日別アーカイブ: 2007年3月4日

『マーケティングで使う多変量解析がわかる本』

マーケティングで使う多変量解析がわかる本 マーケティングで使う多変量解析がわかる本
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2007-01-26

多変量解析の入門書として、手ごろな本が出版されています。

以前、「購買心理を読み解く統計学」を紹介していますが、どちらかというと新しい手法を中心としたものでした。
翻って本書は、マーケティングでの事例を取り上げながら、多変量解析初心者でもわかりやすく、ベーシックな手法を中心に解説しています。

もくじを紹介しながら、とりあげられている手法を見てみます。

第1章 多変量解析とは
第2章 解析データの基礎知識
第3章 重回帰分析
第4章 数量化Ⅰ類
第5章 プロビット分析
第6章 コンジョイント分析
第7章 判別分析
第8章 数量化Ⅱ類
第9章 ロジスティック回帰分析
第10章 因子分析
第11章 数量化Ⅲ類
第12章 コレスポンデンス分析
第13章 クラスター分析
第14章 多次元尺度法
第15章 パス解析と共分散構造分析
第16章 AHP(階層化意思決定分析法)

それぞれの分析手法について、どのような手法か、各分析に出てくる統計用語の意味、解析の手順、アウトプットまでの手順、結果の解釈の仕方について整理されています。

多変量解析をはじめて使ってみたいという人や、これまでまったく手法の理解をせずに見よう見真似で使っていた人、あるいは自分で分析はしないけれど結果を見ることがある人にとって、多変量解析とはどんなものか、各手法がどんなものかを知る最初の取っ掛かりとしては手ごろな内容だと思います。

ただ、14もの解析手法が取り上げられていることからもわかるとおり、それぞれの手法についての突っ込んだ説明はされていませんので、すでに多変量解析についてある程度の知識を持った方には、内容が浅すぎると思います。
また、本書で多変量解析への取っ掛かりをつかんだとしても、つぎにはより専門的な本も読まないと、ほんとうの意味で手法を使いこなすことは難しいです。とくに、自分で統計ソフトをまわし、分析をする必要のある人は、他の本で理解を深めることをお勧めします。
(→こちらで、いくつかの本を紹介していますので、参考にしてください)

そして、著者が「はじめに」で指摘しているとおり、

多変量解析の手法を正しく使い分けるには、手法の習得だけではなく、洞察力、推理力、データを丁寧に分析する根気強さに加え、解析結果を社会全般と照らし合わせて妥当性をチェックできる幅広い知識なども求められます。

ということを忘れずに、分析に取り組む姿勢がとても大切だと思います。
安易に、多変量解析を使えば何かわかるだろう、という姿勢で分析を行うことは、厳に慎みたいことです。

とはいえ、何も知らずに分析を行うことの方が、もっと悲惨な結果を招くでしょう。
「多変量解析とはなんぞや?」「どのように使うのか?」「どういうときに使えるのか?」を知り、多変量解析への第一歩を踏み出すには、ちょうどよい本だと思いますので、入門者や初心者の方へは、お勧めの本です。







『つっこみ力』

ちくま新書 645 ちくま新書 645
価格:¥ 735(税込)
発売日:2007-02-06

ご存知(ですか?)、パオロ・マッツァリーノ氏の三冊目の本です。
(パオロ・マッツァリーニという名前をみて、「おぉ!」とか、「くすっ^^」とされた方、同好の士ですね^^;)

この本の本題は、題名にもある「つっこみ力」だと思うのですが、マーケティング・リサーチを主テーマとしているblogとしては、「第二夜:データとのつきあいかた」を中心に紹介をしていこうと思います。
(「第一夜:つっこみ力とはなにか、もしくは、なぜメディアリテラシーは敗れ去るのか」も、おもしろい内容ですし、一読の価値はあると思います。)

マーケティング・リサーチを飯の種にしている私がいうのもなんですが、ここで氏が語る「データ」についての見解は、まったくもってその通りと思わざるを得ません。
たとえば、つぎのようなことです。

データほどおもしろいものはないし、便利なものはない。と同時に、データほどバカバカしいものもない、っていえば、私の気持ちをほぼ伝えられると思います。

社会現象に関するデータとつきあう上で、最も大事な点をお話しましょう。「データは自然に湧いてこない」んです。
どんなに高度な分析から得られたものであろうと、データは自然に湧いてくるものではありません。誰かがなんらかの目的を持って社会現象の一部を切り取ったものなんです。すべてのデータには、それを作成した人間の、なんらかの意図や偏見が裏に隠されています。データをおもしろがれずに、信じてしまう人は、そこらへんのカラクリをわかっていないのでしょう。

少し旧聞になってしまいますが、「あるある大事典」でのデータ捏造問題なんて、こんなことをわかっていれば振り回されることもないでしょうに・・・、と思ってしまいます。(ただ、「あるある」の場合は「捏造」なので、データの読み方とか、解釈の仕方以前の問題でありますし、「社会現象」ではなく「科学実験」として提示しているところが、なお罪深いのですが。)
「あるある」ほどひどい例はそんなにないとしても、すべて「データの解釈」は、それを行った人の意図に沿って行われているというのは真実だと思いますし、Aというデータを見た全員が一意にデータを解釈するということもないと思います。(だから、「格差論争」が起こるわけで・・・)
すべてのデータは、それを発表している人達の意図に沿って提示、編集されているものです。
さらに、調査データなんて(「なんて」、といってしまうと少々語弊もありますが)、データ発表者の意図した結果を出したいと思ったら、ある程度可能な世界であったりもします。

メディアに取り上げられるデータにしろ、マーケティングで行われる調査にしろ、結局、つぎのような視点がとても大切になるのではないでしょうか。

経済学者のディアドラ・N・マクロスキーさんは、統計データを解析しただけで学問したつもりになっている学者が増えている現状を批判しています。データの計算結果をどう考え、どうやって社会にいかしていくべきかは、最終的には人間が判断しなければいけないんだと、ごくあたりまえと思える忠告をしています。

ここでは学者を批判していますが、これはそのままリサーチャーやマーケターといわれる人にも当てはまりますし、データは素材であって、それをどのように活かしていくのかを常に考えていかなければならないと思います。

この本では、自殺の原因についてある見解を示しています。しかし、これもひとつの見方であってすべてではない。氏も、これを読んで「そうだ、そうだ」と手放しで納得する人に対しては、「わかってないな」と突き放すと思うのですが・・・。

この本とあわせて、ぜひ↓の本を読むことをお勧めします。

反社会学講座 反社会学講座
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2004-06-20

パラサイトシングル、少子化論などを題材として、いわゆる「世間」でいうところの一般論とは異なる見方を提示してくれています。データの取り出し方、見方ひとつで、このような見方もできるのだという例示をしてくれています(もちろん、データは捏造されたものではありません。出所のしっかりしたデータを使って論を展開しています。)

ついでに、氏のもう一冊の本も。
(個人的には、あまりいいできだと思いませんが・・・)

反社会学の不埒な研究報告 反社会学の不埒な研究報告
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2005-11

データは決して一面的ではないということを理解するには格好の本だと思いますので、とりあえず一読されることをお勧めします。できれば、「反社会学講座」→「反社会学の不埒な研究報告」→「つっこみ力」の順番で読むのがいいと思いますが。

とはいえ・・・、
氏は自分の職業を「戯作者」としています。いずれの本も、結構、毒含みの文章ですし、ときおり、それこそ劇作っぽく構成していたりと、好き嫌いがわかれると思いますが・・・。

PS.
「データの読み方」という視点では、以前にこのblogで紹介している次の2冊も、あわせて読んでいただくといいと思います。

■リサーチリテラシーのすすめ

■データの罠

プラス、blogでは紹介していませんでしたが、つぎの2冊も類書としては参考になると思います。

統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか? 統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?
価格:¥ 777(税込)
発売日:2006-10-17
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方
価格:¥ 735(税込)
発売日:2006-02-16