日別アーカイブ: 2010年5月21日

【Mrs.H】「インタビュー」ということ

久しぶりの、林さんからの寄稿です。
「インタビュー」について思うことを、述べられています。

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 人と直接接して、言葉を聴き、その態度、表情を観察することは相手を理解するために極めて重要であり、アンケート(unquёt→フランス語:一定の様式で行う問い合わせ。意見調査)では分からない生活者の微妙な意識や行動が見えてくる。
 寺子屋でも紹介された、福井遥子さんの『インタビュー調査の進めかた』(→ こちら です)は、「そうそう、そうなのよ」と思う事例がたくさん書いてあり、実に興味深い。それに関連して、とくに定性調査のインタビュアーがすることに関して、基本に戻って再確認しておきたい。

◆Interviewerと司会者は違う
 Interviewという言葉を語源辞典で調べると、「interは、相互にという意味の接頭語」、「viewは、見る/眺めるの意味を持つ動詞」で、互いに見るの意味から面接や対談になり、取材で人に会って話しを聞く(聴く)ことを意味するようになったと書いてある。
 インタビュールームの備品の中に、司会者という名札立てがあって、時には、ご丁寧に「司会者:林」と用意して下さっているところもある。申し訳ないが、私は、それを席から引いて備品用の場所に返している。私は、インタビュアーであるが司会者ではないからである。書くのなら、名前だけにして欲しい。
 ここで、司会者を広辞苑で引いてみると「会の進行を司る人」、英和辞典で引くと「The chair/the president」など、会を仕切る人のような意味がある。ここには、Iinter&Viewという役目は含まれていない。
 つまり、インタビュアーと司会者は、その役割が異なっている。
 インタビュアーをモデレーターと呼んでいるところもあるが、この言葉には調停/調節役という意味があり、反応を抑えるといったニュアンスが含まれていて、少しは仕切り的な役割があるが、それでも司会者とは違う。

◆誤解があるのかもしれない
 司会者でもインタビュアーでも、呼び名そのものは大した問題ではない。しかし、その役割と心構えは異なるから、パーソナルインタビューやグループインビューの発注、受注側共に、台本(フロー)どおりに上手に質問して、会を仕切る「司会者」を期待しているとすると、様々な問題が発生する危険性がある。
 その問題とは、対象者の方から出てくる言葉の意味(真意)の掘り下げや因果関係の追及不足で、表層的に出てくる言葉だけが次のステップの指針となり、調査結果と実際の市場が食い違うことにある。情報の取り方も、分析も、奥行きが不足しているからこういうことが起こる。そして、定性調査は信頼できないとか、定量調査との結果が違うとかいう声を聞くと、実に腹だたしい。
 人には奥行きがあって、表面だけを見ていてもその本質は分からない。そして、人は簡単に、なおかつ的確に自分の気持ちを表現できないし、受ける相手もそれを完全に理解できない。そして、その奥の方にあることも、日常の行動に大きく関係しているから、無視できない。(言葉数が多いということと、自分の気持ちが表現できているということは、必ずしも一致しないので要注意)。
 だから、定性調査ではインタビューという手法が取り入れられていて、“Inter”や“View”もしないと、インタビュアーという仕事は成立しない。
(ただ、インタビュアーはもっといろいろなことをしますけど)

◆相手の気持ちを理解しようとして、耳と心を傾ける
 心理カウンセラーは「訊く、聞く、聴く」を使い分けている。そして、最後の耳と心を傾けて「聴く」が最も重要な役割と位置づけている。定性調査のインタビュアーも同じである。現実問題としては、どうも質問することが重視されている傾向があり、上手に質問すれば、対象者は気持ちを容易に吐露すると誤解している様子がある。
 インタビューで言葉が出ないと、手を換え品を変え質問攻撃をすると、相手は固く押し黙るか、どうでもいい言葉を返してきて蟻地獄に落ちる。私も初期の頃、質問大攻勢を試みて大失敗をしている。また、何とか答えを引き出そうとして「こういう意味ですね/こういうことを言いたかったんですね」と有無を言わせずに整理してしまって、相手の真意に迫っていないという失態もしている。
 待つとか、受ける、突く(プローブ)ということをする余裕が無かった時代の手痛い思い出である。

◆今、インタビューアーに求められているのは、マーケティングリサーチャーとしての素養
 上手に質問できること、その場を仕切れることは前提条件であり、司会者の役割も当然求められている。
 ただし、定性調査のインタビュアーはこれだけでは不十分であり、調査課題を頭に叩き込んでおいて、生活者の言葉や反応の奥を、絡んだ糸を紡ぐにように丁寧に引き出していき、その因果関係をみつけて、調査課題に繋げることができないと人の心の奥には迫れない。「定性調査のインタビュアーを養成しようと思ったら、企画から」というのが私の持論であり、企画ができれば、インタビューも分析もできる。
 企画書を書くことだけが企画ではないが、少なくとも、企画の中の目的と課題と仮説(アクションスタンダートも含む)だけは、理解しておかないと定性調査のインタビュアーはできない。
「この通りに訊いて下さい」というインタビューフローだけでは、表層的な言葉は取れても、心の中に潜む何かには迫れないし、その因果関係も解明できない。

                                              林美和子

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今回のお話も、リサーチャーにとって大切な提言を含んでいると思います。

少なくとも、企画の中の目的と課題と仮説(アクションスタンダートも含む)だけは、理解しておかないと定性調査のインタビュアーはできない。

これは、まったく同意です。
そしてこの視点は、定性調査、インタビュアーに限ったことではないでしょう。定量調査においても、同じでしょう。
リサーチをする目的、課題、仮説を理解せずに、どうして調査票が作れるのか、集計ができるのか、あまつさえ分析ができるのか、これは私もときどき感じることです。

そして、もうひとつ気になった一文がありました。

心理カウンセラーは「訊く、聞く、聴く」を使い分けている

「訊く」と「聞く」と「聴く」。この違いも意識したいポイントです。
ちょうど、「ask」と「hear」と「listen」の違いはなんだろう?、ということを考えていたのですが、合い通ずるものがありますね。

※「askingからlisteningへ」ということについては、experidgeの岸川さんが連載で紹介されていますので、こちらも参考にしてください。

  第1回がこちら→ The ARF Listening Playbookの紹介 (1)
                                   (Digital Consumer Planner’s Blog 2010/2/8)