月別アーカイブ: 2008年11月

リサーチ新サービスをいくつか

ヤフーバリューインサイト社以外でも、このところ新サービスのリリースがいくつかありましたので、連投でご紹介を。

◆ニールセン・カンパニー

こちらは、注目のニューロマーケティング関連のサービス。

ニールセン・カンパニー、脳波でマーケティング効果測定の新事業(六本木経済新聞)

ニールセン・カンパニーの関連リリース(→セミナー告知ですが、すでに終了してます)

ニールセン・カンパニー、新たな神経科学の最先端技術をマーケティング手法に応用
(ニールセン・カンパニー米国より発表された報道資料の翻訳:20080207)

日本でもデモセミナーを開催し、本格的にサービス導入するようです。
六本木経済新聞に書かれているサービス価格をみると、どうかな?という感じもしますが。。

そういえば、本屋で↓の本を発見。買おうかどうしようか、迷ってます。。。(たぶん、買うでしょう・・・)

買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界 買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2008-11-21

◆マクロミル

マクロミルは、最近FA系のシステムに注力しているのかな?

マクロミル、自由記述の分析機能をASPで提供するサービス(マイコミジャーナル)

マクロミル、新サービス 「Quick-MINING ASP」 を提供開始(マクロミル社リリース)
「クイックマイニングASP」サービス紹介ページ(マクロミル社)

WEBリサーチでは、せっかくFAがテキストデータで落ちてくるのに、分析はこれまでどおりではもったいない・・・、と常々思っていましたが、とうとうASPでテキストマイニングができるようになりましたか。。。
ただ、テキストマイニングは使いこなすのが結構たいへんだというのが個人的な認識でもあり・・。魔法の箱ではないので、がらがらぽん、とおもしろい結果が出てくるわけでもなく・・。
なんか、「・・・」ばかりでキレの悪い紹介になってしまいましたが^^;、このあたりはすべてのテキストマイニングのソフトについてくる問題でもありますので、おもしろい分析になるかどうかは、利用者の力量次第ですね。
(料金説明の「上記料金には、基本的な辞書登録設定も含まれています。」という記述には期待しますが、どの程度やってくれるのでしょう。ここが肝ですね、ある意味。)

また、マクロミルでは、以前↓のようなサービスもリリースしていました。
(テキストマイニングといい、このサービスといい、このようなサービスがリリースされるのは、いわゆる狭義の「アンケート」だけでは限界があるという認識がクライアントにあったということなのでしょうかね?・・・)

「マインドミル(Mind Mill)」サービス紹介ページ(マクロミル社)

◆ネットレイティングス

ネットレイティングスからも、ネット視聴率データについてリリースが。

ニールセン・オンラインが「家庭と職場」全体の視聴率データの提供を開始、iTunesも集計対象にする「DMU」を導入(MakeZine)

ニールセン・オンライン、家庭と職場を総合した視聴率データの提供を開始
(ネットレイティングス社リリース)

広告における旧4メディアの元気の無さが伝えられ、これからはますますネットの時代かというときだからこそ、ネット視聴率への注目度は増していくでしょう。
そのような中で、ネット視聴率データの収集や算出方法で、大幅な仕様変更を行い、よりネット利用の実態に即したデータが得られるようになったということです。
(たとえば、日経系のメディアのランキングが上昇するというような結果に。)

YVIの「Search Insight」含め、こうしてリサーチサービスの新たな動向をみてくると、ほんと、リサーチの変動を感じます。。。

※WEB上で情報収集しているため、どうしてもWEB関連企業やサービスが目に留まるという側面もあるかもしれません。リサーチ会社の方で、「うちでもこんなサービスをリリースしてます」ということがありましたら、コメントやトラックバックでPRしていただいて結構です^^;
ただし、この1年くらいの内にリリースされた新しいサービス限定でお願いします。
また、コメント、トラックバックとも承認制にしておりますので、画面反映までに少しお時間を頂きますが、この点はご了承ください。

Search Insight(サーチインサイト) by YVI

ヤフーバリューインサイト社から、新しいサービスが発表されています。
(もう10日くらい前に発表になってますので、皆さんご存知かもしれませんが。。。)

「Yahoo!リサーチ」、新サービス「Search Insight(サーチインサイト)」公開
(ヤフー社リリース)

ニュース記事としては、たとえばこちら↓。

ヤフー「Search Insight」、ネットリサーチに検索行動データを融合(CNET Japan)

具体的なサービス説明については、ヤフー社のHPにて↓。

Search Insight (サーチインサイト)

さて、紹介はこれくらいにして、では実際に何ができるのか?
簡単に言ってしまえば、Yahoo!での検索結果を元に調査対象者を選定(絞込み)して、リサーチを行なう、ということでしょうか。

う~ん・・・、簡単に書いてしまうと、この程度なのですが。。。
実はこれ、かなり凄いことなのではないかと思うのです。当然、いまのところはYahoo!だからこそ実現できるサービスであるということもありますが、「リアルな行動を元に、リサーチ対象者を選定できる」ということのメリットは、かなり大きいものだと思います。

(他にも、”実購買データを元にリサーチができる”マクロミル社のQPRも、同様の意味で素晴らしいリサーチシステムだと思います。~ただし、「QPR」の本来の目的は購買データのトレンド把握で、購買データを元にしたアドホックなリサーチはオプションのようですが~
QPRについて、詳しくはこちらへ→「QPR(マクロミル社)」

もちろん、ふだんリサーチを行なうときも、「最近1ヶ月以内に○○を購入した人」とか「○○に関心をもっている人」という質問でスクリーニングを行い、リサーチ対象者の選定・絞込みを行ないます。
しかし、このように質問で絞り込みを行うのと、実際に「○○を検索している」という事実を元に選定するのとでは、対象者の濃度というのでしょうか、リアリティというのでしょうか、このあたりが結構異なるのではないかと経験的に感じています。。。「興味がある」というレベルと、「実際に検索を行った」というレベルでは、テーマに対する関与度が異なるのではないか、ということです。
さらに、リサーチの対象者=消費者=人は、スタティック(静的)であるわけがなく、ダイナミック(動的)なものであると捉える方が妥当でしょう。たとえば、ある時にふと「寒い・・・。手袋、買おうかな。」と思ったりする動物だと認識するのが正しいのでは?、ということです。
なので、「実際に行動を行った(Yahoo!のサービスの場合は、検索を行った)」時に、できるだけ近いタイミングで対象者を捉えることができれば、それがもっともリアリティのある情報が得られる瞬間だと考えることができそうです。

もっとも・・・
ヤフー社の説明をみると、基本的にプロモーション活動の一環~たとえば、検索連動型広告のキーワード改善とか、閲覧者のニーズに合ったサイト構築~といったテーマを想定しているようなので、もっと広い意味、たとえば新たな価値創造に結び付くインサイト把握といったテーマまでは視野に入れていないのか?、とも感じたのですが。。。
(このあたりは、使う方の勝手?^^;)

とくに広告という視点からは、MEDIOLOGICのタカヒロさんのエントリーが核心をついた記事だと思いますので、ぜひあわせてご覧ください。

検索動機を知るためのリサーチサービス(MEDIOLOGIC.COM)

『定性調査がわかる本』

「定性調査」がわかる本―定性調査の実務に関わるすべての人達に向けて 「定性調査」がわかる本―定性調査の実務に関わるすべての人達に向けて
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2008-11

マーケティング・リサーチの新しい本です。テーマは、「定性調査」に絞ってますが。

この本は、JMRA(日本マーケティング・リサーチ協会)で10年続き、いまだに実施されている研修から生まれた本だそうです。10年も続いた研修だということ、そしてその研修を元に書かれているということからも、この本の良さは保証されているといえそう。。。
(私自身もいくつかリサーチ研修をさせていただいてますが、研修を通じての気付きは多く、それを踏まえることで、つぎの研修がブラッシュアップされるということは体験済みです。なので、「実際に現場のリサーチャー相手に研修をしている著者が書いた本」という点で、著者の一方的な視点だけでない、実際に現場でリサーチをしている人の視点からの練りこみがされていると思ったのです。)

そして、いまのリサーチは「いかに、生活者のインサイトに基く仮説を構築できるか」が焦点になっているように思います。そのためにも、定性調査についての本質的な理解が必要な時代でもあり、こんな時代的な要請からも期待し。。。

そんなこんなで、期待いっぱいの状態で購入したら・・・。期待に違わず!

まずはもくじの紹介から。

Ⅰ.理論編
1.定性調査の基本的な考え方
2.定性調査と定量調査の違い
3.定性調査の種類
4.グループインタビューの構造
5.その他の定性的な調査

Ⅱ.実践編~各ステップで大事なこと
1.企画
2.対象者の設定とリクルート
3.インタビューの現場
4.定性調査の分析

ふたりのつぶやき・・・このままでいいのか?

一見、定性調査についての基本的な内容と構成になってます。そして、確かに基本的な内容は押さえられていますので、定性調査を一から勉強しようという人には、とても参考になる本でしょう。

一方で、これまで定性調査を”それなりに”やってきた人にも、気づきを与えてくれる内容だと思います。通り一遍の教科書とは異なる視点、内容が綴られているからです。かなり、定性調査の本質に迫った内容ではないかと思います。
中でも、「Ⅱ-1.企画」の章は、定性調査に限らずリサーチの企画を行なうポイントがうまく整理されていると感じます。これまでマーケティング・リサーチに関する本は多く出ていますが、「リサーチの企画」についてポイントをおさえて書かれているものは、なかなかなかったと思うので、リサーチの企画について悩んでいる人は、一度目を通してみては?

そして個人的に、この本でもっとも気に入った点はどこか・・・?
それは、リサーチの現状に対する著者の想い(中でも危機感)を感じることのできる文章を、そこここに見つけることができる点です。たとえば、「企画」の章で書かれた、こんな文章。ちょっと長い引用になりますが、ご紹介を。

インタビュアーという立場で調査会社と一緒に仕事をしていると、ときどき「企画書がない」「調査課題が見えない」、つまり「インタビューフロー、あるいは調査項目だけしか見えない」という場面に遭遇することがある。
調査会社で作成したインタビューフローを、実査日の直前の打合せで「このとおり聞いてください」と言われたり、あるいは、調査項目しか書いていない書類を呈示され「これでインタビューフローを作ってください」と言われることがある。
「企画書を見せてください」とお願いしても「社外秘なので見せられない」あるいは「企画書はない」と断られる。「では、この調査の背景や発注者の抱える問題点とは?」と調査課題を突っ込んでも、「聞いていない」、あるいは「教えてもらっていない」と言われる・・・というように、何をしても暖簾に腕押し状態に近いことが起こっている。

もしも、「これのどこがいけないの?」「こんなこと、ふつうでしょ?」と思った方がいたら・・・。
ぜひ本書を読んでください。定性調査とは何かを、もう一度勉強してください。こんな状態で、まともなリサーチができるわけがないのですから。
(けれど残念ながら、こんな状況は確かにありますし、増えていると感じます。著者も、肝心な「調査課題」が全くない”企画書”を呈示されることが、控えめに見積もっても過半数はある、と指摘しています。)

さらに、つぎのような文章も。これも研修の場ではいつも感じる課題で、全く同感。

定性調査実践セミナーでは模擬オリエンテーションを行い、グループ演習によって企画書を作成しています。その際に、かなりのディスカッションをして、いろんな仮説や課題を話し合っているのに、作成する企画書になると、なんともそっけない調査目的や調査課題になったり、調査課題が調査項目に戻ったりしているケースがほとんどです。
考えたことを日本語で表現することや、説得性のある文章にすることが、どうも苦手のようです。どのような表現や文章にすると、自分の考えたことが伝わるのかについて、読書したり新聞を読んだりして、日本語表現能力を日々鍛えてほしいものです。

そして、最後の「ふたりのつぶやき」に書かれている想い。
この想いにかなりの部分で共感しました。具体的には本を読んでもらうとして、いまリサーチ(やマーケティング)を仕事としている人すべてに、読んでもらいたいなと思った内容です。

(そしてそして、著者の一人である林さんとは、一緒にお仕事をさせていただく機会もあったので、その語り口とともに、その想いが届いたからでもありますが^^;)

PS.

この本の元となったJMRAのセミナーは、こちらで↓。

定性調査実践講座(JMRA)

著者の一人、林さんのインタビュー記事がこちら↓でご覧いただけます。
(今回の本とは関係のないインタビューですが、この本のエッセンスを感じていただけると思いますので、参考までに。)

グルインで消費者の琴線を探り当てる!(日経BPコンサルティング)