P夫 owlさんは、これまでどんなことをやってきたんですか?
owl 最初に入った会社が、マーケティング会社だったんだ。ただ、それまで「マーケティング」とはどんなものかはほとんど知らなかった。大学でマスコミュニケーション論を専攻していて、広告には興味を持っていたんだけど、社会学系だったから、どちらかというと記号論とかコミュニケーション論、文化論からの視点でみていただけだったので。
社会調査論も勉強はしたんだけど、Q子さんと一緒で、いまひとつよくわからなかった。いや、わかっていなかった、というのがほんとうのところだね。ただ、この時に買わされた本は後で役にたったけどね。
Q子 そうなんですか。で、その会社ではどんなことを?
owl 最初に配属されたのが、リサーチで得られたデータの解析を主に担当する部署だった。当時はパソコン環境は今のように一人一台なんてとんでもない時代だったけど、SASという統計解析ソフトやASSUMという集計ソフトで集計をやったりしていたね。
今にして思うと、最初に集計・解析をすることができたのはラッキーだったかもしれない。後で調査会社に転職することになるんだけど、大きな調査会社は機能別に組織が分かれていることが多くて、自分で実際に集計や解析を経験できない人もいっぱいいるんだよ。
確かに、集計や解析を自分でできなくても、データの読み方とかがわかっていればそれでいいんだけど、やっぱり自分でソフトを操作することで覚えられることは多いからね。
それに、いろんな調査票をみることができたし、調査票の難しさがわかったのも実際に集計をしたことで覚えられたと思うし。
P夫 マーケティングの会社なのに、集計ばかりやっていたんですか?
owl そんなことはないよ(笑)。報告書も書いてたよ。この会社は、機能別に組織が分かれていなくて、クライアント別にチームを作って仕事をしていたんだ。だから、何かひとつの業務をしていればいいというわけではなく、いろいろなことを経験できたのもよかったね。
だからかな、リサーチをするにしても、マーケティングの視点から、調査を設計したり、結果を読むくせをつけてもらったね。この会社はマーケティング・エージェンシーとしては日本でも有数の会社だと思うし、その中でマーケティングやリサーチの勉強ができたことが、またまたラッキーだったと思うね。
マーケティング・リサーチというのは確かに「調査」だし、社会調査の基礎を知らないといけないけど、目的は「マーケティング」に寄与することだから。リサーチ、調査はあくまで手段であって、その結果をどうマーケティングに活用できるかが求められていることだから。「調査結果はこうでした」で終わっていては何の意味もなくて、「だからこうするのがいい」ということが言えないとね。
P夫 あれ?僕もいくつか調査会社に仕事を頼んだんですけど、出てくる報告書は「○○は▲▲%」ってことだけ書いてるものが多いですけど・・・。だから、その後がたいへんで。
owl それがすべてだとは思わないけど、確かに調査会社の報告書はリコメンドが弱いものが多いかもしれない。日本では、調査会社は「データを収集して、集計すること」までが業務とされることが少なくないからね。調査会社に仕事を出すほうにも問題があるとも思うけど。
Q子 じゃあ、なんで調査会社に入ったんですか?
owl マーケティング会社で仕事をしていて、リサーチの仕事が面白いと思ったことが大きいかな。マーケティング会社なんで、リサーチは一部でしかなくて、クライアントが結果を出すためにマーケティングの展開までをサポートしていたんだ。でも、そうなるとリサーチをしなくてもいい仕事も少なくないからね。それに、もっといろいろな業界のリサーチをやってみたいとも思ったし、もっとリサーチを知りたいとも思っていたね。
で、調査会社に入ったんだけど・・・。
Q子 けど?
owl うん。期待通り、それまで携わったことのない業界の仕事もできたし、いろいろなリサーチ手法も知ることができた。リサーチを究めるということでは、とても勉強になったよ。
でも、今度はどうもマーケティングから遠くなった気がするんだ。さっきも言ったように、リサーチは手段でしかないと思うんだけど、調査会社は、いかに正しいデータを収集するか、そのデータを使いやすいように集計・加工することが主な業務だったから。
Q子 そうなんですか?調査会社も希望しているんですけど・・・。
owl それもいいんじゃないかな。マーケティングを仕事としていくためには、リサーチの知識は絶対必要だと思うからね。ただ、ほんとうに自分がやりたいことが何かをしっかり持って、会社とは別に勉強をしていかないと、日々の仕事に埋没してしまうことがあるから、その点だけは注意する必要があるだろうね。
Q子 で、いまではフリーでお仕事をしているんですよね?それはなぜですか?
owl うん、世の中にはいろいろな調査会社があるということがわかったのも、調査会社に入っていい点だったね。でも、そうなると、「この調査は、他の調査会社の方が得意なのでは?」ということを思うことも少なくなかった。でも、調査会社が他の調査会社に実査を頼むというのはなかなか難しいし、頼まれるほうも嫌がるしね。
だったら、特定の調査会社に所属することなく、フリーの立場でいればいいと考えたんだ。クライアントのテーマによって必要とするリサーチ手法や分析手法は異なるよね。そして、調査会社はそれぞれ得意とするリサーチ手法、分析手法を持っているんだから、クライアントのテーマにあわせて調査会社を使い分ければより効果的で効率的な仕事ができると思った。
で、私は何をするかというと、クライアントのテーマに沿った企画・設計を行い、実際にデータを収集する部分については調査会社をコーディネート、プロデュースしていく。で、調査会社の報告書とは別に結果をサマライズし、クライアントと一緒に今後の活動について考える。こんな活動ができれば、理想的だなと思ったんだね。
P夫 う~ん・・・。じゃあ、調査会社は具体的にどんなところなんですか?実は、僕も調査会社と仕事をしていて悩むことがあるんですよね・・・。なんか、こちらの意図が伝わらないというか、わかってないというか。
owl よし、では次回は日本の調査業界について、少し話をしよう。
では、つぎの本を次回までに読んでおくこと。
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