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『デジタルマーケターが読むべき100冊+α』

デジタルマーケターが読むべき100冊+α デジタルマーケターが読むべき100冊+α
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2012-10-12

この本、店頭発売は10月11日ですが、献本いただいたのですでに手元に。
実は、本書の「第4章 デジタルマーケティングを知る44冊~マーケティングリサーチ」を担当しています。依頼を受けた時は、どのような方たちが書くのか知らなかったのですが、本ができてびっくり。錚々たるメンバーが執筆されていて、かなり恐縮している次第です。

さて、具体的な本の内容や執筆者ですが、こちら ↓ のホームページで詳しいです。選者(執筆者)、目次、選ばれた本は、こちらを見ていただければわかります。

『デジタルマーケターが読むべき100冊+α』新刊のご紹介(翔泳社)

選者も素晴らしいですが、もちろん内容もおもしろいです。
選者が一線級の方たち(私は別として・・・)なので、単に本の紹介にとどまらずに様々なメッセージが読み取れます。このあたりのニュアンスは、「終わりに」でMarkezine編集長・押久保氏が書いているつぎの文章に示されています。

本書は「本を紹介する本」という体裁ですが、結果的に今のマーケティングの現状を反映した「読みもの」という面でも面白い内容となりました。古典、トレンド解説本、ビジネス本、はたまた、心理学・経済学系の本や小説など、多岐にわたる本が紹介されております。選ばれた本を眺めていて、自分の専門領域だけではなく他のジャンルにも目を配り広い視野を持とう、というメッセージが選者の方々の底流にあるのではないかと感じました。(p.178)

この指摘は私も同感で、ざっと目を通した中でとくに感じたのは、つぎの3点でした。

  • 人間を理解すること、そして好奇心が大切 (だから、小説も読まないと)
  • 本質を読み取る (だから、古典も大切)
  • 自分の領域に閉じこもらずに周辺領域にも目配りを (だから、心理学や経済学も)

そして、「読むべき」本なのに選者が選んだ本の数はかなり多く、実に幅広い本が選ばれています。見方を変えると、ベストセラーや流行本ばかり読んでいてはだめで、自分にとって役立つ本はどこにあるかわからないということなのでしょうし、本から何を読み取るか、自分の糧になるのかは、人それぞれということなのでしょう。
一方で選者の重なりが少ない中で、複数の選者が選んだ本は、かなり「読むべき度」が高い本ということも言えそうです。(索引を見ると、複数の選者に選ばれたのがどんな本かが、わかります)

マーケティングに関する本選びの参考書としてはもとより、ビジネスをしていく上での考え方を学ぶという点でも、おすすめの本になっています。

PS1:
この本で、私が取り上げたのは以下の本なのですが、コーナーの特性上、実務寄りの選になっています。なぜ、これらの本を選んだのかは、本書を読んでいただくとして、興味をもった本がありましたら、こちらからどうぞ。

次世代マーケティングリサーチ 次世代マーケティングリサーチ
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2011-03-03

(※このblogでも紹介しています → こちら )

リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書 リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2012-04-13

(※このblogでも紹介しています → こちら )

ビッグデータの衝撃――巨大なデータが戦略を決める ビッグデータの衝撃――巨大なデータが戦略を決める
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2012-06-29

(※このblogでも紹介しています → こちら )

マーケティング・メトリクス マーケティング成果の測定方法 マーケティング・メトリクス マーケティング成果の測定方法
価格:¥ 3,675(税込)
発売日:2011-07-26

(※この本ではないですが、関連する本として → こちら )

分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学 分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2008-07-24

(※このblogでも紹介しています → こちら )

入門・社会調査法―2ステップで基礎から学ぶ 入門・社会調査法―2ステップで基礎から学ぶ
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2010-04

本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本 本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:1998-11

ヤバい統計学 ヤバい統計学
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2011-02-19

1からの商品企画 1からの商品企画
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2012-02

(※このblogでも紹介しています → こちら )

PS2:
他の選者が選んだ本なのですが、「この本を取り上げてくれた!」という意味でうれしかったので、紹介しておきたいのがこちら(私が岩手出身者というかなり個人的な思い入れで(笑 )。
陸奥の歴史を独自に読み解いた小説なのですが、中央史観以外にも視点を替えると、こういう歴史も見えてくるという本です。世界遺産にもなった「平泉」を訪れる予備知識としても、どうぞ。

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫) 火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)
価格:¥ 800(税込)
発売日:2002-10-16
炎立つ 壱 北の埋み火 (講談社文庫) 炎立つ 壱 北の埋み火 (講談社文庫)
価格:¥ 680(税込)
発売日:1995-09-06
天を衝く(1) (講談社文庫) 天を衝く(1) (講談社文庫)
価格:¥ 770(税込)
発売日:2004-11-16

PS3:
マーケティングリサーチ以外の活動領域として、最近取り組んでいるのが地域デザイン学会(→ こちらのHPを参照ください)での活動です。ここで分担執筆した本が、最近出版されましたので、この場を借りて紹介させてください。
温泉のビジネスモデルを考えるという、少々マニアックな内容の本です。地域、観光、ビジネスモデル、そして温泉に興味がある方は、手に取ってみてください(価格が高くなってしまったのですが・・・)。

温泉ビジネスモデル -ゾーンとコンテクストのデザイン- 温泉ビジネスモデル -ゾーンとコンテクストのデザイン-
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2012-09-26

『しくみづくりイノベーション』

しくみづくりイノベーション

しくみづくりイノベーション
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2012-09-14

本書は、電通コンサルティングによるもの。
タイトルよりも、「顧客を起点にビジネスをデザインする」というサブタイトルに惹かれて購入したのですが、読んでおくべき本だと思います。
(基本的な考え方のベースが私に似ているから・・・、というのが理由ですが。。笑)

本書で主張されているのは、MDBD=マーケティング・ドリブン・ビジネス・デザイン、つまり「最終顧客を理解することによってイノベーションを生み出し、市場投入を最適化するために事業体制を再構築し、高い業績を上げる手法(カバー折り返しより)」です。
そのための手法としてTPM(ターゲティング、ポジショニング、メイキング)があるとしています。

もくじは、こちら。

第1章 「ものづくり」から「しくみづくり」の時代へ
第2章 しくみの起点は顧客
第3章 ステップ1:ターゲティング-顧客を正しく理解する
第4章 ステップ2:ポジショニング-しくみのデザイン
第5章 ステップ3:メイキング-実践を通じて学習する
第6章 「しくみづくり」を可能にする組織
第7章 マーケティング発想で変えるビジネスのあり方

とくに、読んでほしいのは第3章です。
「顧客を正しく理解する」、すなわちリサーチについて書かれています。すでに、このblog他でも主張してきたこと、他の方が問題提起をされていることが、端的にまとめられています。いまのマーケティングリサーチの課題を、いまいちど再確認するのに良い内容です。
参考までに、この章の見出しを紹介すると、つぎのようになります。

・「需要の場」の発見と調査の限界
・思考を支えるアブダクション
・顧客との関係を構築する新たな技法
  (注:取り上げられているのは、ビッグデータとエスノグラフィです)

さらに1章と7章、そして「まえがき」も、なぜ顧客起点なのかという背景を理解するためには必須の内容だと思いますので、あわせて。

リサーチに携わるものとして、本書で必ず読んで欲しいのは上記の章(3章、そして1章と7章、はじめに)なのですが、これからのリサーチャーには、全体を通して読んでほしい内容でもあります。
もくじだけでは、わかりにくいですが、「TPM」は、つぎのような内容になっています(本書、pp.51-52)。

T:ターゲティング~顧客理解による需要創出可能箇所の特定
P:ポジショニング~需要充足価値創造のための事業の再構成
M:メイキング~ベータ版による学習の加速とその反映

つまり、Tだけではなく、PやMも顧客起点の考え方が反映されています。このあたりを理解できるようになると、「真の顧客起点とは何か」への理解が深まると思います。(もしかすると新しいリサーチテーマのヒントにもなるかもしれません)

そして、本書で何度か引用されている、2008年出版のこちらの本もあわせて読むといいかもしれません。(こちらを再読して気付いたのですが、つまるところ本書=『しくみづくりイノベーション』は、創発を具体的な方法論に落とし込んだもの、と言えそうですね)

創発するマーケティング 創発するマーケティング
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-03-14

『ビッグデータの衝撃』

少し前に出ていた本ですが、いまの時点のビッグデータを総括的に理解するには良書だと思うので。

ビッグデータの衝撃――巨大なデータが戦略を決める ビッグデータの衝撃――巨大なデータが戦略を決める
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2012-06-29

前回の jmrx 「マーケティングアナリシス最前線」(2012.8.28、※1)も、ビッグデータがテーマだったと言ってもよいと思うのですが、ビッグデータという流れは本物だと思います。ITベンダーのPRをみると、ビッグデータを扱うためには大規模で複雑なシステムや、高度な解析技術が必須のように見え、ハードルや期待値を思いっきり高めているので、バズワードとなる危険性も孕んでいるものの、ビッグデータそのものの考え方は、今の時代に欠かせないものだと感じています。ビッグデータの背景と本質、そして課題を理解しておくことは、とても重要だと思います。

そこで、本書。もくじは、つぎのとおりです。

第1章 ビッグデータとは何か
第2章 ビッグデータを支える技術
第3章 ビッグデータを武器にする企業~欧米企業編
第4章 ビッグデータを武器にする企業~国内企業編
第5章 ビッグデータの活用パターン
第6章 ビッグデータ時代のプライバシー
第7章 オープンデータ時代の幕開けとデータマーケットプレイスの勃興
第8章 ビッグデータ時代への備え

ビッグデータについて、いまの時点で理解しておくべき内容が網羅されているといえます。
なぜビッグデータなのか、ビッグデータとは何か(1章)ということから始まり、データの構造やHadoop、NoSQLなどの最低限知っておいた方がよい技術解説(2章)、そして事例(国内企業で取り上げられているのは、コマツ、リクルート、グリー、マクドナルド)と活用パターン(3~5章)、課題とこれから(6~8章)、といった構成で整理されています。

前回のjmrxをみても、技術的側面を多少は理解しておくことは欠かせないと思いますし(おそらく、DeNAの事例を理解するには必要だったでしょう)、プライバシーの問題やよく耳にするようになったデータサイエンティストの問題などの理解も欠かせないでしょう(技術動向の理解やプライバシーについては、中川さんも指摘されていたように思います)。
また、自社のデータだけでなく、他社のデータと連結する事例が増えていることも注目しておきたいです(本書では、ローソン×ヤフー、KDDI×楽天、クックパッド×アイディーズの事例が紹介されています)。

さらに、LOD(Linked Open Data)と呼ばれる、「データをオープンにし、みんなでつなげて、社会全体で大きな価値を生み出すために共有しようという取り組み」も、社会的な要請として必要だと思いますし、注目に値します。
現に、Google や Twitter が主体となって東日本大震災時のデータを共有してワークショップを行おうという取り組みや、

東日本大震災ビッグデータワークショップ – Project 311 –

公共機関データのオープン化へ向けて、課題整理や情報発信をしていこうというコンソーシアムが設立されたりしています。

オープンデータ流通推進コンソーシアム

直接、リサーチ会社がどうこうということもないのかもしれませんが、世の中では、このような動きが進んでいるということを理解しておくことは必要でしょう。(ほんとは、これらの流れにリサーチ会社も挑戦して欲しいのですが。。。)

そして、前回jmrxに参加して思ったのは、ビッグデータと言えども(だからこそ?)、そこには「リサーチマインド」と呼べるものが必要なのだということです。
データの活用を阻む壁を乗り越えて、データの意味を理解し、視覚化し伝えるのは、まさにリサーチャーの役割そのものです(ルグラン・泉氏、※2)。
データの量が対象理解のレイヤーをあげるという話(マイクロアド・中川氏、※3)は「対象者のコンテクストを理解する」ということに繋がります。
問題発見→解釈→提案というデータ分析のフローや「離脱者とは」という定義を考えることの重要性(DeNA、濱田氏)は、これまでのリサーチにおける考え方そのものでしょう。
このように、ビッグデータとこれまでのリサーチの接点は大きいのです(当たり前ですけど)。
ただし、活用できるのはノウハウ(サンプリングの仕方、調査票の作り方、実査の仕方、インタビューの仕方などの)ではなく、リサーチのベースにある考え方、マインドであるということは言えると思います。
マインドはスキルの理解が前提にあるとも言えますが、これまでのリサーチのノウハウをマインドとして理解しなおしつつ、本書でビッグデータの本質を読み解くことが求められそうです。

※ 前回のjmrx「マーケティングアナリシス最前線」(2012.8.28)の内容については、以下を参考にしてください。

※1: toggeter 「マーケティングアナリシス最前線まとめ」

※2: 【レポート】セミナー「マーケティングアナリシス最前線」(ルグランHP)

※3: 「価値観」「性格」も浮き彫りになるビッグデータ分析(blog「マインドリーディング」)

ここ1年(≒2011年)のお勧め本~その2:応用編

ここ1年のお勧め本、前回の基本編(→ こちら )につづいて応用編です。

『ショッパーマーケティング』
前回の基本編で取り上げようかと思ったのですが、専門性が高いのでこちらに。

ショッパー・マーケティング

ショッパー・マーケティング
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2011-10-04

近年、広告代理店でも「買場」を研究する専門部隊がつくられ、いくつかの本も出版されています。消費者(コンシューマー)を、使用者(ユーザー)としてだけ理解していては不十分で、買物をする人(ショッパー)としても理解しないといけないという流れです。
本書は、日本でのISM(インストア・マーチャンダイジング)や購買者研究の総本山ともいえる流通経済研究所編集とあって、これまでの研究成果が体系的に、かつ具体的にまとめられているといえます。もくじをみると、本書の内容が理解できると思うので紹介しておきます。

第1章 ショッパーマーケティングとは何か
第2章 欧米で注目が高まった背景
第3章 なぜショッパーを捉える必要があるのか
第4章 買物中の意識と店内購買行動の活用法
第5章 ショッパーインサイトを捉えるための技法
第6章 コンシューマーインサイトとショッパーインサイトを統合する店頭マーケティング
第7章 ショッパー行動観察からの売場づくり
第8章 ショッパーの購買行動に基づく店頭コミュニケーション
第9章 FSPデータの活用法
第10章 ショッパーマーケティングにどう取り組むか
第11章 日本コカコーラのショッパーマーケティングへの取り組み
第12章 ロッテのショッパーマーケティングへの取り組み

ショッパーマーケティングの背景や意義の理解(1~4章)、ショッパーの行動や心理を把握する調査手法(5~9章)、そして企業による事例(10~12章)と、ショッパーマーケティングを総合的に理解ができる構成になっています。
最終の価値伝達の場としての買場は一層重要になっていますし、とくに消費財のマーケティングには欠かせない考え方だと思います。(そして、リアルでも、ネット上でも、応用可能だとも思います)

『次世代コミュニケーションプランニング』
つぎに、以下で紹介する本を理解するベースとして読んで欲しい本。

次世代コミュニケーションプランニング 次世代コミュニケーションプランニング
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2012-03-30

基本的には「広告・PR人のための新しいプランニング思考法」(帯より)の本です。
しかし、よくあるハウツーものでも、「~すべき」や「~力」といった類の本でもありません。著者がはじめにで書いているように、「本物の変化を把握するための基礎力をつけるための本」であり、「考える癖を読者のみなさんに提供したい」というスタンスの本なので、マーケティングリサーチにも十分に応用が効きます。それに、同書のシリーズである『次世代マーケティングリサーチ』でも触れられていたように、広告とマーケティングリサーチは表裏一体の関係にあるので、マーケティングリサーチを理解しようとするならば、当然、広告・コミュニケーションの理解は欠かせません。
この本をリサーチという視点から読み解くことで、著者のいう「!」や「?」を感じることができるのではないでしょうか。たとえば、P24後段の文章などは「コミュニケーションプランニング」を「リサーチプランニング」に置き換え、他の言葉も少しだけ置き換えれば、ほとんど意味が通じますし、いまのリサーチが置かれている状況が示されているともいえます。他にも、「オーダー」と「オファー」(p18)、「マスからトライブへ」(p97)などの論点は、マーケティングリサーチを考える上でも重要なポイントですし、リサーチそのものについての言及もあります(p46やp57)。
そして、この本のキー概念でもある「コンテクスト」。私がリサーチとの関わりで理解しようとした言葉でもあるのですが、3年くらい前までは耳にすることの少ない言葉でした。ところが今は、これからのマーケティングを考える上では欠かせない言葉になっていると思います。
そして、以降で紹介する本を理解するためにも、この「コンテクスト」という言葉の理解は欠かせません。

『リッスン・ファースト』
関連して、帯に「ソーシャルリスニングの教科書」と書かれている、こちらの本。

リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書 リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2012-04-13

まさに教科書。
ソーシャルリスニングを、マーケティングの過程の中でどのように活用するかが事例を交えながら整理されています。既刊のソーシャル系の本は、どちらかというと考え方~時代的背景や、なぜリスニングか、いくつかの典型的な事例など~を示した本がメインでしたが、本書は実務に繋がる視点でソーシャルリスニングを体系的に整理しています。
扱っている領域は経営やマーケティング全般で、消費者理解、商品開発、コミュニケーション、ブランディング、カスタマーリレーション、予測といったテーマが、事例を交えながら紹介されています(ただし、事例は当然日本のものではないので理解が難しいものもありますが)。また、この分野に関わる日本の識者のコラムや対談を挟み込んでいるので、日本の状況を踏まえた視点も補えるのも、本書の特徴でしょう。
これまでのソーシャルメディア系の本では実務に活かせないなと思っていた方に、お勧めの本だと思います。
(個人的には、個別の方法論や事例よりも、Part4の「リスニングの新境地」がおもしろかったのですが、これは関心領域の違いなので・・・)

『異文化適応のマーケティング』
つづいて、グローバルマーケの本のように見えて、実は異文化論という視点が参考になる、こちらの本。

異文化適応のマーケティング 異文化適応のマーケティング
価格:¥ 4,620(税込)
発売日:2011-06

本書、帯には「国際マーケティングの本格テキスト」とあり、一見するとグローバルマーケティングの本のように見えますが、原題は、“Marketing Across Cultures”。どこにも global とか  management 、economics などの単語は入っていません。
監訳者の小川先生(法政大学大学院)が指摘するように、「社会心理学と消費文化論をベースに、国際マーケティングの分野に新しい視点を提供している(p.609)」点がおもしろい本です。さらに著者は欧州系の方なのですが、そのため米国流のマネジリアルなマーケティングとは趣を異にする視点が見られるのも特徴的ですし、おもしろい点です。
もくじを見ると、消費者行動、消費のグローバル化、市場調査、製品政策、価格、販促、コミュニケーションが扱われ、まさにグローバルマーケティングを文化の視点から考えるための教科書になります。とくに6章の「異文化での市場調査」は、“等価性”という視点から国際的な市場調査の課題を指摘しているので、これからグローバルリサーチに携わらなければならない方は、この章を読むだけでも参考になるでしょう。
しかし、ここで本書を紹介したい理由は別にあります。それは、『次世代コミュニケーションプランニング』でも言及されていた「トライブ」との関わりです。トライブとは「部族」のことなのですが、ハイコンテクストと言われる日本でも人々の均質性は弱まり、さまざまな興味や関心のもとにトライブ(部族)を形成しているのではないかと考えています。そうなると、これはまさに「異文化」を理解するためのリサーチ、マーケティングと同じ考え方をとらなくてはいけなくなります。エスノグラフィという手法が注目されているのも象徴的です。このような視点に立つときに、本書の意義は、ぐっと大きくなってきます。
とくに前半の1章から6章まで(構成は、文化というプロセス/文化のダイナミクス1:時間と空間/文化のダイナミクス2:相互作用、考え方、および行動/異文化間の消費行動/ローカルな消費者と消費のグローバル化/異文化での市場調査、となっています)は、このような視点で読むと参考になることが少なくないでしょう。
グローバルマーケティングに関わる人はもちろんですが、その他の方にも参考になる本だと思います。
(ただし、600ページにも及ぶ本ですし、お値段もそれなりので、ぜひ購入をとまでは言えません・・・)

『マーケティング・コンセプトを問いなおす』
マーケティングについて、もう一度考えてみたい人へ、おすすめの本がこちら。

マーケティング・コンセプトを問い直す --状況の思考による顧客志向 マーケティング・コンセプトを問い直す –状況の思考による顧客志向
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2012-05-01

著者の栗木先生(神戸大学大学院)は石井淳蔵先生門下、なので石井先生のマーケティング論に興味を持っている方には、お勧めしたい本です。
現代のマーケティングコンセプトでもある「顧客志向」ですが、この単純明快な命題、真理がありながら、なぜいまだにマーケティングを学ぶ必要があるのか?、これが思考の原点になっています。結論を急ぐなら、それは現実が「状況」に根ざしたものだから、となります。「状況に根ざしつつ、状況を乗り越えることを導く(p.ⅵ)」ということが求められているのです。(そして、この状況についての考え方は、リサーチ不要論を安直に唱える人にも理解しておいてほしい視点です。最後に少し触れます)
このようなことを論理的に展開していくのですが、論文がベースとなっているので決して読みやすくありません。しかし、コトラーに代表されるマネジリアルなマーケティングに限界を感じている方には、発想の広がりを得るヒントになる本だと思います。
また、本書にはリサーチに関連した章が2つあります。
ひとつは6章の「デザインの罠」。リサーチでの属性評価(味は、パッケージは、値段は・・・と個別に重視度をとるような調査)の罠について言及しています。これは、リサーチのベテランだとすでに気づいている課題だと思いますが、最近のリサーチ不要論には、この罠の未理解もあるようにも思います。
そして7章、「マーケティングリサーチの罠」。論理実証主義、批判的合理主義、社会構築主義という3つのリサーチの基本的な方法論を検討しつつ、マーケティングリサーチについて考察しています(正直、難しいです)。

マーケティング・リサーチは、未来を予測する万能のツールではない。この限界を忘れて、普遍法則が成り立つことを前提とした思考や実践にのめり込んだときに、マーケティング・リサーチは企業の経営者やマーケティング担当者をマイオピアに導く。このような罠に陥らないためにも、マーケティング・リサーチには、規則や秩序の局所性の反省、すなわちマイオピアを乗り越えるという、もう1つの役割があることを忘れてはならない。(pp.165-166)

そして、

マーケティング・リサーチには、マイオピアを解くこと、そして状況の構成を解くことの2つの役割がある。(p.227)

としています。個人的には、かなり共感できる結論です。この結論に至る過程を理解したい方、本書をどうぞ。

(参考:
栗木先生の、このマーケティング・リサーチ論についての発表が、(2012年)6月2日(土)に関西学院大学で開催される日本消費者行動研究学会(JACS)のカンファレンスであるようです。詳細は、下記のページで確認してください。

http://www.jacs.gr.jp/conference/44.html )

また本書に興味のある方は、関連して石井先生のこちら ↓ の本もどうぞ。
栗木先生の本に増して難解ですが。。。

マーケティング思考の可能性 マーケティング思考の可能性
価格:¥ 3,570(税込)
発売日:2012-01-27

こちらの本を適切に紹介するのは難しいので、石井先生がインタビューを受けている、こちらのHPを参考にしてください。。。

異様なところに「触角」を伸ばせ(第1回)
著者インタビュー(前篇) プロフェッショナルの知性を刺激する1冊『マーケティング思考の可能性』石井淳蔵(流通科学大学学長)著
(PRESIDENT Online スペシャル:2012/5/10)

『価値共創時代のブランド戦略』
最後は、ブランド戦略の本です。

価値共創時代のブランド戦略―脱コモディティ化への挑戦 価値共創時代のブランド戦略―脱コモディティ化への挑戦
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2011-04

こちらも、アーカーによるマネジリアルなブランド論の次、といった感じの本でしょうか。
本書の目的について序章では、「本書は、こうした価値共創の問題をも視野に入れつつ、価値と関係性という2つのキーワードを基軸に、近年に展開された新たなブランド論の内容を、ケースも交えつつできるかぎり体系的に解説していくことにしたい(p.12)」としています。
アーカーやケラーをはじめとした、これまでのブランド論をきっちりとおさえながらも、「価値」と「関係性」といった21世紀の議論をふまえつつ整理しています。
ブランドに関する理論を、いまの視点も踏まえながら理解したいという方に、おすすめですし、ブランド論にこだわらなくても、価値共創とか関係性ということを理解したい方にも、参考になる本だと思います。
(ただし、こちらも論文集なので、読みやすくはありません。。。)

以上、ここ1年くらいの本で応用編といえるものを紹介してきました。
ここまで読んでいただければわかると思うのですが、問題意識としてあるのは、世の中に絶対的なものはなく、相対的な状況の中で位置づけられるという考え方です。おそらく、「解釈主義」といわれる考え方に近いと思います。
リサーチの古典的な考え方だと、普遍的な解(たとえば、事実とか、ニーズとか)が存在し、それを明らかにしていくのがリサーチというような捉えられ方をしていたと思います。しかし、今回紹介した本を読むと、リサーチも絶対的な解の存在を前提にして「正しい答え」を求めるような考え方からは脱却しなければならないと思えます。すべてのリサーチの結果は状況に依存しているのだし、リサーチで得られるのはある特定の状況の元での事実でしかないということです。このあたりについては、また機会を改めて整理していきたいと思います。
いずれにせよ、これまでのマーケティング論の主流であった、西洋的な要素還元主義、絶対主義、理論を前提にした考え方に疑問を感じたり、そこまででなくても何かが違う感じがする、何かヒントはないだろうか、と考えている方には、今回ご紹介したような本を読んでみると、頭を揺さぶられる感覚を得ることができると思います。

(ただし、だからといって、このような相対主義的な考え方をベースに実務を実践するのは難しく、これらの本を読んですぐに実務に役立った、ということもないと思いますので、その点は前提としておいていただければ。そしておそらく、いまだに解釈主義はどちらかというと異端だと思いますし)

ここ1年(≒2011年)のお勧め本~その1:基本編

ゴールデンウイークを利用して、積読になっていた本を少し整理しました。
この1年くらい、こちらのblogで本の紹介をしていなかったので、これを機に、主だったものを紹介しておこうと思います。あまり経験がなく、これから勉強していこうという方向けの基本編と、専門書を中心に少し変化球ぎみの応用編の2回にわけて、紹介します。
(出版されてから時間が経っている本が多いので、すでに購入された方もいるかと思いますが、その点はご容赦を・・・)

今回は基本編です。ただし、「自分はベテラン」と思っている人にも参考になると思います。

◆ものの見方、考え方についての本

昨年は、ものの見方や考え方、科学的リテラシーとは何か、あるいは統計・確率に関する本が多く出版された印象があります。おそらく、原発事故に伴って溢れ出た様々な情報やデータに多くの人が振り回された状況があったからだと思います(実際、これらの本の内容も、原発に関連した情報を検証するという内容のものも少なくありませんでした)。
日々の暮らしの中で接する情報をどのように読むのかということは、ふだんの生活を行う上でも重要ですが、これらの本が提示している内容は、とくにリサーチャーにとっては重要なベースとなるものです。

『自分のアタマで考えよう』

自分のアタマで考えよう 自分のアタマで考えよう
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2011-10-28

著者のちきりんさんのblog(→ こちら )は、その視点がユニークで、硬直したアタマではなかなか見ることのできない世の中の側面を提示してくれる、おすすめのblogです。各エントリーが平均4万人に読まれ、月間100万~150万のページビューを集めるということからも、そのおもしろさは推して知るべし、でしょう。
そして、このblogの発想の元となっているのが、この本で提示されている思考の方法論。
「はじめに」で、“この本が、「考えるって、つまりなんだよ?」と思われている方、「なにをどう考えればいいのか、誰か教えてくれよ!」と感じていらっしゃる方のお役に立つ”ことを目的として本書を書かれたとあります。
大枠は「もくじ」を見るとわかるので、紹介しておきます。

序:「知っている」と「考える」はまったく別モノ
1:最初に考えるべき「決めるプロセス」
2:「なぜ?」「だからなんなの?」と問うこと
3:あらゆる可能性を検討しよう
4:縦と横に比べてみよう
5:判断基準はシンプルが一番
6:レベルを揃えて考えよう
7:情報ではなく「フィルター」が大事
8:データはトコトン追い詰めよう
9:グラフの使い方が「思考の生産性」を左右する
終:知識は「思考の棚」に整理しよう

Amazon評では辛口の評も少なくありません。フレーム思考にすぎない、厳密性に欠ける、偏ったものの見方、一般的すぎるなどなど。しかし、ここに書かれていることは分析の基本的な思考法として知っておくべき内容だと思いますので、読んでおいて損はないと思います。とくに、まだまだ分析がよくわからないという方のベーシック本として、お勧めしておきます。

(もう少し実務よりの類書として、『イシューからはじめよ』 もお勧め)

『「科学的思考」のレッスン』
さらに、アカデミックに振って「科学的思考」を学ぶための本が、こちら。

「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス (NHK出版新書) 「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)
価格:¥ 903(税込)
発売日:2011-11-08

“アカデミックに振って”と書いたので敬遠したくなる人もいるかと思いますが、リサーチを仕事とする人にとって、この「科学的思考」を学ぶことは不可欠です。
こちらも「もくじ」を見ると、求められていることの大枠がわかると思いますので、紹介しておきます(ただし、2部構成の前半だけ紹介します。後半は、まさに原発問題を題材とした科学リテラシーについての内容ですので、読まなくてもいいかなと・・・)。

第1章 「理論」と「事実」はどう違うの?
第2章 「より良い仮説/理論」って何だろう?
第3章 「説明する」ってどういうこと?
第4章 理論や仮説はどのようにして立てられるの?
     どのようにして確かめられるの?
第5章 仮説を検証するためには、どういう実験・観察をしたらいいの?
第6章 なぜ実験はコントロールされていなければいけないの?

まさにリサーチの根本に関わる問題。
このあたりの概念や方法論が理解できているかどうかで、リサーチャーとしての質は問われるのではと思っています(定量調査に限らず、です。はやりのデータサイエンティストさんも同じ)。
リサーチにかかわる人には、必読本だと思います。

◆リサーチの本

リサーチに関する本、しかも基本的な本もいくつか出版されています。

『アンケート調査入門』
まずは、マーケティングリサーチやマーケティングサイエンスについての著書を多く書かれている朝野先生編著による本。

アンケート調査入門 アンケート調査入門
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2011-10-08

本書の特徴は、著者が事業会社でのリサーチ担当者だということ。内容も著者の皆さんの経験をベースに書かれているので実務的で、トラブルシューティングなどの工夫もあるなど、タイトル通り入門書としても読める内容だと思います(この部分の構成は、リサーチプロセスと実行管理/アンケート票の作成/テキストデータからの情報抽出/データの集計と統計解析/統計モデル/情報発信、となっています)。
ただ、この本で読んで欲しいのは、実は1章~3章です。ここは、リサーチの入門者には少し難しいかもしれません。一方でリサーチのベテランにとっては、これまでの考え方を揺さぶられる内容になっていると思います。古典的な統計調査の考え方に安住することの危険性を示してくれます。しかし、「いまのリサーチ」を捉えるには、理解しておくべき内容でしょう。ここに記されている背景や考え方を理解しているかどうかで、リサーチへ取り組む際の“深み”に違いが出てくるのではないかと思います。
(そういう意味では、第1章~3章と4章以降のレベル感や内容に、ギャップがあるとも言えるのですが…)

『インタビューのプロが教える、「ホンネ」を語らせる技術』
こちらは、インタビューのノウハウについての入門書です。

インタビューのプロが教える「ホンネ」を語らせる技術 インタビューのプロが教える「ホンネ」を語らせる技術
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2012-02-08

著者は、定性リサーチ会社(アクセス・ジェーピー)の代表。この会社での若手社員の教育向けに書き溜めた原稿をベースに書かれている、と紹介されています。
インタビューのための準備や仕込み、さまざまな投影法の紹介、インタビュー現場でのノウハウなどについて書かれています。掛け値なしの入門書、これからインタビュー調査をやらなければならない人、やってみたい人にとっては、よい参考書になると思います。

『図解 マーケティングリサーチの進め方がわかる本』
こちらは、10年前に出版された『図解でわかるマーケティングリサーチ(2001)』の改定版です。
基本的な構成や内容については大きな変更はありませんが、グループインタビューとインターネットリサーチについて加筆がなされています。
副題に「企画設計から、調査票の作成・実査、集計、分析、報告書作成まで」とあるように、マーケティングリサーチの全体像とポイントを理解したい人の入門書として、お勧めです。

図解 マーケティングリサーチの進め方がわかる本 図解 マーケティングリサーチの進め方がわかる本
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2012-01-26

『オンライン・ソーシャルメディア・リサーチ・ハンドブック』
いまは、ソーシャルメディア・リサーチについても理解しておかないといけない時代でしょう。
そういう意味で本書は、オンラインリサーチやソーシャルメディアリサーチの基本を理解するためのベースとなる本だと思います。
構成は、オンライン定量調査/オンライン定性調査/ソーシャルメディア/特定分野の調査/マーケティングリサーチの最新動向とあるように、まさに網羅的(そのため、分厚く、お値段もそれなりにするのが、ちょっと。。。)
この分野を専門とする方には、基本を学ぶ、事典的に調べるための本として必携だと思います。

オンライン・ソーシャルメディア・リサーチ・ハンドブック―リサーチャーのためのツールとその技法 オンライン・ソーシャルメディア・リサーチ・ハンドブック―リサーチャーのためのツールとその技法
価格:¥ 6,300(税込)
発売日:2011-10-20

『1からの商品企画』
リサーチとタイトルにはないですが、リサーチを学ぶにはよい一冊です。

1からの商品企画 1からの商品企画
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2012-02

この本、商品企画を学ぶための本です。ただ、本来の商品企画・開発は、結構泥臭いものだし、この本のようにリニアに進むものでもないと思いますが、「1からの」とあるように入門書ですので、その点は留意を。実務的かというと、否、でしょう。
商品企画の入門書を、なぜリサーチ本として紹介するのかというと、この本で商品企画の過程でリサーチがどのように組み込まれるかがわかるからです。とくに、リサーチ会社に所属するリサーチャーは、商品企画・開発の全過程に関与することはできないので、企画プロセスとリサーチの関わりを理解するには、ちょうど良い一冊でしょう。さらに、最近注目されるようになったリサーチ手法も取り入れているので、手法の基礎的な理解~どんなときに使うのか、どのように進めるのか~に役立つと思うからです。
もくじを見ると、この意図が少し理解いただけるかもしれないので、簡単に紹介。

第1部:探索的調査
 商品企画プロセス/インタビュー法/観察法/リード・ユーザー法
第2部:コンセプトデザイン
 アイデア創出/コンセプト開発/プロトタイピング
第3部:検証的調査
 市場規模の確認/競合・技術の確認/顧客ニーズの確認
第4部:企画書作成
 販促提案/価格提案/チャネル提案/企画書作成/プレゼンテーション

最近、アップルやマクドナルドの事例から、商品企画にリサーチは役立たないということが喧伝されていますが、リサーチを矮小化して理解した、かなり単純化した議論だと思っています。本書で、リサーチの多様性と商品企画との関わりを学び、その上で判断しても遅くはないでしょう。

◆消費者行動論の本
リサーチャーの必須科目となる消費者行動論の本が、ここ1ヶ月くらいの間に立て続けに出版された(される)ようなので、一応紹介しておこうと。(いずれも未読です)
リサーチ本もそうなのですが、20世紀にまとめられた消費者行動論の本だけでは追いつかなくなった、ここ10年くらいの研究蓄積が整理されたということなのでしょう。
構成を見るかぎり、いずれも教科書的で網羅的な内容になっているようです。
(内容については、ご自身で確認してください)

最初は、消費者心理学の定番本として評価の高かった『消費者理解のための心理学(1997)』の改定版です。基本的な部分はそのままにおさえつつ、情報環境の変化によってもたらされた領域について、最新研究を取り入れながら改定をしたということです。
出版社紹介は、“モノやサービスを消費するとき、人は何に刺激を受け、どのように行動し、何を感じるのか。消費者行動を心理学から読み解く方法を、より現代社会に即して解説した改訂版。”

新・消費者理解のための心理学 新・消費者理解のための心理学
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:2012-04

つぎに、早稲田の守口剛先生・竹村和久先生編著による著書。
出版社紹介は、“近年大きな発展を遂げている行動経済学、神経科学・脳科学ほか、社会学、文化人類学等の最新の研究成果を取り入れ、より学際的な研究の活発化が見られる消費者行動研究。伝統的な心理学的アプローチを基本に据え、消費者行動の基礎的な理論から先端的な研究動向までを解説、消費者行動研究の面白さが伝わってくる好著。”

消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで 消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで
価格:¥ 2,415(税込)
発売日:2012-04-16

続いて、基本書として優れた本が多い有斐閣アルマから。学習院の青木幸弘先生、法政の新倉貴士先生他による著書。
出版社紹介は、“消費者情報処理の理論を軸に,様々な段階の消費者選択に焦点を当てながら多様な消費者の行動を整理し,理解するための基本理論を易しく解説。消費者行動分析をマーケティング戦略,ブランド戦略につなげるための枠組みも提示する待望のスタンダード。”

消費者行動論–マーケティングとブランド構築への応用 (有斐閣アルマ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2012-05-12

そして、明治大学の井上崇通先生による著書。
出版社紹介は、“「マーケティングと消費者行動」「消費者行動のモデル化」「消費者心理」「社会のなかの消費者」の4部構成。消費者行動論の体系的な標準テキストを目指した著者渾身の書き下ろし。”

消費者行動論 消費者行動論
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2012-04

以上が、基本書として紹介したい本です。
消費者行動論のところでも書いたように、専門書については、ここ10年くらいに起きた環境変化に即して、改定された内容の本が少なくないことに気づきます。
最初に、入門者向けの基本的な本と書きましたが、そういう意味では20世紀に基本的な知識を習得したベテランほど、これらの本で新たな理論を理解しなければいけないのかもしれません。すべてのリサーチャーに、読んでおいてほしい本といえそうです。

(応用編は⇒ こちら 

『「つながり」を突き止めろ』

「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書) 「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2010-10-15

この本、1ヶ月くらい前に読み終わり、紹介したいと思いながら後回しになっていました。
素直に本書の紹介で書こうか、もっと大きく「つながり/ネットワーク」というキーワードを主に書こうかとずっと迷いがあったからです。わたしにとって、あまり軽く扱えないテーマでもあり。

しかし本日、アドタイムで高広さんのつぎの記事が紹介されました。

セグメンテーションからコネクションへ(アドタイ2010.12.13 by 宣伝会議)

ぜひ読んでみてほしい記事なのですが、この文を理解するにはやはりネットワークの理解が欠かせなはず。で、あまり考えていても仕方ないので、とにかく書いておこうと思い至ったというわけです。
(なので、まだ思いが錯綜していて流れが悪い、わかりにくい、あまり内容がないものになっているかもしれません。ご容赦を・・・)

本書の著者はネットワークサイエンスの研究者である安田雪先生。
実は安田先生は、もう一度マーケティングリサーチについて考えて(研究して?)みよう、というきっかけをわたしに与えてくれた先生でもあるのです(実際に師事したわけではないのですが)。
先生との出会いは2005年、セミナーにおいてでした。このときのメモを見ると、こんなことが書いてあります。

サンプリング調査への批判~ネットワークを無視しているのではないか?
→属性等によるセグメンテーション等、個の分析に過度に依存しすぎており、
  個の背景にあるネットワーク、つながりを無視している
→部分の合計は全体となり得ない
→個の分析を掘り下げても、おおもとの全体を理解できない

(安田先生のこのあたりの考え方は、マーケティングジャーナル誌101号『マーケティングは、関係を制することができるか』(2006)という論文でも触れられていますので、興味をもたれた方はこちらも読んでみてください)

「なるほど、ネットワークか」と思った記憶があります。そして、つぎのマーケティング(リサーチ)のキーワードもネットワークになるのだろうというひらめきがありました。(2005年?、遅くない?、という方もいるかもしれませんが。。。)

そしてまさに、「つながり/ネットワーク」は、いまを、そしてこれからを理解する上では欠かせないキーワードになっています。
しかしどうも、「つながり/ネットワーク」をきちんと理解している人は多くないとも感じています。とくにネット上で散見される意見や主張をみると、そう感じます。

そこで本書です。
研究者による著書ですが論文や研究書ではありません。エッセーに近い文章で、著者の私的な思いも、時おり顔をだします。
しかし、ネットワークサイエンスのトピックスや、研究領域、いまの課題などについても十分に触れられていると思うので、はじめてのネットワーク入門としては丁度いいのかもしれません。「つながり/ネットワーク」の世界が、どのようなテーマを扱っていて、いま、何が分かっているのかを理解する上で。
一応、いつものようにもくじを紹介しておきます。

第1章 対ゲリラ戦略と米軍マニュアル
第2章 電子メールから浮かび上がる業務遂行ネットワーク
第3章 SNSの人脈連鎖
第4章 広告作品「カレシの元カノの元カレを、知っていますか。」
第5章 知人の連鎖と新型インフルエンザつながり
第6章 弱い絆の強さと弱さ
終章  “入る”を制する

◆さらにネットワークを学ぶ

今回はいつもの本紹介とは趣向を変えて、本書の紹介はここまでとし、さらに「ネットワーク」をテーマとした本を紹介していきます。

本書でネットワークに興味をもたれたら、ぜひ、つぎの本を読んでみてください。
ネットワークでは古典といってもいい本で、ネットワークを勉強するには避けられない本だと思います。ネットワークの論文では、引用されることの多い本でもありますし、著者の「バラバシ」という名前や、「スケールフリーネットワーク」という単語は、基本用語です。
ネットワークについて順を追って理解するには、本書が最適では?

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く 新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2002-12-26

あわせて、こちら ↓ も読んでおくといいとは思いますが。(必読とまでは・・・)
こちらも、著者の「ダンカン・ワッツ」や「スモールワールド・ネットワーク」という言葉は、覚えておくべき単語だと思います。

スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法 スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2004-10

いやいや、ここまで専門書ではなく、もう少し概論書はないですか?という方には、こちらでしょうか ↓

私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書) 私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書)
価格:¥ 840(税込)
発売日:2007-04

以上の本は、発売日を見るとわかるとおり、日々進化・深化するネットの世界を理解するには少々古くなってきているかもしれません。
最近出版されたものとしては、こちら ↓ がいいかもしれません。

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2010-07-22

◆さらに進んで、実際にネットワークを研究対象としたいなら・・・

ここまでは、「つながり/ネットワーク」を理解するための本の紹介でした。
しかし、では実際にネットワークを研究するとなるとどうしたら?、という人のための本をいくつか。
(ただ、こちらはいずれも専門書ですし高い本ですので、一度、図書館ででも内容を確かめて、ほんとうに必要かどうかは判断ください。)

まずは、安田先生の著書。
ネットワーク分析を行なうための用語やモデルについて書かれていますので、基本的な理解からはじめる方は、この本から入るのがいいと思います。

ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ) ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1997-02-14

実際にネットワークを調査、分析した事例が紹介されているのが、こちら ↓ の本。
これがそのまま使えるかどうかはわかりませんが、「初学者が実際に調査や分析を行うための入門書」ということで。

社会ネットワークのリサーチ・メソッド―「つながり」を調査する 社会ネットワークのリサーチ・メソッド―「つながり」を調査する
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2010-04

また、実際にネットワーク研究を行なった本としては、こちら ↓ など。

クチコミとネットワークの社会心理―消費と普及のサービスイノベーション研究 クチコミとネットワークの社会心理―消費と普及のサービスイノベーション研究
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2010-02-17
消費者間の相互作用についての基礎研究―クチコミ、eクチコミを中心に 消費者間の相互作用についての基礎研究―クチコミ、eクチコミを中心に
価格:¥ 3,675(税込)
発売日:2009-03
ネットが変える消費者行動―クチコミの影響力の実証分析 ネットが変える消費者行動―クチコミの影響力の実証分析
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2008-03

少し毛色の変わったところでは、こちら ↓ が面白いかも。
安田先生の本にも出てくるのですが、どうもネットワーク研究には「統計物理学」という領域が大きく関わっているらしく、先に紹介したバラバシなども統計物理学者のようです。
で、流行についての研究者と統計物理学者がジョイントして、クチコミ効果の数式化に挑んだのが本書です。

大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する 大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2010-09-15

さて、そろそろ今回のエントリーも終わりにします。
途中でも書きましたが、今、これからを理解するには、「つながり/ネットワーク」の理解が不可欠だと思います。
ぜひ、『つながりを突き止めろ』から、ネットワークの世界に入ってみてください。
いろいろと、考えさせられると思いますよ。

PS.
最後に、ネットワークからの連想で思いついたので、おまけを。
ネットワーク分析のひとつの領域としてあるのが、社内のコミュニケーション分析(『つながりを突き止めろ』では、第2章でふれています)。
社内でのメールのやりとりを解析して・・・、というのはすでに研究もあると思います。しかし、ほんとのコミュニケーションを分析しようと思ったら、対面コミュニケーションは無視できないはず。
そこで、このような ↓ ソリューションもすでにあるんですね。(ある意味、怖いですけど・・・)

社内コミュニケーションを可視化する「ビジネス顕微鏡」(日立HPより)

(この技術、マーケティングリサーチに応用できないのかな、と考えるのですが・・・)

『イシューからはじめよ』

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」 イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2010-11-24

今回紹介する本の著者は、以前から視点や考え方がとても勉強になると思っていたblog『ニューロサイエンスとマーケティングの間』の方。
このblogで2,684ものブックマークを得た、こちら ↓ のエントリーをベースに書き起こしたものが本書。出版されると聞いて即買いでした。

圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル
 (『ニューロサイエンスとマーケティングの間』20081018)

期待に違わず、久しぶりにblogを書こうという気持ちに^^;
リサーチャーは必読の書だと思います。とくに企画や分析の仕事を始めて3年くらいで、今までの自分の思考スタイルを見直したい、整理したい、もっと効率的・効果的にしたいと思っている方が読むと、いちばん得るものが大きいかもしれません。

本書の狙いについて、著者はつぎのように述べています。

ちまたに「問題解決」や「思考法」をテーマにした本は溢れている。しかし、その多くがツールやテクニックの紹介で、本当に価値あるアウトプットを生み出すという視点で書かれたものは少ないように感じる。意味あるアウトプットを一定期間に生み出す必要のある人にとって、本当に考えなければならないことは何か、この本はそのことに絞って紹介したい。(「はじめに」p.2)

ポイントは、「意味あるアウトプットを一定期間に生み出す」でしょうか。
科学者であり、コンサルタントでもあり、今は事業会社で実務を行なっている著者だからこそ書ける内容だと思います。かなり実践的です。

もくじは、つぎのとおり。

序章 この本の考え方~脱「犬の道」

第1章 イシュードリブン~「解く」前に「見極める」
      イシューを見極める/仮説を立てる/よいイシューの3条件/
      イシュー特定のための情報収集/イシュー特定の5つのアプローチ

第2章 仮説ドリブン①~イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
      イシュー分析とは何か/イシューを分解する/ストーリーラインを
      組み立てる

第3章 仮説ドリブン②~ストーリーを絵コンテにする
      絵コンテとは何か/軸を整理する/イメージを具体化する/方法を
      明示する

第4章 アウトプットドリブン~実際の分析を進める
      アウトプットを生み出すとは/トラブルをさばく/軽快に答えを出す

第5章 メッセージドリブン~「伝えるもの」をまとめる
      「本質的」「シンプル」を実現する/ストーリーラインを磨きこむ/
      チャートを磨きこむ

序章は考え方の整理で、第1章以降で具体的な方法を提示しています。
もくじからではわからないかもしれませんが、第3章と第4章はまさに「分析とは何か」についてですし、第5章は「プレゼンのまとめ方」といえる内容になっています。

著者は問います。
「バリューのある仕事とは何か?」、そして、「バリューのある仕事を、圧倒的な生産性で生み出すプロセスは?」
そして、この問への答えとして、「イシュー(の見極め)からはじめる」ことだとしています。

つまり、「何に答えを出す必要があるのか」という議論からはじめ、「そのためには何を明らかにする必要があるのか」という流れで分析を設計していく。(「第1章」p.45)

これ、まさにリサーチ企画の最初のステップです(私のリサーチ研修を受けた方は、理解してくれると思うのですが・・・)。
この部分がクリアになっていないと、途端に迷路にはまっていく、ムダを重ねる、あるいはアウトプットの納得感がない、という結果に陥ります。

そして、「よいイシューの3条件」である

「本質的な選択肢である」「深い仮説がある」「答えを出せる」
(「第1章」pp.56-57)

も肝に銘じておきたいポイントです。
(字面だけで理解した気にならずに、しっかり本書で内容を理解してくださいね)

ここで疑問を持つ人もいるでしょう。
「イシュードリブン、仮説思考ということは、固定的なものの見方をしてしまうのでは?」と。
この点についても、著者はしっかりと釘をさしています。

アウトプットを生み出すステップで意味のある分析・検証は、「答えありき」とは対極にあるということだ。
「イシューからはじめる、という姿勢でアウトプットを作成するように」と同じチームの若い人にいうとかなりの確率で誤解が起きる。それは「自分たちの仮説が正しいと言えることばかり集めてきて、本当に正しいのかどうかという検証をしない」というケースだ。これでは論証にならず、スポーツでいえばファウルのようなものだ。
「イシューからはじめる」考え方で、各サブイシューについて検証するときには、フェアな姿勢で検証しなければならない。(「第4章」p183)

少し前にあった検察の問題は、ここでいう「ファウル」であったとわかります。

紹介は、この程度にしておきます。でないと、本書の内容をすべてここで書き連ねることになりそうだからです。
ただし、もう一点だけ。
このような本を紹介すると、「でも本を読んだだけでは、役に立たないでしょ?」という反論も必ずあります。この点についても、著者は明快に、つぎのように語っています。私も、この考え方に賛成です。

「僕は今、自分にできる限りの深いレベルまで、知的生産におけるシンプルな本質を伝えた。あとは、あなたが自分で経験する以外の方法はないはずだ」(「おわりに」p.239)

一度読んでみてください、若手の方はとくに。
(学生の方が論文を書く際にも、とても役立つと思いますよ)

できるだけ短い文章で書かれているからでしょうか、リズムがあり、読みやすく、わかりやすい文章だと思います。(こんな文章を書きたいと思うんですが・・・)

PS.
著者自身による本書の紹介も、↓ にてあわせてどうぞ。

本がついに世に出せそうです(『ニューロサイエンスとマーケティングの間』20101102)
本の予約受付が始まりました(『ニューロサイエンスとマーケティングの間』20101114)

『マーケティング』

マーケティング (New Liberal Arts Selection) マーケティング (New Liberal Arts Selection)
価格:¥ 3,885(税込)
発売日:2010-05-01

新しいマーケティングのテキストです。
マーケティングに関しては、すでに多くのテキストもありますし、3885円也という値段もあって、購入を躊躇していたのですが。。。

twitter での

“Marketing: Consumer behavior and Strategy”という副題にある本書は、買い手理解に多くのページが割かれている。従来のマーケティングテキストではわずかなページしか割かれてなかった内容。買い手理解の重要性が増大した今の要請に対応したもの。
(via matsuoty

という投稿をみて、「お?!」と閃きが。

そこでAmazonにて、もくじを確認すると・・・

第1部 マーケティングとは
 第1章 現代マーケティングと市場志向
 第2章 企業戦略とマーケティング戦略

第2部 消費者行動の分析
 第3章 消費者行動分析の基本フレーム
 第4章 消費者行動分析の歴史
 第5章 消費行動と消費パターンの分析
 第6章 購買行動と意思決定プロセスの分析
 第7章 知識構造と関与水準の分析
 第8章 消費者データの収集と分析
 第9章 定性的調査方法

第3部 競争環境と流通環境
 第10章 競争環境の分析
 第11章 流通環境の進展

第4部 マーケティング戦略の策定
 第12章 市場細分化と標的設定
 第13章 新製品開発
 第14章 製品ライフサイクル

第5部 マーケティング意思決定
 第15章 製品政策:顧客価値のデザイン
 第16章 ブランド政策:ブランド構築の枠組み
 第17章 価格政策
 第18章 プロモーション政策:マスコミュニケーションとパーソナル・コミュニケーション
 第19章 チャネル政策

第6部 マーケティング戦略の諸側面
 第20章 サプライチェーン・マネジメント
 第21章 関係性マーケティング
 第22章 ビジネス・マーケティング
 第23章 サービス・マーケティング
 第24章 インターネット・マーケティング
 第25章 マーケティングにおける社会性と倫理性

と、確かに「第2部 消費者行動の分析」の章が厚そう。
で、さらに「なかみ検索」でページ数を確認すると、正味600ページ強の中で、第2部のページ数は200ページにも及ぶ。。。実に、3分の1近い!

これまでのマーケティングテキストの多くは、STP+4P(+ブランド)という「戦略、マネジメント」を主としたものが多かったのですが、これは異色の構成と言えるでしょう。
つまり、これまでのマーケティングテキストが「マネジメント中心のマーケティングマネージャー向けのテキスト」だとすると、本書は「リサーチャー(&リサーチャー寄りのマーケター?)向けのテキスト」ということもできそうな気がします(極論ですけど・・・)。
ともするとリサーチャーは、マーケティングのテキストに馴染めない人が少なくないと思うのですが、本書なら他のテキストに比べ興味を持てるのではないか、と思っています。

というこで、ご購入。
実際に本書の内容をみると、見慣れた有斐閣のテキストシリーズと同様の体裁。章ごとにキーワードを提示しながら、図表やコラムをまじえ、章末に演習問題と参考文献を提示、という構成です。
そして、消費者行動はもちろん、マーケティングの基本的なフレームが多くの図表を使って示されている点が第一の特徴。さらに、「サプライチェーン」「関係性マーケティング」「サービスマーケティング」「インターネットによる影響(章タイトルはインターネットマーケティングとなってますが、インターネットによるマーケティングへの影響、という方が正しいと思います)」「ソーシャルマーケティング」といった領域についても章立てされており、また「経験価値」「サービスドミナントロジック」などの比較的新しい概念についても言及されているなど、ここ10年くらいのマーケティングの焦点についても理解できる点が第2の特徴といえます。

このような特徴をもつ本書ですが、その狙いについて、「はしがき」では以下のような主旨で書かれています。(直接の引用ではなく、ポイントをまとめて書きます)

マーケティングの定義もいろいろあるが、交換に関わるものであることは異論がないであろう。だとすると、交換の対象である買い手の行動を理解することが、マーケティングでの重要な課題と考えられてきた。

ところが、多くのマーケティングのテキストにおいては、カバーすべき領域が多岐に及ぶこともあって、買い手の理解のために比較的僅かな紙幅しか割かれてこなかった。

だが、買い手の理解なしに、マーケティングのあり方を論じることは、誤ったマーケティングに結果する危険が少なくない。

とりわけ買い手が選択の目を厳しくしている状況や購買のあり方を変化させている状況では、買い手がなにゆえにある行動をとるかを理解することは、マーケティングのあり方を考える上できわめて重要だといわなければならない。

だからこそ、われわれは、目の前に現れる買い手の行動の変化に目を奪われるのではなく、その背後にある買い手行動の仕組みをより良く理解し、その理解にもとづいて、マーケティングのあり方を考える必要がある。そうすることにより、マーケティングについて、何が変わり何が変わらないかを見極めることが可能になる。

そのために本書では、消費者行動に焦点を当て、それがいかなる仕組みにもとづいているかに、通常のテキストブックをはるかに上回る紙幅を充てた。こうした消費者行動の仕組みの理解にもとづいて、マーケティングのあり方を把握し、マーケティングを実践していくうえでの基本を身につけること、これが本書の狙いである。

「消費者インサイト」や「エスノグラフィ」という言葉がよく聞かれるようになったのも、この主旨で述べられているように、より「買い手」の理解が重要になってきていることの表れであるといえるでしょう。
まさに、いまの時代だからこそのテキスト、といえそうです。

さらに、本書とほぼ時を同じくして見つけた本に、↓ の本があります(洋書なのですが)。

Marketing 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit Marketing 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit
価格:¥ 2,411(税込)
発売日:2010-05-03

この本の著者はコトラー、言わずと知れたマーケティングの大家です。
この本のAmazonでの商品説明をみると、つぎのように書かれています。

現代マーケティング論の第一人者フィリップ・コトラーがマーケティングの未来像を語る、注目の新著。
本書でコトラーは、これまでのマーケティングの潮流を「製品中心主義」のマーケティング1.0から「消費者中心主義」のマーケティング2.0への変化と整理した上で、来たるべきマーケティング3.0は「人間中心主義」になると予測する。
人間中心主義のマーケティングとは、顧客を単なる「消費者」としてではなく、多元的で能動的な存在、価値の創造に積極的に関わろうとする人間として理解し、そのような顧客のニーズに応えることを意味する。いくつかの先進的な企業は既に、顧客の参加意識・創造性・コミュニティ意識・理想主義といった深層的なニーズを満足させる製品・サービス・企業文化を提示し始めている。そのようなマーケティングを実現するには、環境・健康・社会問題に取り組む企業の社会的責任を果たすことも重要な要素となる。
マーケティングの世界的な流れに関心を持つすべての人々にとっての必読書。

やはり、消費者や人間の理解、消費者行動の理解が必要になるという提言がなされています。
(こちらも「なかみ検索」ができますので、興味のある人は本文を覗いてみてください。コトラーの主旨を理解できると思います)

誤解を畏れずに極論を言えば、これまでのマーケティングは「製品中心主義の、マネジメント偏重」のものだったといえるかもしれません。
しかし、ここ数年の環境変化は買い手を大きく変貌させ、消費行動を大きく変えてしまいました。いまはまさに「消費者」や「人間」を理解しないといけない時代といえます。
それも、個々の人ばかりではなく、人のネットワークやダイナミズムまで含めた消費行動の理解が必要なのかもしれません。
このような、そして今後もっと変化していく消費行動を理解し、その上でのマーケティングのあり方を考える上で、本書はよいテキストになると思います。
これまで、いろいろなマーケティングテキストを読まれた方へも、お勧めしたい本です。
(ただし、いわゆる「入門書」ではないので、その点は注意を。一番最初に読むマーケティングの本としては重すぎるかもしれません。他の概説書で、マーケティングの"いろは"を理解した上で、本書を読むことをおすすめします)

<さらに>

これまでの日本におけるマーケティングや消費者の変遷を理解する上で、本書の著者の一人である慶応大学大学院・池尾先生が書かれた ↓ の本も、一読に値する本だと思います。
すでに10年前の出版になりますが、「歴史に学ぶ」ことは大切な事だと思うので。

日本型マーケティングの革新 日本型マーケティングの革新
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1999-07

消費者行動について、もっと学びたいという方に。
すでにこのblogでも紹介しているのですが( こちら にて)、本書においても「まずよむべき1冊」と紹介されている本。ある意味、古典?

消費者理解のための心理学 消費者理解のための心理学
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1997-06

そして、中央大学大学院・田中先生の本。本書では「最近の研究動向をふまえて書かれた体系的書籍」と紹介されています。消費者行動論を網羅したレファレンスとしての価値があります。が、文章主体で図表はあまりありません。。。

消費者行動論体系 消費者行動論体系
価格:¥ 3,045(税込)
発売日:2008-09-26

もう少し取っつきやすい本で、消費者行動とコミュニケーションとの関連付けが強いという特徴をもつ本として、こちら ↓ も欠かせません 。とくに「ポストモダン消費者研究」については、いいガイドになると思います。

消費者・コミュニケーション戦略―現代のマーケティング戦略〈4〉 (有斐閣アルマ) 消費者・コミュニケーション戦略―現代のマーケティング戦略〈4〉 (有斐閣アルマ)
価格:¥ 2,205(税込)
発売日:2006-05

最後に、すでに紹介していたと思っていたのですが、紹介し忘れていた ↓ の本を。
こちらは、これまでのマーケティングテキストの構成(マーケティングマネジメントの流れ)に則ったものですが、日本人(法政大学大学院・小川先生)が執筆した、日本の事例による、できるだけ日本語の書籍や文献を優先的に取り上げた本です。
本格的なマーケティングテキスト、しかし翻訳書でないものをお探しの方には、本書をお勧めします。

マネジメント・テキスト マーケティング入門 マネジメント・テキスト マーケティング入門
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2009-07-10

『星野リゾートの教科書』

星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則 星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2010-04-15

また星野本ですか・・・、という方もいらっしゃるかもしれませんが。。。
星野さんの本は「ベーシックなことをしっかり」というものが多いと思うので、先端とかバズワードに向きがちな視点を、基本に戻してくれる効果があると思っているので。

今回の本も、日経BPの雑誌連載の単行本化です。正直、すかすか&ページ少ないので、2時間もあれば十分読みきれると思います。また、テーマもベーシックな内容(なんといっても「教科書をどう生かすか」についての本ですから)。
ということで、「あまり本をよむのに慣れていなんだよね」とか言いそうな社会人ビギナーの方が、経営とかマーケティングへの取っかかりとして読むには、とくにおすすめの本です。

まずは、もくじ。

第Ⅰ部 教科書の生かし方 ~定石を知り、判断ミスのリスクを最小にする
第Ⅱ部 教科書通りの戦略 ~難しそうに見えて、実は効果的である
第Ⅲ部 教科書通りのマーケティング
      ~「やるべきこと」をやり切れば、すべてが変わる
第Ⅳ部 教科書通りのリーダーシップ
      ~すぐに成果は出ないが、必ず成果は出る
第Ⅴ部 教科書通りに人を鍛える
      ~「未経験者歓迎」で成長できる理由

内容は、

では、星野社長は、どんな教科書から学んで、どんな成果を上げてきたのか。そのとき現場はどう動いたのか。本書では、その具体的な事例を取り上げ、教科書を経営に生かすためのポイントを明らかにする。(本書「はじめに」より、p2)

というものです。
まず第Ⅰ部で本の探し方+読み方+実践の仕方が紹介されています。
そして第Ⅱ部以降で事例が紹介されていますが、それぞれの事例はほぼ、

概要 + 抱えていた課題 + 解決への取り組み + 他分野への応用 + 教科書のエッセンス

という内容で構成されています。
正直なところ、親切すぎる内容かなという印象もありますが。。。

このような事例もさることながら、この本を紹介しようと思ったのは、以下のような考え方に共感する部分が大きかったからです。

「教科書の理論なんて机の上でしか通用しない」「本当にビジネスの現場で役立つのか?」と思う人がいるかもしれない。(・・・中略・・・)しかし、私はこれまでの経験から「教科書に書かれていることは正しく、実践で使える」と確信している。(本書「第Ⅰ部」より、p12)

囲碁や将棋の世界に定石があるのと同じように、教科書に書かれている理論は「経営の定石」である。何も知らないで経営するのと、定石を知って経営するのでは、おのずと正しい判断の確率に差が出る。それは会社の長期的な業績に直結するはずだ。(本書「第Ⅰ部」より、p14)

むしろ私が注目するのは、書棚に1冊ずつだけ置いてあるような本だ。こうした本は流行の波を乗り越えて、体系化された理論として生き残り、定石として一般的に認知されたことを示している。私はこういう古典的な理論の中にこそ、経営に役立つメッセージがあると実感している。だから棚に差された本をじっくりと見る。(本書「第1部」より、p18-19)

いかがでしょう?
確かに、「教科書なんて役に立たない」という声を聞くことも少なくないです。しかし、それは理解が十分でない、あるいは、徹底的にやり抜いていないからだ、というのが星野氏のスタンスのようです(「はじめに」より)。

そして、本書を読んで思いを新たにしたことがあります。
それは、「星野リゾートは、ほんとにリサーチを活用している」ということです。他書でも、星野氏がリサーチを重視していることは明らかですが、本書でも多くの事例に調査の話が顔を出します。

市場調査のデータを分析しながら、競合から抜け出す戦略を立てた。(本書p35)

星野リゾートの独自の調査によると・・・(本書p50)

予約ページの使いやすさをチェックするために、外部の専門会社を使い調査を実施する。(本書p64)

こんな感じです。

リサーチでしっかり実態を把握し、教科書に書かれた理論に従い、きっちりとやり抜く。
これが、星野リゾートの強さなのでしょう。

最後に、どんな本を教科書としているのか、一部を紹介。

競争の戦略
価格:¥ 5,913(税込)
発売日:1995-03

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 基本編 第3版
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2008-12-19
売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則
価格:¥ 1,529(税込)
発売日:1994-01

真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか
価格:¥ 1,325(税込)
発売日:1990-03
ブランド・エクイティ戦略―競争優位をつくりだす名前、シンボル、スローガン
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:1994-01
ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
価格:¥ 2,039(税込)
発売日:1995-09

10年以上前の本が多い、でも確かに、いずれも必読書だと思います。

『マーケティングを学ぶ』『ビューティフルカンパニー』『マーケティング・アンビジョン思考』

紹介しなくてはと思いながら、いままで紹介してなかった3冊を、ここで。

1冊目は石井淳蔵先生による、わりと最近のこちらの本 ↓ 。

マーケティングを学ぶ (ちくま新書) マーケティングを学ぶ (ちくま新書)
価格:¥ 945(税込)
発売日:2010-01-10

「マーケティングを学ぶ」とはいいながら、入門者向けの本ではありませんので、ご注意を。
むしろ、マーケティングマネージャー、あるいは現場で数年の経験を積んだマーケターが読むべき本ではないでしょうか。基本的なテーマは、マーケティングマネジメントなので。

それは、もくじを見てもらえば一目瞭然ですし、このもくじを見ると石井先生の主張も見えてくると思います。(そのために、少し細かなレベルで紹介しておきます)

序章 マーケティング・マネジメントを求めて
第1部 市場志向の戦略づくり
 第1章 生活者に向き合う
 第2章 市場を細分化し、ターゲットを定め、ポジションを獲得する
 第3章 顧客関係の深化に向けて事業を再定義する
 第4章 ポジショニングを先行させる
 第5章 第1部のまとめ:市場志向の戦略を立てる
第2部 戦略志向の組織体制づくり
 第6章 コーポレート・ブランドを経営する
 第7章 製品分野別に経営する
 第8章 ポジショニングを通じてブランド・エクイティを確立する
 第9章 ブランドを拡張する
 第10章 市場カテゴリーとブランドの絆を作る
 第11章 第2部のまとめ:戦略体制を確立する
第3部 顧客との接点のマネジメント
 第12章 ブランド・コミュニケーションをマネジメントする
 第13章 ブランド・エクイティの成長をマネジメントする
 第14章 ブランド・エクイティに基づいて企業を経営する
 第15章 営業プロセスをマネジメントする
 第16章 チャネルをマネジメントする
 第17章 第3部のまとめ:顧客関係をマネジメントする
第4部 組織の情報リテラシーを確立する
 第18章 市場調査情報を使いこなす
 第19章 営業情報を使いこなす
 第20章 お客様の問い合わせ情報を使いこなす
 第21章 第4部のまとめ:組織の情報リテラシー
終章 コマーシャル・イノベーションに向かって

著者の言葉を借りると、

本書は、<創造的適応>というそうしたマーケティングの基本論理を念頭に置きながら、市場や組織に向けて企業が考える戦略やマネジメントを、具体的なケースを通してわかりやすく読み解こうとするものです。21世紀に入り、ますます複雑さを増し、流れが早くなる環境にある企業にとって、創造的適応の姿勢はますます重要になると思います。(p.311)

ここにあるとおり、各章は“テーマ>ケース>まとめ”という構成をとっており、読みやすい内容になっています。
ただ、ケースは読みやすいのでわかった気になりがちですが、やはりマーケティグの基本を理解していないと正しい理解はできないと思いますので、まずはマーケティングの基本を理解した上で、本書に進んだ方がいいかと思います。
その上で本書を読むと、理論と現場の結びつきが理解できるようになるのでは?

とはいえ、なぜか新書なんですよね、この本。
なので、とりあえずこの本から読んでみて、マーケティングに興味を持ってもらうというのも、ありなのかもしれませんね、肩肘を張らずに。

2冊目の本は、少し前に出版された、嶋口充輝先生のこの本 ↓ 。

ビューティフル・カンパニー 市場発の経営戦略 ビューティフル・カンパニー 市場発の経営戦略
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-10-17

石井先生の本は、どちらかというと戦術レベルでの内容だったとすると、嶋口先生のこの本はもう一段上の戦略レベル、あるいは理念レベルの内容ということができるかもしれません。

実は、つい先日、twitter上で「マーケティングは戦争か」ということについての議論が行われていました。その時に、SurveyMLの萩原さんが嶋口先生のネット上の記事を紹介してくださり、この本を思い出しました。
(萩原さんが紹介した記事は、こちらです ↓ )

特集「見えない顧客ニーズをつかむ組織の作り方」
(読売ISコミュニケーションマガジン「ペリジーvol.6」2009年1月号)

本書の中でも、「戦争型の競争から恋愛型の競争の変化へ」と題して、つぎのように述べています。

大きな変化の一つは、それまでの市場シェアをベースにした「戦争型の競争」のウエイトがだんだんと小さくなって、それに代わって「恋愛型の競争」が重視されてきたことだ。どういうことかと言うと、競合他社との相対的な競争ではなく、顧客価値を高めるという絶対的な競争にそのウエイトが移ってきたのである。(p.46)

このような環境の元での、「必要なアンビジョン、仕組み革命、マーケティング・マッスル、顧客主義と顧客との関係性などについてもその考え方を紹介していきたいと思う」(p.4)ということで書かれたのが本書です。

もくじは、つぎのように。

第1章 マーケティングの持つ本来の意味とは
 第1節 アンビジョンという名の戦略
 第2節 マーケティングは企業経営の根幹機能
第2章 ビューティフル・カンパニーの条件
 第1節 仕組み革新の時代への対応
 第2節 マーケティング・マッスルという組織づくり
 第3節 ビューティフル・カンパニーという価値軸
第3章 関係性マーケティグと先客万来のシステム
 第1節 恋愛競争の時代におけるロイヤル・カスタマーの創造
 第2節 関係型ソリューションを売る金融マーケティング
 第3節 お得意様をもてなす、千客万来の仕組みづくり
第4章 顧客満足の追求とコーポレート・ガバナンス
 第1節 社外取締役に求められるもの
 第2節 企業理念、CREDOと呼ばれる羅針盤の意義
 第3節 顧客満足とコーポレート・ガバナンス
 第4節 クレームをガバナンスに生かす
第5章 揺らぎ始めたモノ主導型マーケティング
 第1節 サービス・ドミナント・ロジックという概念
 第2節 品質に関するパラダイム・チェインジの必要性

ある雑誌でのインタビュー記事を元に構成した本のようで、とても読みやすい内容になっています。

さて、以上の2冊の本。
いずれも、これまでの両先生の研究のエッセンスをまとめたような内容で、さらにとても読みやすいという特徴も共通です。
論文書や理論書ではなかなか取っ付きにくいかもしれないですが、この2冊でしたらあまり抵抗なく読めるのではないかと思って紹介しました。
とくに、マーケティングの基本を学びながらも、時代の変化(パラダイムシフトとも言われますね)の中で、これまでのマーケティング理論が、なんかしっくりこないという疑問を感じ始めた人に読んでもらいたい本です。「序破離」でいうところの、序から破に向うくらいの方ですね。
なんらかのヒントが得られるかもしれません。

そして、さらにもう1冊。
石井、嶋口両先生も名を連ねているのですが、JMA(日本マーケティング協会)の研究を元に書かれた、こちら ↓ の本もぜひ。

マーケティング・アンビション思考 (角川oneテーマ21) マーケティング・アンビション思考 (角川oneテーマ21)
価格:¥ 740(税込)
発売日:2008-11-10

この本、2008年の出版となっていますが、実は2001年に出版されている下記の本とほとんど同じ内容の本です。

柔らかい企業戦略―マーケティング・アンビションの時代 (角川oneテーマ21)
価格:¥ 600(税込)
発売日:2001-11

つまり、2001年に提言されていた内容が、そのまま2008年でも通用したということで。。。
新しい考え方が受け入れられるのには、時間がかかるということですね。
あるいは、ハウツーやノウハウでないと理解されないのか。。。

この本も、もくじを紹介しておきます。

第1章 戦略アンビジョンの時代(嶋口充輝)
第2章 マーケティングの使命は夢を売ること(竹内弘高)
第3章 マーケティングへの2つのチャレンジ(片平秀貴)
第4章 新しい時代の顧客ニーズと顧客志向(恩蔵直人)
第5章 アンビジョンを具現化するマーケティング戦略(上原征彦)
第6章 創造的瞬間がアンビジョンを確信に変える(石井淳蔵)
終章  新たなパラダイムシフト

基本的に、新しいマーケティングについての考え方が示されている本です。
(さすがに今となっては、「新しいか?」と思う方もいらっしゃるでしょうけど・・・)
「アンビジョン」がテーマなので、たとえば竹内先生の章では、マーチン・ルーサーキング師のスピーチが引用されていたりします。

これまでの調査について、少なからず否定的な言説がなされているのも本書の特徴で。。。
(とはいっても、リサーチ自体を否定しているわけではなく、その使い方、考え方についての否定ですので)
引用したいところは多々あれど、ここで抜書きするとそれぞれの文脈とは異なった解釈をされる危険性があるので、やめておきます。

けど、せっかく紹介しているのに、エッセンスを感じてもらえないのも・・・。
思い切って、終章からつぎの文章を紹介しておきます、少し長い引用になりますが。

私たち現代人は、要素還元法と呼ばれる線形の理論に慣れ親しんでしまった。確かに、この手法は重要だ。MBA(的教育)の重要性が叫ばれる。ロジカル・シンキングや財務や税務をはじめ、さまざまな理論という名の知識が必要とされる。
しかし、アンビジョンはロジカル・シンキングでは導き出されない。アンケート調査や統計手法の先にもアンビジョンはない。アンビジョンは哲学のようなものだ。ホーリスティックなアプローチ、あるいはアフォーダンス理論のようなアプローチによって、インスパイアされるものだ。ロジカル・シンキングや財務的なアプローチなどは、得られたアンビジョンを吟味し、ブレイクダウンし、戦略化するために重要なのである。(p.164)

本書の通奏低音になっているのは、このような考え方だということを感じていただければ。
個人的には、おすすめの本です。
(けど、否定的な人も少なくないだろうと思います・・・)