月別アーカイブ: 2007年8月

マクロミルの新たな動き

(8/20追記あり)

今週、マクロミルの決算発表と今後へ向けての新たな動きが発表されていました。

まずは、決算から(決算説明会資料は、↓でご確認ください)。

「平成19年6月期決算説明会資料」(マクロミルIR情報TOPページ)

連結で売上高64億円(対前年+23.4%)、単体で売上高54億円(対前年+20.2%)。
いずれも2桁増で、着実に売上を拡大しているようですが、↓の記事をみると、計画に達していないということで、株価はストップ安とか・・・。

マクロミルが値下がり率トップ、今期連結業績予想が2カ年計画を下回る

「調査会社」としてみれば、毎年着実に売上増を達成している(しかも2桁増)だけでも凄いと思うのですが、マーケットは評価してくれないんですね。。。他の調査会社で、毎年着実に売上増を達成している会社が、いくつあるのか?(上場するということは、こういうことなんですね・・・。確かに市場からの資金確保や信用面でのメリットは大きいですが、成長性を毎年確実に示していけないと、あっという間に市場から見放されてしまう。たいへんです。。。)

今後の活動方針については、「決算説明会資料」の17ページ以降に記されています。至極全うな内容で、あまり驚きはないですが・・・。

ところが、決算発表後に、↓のような発表がされているようです。日経でも記事になっていたようなので、すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが。

ニールセン・カンパニー株式会社の事業一部譲受に関する基本合意契約締結のお知らせ(マクロミルIR情報TOPページ)

何かというと、これまでニールセンが行なっていた「スキャントラック」というPOSデータ販売事業を、そのままマクロミルが買収したということのようです。いくらで買い受け、今後どれくらいの売上となるかは、未定とのことですが・・・。

実は、もうひとつ興味深いリリースもあります。こちらは、あまり報道されていないようですが。

商品購買調査サービスに関する共同展開についてのお知らせ(マクロミルIR情報TOPページ)
新サービスの開始に向けたシステム開発に関するお知らせ(マクロミルIR情報TOPページ)

これまで、東急エージェンシーが独自に行なっていた「QPR(家庭内スキャンパネル調査)」というシステムを、共同で開発・展開を行なっていくということ、そのために4000万円を投資しシステム開発を行なうということです。(こちらは、決算発表にも反映されていて、売上としては、来期で1億を見込んでいるようです。)

これまで、マクロミルはアドホック調査(=クライアントのテーマ・課題毎に調査を行う単発実施型の調査)を中心に行ってきましたが、この2つによって、データ販売型の事業の基盤を築くことができるようになったということです。それも、小売のデータであるPOSデータをニールセンから、消費の現場でのデータであるホームスキャンデータを東急エージェンシーと協同で、と売りと購入の両面を押さえているところが秀逸だと思います。
いまのところ、この両方のデータを扱っているのは、おそらくインテージだけだと思いますので(これまでは、ニールセンが対抗していましたが)、まさに両社が、がちんこで勝負を行なう状況になったともいえそうです。

【追記:2007.8.20】
ブルームバーグに解説記事があるのを見つけましたので、リンクを貼っておきます。

マクロミルが上場来安値、パネル調査事業の買収価値に不透明感(ブルームバーグ:8/16記事)

たしかに、ニールセンさんは採算が合わなかったので売却するんでしょうから、このような記事になるのもむべなるかな・・・。
そこは、マクロミルのシステム構築力&事業構想力でどのような展開にするのか?ですね。

『社員満足の経営』

社員満足の経営―ES調査の設計・実施・活用法 社員満足の経営―ES調査の設計・実施・活用法
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2007-03

この本、正直驚きです・・・。
ここまでノウハウをさらけだしていいのでしょうか?、という意味で。
著者はシンクタンクのコンサルタントなのですが、社員満足度調査(ES調査)について、これほど丁寧に書かれている本は、他にはないと思いますが・・・。

もくじは、つぎのようになっています。

1章
ビジネスストーリー1 ゲーム業界の大型経営統合
Lets ESサーベイ1 社員満足度とは何か
2章
ビジネスストーリー2 ESとCSの関係を学ぶ
Lets ESサーベイ2 ES調査を実施する
3章
ビジネスストーリー3 分析手法を身につける
Lets ESサーベイ3 集計結果を分析する
4章
ビジネスストーリー4 聖域にメスを入れろ
Lets ESサーベイ4 社員満足経営を実践する
5章
ビジネスストーリー5 若手社員がやめていく
Lets ESサーベイ5 元気な会社はどこが違うか
6章
ビジネスストーリー6 経営改革に終わりはない
Lets ESサーベイ6 分析結果を戦略的に活用する

最近の流行でもあるのですが、ストーリー形式と解説を交互に進める構成になっています。
基本的には、ES調査をどのように進め、結果をどのように活用するかについて、具体的に解説されています。ただ、具体的すぎて、大丈夫ですか?と問いたくなるくらい・・・。
コンサルタントだけあって、ところどころに差し込まれているチャートもわかりやすく、ES調査の解説本として良書であるばかりでなく、調査・リサーチの解説本としても良書だと感じました。とくに、1章~3章を丹念に読んでいただければ、リサーチフローに沿った作業イメージの理解は、かなり進むのではないかと思います。
反則かもしれませんが、チャートの標題の一部も紹介しておきます。

    • 調査プロジェクト・スケジュール
    • プロジェクトフロー
    • ES構造の仮説設定
    • 調査票の設計
    • 分析モデルの設計
    • 調査目的の明確化
    • 調査票設計の流れ
    • 満足度構造分析
    • 階層別フィードバック例

このように、リサーチの解説書としてもお勧めなのですが、はじめに書かれているつぎの視点に共感したのも、本書をお勧めするポイントとなっています。

このような考え方の根底にあるのが、「社員満足」(ES)の向上が「顧客満足」(CS)の向上をもたらし、それが企業業績の向上につながって「株主満足」(SS)を満たし、企業価値の創造に寄与するという社員満足経営(ES経営)の基本モデルである。

「人は石垣、人は城」。武田信玄だったでしょうか、この言葉を今一度、考える必要があると思います。

私もこれまで、いくつかの企業のCS・ES調査に関わってきましたが、CSとESは密接に関連していることが少なくありません。社員が満足して働いていなければ、あるいは働きやすい環境になければ、お客様に満足していただくことはやはり難しいでしょう。また、CSで明らかになった改善ポイントが、社員の日常的な活動における阻害要因(機能的要因かもしれませんし、モティベーション的な要因かもしれませんが)に原因が求められることもよくあることです。
ですから、CS調査を行うと同時に、ES調査を行うことは必須であると言っても過言ではないと思います。ただし、CS調査とES調査を、どう関連づけて設計するかということがポイントになるのですが。

最後に、やはり「はじめに」からの引用で。

ESの重要性は理解していても、その測定方法がわからない、実際にES調査は実施しているものの、その有効な活用方法がみつからないという企業は少なくない。そのような企業のES担当者にこそ、本書をご一読いただきたいと考えている。

そして、ES調査に限らず、「調査・リサーチは、どうやって進めるんだ?ポイントは?」と思っている方にも。