投稿者「ats_suzuki」のアーカイブ

『故事成語でわかる経済学のキーワード』

故事成語でわかる経済学のキーワード 故事成語でわかる経済学のキーワード
価格:¥ 882(税込)
発売日:2006-11

ついでに、もう1冊。
行動経済学関連の本を読んでいる時に、見つけた本です。

題名のとおり、故事成語を引用しながら、経済学のキーワードを学んでしまおうというものです。まさに、「一石二鳥」です。
本書の狙いについて、「温故知新~はじめに」でつぎのように書いています。

私がこの本で試みたのは、ともすれば難解であると敬遠されがちな経済学的な考え方と経済学のキーワードを、故事成語を用いて格調高くしかも心に残るように解説することである。

とりあげられている故事成語と経済学のキーワードは28個で、たとえばつぎのような感じです。

覆水盆に返らず~サンク・コスト
矛盾~トレードオフ
他山の石~分業と専門の経済効果
洛陽の紙価を貴ぶ~価格理論
朝三暮四~フレーミング効果
完璧~データの経済学的解釈
敗軍の将は兵を語らず~結果論はなぜいけないのか
三顧の礼~長期的関係とインセンティブ

行動経済学を学ぶにしても、ベースにあるのは経済学であり、経済学の考え方をまったく知らずには、理解も難しいと思います。
そこで、本書で経済学の考え方の雰囲気を学んでおくのはどうでしょう?

それと、関心したのは、見事な「読み替え」です。
本などを通じて事例を学ぶことの意味は、読み替えだと思っています。「所詮、他の会社の事例でしょ?それに、どうせ良いように書いてあるんだろうし」ということで、事例を学ぶことに懐疑的な意見も聞かれますが、そこに書いてあることから、何を学ぶか、どう活かすかということを考えることが大切なんだと思います。
古典や事例を、どのように他の事象にあてはめて考えるのか?、この本はこんな視点でも読むことができるのではないでしょうか。

そして、中国古典が好きな方=宮城谷氏の本や三国志にはまったことがある方も、様々なストーリーに隠された故事成語をもう一度確認してみるのも、また楽しいですよ。

通勤通学や、夜寝る前などに気軽に読んで、故事成語と経済について学ぶことのできる本書は、お勧めです。

『欲望解剖』

欲望解剖 欲望解剖
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2006-12

最後に、もう1冊。
こちらは、行動経済学というよりも、さらに脳科学の視点から経済学(というか、マーケティング)に迫ろうという内容になっています。

著者は、脳科学者の茂木健一郎先生と法政大学の田中洋先生。
ただし、「電通ニューロマーケティング研究会・編」となっているとおり、バックにいるのは電通ですが。

「まえがき」で、茂木先生は、この研究会についてつぎのように書いています。

電通のニューロマーケティング研究会は、消費者研究センターの佐々木厚さんを中心に構想された。「ニューロマーケティング」は、神経経済学のような新しい脳科学の動きを受けて、脳の働きという視点からマーケティングにかかわる諸問題を検討し、ひいては人間性の本質を理解しようというアプローチである。

本書の内容は、茂木先生が脳科学の立場から「欲望」を説明するパート、田中先生がニーズ・ウオンツ・デマンドというマーケティングの視点から「欲望」を説明するパート、そしてお二人の対談という3部構成となっています。
この中で、茂木先生の脳科学の視点からの「欲望解剖」は、なかなかおもしろいものがありました。

「ニューロマーケティング」「神経経済学」って何?、あるいはちょっと斜に構えて、「電通は、つぎに何を考えているんだ?」ということに興味をもたれた方、一読してみてください。

蛇足。

朝日新聞2007年1月1日第4部「Oh!脳」でも、アメリカの研究として、ペプシ・コーラとコカ・コーラの飲み比べで、ブランド名を知らずに飲む時と、知って飲んだ時では脳の活動が異なるという事例も紹介されています。(個人的には、最終商品テストで「ブラインド・テスト」をすることに意味はないのでは?、と思っていましたが・・・。)
また、fMRI(機能的磁気共鳴断層撮影)試験によってデザインされたホンダのオートバイの事例も紹介されています(→ホンダのリリース。「二輪車技術<FACEデザイン>」参照)。

また、少し前に、「心脳マーケティング」という本が出版され、結構売れましたし、この本で紹介されている方法を実際に活用している調査会社もあるようです。
(私個人は、立ち読みで「どんなもんかな・・・」という感想を持ち、まだ読んでいませんでしたが。これを機に、読んでみようかな。。。)

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press 心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-02-10

『行動経済学』

行動経済学 経済は「感情」で動いている 行動経済学 経済は「感情」で動いている
価格:¥ 998(税込)
発売日:2006-05-17

「行動経済学」と題名にある中では、最新の本(2007年1月現在)ではないでしょうか?
なので、前に紹介した『行動経済学入門』でまとめられていた当時に比べ、さらにモデルや理論の幅と深さが増していますし、初期のモデル・理論に対する反論・反証についても丁寧に取り上げられています。しかも、新書で。

はじめにで、つぎのように書かれています。

本書は、「勘定から感情へ」というテーマを通奏低音としつつ、行動経済学という新しい経済学の基礎について広く紹介し、検討することを目的としている。基礎といっても単なる入門という意味ではなく、構築物の土台・根元という意味を持つ。本書は、行動経済学の入門書であると同時に、経済行動の背後にある心理的・社会的・生物的基盤を探り、行動経済学の基礎を固めることをめざす。

もくじは、以下のようになっています。

第1章 経済学と心理学の復縁-行動経済学の誕生
第2章 人は限定合理的に行動する-合理的決定の難しさ
第3章 ヒューリスティクスとバイアス-「直感」の働き
第4章 プロスペクト理論1 理論-リスクの元での判断
第5章 プロスペクト理論2 応用-「持っているもの」へのこだわり
第6章 フレーミング効果と選好の形成-選好はうつろいやすい
第7章 近視眼的な心-時間選好
第8章 他社を顧みる心-社会的選好
第9章 理性と感情のダンス-行動経済学最前線

これだけ丁寧に行動経済学について書かれている(新書なのに400ページ近く!)のに、しかも新書なのに、なぜこちらを最初の1冊として取り上げなかったのか?
『行動経済学入門』と比べて、さらに読みにくいという印象があったからです。
今の時点でも、行動経済学は体系化はされていないので、やはり、実験やそこからのモデル化を並べざるを得ず、そうなると、時間を経て様々な検証やモデル化が行われた故に、実験→モデル化→反論や反証実験→モデル化→整理といったような構成になってしまい、まとまり感が得られません。また、著者がはじめにで書いているように、「広く紹介」しすぎている感もあります。
さらに、実験を丁寧に記述しているあまり、読みながら考え・・・、ということもあります。
しかし、これは行動経済学というものがはらんでいる限界でもあると思うので、いたしかたないと思うのですが。。。

とはいえ、新書で、これだけの内容を書かれたことには敬意を表します。本来なら、単行本でもいいのではと思うくらいです。
行動経済学の現在の到達点について、しっかりと学びたいという人には、とても有益な本です。

行動経済学に興味をもたれた方は、これまで紹介した3冊を、つぎのような視点で読み進むことをお勧めします。

最初に、『おまけより割引してほしい』→経済学と心理学の結びつきを実感する
つぎに、『行動経済学入門』→基本的な、行動経済学のモデルを理解する
そして、『行動経済学』→行動経済学の到達点、背景の様々な基盤を理解する

さらに深く行動経済学について学びたい人は、この本『行動経済学』で詳細な主要参考文献リストが紹介されていますので、こちらから英語の原書に戻って学んでいくのがよいと思います。

『行動経済学入門』

行動経済学入門 行動経済学入門
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2003-12-11

2003年と少し前の本になりますが、行動経済学についての概要を捉えるには、この本から読み始めるのがいいと思います。

この本の「はじめに」で、著者はつぎのように書いています。

本書は、カーネマン教授の研究の礎とする「新しい」経済学の分野である「行動経済学」(behavioral economics)あるいは「経済心理学」(psychology and economics)についての入門書です。
行動経済学は、ここ10年ほどの間に急速に経済学に広まりつつある、発展途上の学問分野です。新古典派による標準的な経済学のように、数学的に一貫した整合的なモデルを提供するというよりは、経済学の標準モデルをベースにしつつ、現実の経済現象や人間行動を説明するようこれを補完するアプローチが中心となっています。このため、本書においてもひとつの整合的なモデル体系を提示するのではなく、代わりに、カーネマンらの古典的な論文や最新のトピックスを紹介しつつ、行動経済学に関わるいくつかのモデルや考え方の断片を「つまみ食い」するという方法論をとります。

このようにモデルや考え方の「つまみ食い」ですし、経済学でもあるのでところどころ数式も出てきますので、正直なことろ、読みやすいという感じはありません。
しかし、行動経済学とはどのようなものであるかを捉える、どのような背景(実験)に基づいてモデルが作られたかを理解するには、本書が手ごろなものであることも否めません。

もくじは、つぎのようになっています。

第1章 行動経済学とは何か?
第2章 人間はどこまで合理的か?
第3章 近道を選ぶと失敗する
第4章 プロスペクト理論
第5章 非合理的な投資家は市場を狂わす
第6章 人間は「超」自制的か
第7章 人間は他人の目を気にするもの
終章  心理学的アプローチの限界と今後の展望

「読みやすいとはいえない」とは書きましたが、必要に応じ、グラフやチャートを使っての説明もありますし、各章の最後には「ポイント」も整理されています。

著者もいうように、行動経済学自体が、まだ完全に体系化されていないのですから、体系的な本を探しても無理というもので、この点は割り切らざるを得ません。
ですので、とりあえずこの本から、行動経済学の世界へ入ってみましょう。

『おまけより割引してほしい』

おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学 おまけより割引してほしい―値ごろ感の経済心理学
価格:¥ 735(税込)
発売日:2006-11

「行動経済学」を、思い出したきっかけとなったのが、この本です。
この本では、「経済心理学」という言葉を使っていますが。。。

この本の要点は、「値ごろ感」です。身近な、さまざまな購買行動について、「値ごろ感=価値/費用」という式からの解説を試みています。
あとがきで、著者もつぎのように書いています。

本書は日常的、世俗的な言葉である〝値ごろ感〟に隠された心のメカニズムを、経済学、心理学の初歩的なツールで解明しようと試みたものである。また販売の現場に隠された多くの仕掛けを明らかにし、その論拠を検証することも試みた。

取り上げられている事例が、吉野家、ユニクロ、アウトレットモールをはじめとする身近なものですし、読みやすい文章ですので、まずはこの本で経済学と心理学との関連を理解してから、行動経済学の本に入る方がいいと思います。

もくじを紹介します。

Ⅰ.値ごろ感ってなんだろう?
 おまけより割引してほしい-値ごろ感の因数分解
 棚ぼたの好ましさ-値ごろ感の分母を支配する負担感
 うまい、やすい、はやい-値ごろ感を生み出すもの
Ⅱ.売れるものにはワケがある
 ベストセラーの秘密
 どうして衝動買いをするのか?
 ついでに買わせるコツ

最後に、この本の題である「おまけより割引してほしい」を、先ほどの値ごろ感の式で説明してみてください。数学的なセンスのある人にとっては、すぐにわかることだと思いますが・・・。

わからない人は、本書で答えを確認してください。

行動経済学?、経済心理学?、神経経済学?

2002年のノーベル経済学賞は、ダニエル・カーネマンという方が受賞しています。
その時、心理学を経済学に応用した功績によりというような紹介をされ、興味をもった記憶があります。しかし、当時はカーネマン教授の著書は日本語訳のものはなく(いまでも?)、また行動経済学についての書籍もなく、どのようなものかわからずにいました。

それが、ここにきて「行動経済学」「経済心理学」「神経経済学」というワードを使った本が立て続けに出版され、この年末・年始はこれらの本を読んでいました。
(さらに、朝日新聞2007年1月1日版第4部「Oh!脳」でも、ニューロマーケティングについてとりあげています。かなり、HOTなテーマになってきているのでしょう。)
いろいろと考えさせられることも多く、マーケティング・リサーチでも役立つ知見が多いです。
今回は、個人的な備忘録もかねて、「行動経済学」のポイントとなる理論をまとめておこうと思います。
(ただ、私の経済学についての知識は、大学の一般教養レベルでしかないため、本格的に経済学を学んだ方からすると反論等の余地はあるかもしれません。その点については、ご容赦ください。)

■標準的な経済学?
(従来の経済学を「標準的経済学」というのでしょうか?)

「標準的経済学」が前提としているのは、「経済人(ホモ・エコノミカス)」という人々であり、超合理的に行動を行うことを前提としている。
そもそも、人間はそんなに合理的に行動しているのか?

■ヒューリスティクスとバイアス

ヒューリスティクスとは、『問題を解決したり、不確実な事柄に対して判断を下す必要があるけれども、そのための明確な手掛かりがない場合に用いる便宜的あるいは発見的な方法(『行動経済学』より)』であり、対比される言葉として「アルゴリズム」がある。

1:利用可能性ヒューリスティクス
あることを判断するときに、最近の事例や顕著な例を思い出し、それに基づいて判断する。

2:代表性
ある事象が、その集合(ある事象を含む全体)の特性をそのまま表していると判断する、あるいは、ある事象がそれが属する集合と類似していると判断する。
→ギャンブラーの誤謬、平均への回帰の無視を生じる

3:繋留(アンカリング)と調整
不確実な事象について予測をするとき、はじめにある値(=アンカー)を設定し、その後で調整を行って最終的な予測値を確定するが、はじめの値(=アンカー)に必要以上にひきずられて十分な調整ができないことからバイアスが生じることがある。
→確証バイアス(自分の信じることを裏付ける情報ばかり集め、反対情報を無視する)

■プロスペクト理論

『プロスペクト理論とは、「損失をそれと同じ規模の利得よりも重大に受けとめる」「わずかな確率であっても発生する可能性があるケースを強く意識する」という、人々にある程度共通に見られる行動パターンを理論的に説明するためのツール(『行動経済学入門』)』

1:価値関数の3つの性質
参照点依存性=価値は参照点(原点)からの変化またはそれとの比較で測られ、絶対的な水準が価値を決定するのではない
感応度逓減性=利得も損失もその値が小さいうちは変化に対して敏感であり、利得や損失の値が大きくなるにつれ、小さな変化の感応度は減少する
損失回避性=同じ額の損失と利得があったならば、その損失がもたらす「不満足」は、同じ額の利得がもたらす「満足」よりも大きく感じられる

2:確率加重関数
期待効用理論で前提としている、ある事象の起こる確率は線形ではなく、非線形の重みが付けられ価値(効用)と掛け合わされる。(確率1/3は、1/3とは感じられず、それをさらに解釈した違った重みで受け取られる)。
結果、確率が小さい時には過大評価され、確率が中ぐらいから大きくなると過小評価される。

3:保有効果と現状維持バイアス
保有効果=人々があるものや状態を実際に所有している場合には、それを持っていない場合よりもそのもを高く評価する
現状維持バイアス=人は現在の状態からの移動を回避する傾向にある

■フレーミング効果

『問題が表現される方法を、判断や選択にとっての「フレーム」と呼び、フレームが異なることによって異なる判断や選択が導かれることを「フレーミング効果」と名付けた。(『行動経済学』)』

■異時点間の比較

決定の時点と損失や利得を得る時点が時間的に離れているような意思決定の問題を考える場合は、時間が効用や意思決定に及ぼす影響について考慮しなければならない。

フレーミング効果とか代表性などは、マーケティング・リサーチでもよく耳にする言葉でもありますし、私たちの日常経験からするとあたりまえのことばかりのようにも思えますが、実は「標準的経済学」からは逸脱する理論のようです。
これらを、マーケティング・リサーチの実務上で、どう応用させていくかはこれからさらに考えないといけませんが、ひとつの理論として覚えておいて損は無いと思います。

つぎからのエントリーで、参考にした本を紹介していきます。




『マーケティング・インタビュー』

マーケティング・インタビュー マーケティング・インタビュー
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2004-07-30

定性調査に関する本を、もう一冊。
梅沢氏の本は、グループインタビューについての最初=企画から、最後=分析・報告まで書かれていましたが、本書はもっと「聞き出す技術」に焦点をあてて書かれています。

グループインタビューにしても、一対一のインタビューにしても、企画・設計はできても、実際に対象者の本音を聞きだすことは、また別の技術がいることです。
著者も「はじめに」で、つぎのように書いています。

筆者はこのような調査のインタビュアー(専門的にはモデレーターと呼ばれる)として、この10年間で1万人以上にのぼる消費者・専門家の声に耳を傾けてきた。そうした経験から言えることだが、消費者の気持ちを「聞き出す」には工夫がいる。漠然と質問をぶつけているだけでは答えてくれない。インタビューの進め方、質問の投げかけ方、回答の受け止め方、そして人の意識を掘り下げる手法などを学び実践することで、聞きたかったことが「聞き出せる」ようになる。

本書では、この「聞き出す技術」について、事例を交えながら教えてくれます。
これからインタビューを行ってみたい方、これまで行ってきたけど、なかなかうまくいかないと感じている方、ぜひ本書を参考にしてください。きっと、「聞き出す技術」のヒントを得られると思います。
もくじを紹介します。

第1章 マーケティング・インタビューでわかること
第2章 言語以外の情報を読み取る
第3章 インタビュアーが守るべき3つの原則
第4章 インタビュー対象を選ぶ
第5章 「聞き出す」ための視点と枠組み
第6章 安心して話してもらうために
第7章 語りにくいイメージを探る方法

「聞く技術」は何も、グループインタビューやデプスインタビューなどの場面だけで必要になる技術ではありません。ちょっと気になることを、友人や知人、家族などに聞いてみるときにも役立つ技術(スキル)です。
また、私見ですが、インタビュアーは本来、テーマや課題を持っている人が、直接、対象者に問いかけるのが一番だとも思っています。なにも、調査会社に任せることはない、と感じています。
ぜひ、本書で「聞く技術」について理解をして、ご自身でインタビュー(などと構えずに、聞いてみる、でもいいです)を行うことが、皆さんのビジネスに大きな成果をもたらすと思います。

なお、このblogでも、これまで「インサイト」に関する本をいくつか紹介しています。
こちらの本も、あわせて読んでいただくと、よりよいと思いますので、こちらもご参考ください。

「リクルート創刊男の大ヒット発想術」
「アカウントプランニングが広告を変える」
「インサイト」「図解でわかるインサイトマーケティング」

『グループ・ダイナミック・インタビュー』

グループダイナミックインタビュー―消費者の心を知りマーケティングを成功させる秘訣 グループダイナミックインタビュー―消費者の心を知りマーケティングを成功させる秘訣
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2005-04

マーケティング・リサーチに関する本をいくつか紹介しましたが、これらの本で、なかなか理解できないのが、定性調査の技法です。
そこで、グループインタビューを理解するために参考になる本を、いくつか紹介しておきます。

最初は、グループ・インタビューの代表的な実践者のひとり、梅澤氏が代表執筆をされた本です。梅澤氏は、これまでにも何冊か、グループインタビューに関する本を出版されており、ずいぶん参考にさせていただきました。
(→代表的な本は、こちらです。

実践グループインタビュー入門―消費者心理がよくわかる ステップ別・原則・留意点・チェックリスト
価格:¥ 2,039(税込)
発売日:1993-06  )

これまでの本は、調査会社の実務者向けに書かれていましたが、本書は「発注者」を意識して書かれているようです。「はしがき」で、つぎのように述べています。

この本は前著と比べると、発注企業のマーケターやリサーチャー、および開発担当者や経営者を強く意識してまとめられています。それは、発注者企業の方々に深く理解していただくことが、マーケティングを成功に導く調査にとって非常に重要な要因であると考えるからです。

このblogでも、以前書かせていただきましたが(→こちら)、調査、リサーチは調査会社に任せておけばいいというものではなく、発注者側にも積極的に関わりをもっていただき、様々な情報を提供していただいたり、一緒に議論させていただかないと、真に役立つ結果を得ることはできません。
このような視点を、正面きって述べていることに敬意を表しますし、またこのような視点でリサーチに関する本を出すことは、とても大切なことだと思います。
なので、調査会社でグループインタビューを担当する方はもとより、グループインタビューを発注することのある方にも、ぜひ目を通していただきたい本です。

内容は、これまで長年にわたりグループインタビューを実施してきた著者だからこそ書ける、具体的で、体系付けられた内容になっています。
もくじを紹介します。

第1章 GDI成功の前提
第2章 GDIの企画
第3章 リクルート作業の重要性と行い方
第4章 GDIの司会
第5章 GDIの分析・報告書
第6章 GDIをスムーズに進行させるための業務
補章  GDIを支える梅澤マーケティング理論

ちなみに、本書の「補章」で書かれていることを、もっと詳しく知りたいと思った方は、こちらの本をあわせてどうぞ。
著者がこれまで、長年のグループインタビューの現場から得た消費者心理の知見を整理しています。

消費者心理のわかる本―マーケティングの成功原則55 消費者心理のわかる本―マーケティングの成功原則55
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2006-09

『レバレッジ・リーディング』

レバレッジ・リーディング レバレッジ・リーディング
価格:¥ 1,523(税込)
発売日:2006-12-01

今回は、リサーチを離れた本の紹介です。
以前、どこかで「乱読のすすめ」を書いたと思いますが、このことをうまく整理してくれている本が出ています。
副題に、「100倍の利益を稼ぎ出すビジネス書「多読」のすすめ」とあります。

著者は、本を読むことについて、つぎのように書いています。
(ただし、ここでいう「本」は、ビジネス書のことです)

ビジネス書には世界的な経営者や、さまざまなビジネスで成功した人のノウハウが詰まっています。熊谷さんのお父さんの言われるとおり、汗水たらし、血のにじむような努力をした人の数十年分の試行錯誤の軌跡が、ほんの数時間で理解できるよう、本の中には情報が整理されているのです。

実際のビジネスがスポーツ選手にとっての試合だとしたら、ビジネスパーソンが本を読むことは、スポーツ選手にとっての練習にあたります。つまり、本を読まないビジネスパーソンは、練習しないでいきなり試合に臨むスポーツ選手のようなものです。(・・・中略・・・)練習すればするほど上達するように、読めば読むほど、実践に使えるベースが貯まっていきます。この累積効果により、レベルアップして仕事ができるようになります。だからこそ、たくさんの本を読むことが必要なのです。

そして、誤解しないでほしいのは、たくさんの本を読み、いろいろな人の意見を参考にするからといって、決して他人の意見を鵜呑みにするわけではないということです。むしろ、一人の人間の言うことだけに耳を傾けても丸ごと信じてしまわないためにも、なるべくたくさんの本を読むのです。

いかがでしょう?
なるほどと思う方は、この本を読んでみてください。この本には、つぎのような内容が書かれています(カバー袖からの引用です)。

・速読とは違う多読のメリットとは?
・膨大な書籍から、良書を選び出すには?
・一日一冊を読みこなす効率的な本の読み方とは?
・読書のための環境と時間はいかにして作り出すか?
・読んだままで終わらせないための工夫とは?
・本のエッセンスを実践に結び付けるには?

人が、実際に経験できることなんて、たかが知れています。とくに、リサーチャーは、クライアントの仕事について実際に経験できることなど、ほとんどありません。
しかし、クライアントがどんな仕事をしているのか、その業界での現在の課題は何なのか、もっと広く今の世の中で焦点となっているテーマは何なのか。このようなことについては、常に意識していることが重要です。
そのために、本ばかりでなく、新聞や雑誌を読むことも必要ですし、テレビを見ることも、とても大切なことになると思います。

ただ、最後の方で著者も言っているように、知識だけで十分ということではない、ということも心に留めておいてください。稲盛和夫氏のつぎの言葉を、引用しています。

「知識に経験が加わってはじめて、物事は『できる』ようになるのです。それまでは単に『知っている』にすぎない。情報社会となり、知識偏重の時代となって、『知っていればできる』と思う人も増えてきたようですが、それは大きな間違いです。『できる』と『知っている』との間には、深くて大きな溝がある。それを埋めてくれるのが、現場での経験なのです」

『マーケティング・リサーチ・ハンドブック』

マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2004-12

「小難しい理論とか考え方はおいておいて、もっと実務で使える本はないの?」という方、本書をどうぞ。

「ハンドブック」というわりには、総ページ数437ページにも及びます。マーケティング・リサーチと統計解析もあわせて、網羅的に実務書を書くとこれだけの分量になります。
それでも、本書は左ページに文章、右ページに図表という形で、できるだけわかりやすく、マーケティング・リサーチの実務について整理している唯一の本だと思います。
とくに、実査とよばれるデータ収集の段階について、これだけていねいに書かれたものはないのではないでしょうか?

もくじを紹介します。

第1章 マーケティング・リサーチとは
第2章 マーケティング・リサーチの種類
第3章 2次データ収集分析調査
第4章 定性的調査
第5章 観察調査
第6章 実験やテスト
第7章 アンケート調査の種類
第8章 アンケート調査の企画
第9章 アンケート票の作成
第10章 アンケート調査の実査
第11章 調査データの集計
第12章 報告書の作成
第13章 個人情報の保護
第14章 統計解析の基本
第15章 需要予測
第16章 多変量解析

著者は、調査会社の現場で長らくリサーチを行ってきた方ですので、本書のような実務書が書けたのだと思います。
本文ももちろんポイントをついて整理されていますが、なかなか味があるのが、各章の最後に書かれている「Coffee break」です。実務を行う上で、見失いがちになったり、忘れかけてしまうような点を指摘してくれています。
たとえば、

・スローリサーチとファーストリサーチ
・2次データの鑑定眼を磨こう
・実験やテストは繰り返しで信頼性が高まる
・アンケート調査の「その他」
・数を追う猟師、山を見ず

といった内容です。
このコラムだけでも、一見の価値があるかもしれません。

マーケティング・リサーチの実務に携わっている人は、新たな手法に取り組まなければならないときや、わからない言葉に出会った時などの検索用に、デスクに常備しておくのによい本だと思います。