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まちまちな改造内閣支持率・・・

【2008.10.24追記あり】

調査をやっている立場からすると、あまり触れたくない話題ではありますが・・・。
Yahoo!ニュースでも取り上げられていますし、少し触れてみようかと。。。

Yahoo!で取り上げられているオリジナル記事は、こちら↓。代表的な2つを取り上げてみます。

改造の効果あった? 内閣支持率 調査結果まちまち (産経ニュース)

改造内閣支持率バラバラ マスコミ世論調査信用できるのか(J-CASTニュース)

新聞各社から発表された、今回の福田改造内閣の支持率は、つぎのように。

朝日24%<毎日25%<産経29%<共同32%<日経38%<読売41%

朝日と読売では17ポイントの差があります。
この数字の差は、なんなのか?
確かに、これだけ数字が異なると、「世論調査って信用できるの?」という気持ちが沸き起こるのもわかります。。。

このあたりについて、明快に分析しているレポートが以前、日経リサーチ社にあったのですが、残念ながら今はなくなっているよう。。。
なので、このように各社によって数字が異なる理由について、いくつか考えられるものをあげてみます。

1:聞き方&数字の整理の仕方の問題

まず考えられるのが、質問者がどのような聞き方をしているのか、という点です。
今回の調査は、各社とも電話調査で実施しているようなのですが、質問者がどのように質問しているかで、支持率が異なる可能性があります。

「あなたは、今回の福田内閣を支持しますか、それとも支持しませんか」

という質問だとして、「わかんない」とか「どちらともいえない」「答えたくない」などと回答した人に対して、どのように誘導するかで結果は当然異なります。
すぐに「わからない・答えたくない」として集計するのか、「あえていえば、どちらですか」などと誘導を行うのか、の違いです。

(あるいは、最初から
「あなたは、今回の福田内閣を支持しますか、それとも支持しませんか。つぎの中からひとつ選んでください。支持する、支持しない、わからない。」
と質問しているかもしれません。この場合も、結果の出方は異なるでしょう。)

2:調査主体の問題

(産経の記事では否定されていますが)
調査主体=誰が実施している調査か、によって数字の出方が異なるのはありうることだと思います。
たとえば、読売新聞を購読している人に、つぎのように調査協力依頼をするとします。

A:「読売新聞ですが、調査への協力をお願いします」

B:「朝日新聞ですが、調査への協力をお願いします」

Bの場合は「うちは朝日新聞取ってないから」といって断られる確率が、Aよりも大きいと思うのです。
となると、回答者に占める自社新聞の購読者比率がどうしても高くなる可能性は否めないのではないかと。
(回答してくれる人については産経新聞に書いてあるように、読売の調査だからとか、朝日の調査だからという理由で回答を変える人は少ないと思います。)

3:調査実施タイミングの問題

今回の結果に関して、なるほどと思ったのは、サーベイMLでの萩原さん(ニールセンオンライン)の意見です。
ちょっと長いですが、引用させていただきます。

毎回指摘してることですが、最近の新聞の世論調査の信頼性低下は、実施期間の短さ、タイミングにも問題があるんじゃないでしょうか。

朝日、読売、毎日、共同は、いずれも1日(金)夜から2日(土)にかけて電話で実施としています。日経は2~3日実施、4日掲載です。
(管理人注:日経の実施日を、初稿より訂正しています~萩原さんのご指摘により)

1日(金)にいったいどのくらいの人がTVニュースをみて、新内閣について支持、不支持を判断できるような情報に接しているのか、甚だしく疑問です。この夜電話がきても新内閣の顔ぶれすら知らない人は多かったはず。福田首相の記者会見は夜9時半でしたが、10時以降には調査してないでしょうし。

2日(土)にしてもいったいどのくらいの人が新聞をみて、改造内閣について支持、不支持を判断できるような情報に接しているのか。

各社とも3日(日)の朝刊に記事を掲載するのが必須のようですから、結局2日も結構早い時間に調査を締め切っているはずです。調査の正味の実施時間は24時間もありません。インターネット調査が24時間で結果を出すことが代表性を確保できない理由としてよく批判されますがそれよりひどい(笑

今回は幸い土曜なので普通の勤め人にもリーチする可能性はありますけどね。これ平日だったらどうするんだろう。。

新内閣の正式発足は2日です。今日3日の新聞やTVでさまざまな情報に接してようやく意見や感想が出てくるんじゃないでしょうか。その意味では新内閣の支持率調査は今日、明日あたりに実施するのが望ましいと思うのです。

今回の各社の数字のばらつきは意図的なものというより、拙速な調査がもたらすわずかのオペレーションの違いが数字にあらわれた結果かと思います。

(surveyml:11271~2008/8/3投稿より)

ほんとにそう思います。
なぜ、そこまで急いで支持率の結果を出さないといけないのか、理解に苦しみます(すでに新聞は、速報性のメディアというより、解説を丹念に行うのが役割ではないかと、個人的には思っています)。
結果として、回答者の意志がかなりあいまいな(さらにいうと、本人すら支持するかどうかわからない)状態で回答を得ているわけですから、結果が揺らぐのも当然といえるかもしれません。
また、このような状態では上記「1」の問題がさらに重要性を増してきます。

今回は、すべての会社が調査を電話で行っており、十分な回答者数を得ているという前提で、上記の3つをあげてみました。もしも、この前提が崩れているとしたら、調査方法による違いや、回答者数の違いによっても、数字の解釈の仕方は異なってきます。
また、上記はすべて仮説でしかなく、実証されているものではないということも、お忘れなきよう。

そして・・・、
これらの問題は、世論調査だけでなく、マーケティング・リサーチでもまったく同様の問題を抱えているということも、覚えておいてください。調査は、それほど繊細なものなのです。
調査は、科学的に論証されている手法で、まったく同じ方法や聞き方で調査を行えば、ほぼ同様の結果を得ることはできます。
逆にいうと、これらの条件が崩れると、かなり異なる結果が得られる可能性も大きいのが調査です。

では、何を基準に調査結果を見ればいいのでしょう。。。
つぎの5つを基準に、結果を見るようにするのが基本だと思います。

  • どのような方法で行っているのか
  • どのようなタイミングで行っているのか
  • どのような聞き方をしているのか
  • どのような人が答えているのか
  • 何人の人が答えているのか

新聞やテレビ、WEB上の調査結果では、これらの内容をすべて確認するのは難しいことも多いですが、少なくともマーケティング・リサーチの結果では、これらの内容を確認した上で、結果を判断するようにしたいものです。

調査結果とはなんなのか。。。
どのようなデータも事実だとは思いますが、ある条件や視点の元での事実であり、普遍的な真実を述べたものではない、というスタンスでデータと付き合っていくのが、正しい姿勢ではないかと思います。
「調査結果が、こう出ているから、こうなんだ」と無条件に信じるのでも、「調査結果なんて、あてにならない」と突き放すのでもなく、判断やものの見方についてのひとつの素材、くらいのスタンスが丁度いいように思いますし、素材なのですから、これをどう料理するか(活用するか)はデータを見る人自身のスタンス次第、ということになります。

(正直、やっかいですね^^;)

【追記20081024】

「SPSS DIRECTIONS JAPAN2008」での、インテージ田下社長の講演においても、この問題に触れていました。
質問文設定の問題が大きいという見解のようでした(以前、「AERA」でも同様の趣旨の記事があったと記憶しています)。

確かに、講演資料に記載されている各社の質問文をみると、「改造しました」という言葉を質問に入れている新聞社の支持率が高めに出ているということがわかります。
また、上記「3」で指摘している調査タイミングの問題とあわせて考えると、内閣の顔ぶれ等を知らない人でも、「改造したんだ」という印象で支持率が高まる可能性はありますよね。

雑誌『プレジデント』石井先生のコラム part2

以前、雑誌『プレジデント』での石井淳蔵先生(前・神戸大学、現・流通科学大学)のコラムを、マーケティング・コラム(備忘録) としてまとめました。
その後も、エントリーが増えているようなので、ふたたび備忘録として整理しておきます。
いずれも、雑誌『プレジデント』のHP へのリンクです。
(もしかしたら、前回とダブリがあるかもしれません。今の私の関心でピックアップしてますので・・・)

消費者の生活に深く入り込む「経験価値マーケティング」(2006/1/30)

マス・マーケティングの反省の中から生まれたのが、ブランド・マネジメントである。しかし、その落とし穴はブランドのアイデンティティの議論が抜け落ちてしまうことにあった。そこで筆者は、「経験価値マーケティング」という新しい手法を提案する。

競争優位の切り札「知識のダム」効果とは(2007/4/2)

優秀な営業マンを何人かき集めても、つくることができない力──。
積水ハウスの「納得工房」での取り組みを例に、筆者は、競争優位の第三、第四の条件を提示する。

成長持続の鍵「マーケティング・リテラシー」(2007/6/4)

独立したリサーチ部門をもたなければ、マーケティングの経験を長期的に蓄積することは難しい。筆者は、「マーケティング・リテラシー」を改善する手法を提案する。

「米国流マーケティングマネジメント」の限界(2007/7/30)

P&G、ナイキといった米国企業の成功の背景には、マーケティングへの大規模な投資がある。がしかし、流通市場が異なる日本において、その手法を応用することは難しいのだ。

営業効率をあげる市場プロセスマネジメント(2007/10/1)

消費者や取引相手と共生的な価値をつくるにはどうすればよいか。
筆者は、市場のプロセスをマネジメントする方法論を紹介する。

ブランドの健康管理「プロセス・マネジメント」の効能(2007/12/3)

不特定多数の顧客を相手にするとき、企業がとるべき戦略とは何か──。
筆者は、ブランドを場とした「プロセス・マネジメント」が、そのカギを握ると説く。

「関係の脱構築」で予想外の感動を起こせ(2008/2/4)

フランスの哲学者ジャック・デリダが唱えた「脱構築」という理論。
筆者は、これをビジネスの世界に応用することによって、「共生的価値」が生まれると説く。

7社の事例に見るマーケティング優良企業の条件(2008/3/31)

マーケティング戦略の優れた企業に共通するキーワードは、「市場志向」だ。
では、「市場志向」とは何か?筆者は、三つのプロセスからそれを解明する。

本質を見抜く力「ビジネス・インサイト」を磨け(2008/6/2)

ある一つの事象から、新しいビジネスの価値を生み出す能力──。
筆者は、二つの事例を交えて、この能力を身につける方法論を説く。

いずれのコラムも、先生の最新共著である、↓の本と主題は一緒かもしれません。
(この本についての、エントリーは →こちら にありますので、参考にしてください。)

マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦 マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-01

それと・・・
石井先生が以前書かれた本で、ぜひ紹介しておきたい本があるので、あらためてエントリーをすることにします。

予測市場

「日経サイエンス2008年6月号」に、↓の記事あり。なかなか興味深かったです。

世論調査より当る?大統領選を占う予測市場

タイトルだけみると、大統領選のことだけを書いているように思えますが、「予測市場」について包括的に知ることができる記事です。

その前に、「予測市場」とはなに?、という方へ。
↓が、詳しいのでまずはこちらで。

時代を読む新語辞典「予測市場」(nikkeiBPnet)

そういえば、話題になった梅沢さんの↓の本でも、「第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション」の章で、予測市場について触れていました。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書) ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)
価格:¥ 777(税込)
発売日:2006-02-07

さらに、「予測市場」を知る上で欠かせない一冊が、↓の本。
原題は、『THE WIDSDOM OF CROWDS』。

「みんなの意見」は案外正しい 「みんなの意見」は案外正しい
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-01-31

さて、周辺情報の紹介はこの程度にして。。。
実際に、アメリカ大統領選の数字をみると、世論調査よりも「予測市場」のデータが、より現実に近い結果を出しています。

それは、なぜか?
行動経済学などの理論や、もっとシンプルな「バンドワゴン効果」、さらには世論調査の影響などからの仮説はさまざまにあるようなのですが、すでに実証された手法=世論調査に比べ、なぜ予測市場の結果が優れているのかについての明確な理由は明らかにされていないようなのです。
とくに、統計学者にとって納得いかないのが、予測市場を構成している投機家の属性。とても代表性があるものではなく、

投機家のほとんどは、ブッシュとケリーの対決に関する自らの政治的洞察力を過大評価する傾向のある、高学歴の富裕な白人男性共和党支持者であり、適切に設定されたサンプルの定義にはあてはまらない集団だった。

ということです。

この記事の事例となっている2004年の米大統領選挙についての予測市場についての分析が、↓の駒澤大学山口先生のblogで詳しく解説されていますので、こちらもあわせてご覧ください。(他の記事も、予測市場について参考になるものが多いです。)

米大統領選市場をふりかえる(H-Yamaguchi.net)

この「予測市場」、日本でも静岡大学の先生が前回の参議院選挙で実験を行なってます。

sangi.in

予測市場での結果は、与党=51議席/野党=70議席。
朝日新聞の予想は、与党=48議席/野党=73議席(→こちらを参照ください)。
最終結果は、与党=47議席/野党=74議席。
ということで、今回は新聞の世論調査の方が近い結果になっていますが、予測市場もそんなにかけ離れた数字ではないですね。

次回の衆議院選挙へむけてのサイトも立ち上がっていますので、興味のある方はこちらものぞいてみてください。

Shuugi.in

さらに、すでに事業化している会社もあるようで、↓のサイトが立ち上がっています。
この会社の紹介記事も、一緒に。

総合予測市場サイト Prediction.com
未来予測を売買する「予測市場」 いよいよ日本上陸(ASCII.jp)

また、野村総研でも↓のようなリリースが。

予測市場プラットフォーム「Trueselect」を開発(野村総合研究所)

さて、この「予測市場」。マーケティング・リサーチにも使えるのか?
まず明らかなのは、これから市場に投入しようとしている商品については無理だということですね。上市した後に、競合と比べて売れそうかどうかについては可能かもしれません。(でも、上市した後に、売れないと分かっても・・・)

そこでふと思い出したのが、「デルファイ法」という調査方法。予測市場は、もしかしたらデルファイ法に近いのかも、と思いました(といっても、かなり遠い「近い」ですけど。。。)。ネット調査でデルファイ法に近いことを行なえば、予測市場に近い結果が得られないのかなと、ふと思ったりしました。
(実は、ある調査会社とネット・デルファイ法を研究したこともあるのですが、担当の方が古い考え方をする方で。。。結果も、もうひとつという感じだったので、没になったかな?)

いまのところ、直接マーケティング・リサーチに使えるとも思えないですが、注目すべき手法であると思います。

PS.
野村総研に、↓の記事がありました。
たしかに、社内の叡智を集めて予測するという方法は、ありかもしれませんね。

「群集の叡智」を未来予想に活用する(野村総合研究所)

さらにPS.
書き終わって検索をしてみると、こちら↓のblogが。
予測市場に関して詳しく説明していますので、あわせてご覧いただくといいかもしれません。

今、「予測市場」がおもしろい(Apple’s Eye)

「その程度では顧客の声を聞いているとは言えない」

(また、日経系の雑誌の紹介になってしまいますが、個人的な備忘録も兼ねてますので、ご容赦を。。。)

日経情報ストラテジーの今月号(2008年4月号)の特集が「VOC経営」のようです。
この号の紹介記事が、こちら↓にありました。

その程度では顧客の声を聞いているとは言えない(ITPro)

会員制のサイトだと思いますので、アクセスできない方のために、少しだけ引用をさせていただき、内容紹介を。

「お客様の声にきちんと耳を傾けよう」――。今やあらゆる企業の様々な部署で当たり前のように使われるセリフだ。IT(情報技術)化が進んだ今の時代,その気になれば短期間で大量のVOC(ボイス・オブ・カスタマ=顧客の声)情報を比較的簡単に集めることはできる。だが,ビジネスの目的に合致した形で,VOCを経営にきちんと取り入れている企業がどれだけあるだろうか。

というのが問題提起。確かに、いまの時代は、マーケティング・リサーチによらずとも、様々な情報を簡単に収集することができます。(その中での、リサーチ会社の立ち位置は???、というのも気になりますが・・・)

「情報を、真に経営に取り入れていますか?」ということです。
この紹介記事で事例としてあげられているのが、日産。このblogでも何度か紹介している星野氏の事例ですね。

 日経情報ストラテジー2008年4月号では,日産自動車の市場情報室の活躍ぶりをはじめ,「これぞ,究極の顧客志向だ」と思わずひざを打ちたくなるような事例を厳選した特集記事「究極のVOC経営」を掲載している。例えば,積水化学工業ハウジングカンパニーではもう2年以上,幹部50人が手分けして毎週,多数の既存顧客の家を訪問している。顧客の住宅に関する要望や不満を聞き出し,素早く経営に反映させ続けるためだ。日産や積水化学などの,こうした事例にすべて共通して言えることは,「顧客の声に真摯に耳を傾けるのは経営者の仕事だ」と経営者自身が熱い思いを持っていること。その先には,生涯顧客の獲得という狙いがある。

つまりは、「経営者の仕事」というのが結論になるようです。経営者がどれだけ理解しているか、は何もVOCに限らず、何でもそうだと思いますけど・・。この点は置いておいて。。。
(この提言通り、経営者がきちんとリサーチや情報というものの重要性に理解を示してくれることが重要だということはそのとおりだと思います。でも、それは無理と感じている人でも)、

他社の事例に興味がある方は、一読してみてはいかがでしょう?
情報とはなんぞ、情報を生かすとはなんぞ、という答えが少しは見つかるかもしれません。

PS.
『マインドリーダーへの道』さんのblogでも、同じ記事を取り上げていますので、あわせてご参考にしてください。

調査の付加価値とリサーチャーに求められること

ついでにこちらの記事も、ぜひ!。

調査のウソを見抜くには?

統計の基礎~HP紹介~

サイドバーでもリンクしている 「Insight for SiteMeasure and WebAnalytics」 というblogを書いていらっしゃる衣袋さんが、統計に関する連載を始められたようなので、紹介しておきます↓。

社会人に必要なリサーチ/データリテラシー5原則——調査・リサーチ・統計の基礎
(Web担当者Forum by インプレス)

まだシリーズが始まったばかりですが、blogで指摘されている統計的内容が、かなりしっかりしたものなので間違いないと思います。
また、内容はアクセス解析等web系の事例が中心になりそうですが、「統計のポイント」という点では、変わりないので、マーケティング・リサーチを中心にしている人でも参考になると思います。

これまで、衣袋さんがblogで書いてらっしゃる統計関連のエントリーは、↓のHPからご覧になれるようになってます。

データ分析の豆知識(株式会社クロス・フュージョン)

『%と%を比較する時は「ポイント」といおう』なんて、いいテーマですよね。教科書ではあまり書かれていないけど、結構重要なポイントです。重要なのに、これが守られていないことが多いんですよね。

とりいそぎのご紹介でした。

【関連エントリー:
「データをざくざく処理するためのグラフの読み方、使い方」(2009.1.20)

「ユーザーの体験を設計する」~エスノグラフィという手法

標題の『ユーザーの「体験」を設計する』は、日経エレクトロニクスの2008.1.28号の特集タイトルです(詳細は、↓のHPで)。

日経エレクトロニクス2008年1月28日号

詳細は、本誌を購入していただくとして。。。
(実は自分もまだ未読です、購入ボタンはクリックしましたが。いわゆる思惑買い。なので、以下の記事も、HPの内容と「特集の立ち読み」から着想したものです。厳密には、本書の紹介にはなっていないことをご了承ください。雑誌なので、情報鮮度を優先しました。)

特集の背景は、

デジタル機器の分野では、新技術や高い性能、豊富な機能を訴えても、消費者は大した金額を払ってくれなくなった。ネットワークの時代、この傾向はさらに強くなる。「軽薄短小」に代表される技術を起点にした発想から、思考を切り替えない限り、電機メーカーに明るい未来はない。

ということにあるようです。

「SONYのテレビ」と言われてもわくわくしないけど、「Googleのテレビ」と言われると、なんとなくわくわくする。そういうことです。

もうひとつ思い出すのが、「Wii」vs「PS3」。技術的には、「PS3」の方が最先端の技術を搭載しているといわれています。しかし、現実に市場に受け容れられたのは「Wii」。
ユーザーのニーズを、技術が超えてしまっているので、技術優位で製品を開発しても、必ずしも市場に受け容れらることにはならない。まさに、「イノベーションのジレンマ」です。

では、この壁を乗り越えるためには、どうすればいいのか。
消費者の生活に入り込んで、実際に機器をどのように使っているのかを、つぶさに観察し、その中から、インサイトとなる気づきを得て、製品の開発に繋げていくことが必要になります。
そのために注目されている調査手法が、「エスノグラフィ」、民俗誌学の手法だというのです。
主に社会学や文化人類学で使われてきた質的な調査手法、フィールドワークの技法です。(確か、JMRAのデータでも、この手法が注目されているのではないかという仮説に結びつくデータがあったように記憶しています。この点は、あらためて検証してみます。)

ただ、この手法は、実はかなり難しい手法だと思っています。
誰がやっても、同じ答えが得られるかというと、なかなかそうはいきません。この特集でも<手法>として、各社の事例が紹介されているようですが、実際に使いこなすには、それなりの工夫(あるいは人、かもしれません)が必要でしょう。

そして、この特集でもうひとつ強調しているのは、調査で得られた気づきを実現するための<体制>です。『ユーザーの観察から発想を膨らませるだけでは,消費者をとりこにする製品は作れない』ということです。これは、エスノグラフィに限らず、あらゆる調査に付きまとう課題だとも思います。データ、情報だけがあっても、それをどう活かすかは、やはり組織・体制の問題に行き着きます。(この点に関しても、おもしろい本があったので、これも後日紹介します。)

技術オリエンテッドの製品開発に限界を感じている方、ユーザーの「体験」を知るにはどうしたらいいのか考えている方、開発に結び付ける体制はどうしたらいいのか悩んでいる方、このような課題を抱えている方、この特集がヒントになるかもしれません。

関連して、「エスノグラフィ」について、紹介・解説しているHPを紹介しておきます。
(ただし、各社の提供サービスの内容・質については、このblogでは一切、関知しません。単に、「エスノグラフィ」の理解を助けるための紹介であるということを、前提としてご覧ください。)

そういえば↓の本でも、エスノグラフィとはいっていませんが、ケーススタディのひとつとして、ビデオ撮影による調査の事例があげられていました。(完全に学術論文の体裁です)

顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス 顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2005-08

エスノグラフィ的な手法、フィールドワークの技法について、学術的に勉強したい方は、つぎの本を。

フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ) フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2006-12-20

一応、「イノベーションのジレンマ」についても。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press) イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2001-07

【関連エントリー】「マーケティング・エスノグラフィー」(2009.1.9)

さぼっていたら・・・<blog紹介>

2008年も、すでに1月が終わろうとしています。。。
前回のエントリーから、1ヶ月以上もさぼってしまいました。
(その間も、毎日訪問してくださる方がいます、感謝。)

その間に、このようなblogが始まっていました↓。

筆者は、「マーケティング千日回峰之記」で見事千日にわたりblogを書き続けた方。
メルマガの頃から追っかけていたのですが、マーケティングやリサーチの視点はかなり共感できることが多い方です。
(今は、「とみざわのマーケティングノート」というblogを、やはり毎日更新で続けていらっしゃいます。)

内容は、マーケティング・リサーチに関して、これまでの経験を元に、本などではわからない「勘どころ」を書いていこうというもののようです(かぶってます・・・)。
まだ、数回しかエントリーされていませんが、やはり本物です。
このblogに興味を持っていただいた方には、きっと役立つと思います。
ぜひ、訪問してみてください。

って、人様のblogを紹介しているばかりでは、だめですね。。。
こちらも、再度スイッチを入れないと。
とりあえず、休眠期間に読んだ本の紹介くらいから再開しようと思いますが、今度こそ、寺子屋の再開をします!
とみざわさんのblog同様、こちらも引き続きよろしくお願いします。






「経済学ってこんなにおもしろい」

ほぼ1年前、「行動経済学?、経済心理学?、神経経済学?」というエントリーを書きました。
そこそこアクセスのあるコンテンツで、「行動経済学」に関心がある人も結構いるんだなと思ったしだいです。

さて、今回紹介するのは雑誌なのですが、週刊東洋経済の今週号(2007年12/15号)の特集が「経済学ってこんなにおもしろい」と題し、行動経済学をはじめとした経済学の新しい学説を紹介しています。
もくじの詳細は、こちら↓でご覧ください。

週刊東洋経済HP

もくじをご覧いただければおわかりのとおり、25のQuestionに対し、経済学説を用いて回答を行なうという内容になっています。「行動経済学」に興味はあるけど、専門書を読んでもよくわからないとか、実際の社会現象にどのように応用しているんだろうと思う方には、入門編として手ごろな内容だと思います。

それぞれのQ&Aで使っている経済学のキーワードが、ごく簡単に紹介されているのですが、つぎのようなものが取り上げられています。

  • 行動経済学、確率加重関数、フレーミング効果、現在志向バイアス、プロスペクト理論、法と経済学、サンクコスト効果、保有効果、トレードオフ、ネットワーク外部性、完全競争市場、経済の外部性、選好の内生性、ナイトの不確実性、行動ファイナンス、金融工学の誤り、共有地の悲劇、情報の非対象性、進化心理学、囚人のジレンマ、神経経済学

いまでしたら、まだ書店にも並んでると思いますので、興味のある方はどうぞ。

直接、行動経済学とは関係ないですが、↓の本も、いろいろな社会の仕組みを経済学的な視点から解説を行っていて、結構おもしろかったですので、あわせてご紹介を。(結構、売れている本のようですので、すでにお読みになった方も多いかと思いますが)

スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学 スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2007-09-14

また、このblogでの過去エントリーで関連するものを以下にあげておきますので、よろしければこちらもどうぞ。

ブログ分析

このところ、ブログ分析についての記事やリリースが目に付いたので、少しまとめを。

最初に、リリースと関連インタビューの紹介。
3番目の「散在.com」はブログとは異なりますが・・・。
(注:NBOnlineの記事は、会員登録が必要かもしれません)

続いて、それぞれのサービスのHPもリンク。

さて・・・
ブログ分析の基本は、「出現」「共起」「波及」のようです。
調べたいワードが、どれくらいブログで取り上げられているか、どのようなワードと関連づけられて語られているか、トラックバックやコメントでどれくらい波及しているか。
これまでマーケティング・リサーチを行なうことで確認していたことが、「ブログ」を分析することでわかるということなのでしょう。それも、「アンケートに答えてくれる」という制約を越えて(ただ、「ブログを書く人」という制約が、今度は発生しますが)。
データソースがブログなので、アンケートのようにこちらから仕掛ける必要がなく、「毎日」という時系列でデータを追いかけることができるのが、大きなメリットであると感じました。

ただ、ニフティやkizasiの方のインタビューを読むと、まだまだこれからという段階でもあるようです。「どのように使うのか?という段階」とか、「量ばかりを見たがる」とか・・・。
日経リサーチがすでに取り組んでいる(さすが、リサーチ会社)「指標化」が、今後の普及のキーになるとみているようです。なので、ニフティもビデオリサーチと組んだのでしょう。

まだまだ、これからのブログ分析ですが、大きな可能性を秘めているといえそうです。
(しかし、いわゆる”マーケティング・リサーチ”にとっては、競合になります。とはいえ、これも「データ分析」であることには代わりないわけで、リサーチ会社の大きな柱のひとつになる可能性もあります。日経リサーチ、ビデオリサーチ、インテージが一歩先んじたということですね。他にも、メニュー化していないだけで、ノウハウを持っている会社もあるかもしれませんが。)

「脳を直撃する広告?」

おもしろい記事を見つけたので、取り急ぎのご紹介を。
その記事は、こちらです↓。

脳を直撃する広告?~“ニューロマーケティング”が欧州でブレーク(NBオンライン)

以前、『欲望解剖』という本をご紹介した際に、ニューロマーケティングについても少し触れていますが、欧州では研究が進んでおり、実務の世界でも活用されているようなのです。

「ニューロマーケティング」という新しい手法が、今、欧州で注目を集めている。人間の脳をスキャンして広告に対する消費者の反応を脳科学的に分析するもの。広告がさらにパワーアップすることによって、消費者の財布の紐が緩みっぱなしになってしまうかもしれない。
 ジョージ・オーウェル的な洗脳のような印象も受ける。だが、広告の精度を上げて売り上げアップを図りたい企業にとって、ニューロマーケティングは極めて魅力的な可能性を秘めている。莫大な広告費を投じる前に、広告やCMソング、ロゴが消費者の潜在意識にどのぐらい響くかを定量的に測定できるようになるからだ。「フォーカスグループインタビュー」や、そのほかのフィールド調査の信頼性に疑問を抱いていたマーケティング担当者にとっては、待ちに待った手法と言える。

「ニューロマーケティング」って何?、という方は、こちら↓を参照ください。

「マーケティング用語集:ニューロマーケティング」(JMR-LSI)

さらに、こちら↓の会社では、すでに「ニューロコンサルティング」というメニューもある・・・。

ニューロコンサルティング(株式会社NTTデータ経営研究所)

以前、blog上でも結構話題になった雑誌↓。(ニューロマーケティングそのものについては、一部ですが。)

日経サイエンス臨時増刊「こころのサイエンス」

関連本もいくつか、ご紹介しておきます。
いきなりニューロマーケティングもいいですけど、しっかりと「脳」についての理解をしておくことも、リサーチャーには必要だと思います。

欲望解剖 欲望解剖
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2006-12

⇒脳科学の茂木先生とブランド論の田中先生の本。さっと理解するにはいいです。

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press 心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-02-10

⇒定番本。リサーチと絡めて、脳科学を理解するにはこちら。

脳科学から広告・ブランド論を考察する 脳科学から広告・ブランド論を考察する
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2007-02

⇒こんな本もあります。脳科学の視点から、広告調査を考察しています。ただ学術論文的で、読みにくい・・・。

進化しすぎた脳 (ブル-バックス) 進化しすぎた脳 (ブル-バックス)
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2007-01-19
脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? 脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-09
海馬―脳は疲れない (新潮文庫) 海馬―脳は疲れない (新潮文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2005-06

⇒池谷裕二先生の著書。いずれも、脳について理解するとっかかりとしては、お勧め。