「読売ADレポート」最新号の特集で、「マーケティング・リサーチの今」と題して3つの記事がアップされていました。(「今」というほど、今のことでもないですが・・・)
今回は、この記事の紹介&コメントを。
日産自動車市場情報室室長星野朝子氏のインタビュー記事です。
現場でマーケティング・リサーチを行ってきた人の言葉だけあって、納得できるものです。マーケティング・リサーチとはなんぞやという理解のためにも、ぜひ一読を。
いくつか、気になった発言を紹介しておきます。
(ネット調査は)あくまで、データベースとして使うための定量調査として行っています。
(定性調査は)調査結果から何かをわかろうとしてやっているというよりは、お客様に刺激をもらおうとしてやっていますね。
調査は「自分を刺激する材料」だというのが、私の考えです。カスタマーオリエンテッドとは、カスタマーに答えを聞くことではなくて、自分がカスタマーになりきって発想することです。
いずれも、納得の発言です。
このような発言の背景も、本文でぜひ確認してください。
こちらは、個人的にはやや懐疑的。手法が懐疑的というのではなく、現実性の問題として懐疑的ということなのですが。
「傾向スコア」を適用するには、結局、正しくサンプリングされた対象データが必要となるわけで、そもそもそのようなデータを得ることができるのか?という問題が残されます。なので、記事の中でも、つぎのように指摘しています。
今後は欧米で行われているように、官公庁が行った調査データを一定の条件の下に民間でも利用できるようにすることが日本でも求められると思います。
確かに、官公庁はいまも「正しいサンプリングによる訪問調査」を実施していますので(回収率の問題はありますが・・・)、官公庁のデータを利用できれば実現可能性は高まるでしょう。ただ、マーケティング・リサーチにも適用したい補正項目が、官公庁調査でも取得できているということが前提になりますが。
そもそも、多くのマーケティング・リサーチでは補正はあまり必要ないというのもあります。ただ、記事で紹介されているビデオリサーチ社の「ACR調査」のような汎用性の高い実態・意識調査では、必要になるというのも理解できます。
これは、JMRA(日本マーケティング・リサーチ協会)で制定された「インターネット調査に関する品質保証ガイドライン」を元に、JMRAの委員の方が寄稿したものです。
オリジナルのガイドラインは、JMRAのHPでダウンロードすることができます(⇒こちら)。
「報告書に記載すべき」とされる項目を中心に、チェックポイントとしてまとめてられています。「べき論」としては、確かにこれらの項目を記載すべきだというのは正論だと思います。いずれも、データを読むベースとしては必要な情報ですので。
ただ、これらが実行されているかというと、ほとんどお目にかかったことがない。。。とくに、発信数や回収率などは、調査報告書としては不可欠だと思うのですが。
思うに、クライアント=リサーチユーザーの方も、なぜこれらが必要なのかということを理解できていないからだと思います(or 理解していたとしても、この点を突っ込んでも仕方がないと諦めているか?)。
なのでJMRAには、次回このような記事を書く機会がある場合は、ぜひ「なぜ」の部分を説明していただければと、期待しています。
(機会を見つけて、このblogでも取り上げたいとは思っていますが・・・)
以上、「読売ADリポート」の紹介でしたが、ぜひ、リンク先の原文を読んでいただき、マーケティング・リサーチについて考えていただきたいと思います。