星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか? 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2009-06-18 |
今回、紹介するのはリサーチとはあまり関係ありません。HRMをテーマとしている本です。
個を信じ、そのパワーを活かした組織運営が個人的に好きなのですが、本書はこの志向にドンピシャ、紹介をしたくなった、ということです。
「軽井沢・ほしのや」
皆さん、この旅館(といっていいのか迷いますが・・・)をご存知ですか?
そのホスピタリティの高さと、リノベーションの成功事例として、よく紹介されています。そして、運営会社の星野リゾートが、ホテルや旅館の再生に際して、どのような組織運営、HRMで取り組むのかについても。
本書には、この星野リゾートが、ホテルや旅館をどのように改革していったのか、とくに社員をどのように育てているのかを中心にした物語が11編収められています。
いずれの事例も、核になる社員が、何を考え、周りをどのように巻き込んでいくのか、その時に社長である星野佳路氏がどのように判断し、行動したのか、について紹介している内容になっています。
社員の育成、とくにサービス業における組織運営や人材育成について考えるときの、参考になればと思います。
たとえば、つぎのような言葉に共感を覚えます。
お客様の要望や期待と直接向き合うのは、社長や経営幹部ではない。あくまで現場のスタッフである。お客様にとっては、自分に対応しているスタッフ一人ひとりの判断こそが、星野リゾートの判断である。スタッフの判断の質が、星野リゾートのパフォーマンスを決めるのである。(P218)
さて、
マーケティングリサーチ業界も、まさにサービス業です。(ただ、後日での検討でも許してもらえることが少なくない点で、宿泊施設や飲食施設などの接客サービスほどの厳しさがありませんが。)
先の引用は、マーケティングリサーチ企業にもあてはまると思います。
最新の『マーケティング・リサーチャー(NO.109)』に、リサーチ業界の「経営業務実態調査&経営動向調査」の報告が添付されているのですが、その中の「当面の経営上の問題点」として、「中堅リサーチャーの不足」が39%と、三番目に高い項目としてあげられています。単純に解釈してしまえば、多くのリサーチ会社が社員の育成に失敗しているということなのかもしれません。
では、どうしたらいいのでしょうか・・・?
このような視点(リサーチ業界における人材問題)で、この本を読むのも、ありだと思います。
このように、本書のテーマは組織運営、HRMなのですが、一方で、星野リゾートは徹底的なリサーチ志向でも有名です。
たとえば、山梨県にあるリゾート施設「リゾナーレ」。ここでの経営を引き継いだ際に、ゼロベースで経営方針を再構築するために、「コンセプトづくり」からスタートします。
星野はコンセプトを固めるために、外部の調査会社を使い、リゾナーレの顧客分析を徹底的に進めた。(p140)
とあります。そして、重要なのは、この調査結果をどのように活用し、どのような議論をし、どのような意思決定をおこなっていくのか、です。本書では、この過程が描かれています。
大切なのは、調査結果そのものよりも、その結果をどう解釈し、納得し、行動に結び付けていくかであることを感じることができると思います。調査結果が絶対なのではありません、それをベースに、「自分たちがどうありたいのか」を考えることが重要だと思います。
このような場面は、本書では多くは描かれていませんが、ところどころに、リサーチのヒントになりそうな記述もありますので、このような視点でも、本書を読むことができると思います。
組織運営や人材育成に迷っている方、読んでみてください。
また、なんとなく元気になりたいとい思っている人にも、いいかもしれません。
(個人的には、ここに紹介されている施設、全部に行ってみたい・・・)
PS.
星野社長は、NHKの番組『プロフェッショナル』での、第1回ゲストでした。
このときの番組内容が本とDVDになっています。興味をもたれた方は、こちらもあわせてどうぞ。
こちらでは、星野社長がいまの運営形態に至る過程が、詳しく描かれています。
プロフェッショナル 仕事の流儀〈1〉リゾート再生請負人・小児心臓外科医・パティシエ 価格:¥ 1,050(税込) 発売日:2006-04 |
プロフェッショナル 仕事の流儀 リゾート再生請負人 星野佳路の仕事 ”信じる力”が人を動かす [DVD] 価格:¥ 3,675(税込) 発売日:2006-09-22 |