owl 長らくご無沙汰しておりました・・・、皆さんも健康にはお気をつけください・・・。
Q子 もう-_-
owl 今日は、調査タイプの最後、仮説検証型のリサーチについて。
紹介したい本が溜まってきているから、さくさくいこうね^^;
さて、実態把握も終わり、仮説探索も終わり、ある仮説ができあがりました。
そこで必要になってくるのが、果たしてこの仮説は正しいのか、このまま開発を進めて大丈夫なのかというステップだよね。
P夫 でも、仮説はあくまで仮説であって、いちいち確認が必要ですかね・・・。
それと、そもそも「仮説」ってなんですか?これも、わかったようでわからない言葉なんですが・・・。
owl そうだね、「仮説」って言葉は結構使うけど、ほんとうのところってよくわからないよね。ただ、これを説明しはじめると長くなるので、機会を改めて説明することにする。
今回は、たとえば商品開発に際して、ターゲットはどうするのかとか、コンセプトはどうするのかとか、もっと進んで商品自体の仕様は、パッケージは、価格は、流通先は、広告は・・・といったように、いろいろなことを決めないといけないでしょ?その、いろいろなこと、方向性といえばいいかな、とりあえずはこれらのことと思っておいてもらえればいいや。
Q子 それをいちいち確認しなければいけないんですか?
owl 「しなければならない」ということはないかもしれない。ただ、市場に商品を出した時のリスクを少しでも小さくしようと思ったら、した方がいいだろうね。
仮説はあくまで仮説であって、それがほんとうにお客様に受け入れられるかどうかは別の話だから。
P夫 みんなそんなことやっているんですか?だいたい、さっきのターゲット、コンセプト、商品仕様、パッケージ・・・みたいに、その都度で調査をしていたら、開発に時間はかかるし、お金はかかるし。。。
owl うん、P夫君のいうことも、もっともだと思う。
でも、じゃあ仮説のままでつぱっしって、いざ市場に出したらまったく売れなかったというのも問題なんじゃない?
P夫 それはそう。でも、いまの時代って、とにかく他社に先駆けて新しい商品を出せるかというのも、必要ではないですかね?失敗したと思ったら、すぐに改良すればいいと思うし。ソフトなんか、発売された後で、つぎつぎとバージョンアップのソフトをダウンロードさせたりするじゃないですか?
owl たしかに、いまはとにかく発売してしまうことが、最大のテストマーケティングという考え方も、あながち否定できないとも思うよ。
費用対効果の問題だよね。開発コストがそんなにかからないとか、ソフトのようにすぐにバージョンアップをすることができるような商品、あるいは他社がすでに成功しているミートゥー商品だったら、あえて費用をかけて調査をするよりも発売した方がいいという考え方も成立すると思う。
でも、開発にそれなりのコストがかかる商品だとか、ここ一番の商品だとかだったら、やはりきちんと検証を繰り返しながら、商品をブラッシュアップして、発売する方が結局は費用対効果が高いということも少なくないんじゃないかな?
P夫 そうですね・・・。
owl それに、いまはweb調査もある。早く、安く、ターゲットを絞り込んだ調査をすることができる環境になっているんだし。これが、web調査の最大のメリットだし、リサーチにおける貢献だと思うんだけど。
Q子 で?仮説検証のリサーチってどうやるんですか?
owl 難しく考えずに、できたコンセプトや商品仕様、パッケージなんかを直接、お客様に想定している人達に聞けばいいんだよ。
P夫 へ?そんなんでいいんですか?注意することとかは?
owl いい質問^^
いま、P夫くんは、どんな質問を想定したんだろう?
P夫 「あなたは、このコンセプトについてどう思いますか」とか?
owl で、「いいと思う」「まあいいと思う」てな感じで選択肢をつくると。
P夫 まあ・・・。
owl それで?
P夫 で、「そう思う」「まあそう思う」という人が多ければOKと・・・。
owl まあ、ふつうはそう考えるよね。
でも、いつかも話したと思うけど、よほどひどいものでなければ「まあそう思う」くらいは、回答するんじゃない?それで、ほんとうにいいんだろうか?
P夫 でも、アンケートってそんなもんでしょ?
owl では、少し質問を変えて。この調査をする目的って何?
P夫 仮説が正しいかどうかを検証すること。
owl 確かにそう。でも、正しいかどうかがわかるだけでほんとうにいいのかな?
では、ここでいくつか仮説検証型リサーチの整理をしてみるね。
まず、目的はなんだろうか?
一番知りたいのは、P夫くんもいうように仮説は正しいのか、言葉を変えると消費者のニーズにあうのかということ。これは、避けて通れない関門だよね。では、ニーズに合うというのをどうやって判断するのか。単純に「どう思いますか」の答えだけではなんともいえないでしょう?もっと、いろいろな視点で検証しないと。たとえば、回答者は提示したコンセプトを理解してくれたのか、共感してくれたのか、関心をもってくれたのか、これまでの商品と比べて差別性があると感じてくれたのか、新しいと感じてくれたのかなど多角的に捉えておくことが必要じゃないかな。それと、具体的に買ってみたいと思ったのか、これまで購入してきた商品からスイッチしたいとまで思ってくれたのか、くらいまで押さえることも必要かもしれないよね。コンセプト段階では難しいかもしれないけど。
で、ニーズに合う、あるいは合わないとわかったとして、それでいいのか?そんなことはないよね?具体的に、つぎのステップに進むにあたって、どこを強化すべきか、補強すべきか、直すべきかがわからないと、どうしようもないでしょう?これが、2番目の目的。
そして、仮説っていくつかある場合がほとんどなんだけど、じゃあどれがいいのかを最終的に決断しないといけない。複数案の中から、最善案を決定しないといけないよね?これが3番目の目的かな。これは、1番目と2番目の目的から判断することだと思うけど。
P夫 ふむ・・・。なんとなく、納得です・・・。
owl これで、目的は整理できた。調査票もつくれる。では、つぎに設計はどうするか?
どう?
P夫 どうって。。。ふつうに、誰に、どのように聞くかを決めればいいのでは?
owl そうなんだけどね^^;
これまでの、実態把握型や仮説探索型のリサーチと、この仮説検証型のリサーチのもっとも違う点は、調査設計かもしれないと思うんだ。
前の2つは、極論すると数字としての厳密性はそんなに高くないといえるかもしれない。でも、「検証」という言葉でもわかるように、このタイプのリサーチは、設計の厳密性が結構重要になる。さっき言ったように、最終的には複数案の中から最善案を決めなければならないわけだからね。
「ほんとうに、B案に比べて、A案の支持が高いといえるのか」ということが言えないと意味がない、ということだよね?
ここで、「実験計画法」の知識が必要になってくる。
Q子 実験、ですか?「あるある」みたいな?まゆつば・・・-_-
owl まあ、あれも本当はそうなんだよね。それが、正しい実験を行ってないばかりか、結果を捏造しているかもしれないから、問題になっているんだけどね。
この、「実験計画」は、結構難しいからね。ここでは、説明しないけど。。。
では、設計にあたって何を決めないといけないか。
まず、手法をどうするか?
WEBでやるのか、対象者を会場に呼んで行う会場テストか、回答者の自宅に商品を送って実際に使ってもらうHUT(ホーム・ユース・テスト)か、あるいはデータより改善ポイントの抽出を主眼にグルインでやるか。テストをするもの(コンセプトか、プロダクトか、パッケージか・・・)によって、また開発段階や、商品カテゴリーによって決まってくる。
つぎに、調査対象者をどうするか?
今のユーザーのみか、これまでユーザーでなかった人も含めるのか。あるいは、ヘビーユーザーのみでいくか、ライトユーザーまで含めるか。さらに、自社ブランドユーザーのみでいくか、競合ユーザーも含めるのか。これは、開発しようとしている商品の位置づけで決まるよね。
で、最後に、どんなテストをするのか。
これは、複数案を、どのように対象者にふりわけるか、提示するのかということだけど、これが実験計画を理解していないと、どうにもならない。何も知らないと、かなり適当な調査計画になってしまうから、注意が必要なんだ。
ピュア・モナディックか、シーケンシャル・モナディックか、一対比較でいくか。
ブランド名は提示するか、提示しないのか。
テスト品の提示順はどうするのか。系列位置効果とか、隣接効果の問題があるので。
これらで、調査結果はかなり変わってしまうから。
P夫 う~ん・・・。なんか、また魔法の言葉が・・・。モナ・・・なんですか?
owl 聞いたこと無いの?でも、これまで商品開発の調査ってやっているんだよね?
P夫 一応・・・。
owl だとすると、やばいかも・・・。
こんなことあまり言いたくないけど、へたをすると調査会社の人間でも、このあたりのことについて、正しく理解していない人間もいるかもしれないからな・・・。
これも説明を始めると長くなるから、今回は説明しないけど、一度自分で言葉を調べておいた方がいいかもしれないね。後で、きちんと説明するけど。
とりあえずは、この本(『マーケティング・リサーチの論理と技法』)あたりで勉強しておいた方がいいかもね。
Q子 少しでいいので、さわりだけでも。。。たとえば、どんなことですか?
owl そうだね・・・。
たとえば、君たちの名前、P夫くんとQ子さん。これも、なんの意味もなくつけたわけじゃないんだよね。
Q子 へ?
owl たとえば、提示したい案が3つあるとする。調査の現場では、呈示試料というんだけど、この3つの試料に名前をつけるときに、たいてい、P、Q、Rという記号を振り分けるんだ。なぜだと思う?
Q子 さあ・・・。
owl 最近、「県庁の星(→ CD、本)」って映画みたんだけど、この中でも象徴的な場面があったね。
Q子 織田裕二と柴崎こうのですか?けっこう、おもしろかったですよね^^
owl ある意味、マーケティングの勉強にもなるしね。「データでは、見えてこないことがいっぱいある」的なセリフがあったけど至言だよね。
で、この中で、お弁当つくりの競争の場面があるんだけど、AチームとBチームに分ける時に、県庁から研修に来ている織田裕二は最初Bチームといわれてむっとするんだ。
なんでだと思う?
P夫 そりゃ、AチームとBチームだったら、Aチームの方が正統派というか、いいチームという印象があるからじゃないですか?
owl そうだよね?どうしても、A、B、Cという記号には、すでに序列関係のイメージがついてしまっている。だから、CよりB、BよりAがいいと直感的に思ってしまうんだよ。
だから、調査のときの呈示試料についても、そのようなイメージを与える危険性を排除するために、P、Q、Rという記号をつけているんだ。
君たちの名前を、P夫くんとQ子さんにしたのも、調査屋のくせ^^;
Q子 なるほどねー。そんなところにまで、気をつかうんですね。
owl そう、この例は一部でしかないんだけど、とにかく調査の回答者に少しでも予断を与えたり、心理学的な見地からのバイアスがかからないように、いろいろと工夫をしているんだよ、調査の現場では。
そんなことを知らない人はいっぱいいるし、なんでこんなに準備に時間がかかるんだみたいなことを言う人もいっぱいいるけどさ(ブツブツ・・・)
Q子 はいはい^^;