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『社会調査ハンドブック』

社会調査ハンドブック
価格:¥ 1,937(税込)
発売日:1987-09

題名は「社会調査」となっていますが、かなりマーケティング・リサーチ寄りに書かれている本です。また、「ハンドブック」とありますが、決してノウハウ一辺倒ではなく、かなり本質論に触れている本です。

「マーケティング・リサーチはやっているけど、ほんとうに役立っているんだろうか?」「マーケティング・リサーチって、こんなものなんだろうか?」という壁にぶつかっている方には、とくに読んでおいていただきたい本です。
(とはいえ、マーケティング・リサーチについてあまり知らない方が読んでも、十分に使える内容になっています。)

調査には「仮説」が必要だということがよくいわれます。では、「仮説」ってなんでしょうか?なぜ「仮説」が必要なのでしょうか?「仮説」はどう導けばいいのでしょうか?
それに対する答えが、本書で得られるのではないでしょうか。
著者の飽戸先生も、はしがきで本書を執筆するに至った理由を、つぎのように述べています。

「市場調査」「世論調査」をはじめとする種々な「社会調査」に関する書物は、すでに数十冊近く刊行されている。にもかかわらず、あえて本書を執筆した理由は2つある。まず第一に、これらの社会調査に関する多くの書物が、あまりに技術的説明に終始した無味乾燥なものが多いこと、もっと調査というものについての哲学をもち、かつ調査に対する愛情が芽生えるような本がぜひ必要だと考えていたこと。そしてもう1つは、筆者が主張し続けてきた仮説検証的調査というものを実際に設計できるような理論と参考資料集をまとめておきたかったことだ。

すべての調査が、仮説検証を目的としたものではないという指摘もあると思いますし、正しいと思います。
しかし一方で、思いつきの質問を対象者にたずね、「得られるものがない」などと言っている人も少なくないことも、また事実です。

本書を通じて、一度、「仮説」ということをしっかりと理解してほしいと思います。
もくじを紹介します。

1章 社会調査とは何か
2章 社会調査の技法
3章 科学としての調査
4章 テーマをいかに設定するか
5章 ウソとマコトを見わける法
6章 標本設計の理論と方法
7章 信頼できるデータをとる方法
8章 調査結果の正しい分析
9章 調査の積み上げと活用
10章 調査と理論の結びつき
11章 調査に理論を導入する
12章 調査を理論に仕上げる
13章 仮説検証法の功罪
14章 仮説のつくり方とその検証法
15章 調査票作成の方法と問題点
16章 市場調査、世論調査、ライフスタイル調査の設計
17章 調査機関の選び方
18~20章 調査項目の実例

最後に、本書の欠点をひとつ・・・。
それは、出版年が1987年と古いことです。インターネット調査については、まったく言及されていません。現在の調査環境の激変についても、ふれらていません。

それでも、「仮説」についての言及は、古くなることはありません。
調査、リサーチに真剣に取り組みたいという方には、ぜひ、読んでおいていただきたい本です。

『社会調査へのアプローチ』

社会調査へのアプローチ―論理と方法 社会調査へのアプローチ―論理と方法
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2005-02

この本は、大学のテキストをイメージして書かれている社会調査の本です。
マーケティング・リサーチといっても、その基盤は「社会調査」です。なので、マーケティング・リサーチをしっかり基礎から学ぼうと思うと、社会調査の論理や方法論は避けて通れないテーマです。

そして、この本の中でも最初に指摘されているとおり、

社会調査は特別の人の特殊な知識ではない。我々すべてが「する人」「読む人」そして「協力する人」として、日常的に社会調査に関わりを持っている。社会調査の基礎知識は、現代を生きるための必須アイテムである。

と思います。
新聞、テレビ、雑誌、そしてWEB、調査データを見ない日はないといってもいいほどです。
ですから、少しでも「なんのために調査をしているんだ?」「調査ってどんなふうにやっているんだ?」「このデータって、信じられるの?」などと思ったことがある人にも、読んでおいてもらえるといいかもしれません。
(いきなり専門書ではなく、まずは新書くらいから・・・、という方にはこちらの本がお勧めです。
⇒『社会調査のウソ~リサーチ・リテラシーのすすめ』 )

ただ、大学のテキストと聞くと、「わかりずらい、読みづらい」という印象をもつ人も少なくないと思いますが、この本は大丈夫だと思います。語り口が、とても柔らかいです。異色です。
一例として、本文の最初の出だしをみると、

「社会調査なんて俺には関係ないよ」と思っているそこの人、そんなことでは現代を生きる立派な市民になれないよ。手始めにちょっと新聞を見てみよう。・・・

という感じです。
内容も、『講義のテキストとして実際に使いやすい本』『学生が実証的な調査(卒論)研究を独学で進めていける本』をめざしたというように、いたるところで、語句の解説やコラムを積極的に入れることで、理解を助けています。

もくじを紹介しておきます。

第Ⅰ部 社会調査の論理
 第1章 社会調査へようこそ
 第2章 情報資源の発掘調査-社会調査のファーストステップ
 第3章 社会調査の基本ルールと基本の道具
第Ⅱ部 調査票調査の方法
 第4章 調査票を作ってみよう
 第5章 サンプリングの理論と実際
 第6章 調査票調査のプロセスとデータ化作業
 第7章 調査結果を分析しよう
第Ⅲ部 質的調査の方法
 第8章 質的調査の魅力
 第9章 質的調査の実践
第Ⅳ部 補修と実習

とくに、これまで社会調査について全く勉強せずに調査会社に入ってしまったという方は、まずここから学んでおくことをお勧めします。
何事も、基本を理解しておくのは大切なことですので。

『マーケティング・リサーチの実際』

マーケティング・リサーチの実際 マーケティング・リサーチの実際
価格:¥ 872(税込)
発売日:2004-04

過去にも、マーケティング・リサーチに関する本として、つぎの3冊を紹介していますが、さらにいくつかの本を紹介しておきます。

『マーケティング・リサーチの論理と技法』
『マーケティング・リサーチはこう使え!』
『マーケティング・リサーチの理論と実践~理論編』

最初は、これまでマーケティング・リサーチについて、ほとんど知らなかったという方への入門書から。

まずはもくじをご紹介しておきます。

Ⅰ.マーケティング・リサーチは課題解決の手段です
Ⅱ.知っておきたい調査手法の種類と特徴
Ⅲ.マーケティング・リサーチを進める手順
Ⅳ.リサーチ課題にどのようにアプローチするか
Ⅴ.リサーチをとりまく環境

とくにⅢ章では、リサーチプロセスに沿って解説していますし、「チェックポイント」として、リサーチを進める上での確認事項も整理されていますので、ポイントを押さえるには便利です。
またⅣ章では、4つのテーマをあげながら、具体的にリサーチの流れに沿って事例を示していますので、具体的なイメージもつかめると思います。

ただ、いかんせん新書ですので、内容の深いところまでは提示されていません。
「マーケティング・リサーチってどんなことするの?」という、初歩の初歩について概要を知りたい方向けの本であることは、お断りしておきます。
さらに詳しい内容について知りたいという方は、他の本で理解を深めてください。

『顧客理解の技術』

顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する 顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2005-09-08

心理学からは離れますが、「顧客理解」という視点から、もう一冊紹介します。

著者は、シンクタンクのコンサルタントです。『消費者行動論』がフレームの理解だとすると、この本は、そのフレームを理解した上で、どのように顧客理解を行うかの技術=テクニックについて述べたものになっています。
「はじめに」で、『この本は、私たちの顧客に関する、数多くのコンサルティングの「実践の場で創出し、培ったノウハウ」を汎用化して書き上げたものである』と記されていることからも、わかると思います。

もくじを紹介します。

序章 成熟社会の顧客変化をとらえる技術
第一部 身につける、活用する
 第1章 5つの<顧客理解の技術>
      1.顧客変化理解の技術
      2.背景理由理解の技術
      3.顧客価値理解の技術
      4.顧客行動理解の技術
      5.顧客情報活用の技術
第二部 知見を深める
 第2章 顧客価値の理解を深める
      1.価値ポジショニングを考える
      2.差別化価値を深める
 第3章 <顧客理解の技術>参考データ集
      1.人口変化の基本データ
      2.世帯変化の基本データ
      3.バリューセグメント分析参考データ<サマリーデータ編>
      4.バリューセグメント分析参考データ<詳細データ編>
      5.消費トレンド分析参考データ<サマリーデータ編>
      6.消費トレンド分析参考データ<詳細データ編>

マーケティング・リサーチというと、「アンケートとかインタビューを行うこと」というような認識も少なく無いですし、実際、調査会社で行っているのは一次情報の収集が主です(本書の1章3~4の部分)。
しかし、一次データの収集だけがマーケティング・リサーチではなく、二次データ(オープンデータ)をどのように使いこなし、分析するのか(1章1~2)、というのも大事なスキルになるのではないでしょうか?また、第3章で取り上げている基本的な構造変化や、消費トレンドデータをどの程度理解しているのかということも、重要な視点です。
(とはいえ、第3章で取り上げられているデータは、ごく一般的なデータですので、何か新しいデータはないかと探している人にとっては物足りないものだと思います。)

シンクタンクがどのようなフレームで顧客分析を行っているかを知っておきたい方、オープンデータからどのような読み取りを行うかを知りたい方、そして、消費者や世代についての基本的なことを知っておきたい方、お勧めです。

『消費者行動論』

消費者行動論 消費者行動論
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-05-19

こちらの本も、執筆は大学の先生ですが、専攻がマーケティングですので、よりマーケティングの視点から消費者行動を整理しています。
「まえがき」でも、『本書は社会心理学の理論をマーケティングに応用し、ビジネスマンの立場で書かれている。理論とは型(フレーム)である。』と書かれています。ただ、同時に『最初に断っておくが、型はテクニックでない。』とも言っていますが・・・。

もくじを、各章扉に書かれているフレーズと共に紹介します。

第1章 消費者行動論とは何か?
 ~あなたは顧客がどのような行動を取るか考えたことがありますか?
第2章 個人的影響要因
 ~あなたは顧客の属性、行動、ライフスタイルを研究したことがありますか?
第3章 個人的要因:パーソナリティとセルフイメージ
 ~あなたの典型的な顧客がどのようなパーソナリティを持っているか知って
   いますか?
第4章 消費者関与
 ~あなたは顧客の関与を深めるような努力をしていますか?
第5章 問題認識
 ~顧客はどのような問題を解決するために、あなたの会社の製品を購入する
   のだろうか?
第6章 動機付け
 ~消費者に自社製品を購入する動機づけをしたことがありますか?
第7章 情報収集
 ~あなたは顧客がどのように情報検索を行い、どのように商品について学んで
   いるか研究したことがありますか?
第8章 学習
 ~あなたは、顧客がどのように自社製品やブランドについて学習するか考えた
   ことがありますか?学習を助ける活動をしていますか?
第9章 消費者の知覚
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような印象を抱いているのか
   調べたことがありますか?
第10章 消費者の態度
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような態度をもっているか知って
   いますか?その態度の形成には何が影響を与えたのでしょう?
第11章 社会的要因-グループの影響
 ~あなたは顧客の購買活動に影響を与えるグループの存在を認識して
   いますか?このグループを有効利用していますか?
第12章 選択肢の分類
 ~あなたの顧客は合理的な商品選択をしていますか?
第13章 評価選択
 ~あなたの顧客は何を基準に購買の意思決定をしているか知っていますか?
第14章 購買と購買後評価
 ~あなたは、顧客とどのようにリレーションシップを結ぼうとしていますか?

いかがでしょう?
それぞれのフレーズは、リサーチ目的としてもよいようなものばかりではありませんか?
このようなリサーチ目的のときに、どのような消費者行動理論があるのか?このことを学べる一冊です。また、それぞれの理論を比較的コンパクトにまとめていますので、事典的な活用もできると思います。

ただ、最初に著者が断っているように、この本に書かれているのは「理論=型(フレーム)」であってテクニックではない、ということは忘れないでください。
とはいえ、フレームを知っているのと、知らないのとでは仕事をしていく上で、大きな差になるというのも、また真実だと思います。

『ロジャースの普及理論、関与の種類、マズローの欲求5段階説、コンフリクト、IMC、閾値、認知的不協和、均衡理論(バランスセオリー)、準拠集団、オピニオンリーダー、想起集合(イボークトセット)、多属性態度モデル、サンクコスト・・・』

これらは、この本に出てくるフレームの一部ですが、いくつご存知ですか?
すべて知っているという方は、この本は読む必要はないでしょう・・・。
知らない言葉が多いという方は、ぜひ、この本を読んでみてください。

『消費者理解のための心理学』

消費者理解のための心理学 消費者理解のための心理学
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1997-06

前回に引き続き、心理学に関する本を紹介します。
少しでも心理学に興味を持った方、心理学も勉強しておこうかなと思った方には、こちらの本が最適だと思います。

もくじを引用します。

1章 消費者行動とマーケティング
2章 消費者行動への心理学的接近
3章 消費者の問題認識と購買意思決定
4章 消費者の情報探索と選択肢評価
5章 購買決定後の過程
6章 消費者の知覚
7章 消費者の知識と記憶
8章 消費者の学習
9章 消費者の動機付けと感情
10章 消費者の態度形成と変容
11章 消費者の関与
12章 消費者の個人特性
13章 消費者行動における状況要因
14章 家族の消費行動
15章 対人・集団の要因と消費者行動
16章 文化的要因と消費者行動

執筆は心理学の先生が複数名で分担されており、どちらかというと大学生・大学院生を想定して書かれています。
しかし、網羅的に、広く消費者理解という視点で心理学を学んでおこうという方には、お勧めの本です。少し古い本ですが、ベーシックな理論を学ぶ上では、問題ありません。というか、いまのところ、これ以上の本は見当たらないと感じています。

リサーチャーやリサーチャーをめざす人にとっては、基礎教養として、ここに書かれている程度の知識は持っていた方がいいと思います。ただ、マーケティングを仕事としている人にとっては、少々、学術的過ぎるという感じもあるかもしれません。

そのような方には、つぎの本を紹介します。

『鈴木敏文の「統計心理学」』

鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む 鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む
価格:¥ 700(税込)
発売日:2006-03

『ビジネスマンのための統計心理学』の中でも、紹介されている本です。
リサーチャーにとっては必読の本だと思います。

鈴木敏文の考え方やモノの見方は、過去に様々な本や雑誌で紹介されていますが、この本では「発想の視点、顧客心理の掴み方、統計術」という3つのテーマについて、55の金言と著者のキーワード化によってわかりやすく整理されています。

たとえば、発想の視点としてつぎの5つが紹介されています。

・変化の流れを時間軸で捉えると、今の時代の動きがわかる
・時間軸を輪切りにすると、本当のようなウソがみえてくる
・時間軸で未来に目を向けると、今の時代の顧客心理が読める
・脱経験的思考-過去の「常識」は今の「非常識」
・陰陽両面的志向-買い手の「合理」は売り手の「非合理」

とくに、リサーチャーが読むべきは第3章です。漫然とデータをみて、解釈することへの戒めが述べられており、肝に銘じておきたい内容です。
6つのポイントで整理されています。

・売り手から買い手へ、視点を変えると別のデータが見える
・統計データは鵜呑みにするな、その背景や中身を突き詰めろ
・同じデータ、情報でも「分母」を変えると意味が逆転する
・なぜ、モノが売れないのか、心理抜きには統計は読み切れない
・仮説・検証で初めてデータが生きる、WHYとWHATの問題意識を常に持つ
・自分の都合のよいように、数字のつじつま合わせをするな

鈴木氏の話はいまではあまり耳にしなくなりましたし、CVSのビジネスについては一個人として思うところもあるのですが、それは置いておいても、やはりデータを読む視点、スタンスには学ぶべきことが多い本です。

『ビジネスマンのための心理学入門』

ビジネスマンのための心理学入門 ビジネスマンのための心理学入門
価格:¥ 730(税込)
発売日:2004-09

マーケティングやリサーチを行っていく上で、心理学の知識はとても重要です。
ほんと?、と思っている人には、まず、この本からどうぞ。
著者は、様々な著作を出している精神科医の和田先生で、ビジネスの場面で心理学がどのように役立つのかについて書かれている「心理学入門」です。

この本は、大きく3つのテーマで書かれています。

  • 職場の心理学の視点
  • マーケティングで使う心理学の視点
  • そして、心理学を学ぶにはどうするのか

なので、マーケティングやリサーチに役立つ視点での記述は、全体の1/3程度です。
もくじを引用すると、こんな感じです。

序章  サイコロジカルビジネスとは何か?
第一章 心理学を学ぶと世の中が正確に見えてくる
第二章 心理学を使って相手をコントロールする
第三章 心理学をどこで学べば良いのか
第四章 たった6作で学べる「ビジネス心理学理論」
第五章 ビジネスの場面での仮説の立て方
第六章 日本の未来はどうなるのか
終章  世界中でサイコロジカルビジネスが必要になる

「ビジネスと心理学ってどう結びついているの?」「心理学って、ビジネスに本当に役立つの?」と思っている方には、参考になる本だと思います。
また、マーケティングやリサーチ以外でも、職場でのマネジメントに悩んでいる方にもヒントとなることがあると思います。

著者もあとがきで、つぎのように書いています。

患者にしろ、心理ビジネスのクライアントにしろ目の前にいる人を助け、成功に導くためには、なるべく多くの処方を用意しておいたほうがいい、それだけの話である。
だから、本書の内容も少なくとも知っていることが邪魔になるとは思えない。たった一つでも二つでも使えそうだと思えるものがあれば、それだけでも頭に残してもらい、使う機会があれば、本の値段と、それを読むのにかけた時間のもとくらいは取れるだろうし、ひとつのアイデアで押したものと比べるとリスクは少ないはずだ。

同意です。
リサーチを究めようとするなら、様々な視点での知識が必要になります。
そのためにも、乱読は必要だと思っています。
とくに、いまは新書がつぎつぎに出版される、幸せな時代です。
(書籍の紹介なのか、乱読のすすめなのか、わからなくなってしまいましたが・・・)

これまでビジネスを行う上で心理学についてあまり考えたことがなかった人、本書をきっかけとして、心理学にも興味をもってもらえると、仕事の幅も広がると思います。

intermission

「寺子屋」お待ちの皆様(いるんでしょうか・・・?)、次の展開に向けてしばらく幕間とさせていただきます。
次回からは、リサーチの具体的なことについてやっていこうと思うのですが、どのような内容にしようかと思案中です。。。

構成は、どうしようか・・・。
教科書的にしても、つまらないし・・・。
とはいえ、ばらばらにやっても理解しずらくなるか・・・。

内容はどうしようか・・・。
これだけ、調査環境が変わっているのに、教科書的にやってもしかたがないな・・・。
でも、原理原則を知らずに応用だけやっても、確かな理解にならないし・・・。

事例、エピソード・・・。
どこまで踏み込もうか・・・。
創作で、どこまで真実味が出せるか・・・。

などなどと、考えております。
年明けから新シリーズとしてはじめようと思いますが、「こんな内容を期待している!」「こんなことが知りたい!」というようなことがありましたら、どんどんコメントください。
参考とさせていただきます。

それまでは、本紹介をメインに進めていきます。
⇒「マーケティング・リサーチの寺子屋~出張書店」で紹介している本を中心に)

寺子屋にあわせて紹介しようかと思っていたのですが、それではいつのことになるやら・・・、なので、ベーシックなものから、そうでないものまで、マーケティング・リサーチや市場調査に参考になると思われるものを、どんどん出していこうと思っています。
あらかじめ、こちらで興味があるものを読んでおいてもらった方が、blogの内容もより理解しやすくなると思いますし。。。
(年末年始の休みにも入りますし・・・)

話はかわりますが・・・
今日の「カンブリア宮殿(テレビ東京)」は、医師の鎌田實さんでした。
以前から個人的に思っていたことに、リサーチャーはお医者さんと同じ気持ち、姿勢が必要ではないか、ということがあります。
相手が、人間か、企業や組織か、という違いはありますが、どこに問題があるのかを適切に判断できることが必要ではないかと。そして、問題や課題を適切に伝え、クライアント(患者さん)のよくなりたいという気持ちに応え、よくなるための行動を手助けすることが大切なのではないかと。
ただ、お医者さんは自分で処方や施術を行うことができますが、リサーチャーはこれらのことを自分で行うことはできません。これは、大きな違いですが。

今日の鎌田さんの発言で、強く同意したことはつぎのことです。
カンブリア宮殿のHPより引用させていただきました)

「医学は生物学とは違い、人間科学である。人間の疾病を部品の故障というようなデカルト的なとらえ方をせず、対象の個別性やその人が生きてきた歴史に配慮し、それぞれの『生きている意味』を尊重して、治療していくべきではないだろうか」
「ぼくら医療者はつい、肺炎という疾患だけをとり出して、入院が必要という常識を振りかざしてしまう。彼は自分の命全体を見つめながら、多様なファクターを多重に分析し、入院が必要かどうか考えていた。ぼくら医療者はこの患者のわがままをもっと大切にしなければいけない」

よく、西洋医学と東洋医学の違いなどと議論されることですが、患部にだけ注目し要素還元主義的な治療を行うのか、人体を小宇宙とみたててホリスティックな立場で治療を行うのか。。。
医療にかかわらず、哲学でも西洋と東洋の違いとしていわれていることですよね。
(たぶん・・・です。医学も哲学も専門ではないので、間違いがありましたらご指摘ください)

で、リサーチ。
ひとつのデータや、特定の事象にとらわれ、木を見て森を見ずになってしまうことがあります。また、クライアントの背景や周辺情報、これまでの過程や結果を見ずに分析を行い、ピントはずれの結論を導きだすこともあります。
いずれも、戒めたいことです。
クライアントにとってのリサーチャーは、かかりつけのお医者さんのように、そのクライアント全体を視野に入れ、過去のリサーチ結果もふまえながら、仕事をしていくべきだと思っていますし、そうありたいと思っています。
(リサーチャーとお医者さんを一緒にするのは、失礼かもしれませんが・・・)

なので、「コトー先生」や「医龍」や「救命病棟24時」や「白い巨塔」や・・・、
医療関係のドラマを見るのが好きなowlなのでした・・・。

視聴率はどこへ向かう?

朝日新聞に3回シリーズで、「視聴率のふしぎ」という記事が連載されていました。
(2006/11/30,12/5,12/6)

2003年でしたでしょうか、視聴率買収事件が起こり、にわかに注目を浴びた「視聴率」。朝日の記事は、今一度、「視聴率」がどのようなもので、いまどのような問題を抱えているのかを整理しています。
(2003年の事件のとき、同時に「調査」自体も注目をされたと記憶しています。サンプル数と精度の問題で。ビデオリサーチさんが一生懸命説明してくれましたが、一般的にはサンプル数が多ければ多いほど、単純に精度が高まるという認識が強いようです。それにかかるコストを度外視して・・・。)

テレビ局にとっては、唯一で最大といっていい営業指標となる視聴率。視聴率によって、スポット広告の料金が決定するのですから。
しかし、

世帯視聴率への疑問が広告主に広がり始め、さらにゴールデンの帯の視聴率も下がり始める。広告主は、どこにCMを投下すれば必要な購買層に効果があるのか根拠を求めたい。加えてネット上での広告効果に注目が集まる時代。(11/30記事)

「個人視聴率」や「視聴質」の問題は、何も今にはじまった問題ではないですが、今後一層「視聴率」の捉え方についての議論が深まるのは自明でしょう。インターネット広告の拡大、ハードディスクレコーダーやPCなど大量録画や検索が可能なツールの登場、そしてテレビ自体も地上デジタル放送、ワンセグへと移行することになります。他にも、ケーブルテレビや、スカパー/WOWWOWなどの衛星放送に、GYAOのようなインターネット放送・・・。
一昔前のような、『CMを見るのは民放テレビで』という時代は、過ぎ去ろうとしているのですから。

まず、いま現在、新聞等で発表される「視聴率」はどのように調べられているのでしょうか?この点を確認しておきます。
ビデオリサーチのホームページに、詳しい説明が出ています。
TV RATING GUIDE BOOK (ビデオリサーチ社)

この説明をみると、すでにビデオリサーチでも「個人視聴率(個人ベースでの視聴率)」への対応は行っているようです。
(そもそも、視聴率が『世帯ベース』であることを、どれくらいの人が認識しているかという問題もあります。決して、『日本人の○○%が見た』ではないのです。調査データを読むときは、このような点も注意が必要です。)

そして、「視聴質(番組がどのように見られているのか)」への取組としては、テレビ朝日と慶應義塾大学による共同プロジェクトがあります。
リサーチQ (テレビ朝日)
  (詳細については、フレーム下の「リサーチQ概要」を参照)

リサーチQへ登録した人を対象者としたインターネット調査で、一日の回答者数は4500程度のようです。ビデオリサーチが行っている視聴率調査と比べてしまうと、対象者の代表性についての厳密性はありませんが、検証上は実用に耐えるものになっているとしています。

そして、アメリカの事例ですが、広告について次のような記事もありました。
トヨタが米テレビ界に一撃、「印象に残らない番組はダメ」 (NBニュース2006/8/7)

米国トヨタ自販が、広告費を支払うにあたって「番組関心度」による保証を求めるというものです。いってみれば「視聴質」によって、広告費を変動しようということです。この動きが実際に行われているのかどうかは定かでではありませんが、すでにこのようなニュースもでるようになっています。

ここで少し視点を変えて。
実は、「CMそのもの」についての評価を行っている企業もいくつかあります。
代表的なのは、「CM DATABANK」でしょう。ここで、年間アワードを獲得すると、企業サイドでもホームページ等で、受賞したことを発表するくらいですから。
CM DATABANK (CM総合研究所)

他にも、CM放送回数を指標にしている
CM@Navi (宣伝会議&ビデオリサーチコムハウス)

「印象に残った」という指標でランキングを行っている
MC-CMインパクト (マーケティングセンター)

などがあります。
興味がある方は、それぞれのサイトを訪問してみてください。

「個人視聴率」「視聴質」「CMそのものの評価」・・・。
このように、これまで唯一最大の指標といわれていた「視聴率」がゆらいでいる今、「視聴率」がどこへ向かうのかについては、関心をもってみていきたいと思います。
(どこの調査会社がつぎの覇権を握るのか、という意味でも。ビデオリサーチさんだとは思いますが・・・。)

朝日の記事では、つぎのように締めくくっています。

広告主や民放、広告会社の3者は、デジタル時代の視聴率調査の研究に取り組み始めた。しかし「ビジネスモデルが確立されていない以上、どんなデータが必要なのかもわからない」といった本音も聞こえる。
視聴者とテレビとの関係を示す最大の指標、視聴率。姿、形や存在価値はどう変わるのだろうか。(2006/12/6記事)