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平成21年度JCSI(日本版CSI)調査結果

以前、このblogでも取り上げた日本版CSI調査、本格実施となり、第1回目である平成21度の調査結果が発表になっていました。
いくつかの記事をとりまとめ。

まずは、JCSI(日本版CSI)とは何かについては、本blogのこちら ↓ のエントリーで確認を。

日本版顧客満足度指数(日本版CSI)モデル(2009/3/19)

結果については、まずは実施主体であるサービス産業生産性協議会によるリリースを。

平成21年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)調査結果発表
 (サービス産業生産性協議会:H22/3/16ニュースリリース)

平成21年度 JCSI(日本版顧客満足度指数) 調査結果発表
 (サービス産業生産性協議会:H22/3/16~こちらはPDFです)

さすが実施主体だけあり、結果ランキングだけでなく、JCSIで設定している因果モデル図や質問内容、調査方法についても詳しく説明しているので、まずはここで、JCSIについての理解をすることを、おすすめします。

そして、JCSIの開発に参加されていた小野譲司先生(明治学院大学:ちなみに、CS関連の文献を探すときは小野先生の名前で検索すると、いくつかの論文が見つかると思います)による解説が読める記事が、こちら。

待望の「業界横断」顧客満足ランキングが登場!
 (日経ビジネスONLINE:2010/3/16)

この記事では、指標や調査方法、なぜ中央値なのかなどの背景や考え方について、上記のリリースよりも、より深い理解をすることができると思います。

そして、一般的な記事として代表的なもの、皆さんの関心が高いと思われる「どこの企業が一番なのか」に始まるランキングについては、同じ日経ビジネスオンラインに。

トップサービスは東京ディズニーリゾート
 (日経ビジネスONLINE:2010/3/16)

こちらの記事は、今回の単発記事ではなく結果詳細について、「”究極のサービス”はここだ」というタイトルでシリーズ化するようです。関心のある方は、追いかけてみてください。

さらに、ネットではないものも。
日経MJの2010/3/17にて取り上げ、つぎのような見出しを打っています。

「A(安価)、K(快適)、B(便利)で顧客満足」
「通販・旅行、競争バネに躍進」
 (日経MJ:2010/3/17、1&3面)

新聞ならではの解説記事といえそうです。

今回のJCSIの結果は上記のようになっていますが、ランキングばかりに気をとられずに、顧客満足度調査のモデルや調査方法の考え方なども理解し、自社で顧客満足度調査を考える際の参考にしていただければ、とも思っています。

※twitter やってます → MR寺子屋メモ
 twilog(過去twitt の取り纏め)はこちら → MR寺子屋メモ




『聞き方の技術』

聞き方の技術―リサーチのための調査票作成ガイド― 聞き方の技術―リサーチのための調査票作成ガイド―
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2010-02-16

いまではすっかり、マーケティングリサーチは調査会社の専売特許ではなくなりました。。。
(たとえばこのblogでも紹介した 「プレミアムライフ向上委員会」by 7&i (2010/2/9) も事例のひとつですね)

アウラマーケティングラボの石井栄造氏も、twitterでつぎのように言っていました。

ネットは全ての「中」を抜く。リサーチも。(@auraebisu 2010/2/15)

至言だと思います。

しかし、そのことによる弊害もいろいろとありそうです。
たとえばWEB上では、つぎのような警句を見ることができます。

とりあえずアンケートというのは考えもの
 (『大西宏のマーケティング・エッセンス』2010/2/22)

意外性の法則 (『とみざわのマーケティングノート』2010/2/15)

いずれもそのとおりだと思いますし、このあたりのことについては、やはりリサーチ経験を積み重ねることで、肌感覚として理解できることでもあると思います。

しかし、基本的な「聞く」ということにも、いろいろな知識や技術が必要になるのです。

そこで、今回紹介する本書です。
副題に、「リサーチのための調査票作成ガイド」とあるように、とくに調査票を介した調査におけるポイントが整理されています。
著者である山田一成先生(法政大学)は、「はじめに」で、つぎのように書いています。

調査票はマーケティング・リサーチや世論調査などにおいて、主に言語を介して情報を収集するためのツールであり、アンケート用紙や質問紙とも呼ばれながら、たいへん身近なものになっています。
しかし、広く普及しているからといって、何の知識も経験もないままでは、調査票を作ることはできません。実用に耐える調査票は、さまざまな領域で蓄積されてきた専門技術を身につけなければ、決して作ることはできないのです。(本書 p3)

まさに!
「アンケート」というと、たとえば学校や職場、自治会などで実施したことがある人も少なくないと思います。けれど、ほんとに意味のある調査票は、簡単に作れるものではありません。
まだまだ、このあたりの理解が成されていないことに、危機感を感じます。

それでは、もくじから。

第1章 言葉ひとつで結果が変わる~ワーディングの要点
第2章 選択肢はそろっているか~回答形式の種類と特性
第3章 回答者はウソをつく~回答傾向と回答能力
第4章 鉱脈を掘り当てるには~類型・尺度・測定技法
第5章 調査票はこうして作る~質問の構成と配列

そして巻末資料として、調査票の実例も掲載されています。

各章は、Q&A方式で書かれており、「冒頭で初心者・初学者の方々が抱かれる疑問を紹介し、それに答える形で解説が始まる」(p5)ような構成になっていますので、自分の課題に沿った質問から確認していくこともできるようになっています。
(とはいえ、ぜひ、全編を読んで欲しいのですが)

たとえば、つぎのような質問です。

会社の先輩から、質問文の作成について、「あいまいな表現は避けるように」と教えられましたが、あいまいな表現とは、具体的にいうと、どのような表現のことなのでしょうか。(本書 p20)

消費者調査で「あなたは有機野菜にどれくらい関心がありますか」という質問文を作ったところ、上司からダメ出しされてしまいました。いったい、どこが悪いのでしょうか。どうしてNGなのか、まったくわかりません。(本書 p29)

商品への好意度を調べる質問は、なぜ5段階であることが多いのでしょうか。また、そうした質問では、「かなり好き」「とても好き」といった言葉が使われますが、どんな言葉でたずねるのが一番よいのでしょうか。上司や同僚には今さら聞けません(本書 p54)

いかがですか?
これらの回答に、明快に答えることができますか?なかなか、難しいですよね・・・。
あらかじめ断っておいた方がいいと思いますが、すべての質問に対して、「これが正解」ということが書かれているわけではありません。「考え方」しか書かれていない質問も、少なくありません。
けれど、これは当たり前のことです。たとえば選択肢の問題などは、ひとつの絶対的な解があるわけではないですから。

調査票を使ってリサーチを行うときは、ここに書いてあるような知識や技術を理解してほしいと思う内容です。さらに、定量調査に限らず、定性調査を行うときにも、ここに書いてあるようなことは参考になると思います。
まだ経験が浅いリサーチャーは当然として、ベテランの域にある方もこれまでの知識の整理として、ぜひ一読をしていただきたい本です。

(また、リサーチに関わっていない方でも、これだけ世の中に調査結果が溢れている時代には、ここに書かれていることは知っておくべきかもしれません。ものごとの正しい判断をするためにも。。。)