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インテージ2009年3月期決算

インテージの2009年3月期決算が発表になっています。
2009年3月23日に、東証一部に指定替になってから初めての決算となります。

決算説明会資料および決算短信は、こちら↓からどうぞ。
(いつもは決算説明会のストリーミング映像もあるのですが・・・。後日確認して、アップされていたらページを更新しておきます。
【追記】→5/22に公表されています、ライブラリーからどうぞ。50分近くの映像です・・・)

2009年3月期決算説明会(アナリスト、機関投資家対象)を開催しました
(インテージIRニュース・2009/5/19)

インテージIRライブラリー(2009/5/8に「平成21年3月決算期決算短信」)

数値を抜書きすると、下記のとおりです。

連結  売上    343億円(対前年+3.7%)
     営業利益  33億円(対前年+0.2%)
     経常利益  33億円(対前年+0.0%)

単体  売上    266億円(対前年+ 1.8%)
     営業利益  25億円(対前年+11.0%)
     経常利益  25億円(対前年+ 6.3%)

連結・単体とも、売上、営業・経常利益いずれも対前年プラスは維持しています。
この経済環境を考えると、検討しているといえるのでは?

データで気になるのは、セグメント別での「市場調査・コンサルティング」の数字。全体では、

売上231億円・構成比67%・対前年比+6.0%
(営業利益29億円、対前年比+0.3%)

という数字です。さらに、カスタムリサーチとパネル調査にわけてみると、

カスタムリサーチ  売上 88.7億円・対前年比+0.0%
パネル調査     売上142.3億円・対前年比+10.1%

という結果に。
ほぼ独占のパネル調査は順調に売上を伸ばしましたが、カスタムリサーチはやや苦戦といったところでしょうか?
そこで、さらにカスタムリサーチを細分化すると、

従来型調査     売上47.5億円・対前年比+2.2%
インターネット調査 売上41.2億円・対前年比-2.2%

インターネット調査が苦戦のようです。
決算短信の中でも、「ここ数年にわたって成長の牽引役であったインターネット調査の伸び率が鈍化したこと、競争が激化して受注単価が下落傾向にあることから、増収減益となりました。」とコメントしています。
インターネット調査の減速が、単にいまの経済状況による要因が大きいのか、無条件で成長する時代が終わりに近づいたという構造的な要因なのかは、見極めが必要です。
(個人的には、構造的な要因が大きいように思っていますが。。。)

そして、2009年度の重点課題でも、「カスタムリサーチ分野の構造改革」が筆頭に上げられています。前提となる市場環境の認識については、他の調査会社・リサーチ会社にとっても同様であると思うので、引用しておきます。

    • 中長期の観点では、リサーチやデータに対するニーズは高まることがあっても、後退することはない。
    • ただし、インターネットを基点とするパラダイムシフトが進み、その変化に対応できた企業のみが生き残ることができる。
    • 意思決定のための情報活用という観点からは、リサーチにとどまらず、周辺領域を含めた対応力の強化が成長のための必須条件。
                     (インテージ「2009年3月期決算説明会資料」P13)

この内容に同意できるかどうかは、皆さんご自身の判断で。。。(2つめなど、従来の調査会社に対しては、ある意味、挑戦的なフレーズであるとも取れますが・・・)
そしてこのような環境の中で、インテージがどのような方向性を考えているのかは資料をご覧ください。

さて、上場している同業2社はどのような状況か?
まだ年度末決算ではないですが、動向をピックアップしておきます。

まず、マクロミルから。

マクロミル社IR情報

第3四半期決算(2009/5/15)や業績修正(2009/5/8)からみると、苦戦している模様。
このような中で、創業者の杉本氏が「代表取締役会長兼社長」へ復帰することで、意思決定の迅速化等を図る方向性を示しています。

続いて、クロスマーケティング。

クロスマーケティングIR情報

こちらも、第1四半期決算説明会資料(2009/5/1)をみると、苦戦している模様。
とくに気になったのが、説明会資料P6~8のセグメント別情報。ここで、「大手調査会社」セグメントの売上が対前年比で▲32.1%。これは、どういうことか?・・・。(コメントは控えさせていただきますが・・・)

ただ、一方でクロスマーケティングは、さまざまな動きを同時にしています。たとえば、

株式会社リサーチアンドサーベイの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
(2009/5/18)

コンベンショナルリサーチを中心に実施している会社を子会社化することで、インターネット調査以外の業務にも対応し、「総合的なマーケティングリサーチ会社」を目指すとしています。

以上、上場リサーチ会社3社の決算と動向を整理してきました。
第1四半期のGDP▲15.2%という状況は、当然リサーチ会社にも影響しているわけで、各社とも苦戦しているようです。ただし、他業界に比べると、まだ傷は浅いのかもしれませんね。(そして、この3社以外はどうか?むしろ、そちらの方が心配・・・)

インテージの環境認識にあったように、「生き残る」はどこか?
この時期の対応と、今後の戦略にかかっているのかもしれません。

PS.
過去の、インテージの決算関連のエントリーはこちら↓。

インテージ決算2008.3

統計データの公開

統計データの二次利用に関するリリースが、2本発表されていますので、ご紹介しておきます。

◆総務省統計局

今月8日(2009/5/8)、総務省統計局から下記のリリースが発表されています。

統計利用の一層の拡大に向けて-匿名データの提供とオーダーメード集計
                                   (総務省統計局)

ただし、誰でもOKというわけではなく、「学術研究を行なう研究者」に対してという限定つきですが。

公開されるデータは、

・全国消費実態調査

平成元年、6年、11年、16年

・社会生活基本調査

平成3年、8年、13年

・就業構造基本調査

平成4年、9年、14年

・住宅・土地統計調査

平成5年、10年、15年

また、オーダーメイド集計に対応するデータは、

・国勢調査

平成2年、7年、12年、17年

です。

実際に対応を行うのは、統計センターになります。こちら↓を参照ください。

統計データアーカイブの運営(独立行政法人統計センター)

◆日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)

こちらは先月になりますが、JMRAからも同様の制度に関するリリースが発表されています。

「JMRA リサーチ・データ・アーカイブ」に関するお知らせ
                                           (JMRAリリース・2009/4/17)

サービス提供のHPはこちら↓。

JMRA-リサーチ・データ・アーカイブ(JMRA)

やはりこちらも、学術研究・教育限定ですし、提供範囲(概要のみ・集計表・データ等)もさまざまですが、JMRA会員社で行われている調査を知ることができるという点だけでも意義があるのかなと思います。さらに、データの再分析までできるデータが増えれば、簡単には収集できないデータも少なくないので、研究目的だけとはいえ大きな貢献を果たすのではないかと思います。

日本以外では、このようなデータの二次利用は可能だという話を聞いていましたが、やっと日本でも土壌ができてきたようです。これを最初の一歩として、データ利用環境がさらによくなり、研究の数や深さが増していけばよいなと思います。

PS.
関連して、本を一冊。
本屋さんに行くと平積みされているようですので、すでに読んだ方も多いと思いますが、↓の本が出ています(いまはやりの「○○力」がタイトルなのが、成功要因のひとつ?・・・)

内容は大きく3章構成で、1章は基礎編として世の中のさまざまなデータを例にデータの見方を解説、2章は中級編として平均、分散、正規分布、大数の法則など統計の基礎の説明、そして3章は上級編として過去データから未来を予測する方法を紹介しています。

本日紹介した統計局やJMRAのデータは研究者の利用を前提としていますが、研究者でなくても世の中にあふれているデータの見方を知っていると、社会の見方も変わってきます。こういう本が売れることは、とてもいいことですね。

不透明な時代を見抜く「統計思考力」 不透明な時代を見抜く「統計思考力」
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2009-04-15

GIS+ネットリサーチ

GIS+ネットリサーチ、親和性はかなり高いと思っていたのですが、これまで具体的なサービスはなかったのでしょうか・・・?(ググってみても、めぼしいものは発見できなかったので・・・)

以下のリリースが発表されていました。

アイブリッジ、地図情報と連動したエリアマーケティングリサーチサービス「GISネットリサーチ」を提供~地図情報と連動した、エリアマーケティングリサーチが可能に(NIKKEI NET・2009/5/11)

年齢や性別、住所などの登録属性で調査対象者を抽出するのは、どこでもできますが、

「円形領域」「道路領域」「線側領域」「自動領域(主商圏)」「区画領域・自由領域」の区分でリサーチ対象地域・対象者の抽出が可能となった

のが、GISならではでしょう。
ただ、この機能によって何ができるの?、どのようなメリットがあるの?、ということを説明できるかどうかが勝負になりそうですが。。。
(メリット訴求がきちんとできるかどうかが、新機能によるリサーチ商品についてまわる悩みです。それと、コストパフォーマンス・・・。
いまでさえ主流となったネットリサーチですが、最初のころはかなり苦労されたと思います。
そういえば、マクロミルは杉本氏が社長に復帰していますね。どなたかも指摘していましたが、ユニクロを想起させます。。。閑話休題・・・)

こちら↓は、GIS+ネットリサーチといえるのかどうか?・・・。
単に、GISにリサーチデータをリンクさせるだけ?、という解釈をしましたが、どうなのでしょう?

ネットリサーチとの組み合わせでGISによるデータ分析がより身近に
(ZDNET Japan・2009/4/21)

「だけ?」とは書きましたが、データの見える化という点では、かなり効果的です。
店舗の商圏などを示せたりすれば、結構面白いのでは?
(ただ、サンプル数がネックになりそうです。狭いエリアでのマッピングだと・・・)

そもそも・・・
「GISってなに?」ということを説明していませんでしたが・・・^^;
こちら↓のページがわりと専門的でしょうか?お国のHPなので、具体的な商品の紹介はありませんが、GIS関連の情報を得るには、よいサイトだと思いますので、ご紹介しておきます。

GISポータルサイト(地理空間情報活用推進会議)

(まぁ、いまではカーナビやgoogle mapが一般的になったので、イメージしやすいと思いますが。。。)

クラウドソーシング関連備忘録 (and more…)

クラウドソーシング関連の記事で、備忘録。
(日経BP社のHPは登録制になっていますので、未登録の方はご覧いただけない場合があります。無料で登録できると思いますので~ご確認ください~、ぜひ登録してご覧ください。)

◆今注目される「クラウドソーシング」ならばできること

日経ビジネスオンラインの記事から。

今注目される「クラウドソーシング」ならばできること~”個人発”から世界が変わる可能性(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/5/1)

クラウドソーシングについての、いま現在のひとつの整理かと思います。
あたりまえのことではありますが、クラウドソーシングも万能ではない。そこで、

それではクラウドソーシングを活用する際に必要な要因とは何だろうか。筆者が考える成功要因は、(1)参加者の量と質、(2)適切に設定された課題、(3)オープンな環境の整備、(4)インセンティブである。

という整理をしています。
(さらに、国家としてのイノベーション戦略まで話が及ぶのですが・・・)

あわせて、同シリーズの↓の記事もぜひ。
クラウドソーシングでは必ずケースとしてあげられる空想生活についてです。

「あるといいな」が形になるサイト~消費者のアイデアは無尽蔵の資源
(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/4/15)

◆誰でもメーカー

こちらは、「日経エレクトロニクス」の創刊1000号記念特集。
WEB上での特集ページが、こちら↓。

誰でもメーカー(Tech-On/日経BP社)

そして、記事の一部を紹介しているのが、こちら↓。

日経レクトロニクス2009年3月23日号
特集・誰でもメーカー ~User Generated Deviceが拓く新時代
(Tech-On/日経BP社)

日経エレクトロニクス2009年3月23日号
特集・誰でもメーカー ~消費者は商品開発者になれるか,押し寄せるユーザー参加型開発の波(Tech-On/日経BP社)

「UGD」という造語をつくっていますが、編集長のあいさつ文を紹介しておきます。(ちょっと長めの引用になりますが)

さて,1000号記念特集の内容です。エレクトロニクス業界は,これまで数多くのエンターテインメントを消費者に提供してきました。ラジオ,テレビ,オーディオ,携帯電話,ゲームなどなど・・・。その販売によって生まれた収益は研究開発の原資となり,新技術が次々と生まれました。大量生産した同じ仕様の機器をできるだけ多くのユーザーに届けることによって,エレクトロニクス業界は巨大な産業に成長したといえます。

 マス・マーケットに完成品を届ける――。この大量生産型ビジネスとは異なる潮流が今,デジタル家電などの世界に押し寄せようとしています。ユーザーが機器やサービスの開発に参加し,メーカーが提供するハードウエアの機能モジュールやソフトウエアなどを組み合わせて,自分仕様のデジタル機器を作り上げる動きです。本誌では,こうしたユーザー参加型の開発環境から生まれた機器を「UGD(user generated device)」と名付けました。

 UGDの発展を支えるのは,これまでのようなマス・マーケットではありません。開発したユーザーに共鳴できる人々が構成する無数のミニ・コミュニティが相手です。この変化が,従来の大量生産型ビジネスを揺さぶることになるのでは・・・。こういった視点から,今回の特集「誰でもメーカー~User Generated Deviceが拓く新時代~」をまとめました。
                                    (引用元はこちら

興味を持った方は、ぜひ本誌も読んでみてください。

◆で?

で、これらの記事をみて思い出したのが、少し前の日本マーケティング・リサーチ協会実施のセミナー。題して、「Web2.0とマーケティングリサーチ」。(2009年3月に実施されました。JMRAにしては挑戦的な内容でした^^;)

このセミナーで、㈱電通ネットイヤーアビーム代表取締役社長・及川直彦氏の講演タイトルが「Web2.0時代のマーケティング戦略」で、クラウドソーシングにも関連する内容でした。
(この時の講演内容のベースとなったと思われる論文が、日本マーケティング協会発行『マーケティング・ジャーナル』111号(2009年1月発行)に掲載されています。タイトルは、「デジタル情報技術がもたらした事業環境における新たな商品開発戦略~いわゆる「Web2.0」的な事業環境を概観し、それらの商品開発戦略への意味合いを探る~」です。今回の内容に興味を持った方は、こちらもぜひ。)

ここまで読んできて、クラウドソーシングなんて、リサーチと関係あるの?と思う方。マーケティング・リサーチ協会が、こんなセミナーを実施しているんだから、あるんですよ。いつまでも、コンベンショナルなリサーチだけでいいの?クライアントは、こんなに進んでますよ、という意味で。もしもクラウドソーシングがあたりまえになったとしたら、外部機関としてのリサーチ会社の役割はどうなるのか?、ということを考えてしまいます・・・。

及川さんは講演の中で、キーワードについて「この言葉、知っていますか?」とたびたび問われていました。リサーチ関連のワードだけでなく、こういうワードを知っていると知らないとでは、いま起こっている現象についての理解が違うんだろうなと感じた次第です。
たとえば、こんな↓ワードです(今、資料を見直して気になったワードをあげています)。
どれくらい知ってますか?気になる方は、ぜひ自分で調べてみてください。

「Web2.0」「集合知」「マッシュアップ」「ユーザ・エクスペリエンス」「Web3.0」
「コンテクスト」「行動ログ」「SECIモデル」「情報の粘着性」「レコメンデーション」

(このblogでの過去の関連記事は、こちら↓。あわせてどうぞ。)

◆おまけ

クラウドソーシングではないですが、日経BPでの記事を拾っておきます。
(別エントリーの方がよかったかな・・・)

エスノとまでいえるかどうかですが、観察調査からの展開事例です。

キリンビバレッジ・店頭で顧客の検討状況を観察 ~目を引く販促手法を特定し、売り場作りに反映(IT-Pro/日経BP社2009/4/10)

こちらは、広~い意味ではクラウドになるのかな?。。。

三菱地所、無印良品仕様のマンション販売 ~良品計画のサイトで4万3000人の声を収集(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/5/8)

こちらは、前にも記事があったような気が・・・。ニューロ系の事例です。

カネボウ化粧品、化粧と女性心理の関係性を解明 ~脳科学を応用した「ニューロマーケティング」を模索(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/4/24)

そして、こちらは個人的なメモで(みなさんも、興味あると思いますが・・・)

徹底解説!行動ターゲティング(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/3~4)