になりますが、行動経済学についての概要を捉えるには、この本から読み始めるのがいいと思います。

この本の「はじめに」で、著者はつぎのように書いています。

本書は、カーネマン教授の研究の礎とする「新しい」経済学の分野である「行動経済学」(behavioral economics)あるいは「経済心理学」(psychology and economics)についての入門書です。
行動経済学は、ここ10年ほどの間に急速に経済学に広まりつつある、発展途上の学問分野です。新古典派による標準的な経済学のように、数学的に一貫した整合的なモデルを提供するというよりは、経済学の標準モデルをベースにしつつ、現実の経済現象や人間行動を説明するようこれを補完するアプローチが中心となっています。このため、本書においてもひとつの整合的なモデル体系を提示するのではなく、代わりに、カーネマンらの古典的な論文や最新のトピックスを紹介しつつ、行動経済学に関わるいくつかのモデルや考え方の断片を「つまみ食い」するという方法論をとります。

このようにモデルや考え方の「つまみ食い」ですし、経済学でもあるのでところどころ数式も出てきますので、正直なことろ、読みやすいという感じはありません。
しかし、行動経済学とはどのようなものであるかを捉える、どのような背景(実験)に基づいてモデルが作られたかを理解するには、本書が手ごろなものであることも否めません。

もくじは、つぎのようになっています。

第1章 行動経済学とは何か?
第2章 人間はどこまで合理的か?
第3章 近道を選ぶと失敗する
第4章 プロスペクト理論
第5章 非合理的な投資家は市場を狂わす
第6章 人間は「超」自制的か
第7章 人間は他人の目を気にするもの
終章  心理学的アプローチの限界と今後の展望

「読みやすいとはいえない」とは書きましたが、必要に応じ、グラフやチャートを使っての説明もありますし、各章の最後には「ポイント」も整理されています。

著者もいうように、行動経済学自体が、まだ完全に体系化されていないのですから、体系的な本を探しても無理というもので、この点は割り切らざるを得ません。
ですので、とりあえずこの本から、行動経済学の世界へ入ってみましょう。

『おまけより割引してほしい』

おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学 おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学
価格:¥ 735(税込)
発売日:2006-11

「行動経済学」を、思い出したきっかけとなったのが、この本です。
この本では、「経済心理学」という言葉を使っていますが。。。

この本の要点は、「値ごろ感」です。身近な、さまざまな購買行動について、「値ごろ感=価値/費用」という式からの解説を試みています。
あとがきで、著者もつぎのように書いています。

本書は日常的、世俗的な言葉である〝値ごろ感〟に隠された心のメカニズムを、経済学、心理学の初歩的なツールで解明しようと試みたものである。また販売の現場に隠された多くの仕掛けを明らかにし、その論拠を検証することも試みた。

取り上げられている事例が、吉野家、ユニクロ、アウトレットモールをはじめとする身近なものですし、読みやすい文章ですので、まずはこの本で経済学と心理学との関連を理解してから、行動経済学の本に入る方がいいと思います。

もくじを紹介します。

Ⅰ.値ごろ感ってなんだろう?
 おまけより割引してほしい-値ごろ感の因数分解
 棚ぼたの好ましさ-値ごろ感の分母を支配する負担感
 うまい、やすい、はやい-値ごろ感を生み出すもの
Ⅱ.売れるものにはワケがある
 ベストセラーの秘密
 どうして衝動買いをするのか?
 ついでに買わせるコツ

最後に、この本の題である「おまけより割引してほしい」を、先ほどの値ごろ感の式で説明してみてください。数学的なセンスのある人にとっては、すぐにわかることだと思いますが・・・。

わからない人は、本書で答えを確認してください。

『顧客理解の技術』

顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する 顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2005-09-08

心理学からは離れますが、「顧客理解」という視点から、もう一冊紹介します。

著者は、シンクタンクのコンサルタントです。『消費者行動論』がフレームの理解だとすると、この本は、そのフレームを理解した上で、どのように顧客理解を行うかの技術=テクニックについて述べたものになっています。
「はじめに」で、『この本は、私たちの顧客に関する、数多くのコンサルティングの「実践の場で創出し、培ったノウハウ」を汎用化して書き上げたものである』と記されていることからも、わかると思います。

もくじを紹介します。

序章 成熟社会の顧客変化をとらえる技術
第一部 身につける、活用する
 第1章 5つの<顧客理解の技術>
      1.顧客変化理解の技術
      2.背景理由理解の技術
      3.顧客価値理解の技術
      4.顧客行動理解の技術
      5.顧客情報活用の技術
第二部 知見を深める
 第2章 顧客価値の理解を深める
      1.価値ポジショニングを考える
      2.差別化価値を深める
 第3章 <顧客理解の技術>参考データ集
      1.人口変化の基本データ
      2.世帯変化の基本データ
      3.バリューセグメント分析参考データ<サマリーデータ編>
      4.バリューセグメント分析参考データ<詳細データ編>
      5.消費トレンド分析参考データ<サマリーデータ編>
      6.消費トレンド分析参考データ<詳細データ編>

マーケティング・リサーチというと、「アンケートとかインタビューを行うこと」というような認識も少なく無いですし、実際、調査会社で行っているのは一次情報の収集が主です(本書の1章3~4の部分)。
しかし、一次データの収集だけがマーケティング・リサーチではなく、二次データ(オープンデータ)をどのように使いこなし、分析するのか(1章1~2)、というのも大事なスキルになるのではないでしょうか?また、第3章で取り上げている基本的な構造変化や、消費トレンドデータをどの程度理解しているのかということも、重要な視点です。
(とはいえ、第3章で取り上げられているデータは、ごく一般的なデータですので、何か新しいデータはないかと探している人にとっては物足りないものだと思います。)

シンクタンクがどのようなフレームで顧客分析を行っているかを知っておきたい方、オープンデータからどのような読み取りを行うかを知りたい方、そして、消費者や世代についての基本的なことを知っておきたい方、お勧めです。

『消費者行動論』

消費者行動論 消費者行動論
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-05-19

こちらの本も、執筆は大学の先生ですが、専攻がマーケティングですので、よりマーケティングの視点から消費者行動を整理しています。
「まえがき」でも、『本書は社会心理学の理論をマーケティングに応用し、ビジネスマンの立場で書かれている。理論とは型(フレーム)である。』と書かれています。ただ、同時に『最初に断っておくが、型はテクニックでない。』とも言っていますが・・・。

もくじを、各章扉に書かれているフレーズと共に紹介します。

第1章 消費者行動論とは何か?
 ~あなたは顧客がどのような行動を取るか考えたことがありますか?
第2章 個人的影響要因
 ~あなたは顧客の属性、行動、ライフスタイルを研究したことがありますか?
第3章 個人的要因:パーソナリティとセルフイメージ
 ~あなたの典型的な顧客がどのようなパーソナリティを持っているか知って
   いますか?
第4章 消費者関与
 ~あなたは顧客の関与を深めるような努力をしていますか?
第5章 問題認識
 ~顧客はどのような問題を解決するために、あなたの会社の製品を購入する
   のだろうか?
第6章 動機付け
 ~消費者に自社製品を購入する動機づけをしたことがありますか?
第7章 情報収集
 ~あなたは顧客がどのように情報検索を行い、どのように商品について学んで
   いるか研究したことがありますか?
第8章 学習
 ~あなたは、顧客がどのように自社製品やブランドについて学習するか考えた
   ことがありますか?学習を助ける活動をしていますか?
第9章 消費者の知覚
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような印象を抱いているのか
   調べたことがありますか?
第10章 消費者の態度
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような態度をもっているか知って
   いますか?その態度の形成には何が影響を与えたのでしょう?
第11章 社会的要因-グループの影響
 ~あなたは顧客の購買活動に影響を与えるグループの存在を認識して
   いますか?このグループを有効利用していますか?
第12章 選択肢の分類
 ~あなたの顧客は合理的な商品選択をしていますか?
第13章 評価選択
 ~あなたの顧客は何を基準に購買の意思決定をしているか知っていますか?
第14章 購買と購買後評価
 ~あなたは、顧客とどのようにリレーションシップを結ぼうとしていますか?

いかがでしょう?
それぞれのフレーズは、リサーチ目的としてもよいようなものばかりではありませんか?
このようなリサーチ目的のときに、どのような消費者行動理論があるのか?このことを学べる一冊です。また、それぞれの理論を比較的コンパクトにまとめていますので、事典的な活用もできると思います。

ただ、最初に著者が断っているように、この本に書かれているのは「理論=型(フレーム)」であってテクニックではない、ということは忘れないでください。
とはいえ、フレームを知っているのと、知らないのとでは仕事をしていく上で、大きな差になるというのも、また真実だと思います。

『ロジャースの普及理論、関与の種類、マズローの欲求5段階説、コンフリクト、IMC、閾値、認知的不協和、均衡理論(バランスセオリー)、準拠集団、オピニオンリーダー、想起集合(イボークトセット)、多属性態度モデル、サンクコスト・・・』

これらは、この本に出てくるフレームの一部ですが、いくつご存知ですか?
すべて知っているという方は、この本は読む必要はないでしょう・・・。
知らない言葉が多いという方は、ぜひ、この本を読んでみてください。

『消費者理解のための心理学』

消費者理解のための心理学 消費者理解のための心理学
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1997-06

前回に引き続き、心理学に関する本を紹介します。
少しでも心理学に興味を持った方、心理学も勉強しておこうかなと思った方には、こちらの本が最適だと思います。

もくじを引用します。

1章 消費者行動とマーケティング
2章 消費者行動への心理学的接近
3章 消費者の問題認識と購買意思決定
4章 消費者の情報探索と選択肢評価
5章 購買決定後の過程
6章 消費者の知覚
7章 消費者の知識と記憶
8章 消費者の学習
9章 消費者の動機付けと感情
10章 消費者の態度形成と変容
11章 消費者の関与
12章 消費者の個人特性
13章 消費者行動における状況要因
14章 家族の消費行動
15章 対人・集団の要因と消費者行動
16章 文化的要因と消費者行動

執筆は心理学の先生が複数名で分担されており、どちらかというと大学生・大学院生を想定して書かれています。
しかし、網羅的に、広く消費者理解という視点で心理学を学んでおこうという方には、お勧めの本です。少し古い本ですが、ベーシックな理論を学ぶ上では、問題ありません。というか、いまのところ、これ以上の本は見当たらないと感じています。

リサーチャーやリサーチャーをめざす人にとっては、基礎教養として、ここに書かれている程度の知識は持っていた方がいいと思います。ただ、マーケティングを仕事としている人にとっては、少々、学術的過ぎるという感じもあるかもしれません。

そのような方には、つぎの本を紹介します。

『鈴木敏文の「統計心理学」』

鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む 鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む
価格:¥ 700(税込)
発売日:2006-03

『ビジネスマンのための統計心理学』の中でも、紹介されている本です。
リサーチャーにとっては必読の本だと思います。

鈴木敏文の考え方やモノの見方は、過去に様々な本や雑誌で紹介されていますが、この本では「発想の視点、顧客心理の掴み方、統計術」という3つのテーマについて、55の金言と著者のキーワード化によってわかりやすく整理されています。

たとえば、発想の視点としてつぎの5つが紹介されています。

・変化の流れを時間軸で捉えると、今の時代の動きがわかる
・時間軸を輪切りにすると、本当のようなウソがみえてくる
・時間軸で未来に目を向けると、今の時代の顧客心理が読める
・脱経験的思考-過去の「常識」は今の「非常識」
・陰陽両面的志向-買い手の「合理」は売り手の「非合理」

とくに、リサーチャーが読むべきは第3章です。漫然とデータをみて、解釈することへの戒めが述べられており、肝に銘じておきたい内容です。
6つのポイントで整理されています。

・売り手から買い手へ、視点を変えると別のデータが見える
・統計データは鵜呑みにするな、その背景や中身を突き詰めろ
・同じデータ、情報でも「分母」を変えると意味が逆転する
・なぜ、モノが売れないのか、心理抜きには統計は読み切れない
・仮説・検証で初めてデータが生きる、WHYとWHATの問題意識を常に持つ
・自分の都合のよいように、数字のつじつま合わせをするな

鈴木氏の話はいまではあまり耳にしなくなりましたし、CVSのビジネスについては一個人として思うところもあるのですが、それは置いておいても、やはりデータを読む視点、スタンスには学ぶべきことが多い本です。

「インサイト」「インサイトマーケティング」

インサイト インサイト
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2005-02-17

「インサイト」について、もう少し知りたいという方に向けての本を2冊。

まず、その名もずばり「インサイト」。
入門書として読むには手ごろな本です。ただ、あまり奥行きはありません。
インサイトとは何か、インサイトを見つけるリサーチ手法は、発見したインサイトをどうマーケティングに結びつけるのかということと、ハーゲンダッツとシックをケーススタディとして取り上げています。

ただ、この本で一番共感してしまったのは、「はじめに」に書かれていたつぎの文章でした。

(グループインタビューで)
この日の座談会も司会者の仕切りのもと、「この点はいいと思います」「ここは、こういうふうに変えたほうがいい」など、理路整然と話し合いが進んでいた。ところが、話し合いの途中でたまたま、司会者がトイレか何かの急用で部屋を出た。そのときである。鏡の向こう側(座談会会場)で、とんでもないことが起きたのは。
司会者がいなくなったとたん、対象者たちがホンネで自由気ままに話し出したのだ。「この商品は売れないと思うな」「いままでのと変わらない」「私には必要なさそう」といった声が飛び交ったのである。
さっきまでの話し合いはいったい何だったのだろう、という感じだ。もし、司会者がいるときの発言だけを元にして新製品を出したとしたら・・・。想像するのも恐ろしい。司会者が部屋に戻ってくると、何事もなかったかのように話し合いが再開されたから、一同苦笑いだ。

あってはいけないシチュエーションですが、実際にあります。なので、私は謝礼を取りにわざと席をはずすようにしています。あるいは、謝礼を配る時や、帰り支度をしている時に核心の質問をしたりします、この時はふっと気が緩む瞬間ですから。

それと、クライアントの方。グルインは、必ず同じ瞬間に立ち会うようにしてください。その場での表情や、行間の雰囲気がとても大切ですから。あとでまとめられた報告書は、極論すれば報告書のための報告書であって、そこで雰囲気や行間を伝えることは難しいですので・・・。

インサイトの本題から横道にそれてしまいましたが、とりあえず、「インサイト」ってなんだという方の入門書として、どうぞ。

図解やさしくわかるインサイトマーケティング 図解やさしくわかるインサイトマーケティング
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-09-22

つぎに、「インサイトマーケティング」。図解とあるように、左ページ文章、右ページチャートで構成されています。
やはり、インサイトとは何か、脳科学とインサイトとの関係、インサイトマーケティングの進め方、インサイトを発見する技術、などで構成されています。いってしまえば、ノウハウ本です。
いまのところ、インサイトについて、ある程度、実務的に書いている本はこれだけだと思うので、実務でどう使うんだろうと思われる方は、こちらの本を。
ただ、読んだからといって、ほんとうにできるかどうかは別だということを心しておいてください。さきほどのグルインの事例にもあるように、彼ら、彼女らのほんとうの心を知ることは、簡単ではないので。

「マーケティングは消費者に勝てるか?」

マーケティングは消費者に勝てるか マーケティングは消費者に勝てるか
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2005-09-01

結構、あちこちのブログでも紹介されていましたし、評判もよかったので、すでに読まれている方も多いかもしれません。個人的にも、ここ数年では、かなり共感、納得をさせられた本です。

内容は、やはり、消費者の「心」を捉えるにはどうしたらいいのか、という視点で書かれています。ただ、古典的な消費者行動論や消費者心理学ではなく、脳科学やネットワーク理論などを用いて、こういう視点でみると、こういう解釈ができるのではないかというスタンスです。当時、なんとなくもやもやとしていたリサーチやマーケティングの限界のようなものについて、なるほどね、と思って読んだことを覚えています。
ただ、やはり鵜呑みは危険ですので、その点は注意しながら読んだ方がいいと思います。(すべての本にあてはまると思いますが・・・)

どの部分を引用すると、内容が伝わるかなと思ったのですが、カバー袖に書かれているものがいいかもしれません。

・アサヒ・スーパードライとニューコーク、同じことをしてなぜ成否が分かれたのか?
・消費者は理性的に考えて行動しているのか、そもそも人間の頭の中はどうなっているのか?
・直感的判断と客観的・科学的判断、どちらがあたるのか?
・大ブームや大ブーイングはどのようなプロセスで生まれるのか?
・流行に負けないマーケティングを行うことは可能か?
・消費者はどんな価格に納得するのか?
・CRMはどの企業にも必要なのか?
・企業ブランドと商品ブランド、どちらがより消費者の行動に影響を与えるのか?
・市場調査と仮説構築、どちらを先にやるべきか?
・これまでどんなマーケティングが行われ、今、どんなマーケティングが始まろうとしているのか?

一見、理論書のように見えますが、スーパードライとニューコーク、たまごっち、韓流ブーム、マクドナルド、ユニクロなど、日本人におなじみの事例を盛り込んでいますので、読みやすいと思います。

それと、リサーチャーの方。第1章だけでも読んでみてください。マーケティング・リサーチの歴史(どういう背景で、どういう手法が出てきたのか)とか、リサーチ界の神話とも言える「ニューコーク」や「アサヒスーパードライ」の事例が取り上げられていますので。
(1章を読めば、2章も読みたくなると思うんだけどな・・・)

「アカウント・プランニングが広告を変える」

アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実 アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2000-06

(今日は、一気にいきます。日々、チェックをされている方がいましたら、ゴメンナサイ)

今度は、「インサイト」つながりで。
この本、タイトルだけみると広告関連の本で、リサーチや調査とは関係ないやと思いそうですが、副題の「消費者をめぐる嘘と真実」の方が内容をより表していると思います。リサーチに関すること、満載です。

いま、よく耳にする「コンシューマー・インサイト」という言葉を使ったのは、おそらく日本ではこの本が最初ではないかと思います(間違いであれば、コメントをお願いします)。
(この本では、あくまで広告業界で、ですが)「インサイト」がなぜ必要で、どのような背景から出てきたのか。インサイトを探る上で、従来の調査がどのようなデメリットを抱えているのか、それをふまえた上で、ではどうしたらいいのかについて事例をふまえて紹介しています。

とくに、「3章・調査に基づいた広告が間違った方向へ」であげている様々な事例は、思わず、にやりとさせられてしまします(ほんとうは、してはいけないのですが・・・)。具体的な内容については、ご自身でお確かめいただくとして、「はじめに」で著者がこの章について紹介している部分を引用しておきます。

その前提となる考え方、すなわち消費者を喜んで受け入れる広告主や広告代理店があまりに少なすぎるという考え方に対して、我々は消費者の意見を受け入れている、なぜなら「非常に多くの調査を行っている」のだから、と異議を申し立てる企業は多い。そこで3章「調査に基づいた広告が間違った方向へ」では、そういう企業の多くは、消費者の意見を受け入れているどころか、ますます遠ざける結果を招いていると申し上げたい。
広告リサーチをすべて否定する気は毛頭無い。なぜなら、それが正しく行われたときの価値と威力を心から信じているからだ。ここでは、調査を無意味とするばかりか、まったく非生産的なものにしてしまいがちな誤った使い方を、いくつか提示する。内容はさまざまだ。調査が広告づくりのプロセスで果たすべき役割に対する時代遅れなニュートン主義的定義、そもそもの発想から間違っていて、でたらめとすら言える調査、果ては、調査自体はしっかりしているのに、解釈やデータの使い方が誤っている場合もある。

ここで誤解をしていただきたくないのは、「ほら、調査は使えないって言っているでしょ」とか、「インサイト発見は、調査をしなければだめなんだ」とか、デジタルな2分法で考えないでいただきたいということです。どちらも正しいし、どちらも間違っている、要は使い方次第なんだ、そのためにはどうするかということを意識しながら読んでほしいのです。

それと、ここで書かれていることは、何も広告に限ったことではありません。商品開発の調査にも、すべからく当てはまります。

ただ・・・。
私だけなのかもしれませんが、正直、翻訳書は苦手です。
訳がどうこうではなく、事例とポイントがごちゃごちゃに書かれていることが多いので・・・。
日本式マニュアル本になれているからかもしれませんが・・・。

そこで、
同じような趣旨の本と、もっと「インサイト」に的を絞った本を、つぎに紹介することにします。