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『グループ・ダイナミック・インタビュー』

グループダイナミックインタビュー―消費者の心を知りマーケティングを成功させる秘訣 グループダイナミックインタビュー―消費者の心を知りマーケティングを成功させる秘訣
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2005-04

マーケティング・リサーチに関する本をいくつか紹介しましたが、これらの本で、なかなか理解できないのが、定性調査の技法です。
そこで、グループインタビューを理解するために参考になる本を、いくつか紹介しておきます。

最初は、グループ・インタビューの代表的な実践者のひとり、梅澤氏が代表執筆をされた本です。梅澤氏は、これまでにも何冊か、グループインタビューに関する本を出版されており、ずいぶん参考にさせていただきました。
(→代表的な本は、こちらです。

実践グループインタビュー入門―消費者心理がよくわかる ステップ別・原則・留意点・チェックリスト
価格:¥ 2,039(税込)
発売日:1993-06  )

これまでの本は、調査会社の実務者向けに書かれていましたが、本書は「発注者」を意識して書かれているようです。「はしがき」で、つぎのように述べています。

この本は前著と比べると、発注企業のマーケターやリサーチャー、および開発担当者や経営者を強く意識してまとめられています。それは、発注者企業の方々に深く理解していただくことが、マーケティングを成功に導く調査にとって非常に重要な要因であると考えるからです。

このblogでも、以前書かせていただきましたが(→こちら)、調査、リサーチは調査会社に任せておけばいいというものではなく、発注者側にも積極的に関わりをもっていただき、様々な情報を提供していただいたり、一緒に議論させていただかないと、真に役立つ結果を得ることはできません。
このような視点を、正面きって述べていることに敬意を表しますし、またこのような視点でリサーチに関する本を出すことは、とても大切なことだと思います。
なので、調査会社でグループインタビューを担当する方はもとより、グループインタビューを発注することのある方にも、ぜひ目を通していただきたい本です。

内容は、これまで長年にわたりグループインタビューを実施してきた著者だからこそ書ける、具体的で、体系付けられた内容になっています。
もくじを紹介します。

第1章 GDI成功の前提
第2章 GDIの企画
第3章 リクルート作業の重要性と行い方
第4章 GDIの司会
第5章 GDIの分析・報告書
第6章 GDIをスムーズに進行させるための業務
補章  GDIを支える梅澤マーケティング理論

ちなみに、本書の「補章」で書かれていることを、もっと詳しく知りたいと思った方は、こちらの本をあわせてどうぞ。
著者がこれまで、長年のグループインタビューの現場から得た消費者心理の知見を整理しています。

消費者心理のわかる本―マーケティングの成功原則55 消費者心理のわかる本―マーケティングの成功原則55
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2006-09

『マーケティング・リサーチ・ハンドブック』

マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2004-12

「小難しい理論とか考え方はおいておいて、もっと実務で使える本はないの?」という方、本書をどうぞ。

「ハンドブック」というわりには、総ページ数437ページにも及びます。マーケティング・リサーチと統計解析もあわせて、網羅的に実務書を書くとこれだけの分量になります。
それでも、本書は左ページに文章、右ページに図表という形で、できるだけわかりやすく、マーケティング・リサーチの実務について整理している唯一の本だと思います。
とくに、実査とよばれるデータ収集の段階について、これだけていねいに書かれたものはないのではないでしょうか?

もくじを紹介します。

第1章 マーケティング・リサーチとは
第2章 マーケティング・リサーチの種類
第3章 2次データ収集分析調査
第4章 定性的調査
第5章 観察調査
第6章 実験やテスト
第7章 アンケート調査の種類
第8章 アンケート調査の企画
第9章 アンケート票の作成
第10章 アンケート調査の実査
第11章 調査データの集計
第12章 報告書の作成
第13章 個人情報の保護
第14章 統計解析の基本
第15章 需要予測
第16章 多変量解析

著者は、調査会社の現場で長らくリサーチを行ってきた方ですので、本書のような実務書が書けたのだと思います。
本文ももちろんポイントをついて整理されていますが、なかなか味があるのが、各章の最後に書かれている「Coffee break」です。実務を行う上で、見失いがちになったり、忘れかけてしまうような点を指摘してくれています。
たとえば、

・スローリサーチとファーストリサーチ
・2次データの鑑定眼を磨こう
・実験やテストは繰り返しで信頼性が高まる
・アンケート調査の「その他」
・数を追う猟師、山を見ず

といった内容です。
このコラムだけでも、一見の価値があるかもしれません。

マーケティング・リサーチの実務に携わっている人は、新たな手法に取り組まなければならないときや、わからない言葉に出会った時などの検索用に、デスクに常備しておくのによい本だと思います。

『社会調査ハンドブック』

社会調査ハンドブック
価格:¥ 1,937(税込)
発売日:1987-09

題名は「社会調査」となっていますが、かなりマーケティング・リサーチ寄りに書かれている本です。また、「ハンドブック」とありますが、決してノウハウ一辺倒ではなく、かなり本質論に触れている本です。

「マーケティング・リサーチはやっているけど、ほんとうに役立っているんだろうか?」「マーケティング・リサーチって、こんなものなんだろうか?」という壁にぶつかっている方には、とくに読んでおいていただきたい本です。
(とはいえ、マーケティング・リサーチについてあまり知らない方が読んでも、十分に使える内容になっています。)

調査には「仮説」が必要だということがよくいわれます。では、「仮説」ってなんでしょうか?なぜ「仮説」が必要なのでしょうか?「仮説」はどう導けばいいのでしょうか?
それに対する答えが、本書で得られるのではないでしょうか。
著者の飽戸先生も、はしがきで本書を執筆するに至った理由を、つぎのように述べています。

「市場調査」「世論調査」をはじめとする種々な「社会調査」に関する書物は、すでに数十冊近く刊行されている。にもかかわらず、あえて本書を執筆した理由は2つある。まず第一に、これらの社会調査に関する多くの書物が、あまりに技術的説明に終始した無味乾燥なものが多いこと、もっと調査というものについての哲学をもち、かつ調査に対する愛情が芽生えるような本がぜひ必要だと考えていたこと。そしてもう1つは、筆者が主張し続けてきた仮説検証的調査というものを実際に設計できるような理論と参考資料集をまとめておきたかったことだ。

すべての調査が、仮説検証を目的としたものではないという指摘もあると思いますし、正しいと思います。
しかし一方で、思いつきの質問を対象者にたずね、「得られるものがない」などと言っている人も少なくないことも、また事実です。

本書を通じて、一度、「仮説」ということをしっかりと理解してほしいと思います。
もくじを紹介します。

1章 社会調査とは何か
2章 社会調査の技法
3章 科学としての調査
4章 テーマをいかに設定するか
5章 ウソとマコトを見わける法
6章 標本設計の理論と方法
7章 信頼できるデータをとる方法
8章 調査結果の正しい分析
9章 調査の積み上げと活用
10章 調査と理論の結びつき
11章 調査に理論を導入する
12章 調査を理論に仕上げる
13章 仮説検証法の功罪
14章 仮説のつくり方とその検証法
15章 調査票作成の方法と問題点
16章 市場調査、世論調査、ライフスタイル調査の設計
17章 調査機関の選び方
18~20章 調査項目の実例

最後に、本書の欠点をひとつ・・・。
それは、出版年が1987年と古いことです。インターネット調査については、まったく言及されていません。現在の調査環境の激変についても、ふれらていません。

それでも、「仮説」についての言及は、古くなることはありません。
調査、リサーチに真剣に取り組みたいという方には、ぜひ、読んでおいていただきたい本です。

『社会調査へのアプローチ』

社会調査へのアプローチ―論理と方法 社会調査へのアプローチ―論理と方法
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2005-02

この本は、大学のテキストをイメージして書かれている社会調査の本です。
マーケティング・リサーチといっても、その基盤は「社会調査」です。なので、マーケティング・リサーチをしっかり基礎から学ぼうと思うと、社会調査の論理や方法論は避けて通れないテーマです。

そして、この本の中でも最初に指摘されているとおり、

社会調査は特別の人の特殊な知識ではない。我々すべてが「する人」「読む人」そして「協力する人」として、日常的に社会調査に関わりを持っている。社会調査の基礎知識は、現代を生きるための必須アイテムである。

と思います。
新聞、テレビ、雑誌、そしてWEB、調査データを見ない日はないといってもいいほどです。
ですから、少しでも「なんのために調査をしているんだ?」「調査ってどんなふうにやっているんだ?」「このデータって、信じられるの?」などと思ったことがある人にも、読んでおいてもらえるといいかもしれません。
(いきなり専門書ではなく、まずは新書くらいから・・・、という方にはこちらの本がお勧めです。
⇒『社会調査のウソ~リサーチ・リテラシーのすすめ』 )

ただ、大学のテキストと聞くと、「わかりずらい、読みづらい」という印象をもつ人も少なくないと思いますが、この本は大丈夫だと思います。語り口が、とても柔らかいです。異色です。
一例として、本文の最初の出だしをみると、

「社会調査なんて俺には関係ないよ」と思っているそこの人、そんなことでは現代を生きる立派な市民になれないよ。手始めにちょっと新聞を見てみよう。・・・

という感じです。
内容も、『講義のテキストとして実際に使いやすい本』『学生が実証的な調査(卒論)研究を独学で進めていける本』をめざしたというように、いたるところで、語句の解説やコラムを積極的に入れることで、理解を助けています。

もくじを紹介しておきます。

第Ⅰ部 社会調査の論理
 第1章 社会調査へようこそ
 第2章 情報資源の発掘調査-社会調査のファーストステップ
 第3章 社会調査の基本ルールと基本の道具
第Ⅱ部 調査票調査の方法
 第4章 調査票を作ってみよう
 第5章 サンプリングの理論と実際
 第6章 調査票調査のプロセスとデータ化作業
 第7章 調査結果を分析しよう
第Ⅲ部 質的調査の方法
 第8章 質的調査の魅力
 第9章 質的調査の実践
第Ⅳ部 補修と実習

とくに、これまで社会調査について全く勉強せずに調査会社に入ってしまったという方は、まずここから学んでおくことをお勧めします。
何事も、基本を理解しておくのは大切なことですので。

『マーケティング・リサーチの実際』

マーケティング・リサーチの実際 マーケティング・リサーチの実際
価格:¥ 872(税込)
発売日:2004-04

過去にも、マーケティング・リサーチに関する本として、つぎの3冊を紹介していますが、さらにいくつかの本を紹介しておきます。

『マーケティング・リサーチの論理と技法』
『マーケティング・リサーチはこう使え!』
『マーケティング・リサーチの理論と実践~理論編』

最初は、これまでマーケティング・リサーチについて、ほとんど知らなかったという方への入門書から。

まずはもくじをご紹介しておきます。

Ⅰ.マーケティング・リサーチは課題解決の手段です
Ⅱ.知っておきたい調査手法の種類と特徴
Ⅲ.マーケティング・リサーチを進める手順
Ⅳ.リサーチ課題にどのようにアプローチするか
Ⅴ.リサーチをとりまく環境

とくにⅢ章では、リサーチプロセスに沿って解説していますし、「チェックポイント」として、リサーチを進める上での確認事項も整理されていますので、ポイントを押さえるには便利です。
またⅣ章では、4つのテーマをあげながら、具体的にリサーチの流れに沿って事例を示していますので、具体的なイメージもつかめると思います。

ただ、いかんせん新書ですので、内容の深いところまでは提示されていません。
「マーケティング・リサーチってどんなことするの?」という、初歩の初歩について概要を知りたい方向けの本であることは、お断りしておきます。
さらに詳しい内容について知りたいという方は、他の本で理解を深めてください。

「マーケティング・リサーチの理論と実践~理論編」

マーケティング・リサーチの理論と実践 理論編 マーケティング・リサーチの理論と実践 理論編
価格:¥ 9,450(税込)
発売日:2006-11

このところ、マーケティング・リサーチ関連の新刊が相次いでいます。
他にも紹介したい本はあるのですが、取り急ぎ日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)肝いりのこの本を。

アメリカで2年前くらいに出版されたものを、JMRAが主導して翻訳した本のようです。
(「ようです」と書いたのは、立ち読みした記憶に頼っているからです・・・。なにせ、お高い本ですので、まだ購入していません。。。)
内容は、マーケティング・リサーチに関して、網羅的に、かつ詳細に記述されています。
今回は、「理論編」として、原書の前半部分である理論的なパートが出版されました。
ちなみに、後半部分は実査と解析系が取り上げられるようです。

参考までに、もくじを引用しておきます。

第1章 マーケティング・リサーチ序論
第2章 マーケティング・リサーチ課題定義とアプローチの展開
第3章 調査設計
第4章 探索的リサーチの設計:二次データ
第5章 探索的リサーチの設計:定性調査
第6章 記述的リサーチの設計:質問法と観察法
第7章 因果的リサーチの設計:実験法
第8章 測定と尺度化:基本原理と相対尺度
第9章 測定と尺度化:絶対尺度
第10章 調査票と観察フォームの設定
第11章 標本抽出:設計と実行手順
第12章 標本抽出:標本サイズの決定(?)

事例がアメリカのものなので、多少理解しにくいところはあるかもしれませんが、「日本では」というようなコラムを差し込むなどの工夫もしているようです。

JMRAが、なぜここまで投資をしたのか?(あまり投資をしてこなかったので、これまで)
「はじめに」で監訳の小林氏は、つぎのように書いています(記憶ですので、正確なニュアンスはお伝えできませんが)。
海外に比べ日本でのマーケティング・リサーチ市場規模が小さいのは、日本でマーケティング・リサーチャーが育つ環境になかったからではないかという危機感がある、と。
海外では、大学や大学院の授業でマーケティング・リサーチの講座があり、イギリスでは資格制度まであるようです。

まったく、同感です。このブログの「業界の歴史」でも見てきたように、このような業界環境、背景により、日本では真のマーケティング・リサーチャーが育ちにくく、多くの調査会社やリサーチャーが情報の中間流通業者的な働き、位置づけしかとれなくなっているという側面があると思います。マーケティング・リサーチの理論と技術を学ぶには、かなりの部分を自助努力で補わなければなりませんでしたから。
日本において、真のリサーチャーを育て、調査会社のポジションを上げていくことは、マーケティング・リサーチの市場を拡大していく上で、必須でしょう。マーケティング・リサーチ市場が拡大するということは、イコール、より消費者サイドにたった企業活動、科学的な意思決定に基づく成功確率の高い企業活動を拡大するということにつながります。そしてそれは、最終消費者であるお客様にとっても、選択・購買の効率を高め、より自分の生活を高める商品やサービスを手に入れる機会が多くなることを意味します。

少々、私的な想いの部分が長くなりましたが、現役リサーチャー、これからリサーチャーを目指す人にとっては、この本は基礎を固める上で有用だと思います。
ただ・・・。
いかんせん、価格が高いです。。。
(価格が高いのも、マーケティング・リサーチというテーマに対する需要が少ないからです・・・。多くの人に買ってもらえるのであれば安くできるのでしょうが、見込める販売量が少ないので。難しいですね。。。)
なので、会社経費で購入してもらうとか、大学の図書館に入れてもらうなどしながら、入手してください。お金の余裕のある方は、もちろん自腹で。

そういえば、JMRA会員の方は、1000円引きで購入できるようです。
詳細は、こちら(→JMRAのホームページ)

(他にも、紹介したい本があるのですが、今日はとりあえずこの1冊で・・・)




「マーケティング・リサーチはこう使え!」

マーケティング・リサーチはこう使え! マーケティング・リサーチはこう使え!
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2006-11-09

この本を見つけた最初の感想・・・、「しまった!先を越された!」です。。。
それも、知っている方の本だったりするので、なおさら・・・。

「インターネット調査の功罪」「現状仮説と戦略仮説」「あらかじめ調査の限界を知っておく」「結果をどう読んで、どう判断するかが最も大事」などなど、これからこのブログでお話をしようと思っていること(さらには、出版化の野望も・・・)を、先んじられてしまいました。
仕方がありません、ビジネスは機を制することが肝要ですから、こちらがもたもたしていたのがいけないのだと反省しつつ、この本を紹介します。
とはいえ、この本を読んだからといって、もうこのブログは必要ないやと思わないでください、さらに深い内容で、皆さんにご提供していこうと思いますので。

さて、本の内容です。
「はじめに」から紹介するのが一番わかりやすいと思いますので、その部分を引用します。

この本では、「マーケティング・リサーチ」を自分のビジネスの中で活用していこうと考えている方々の、「これが本当に最良な調査の方法なのか」「調査結果はどこまで信じてよいのか」「結果をもっと上手く活かすにはどうしたらよいのか」といった疑問に対し、
・ビジネスのいろいろな局面で、調査をどのように使えば仕事がうまく進められるのか
・調査結果を使いこなす立場から見て「良い調査」とは何なのか
・その際に調査の依頼者としてどのようなことに留意すれば失敗しないですむのか
という視点から具体的に答えていきます。
調査を調査会社任せにせず、自分でコントロールできるようになることで、調査をもっと身近で有用なものとして欲しいと思います。

語り口もやわらかく、豊富な事例で話を進めていますので、とても理解しやすいと思います。マーケティング・リサーチって役に立つの?と考えている、あるいは、もっとマーケティング・リサーチを有効に使いたいと考えている実務家の方、お勧めです。

PS.私信です。
菅野さんが、このような本を出そうと考えられていたとは・・・。
でも、リサーチについて考えていること、想いの方向が同じだということを確認させていただき、自信にもなりますし、うれしく思います。
どれだけ貢献できるかわかりませんが、この著書が少しでも多くの人に読んでいただくことの一助となれば幸いです。
機会があれば、またお仕事をご一緒させてください。




「マーケティング・リサーチの論理と技法」

マーケティングリサーチの論理と技法 マーケティングリサーチの論理と技法
価格:¥ 3,465(税込)
発売日:2004-09

【2008年6月第3版が出版されてます→こちらにエトリー

著者は、長く広告代理店やメーカーで、マーケティング・リサーチの実務家として活躍された方です。
マーケティング・リサーチの本には、学者や研究者が書いたものと、この本のように実務家が書いたものとの2通りがありますが、「発注サイド」の方たちは、このような実務家が書いたものがお勧めです。その上で、もっとリサーチ、調査をしっかりと身に着けたいという方は、学者や研究者が書いた専門書で、理論を学んでいくのがいいと思います。(ただし、実務家の本は玉石混交なので、注意も必要ですが・・・)

この本はすでに第2版で、第1版の評価が高く、大学・大学院での講義教材としても使われているようです。内容も、リサーチプロセスから調査手法、多変量解析まで、またテーマ別のリサーチについても触れられており、リサーチ/調査について一通り学ぶにはちょうどよい内容となっています。もくじを紹介しておきます。

序章 マーケティングとマーケティング・リサーチ
第1章 企画段階
第2章 実施・分析・報告段階
第3章 定性調査
第4章 定量調査
第5章 比較について
第6章 特定目的のリサーチ設計
第7章 シンジケート・サービスの調査
第8章 インターネット調査
第9章 市場に関するリサーチ
第10章 新製品開発に関するリサーチ
第11章 ブランドに関するリサーチ
第12章 広告に関するリサーチ
第13章 そのほかのリサーチ
第14章 マーケティング・リサーチの管理
第15章 ハイテク製品のリサーチ計画
第16章 多変量解析
第17章 実験法

この本の特徴は、第9章から15章のテーマ別のリサーチ計画について触れられていることで、このように網羅的に紹介している本はなかなかないと思います。それと、リサーチの中でも少々理解するのが面倒な実験計画についても一章を割いているのも特徴的です。

実務の視点から、一通りマーケティング・リサーチについての理解をしたいという方にはお勧めの本です。

「リサーチャーの仕事」

リサーチャーの仕事
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2000-02

「マーケティング・リサーチ業界」は、主に調査業界を知ることを目的として書かれていますが、仕事として、人の視点から「リサーチャー」について書かれているのが本書です。

「リサーチャー」は、何も調査会社にだけいるわけではないのですから、このようなスタンスでの本も必要だと思いますし、リサーチャーの本来の役割を理解するためには、こちらの本の方がよいかもしれません。リサーチが企業の中でどのような役割を担うのか?、リサーチャーの仕事は?、求められる資質や能力は?、組織の中でリサーチャーをどう活かすのか?、など内容も多岐にわたります。
比較のために、もくじを引用しておきます。

1章 ハイリスク時代のビジネス対応
2章 変化を読み取る
3章 リサーチを分類する
4章 リサーチャーの役割
5章 リサーチ・スペシャリストの役割
6章 リサーチャーの仕事
7章 リサーチャーに必要な知識
8章 リサーチャーに求められる能力
9章 リサーチャーを活かすビジネス・スタイル

あとがきには、つぎのように記されています。

リサーチャーの仕事は、基本的には地味でアカデミックなものである。発見に感動する研究心が必要である。だからと言って研究室に閉じこもっているのでは、仕事はできない。
フィールドに出て調査の対象者に接するのは、多くの場合は専門の調査員ではあるが、リサーチャーも、実査の現場を見ていないと、データの解釈が自信を持ってできない。調査員から報告を受けるだけでは、情報は十分ではない。体がいくつもあれば、自分が調査員になってデータを収集するのが理想である。

至言です。

「リサーチャー」という仕事がどんなものなのかを知りたい人には、こちらがお勧めです。




「マーケティング・リサーチ業界」

マーケティング・リサーチ業界 マーケティング・リサーチ業界
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2004-03

【追記:2008年4月に、新版が発行されてます→こちらに投稿

マーケティング・リサーチの業界は規模が大きくないため、この本が出るまでいわゆる業界本、リクルート本というものがありませんでした。
2004年3月出版なので記述されている業界データなどは古くなっていますが、マーケティング・リサーチ業界がどのようなところで、どのような仕事をしているのかを知るには、唯一の本といっていいでしょう。

ただ、この業界にいた人間からすると、少しきれいに書かれすぎているきらいもあると思います(Amazonの書評でも、そのようなコメントがみられます)ので、その点は注意して読んだほうがいいかもしれません。(まあ、他の業界でも同様でしょうが・・・)
「マーケティング・リサーチ」というと、スマートで知的な印象を持つ人も多いかもしれませんが、3章の「現場で働く人たち」を丹念に読んでいただければきちんと書いてあるとおり、結構、アナログで泥臭い仕事が多いのです、実査の現場を踏むことが重要なのです。

もくじを紹介しておきます。

第一章 マーケティング・リサーチとは
1.どんな仕事が中心か
2.マーケティング・リサーチ業界の動向
3.マーケティング・リサーチ業界の分類
4.今後の課題と挑戦
第二章 マーケティング・リサーチという仕事
1.職業人としてのマーケティング・リサーチ
2.キャリアパス
3.新卒者に求められること
4.リサーチャーに求められる資質と能力
第三章 現場で働く人たち

あとがきで、

「欧米ではリサーチャーの社会的ステータスも高く、調査会社は専門的な仕事をしている集団であるとみられているようです」

と書かれていることは、意味深ですが・・・。
(なぜ、「欧米では」と断っているのでしょう・・・)

調査会社に興味のある方は必読。