月別アーカイブ: 2009年3月

日本版顧客満足度指数(日本版CSI)モデル

新聞で記事を見て、あわててチェック。
(朝日新聞では2009/3/17の経済面。たった25行のべた記事?・・・)

しかし、具体的な内容の発表会(シンポジウム)は、すでに16日に終了していました。
(そういえば以前、朝野先生(首都大学東京大学院)から、このお話をうかがっていたことを思い出す。もっと早くからウオッチしておけばよかったと後悔・・・)

なので、ここではWEB上で集められる資料を紹介しておきます。
(もしも、もっと具体的な内容についてご存知の方がいらっしゃいましたら、参考HPなどご紹介いただけるとうれしいです。)

サービス業に関わる方は、確認しておいた方がいいかと思います。

◆サービス産業生産性協議会HP

まずは、発表元から。

サービス産業生産性協議会のリリースのページ

ここを見ると、今回の「日本版顧客満足度指数(日本版CSI)モデル」の特徴として、つぎの3つをあげています。

1、  消費者の購買行動に共通する心の動きをモデル化したもので、サービス産業全体を業種横断的に比較ができます
2、  顧客満足度だけでなく、満足および不満足にいたる原因と、満足および不満足だった結果としてとるであろう行動までも分析できる因果モデルです。
3、  ヘビーユーザーだけでなくライトユーザーも含むサービス利用者の全体像を明らかにするために、サービスの利用経験者から一定数の信頼できるデータをとっています。

記者発表資料のPDFで概要はわかるんですけど、詳細はちょっとわからない感じ。

◆シンポジウムに参加された方のblog

そこで、実際にシンポジウムに参加された方のblogを紹介。

日本版CSI(顧客満足度指数) (「調査マンの独り言」2009/3/18)

詳しい内容は直接ご覧いただくとして、

ただ、業界横並びの思想は前世紀的な古い考え方です。企業の戦略を考える材料としては、もう少し先を見た独自性のある観点がないと、情報としての価値は薄いようにも感じます。

という感想は同意。ただ、つぎの企業担当者のコメントも、またなるほどと思わされる。。。

この手の話はコンサルから嫌ほど売込みがある。さらに、マスコミのランキングに翻弄されたうえに、社内からもいろいろ言われて、ウンザリするといった本音の話が垣間見えました。
こういう事から、ある程度業界スタンダード的なものが合った方が、担当者の負担低減にも繋がると言うこともあろうかと思います。

これに近い話は、実はメーカーとお仕事をしているときに聞いたことがありました。
要は使い方。調査マンさんおっしゃるように、この指標は、行政機関やマスコミなどに積極的に利用していただいて、企業さんにはこの指標は現状把握のツールのひとつとしていただきながら、戦略的な課題解決のためには、独自のリサーチをしていただけるとよいかと^^;。

◆座長である小川先生(法政大学大学院)のblog

つぎに、開発プロジェクトの座長である小川孔輔先生(法政大学大学院)のblogから。
ここでは、狙いと意義について知ることができます。

日本版CSI(顧客満足度指数)開発の現在 (「Professor Ogawa」2008/7/26)

こちらで、ポイントのひとつである「業界横断」の狙いをつぎのように説明しています。

「携帯電話に支払うお金が増えたので、旅行に行かなくなった/本を買わなくなった」などと良く言われます。これは、個々のお客様が「同一業種内」ばかりで比べているのではなく、「自分が接している様々な商品・サービス」を比べて選択をしていることを示しています。「うちの業界の中では評判が良い方なんだけど、業界全体の調子は良くないなあ」というような業種・業界がたくさんあるのですが、それって「自分の業界だけを見ている内弁慶」になってしまっていて、「お客様の心」や「お客様の気持ち」にまで踏み込んでいないから起きてしまっていると考えられます。

業界内でよい評価だとしても、他業界との相対的な比較でその業界のポジションが低ければ、ずるずると落ち込んでいく可能性がある。あるいは、これまでの業界基準とはまったく異なるサービス水準で参入されたらどうなるか、ということですね。
(なんか、身につまされる話でもあるような・・・。どうです?調査業界は。今回はBtoBは対象外かもしれませんが。)

また、つぎの記事では、そもそもの経緯を垣間みることができます。

「日本版顧客満足度指数の構築を」連載:続・サービス産業の生産性向上7
(「Professor Ogawa」2008/12/21)

そして、パイロット調査の結果についてのコメント。

日本版顧客満足度調査(JCSIの開発を終えて) (「Professor Ogawa」2009/3/6)

ここをみると、対象は「15業種や約180社(各300サンプル、全国調査)」のようです。
(実査はどこがやったんだろう、ネット調査みたいだけど。と、ちょっと下世話な興味^^;)

◆関連本

本題は以上ですが、ここでサービスや顧客満足関連の本を。

実務で顧客満足度調査をやっていると、たびたび悩ましい結果に出くわします。そのひとつの側面について言及しつつ、サービスについて総括的に整理しているのが、この↓本です。
副題にある「顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント」というフレーズは、まさに!と思います。この点を無視して、満足度だけを単純に比較しても・・・、だと思います。

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2009-01-17

サービスに関するものではないですが、「顧客満足度」といえば、J.D.パワー社。広告でよく登場する「NO1マーク」は、この会社の調査結果であることが多いです。
そのJ.D.パワー社からの本が、こちら↓。宣伝っぽい側面も多分にありますが、顧客満足測定の本家・本元でもあるので、さまざまな事例を示しながらCSを紹介できるのが強み。

J.D.パワー 顧客満足のすべて J.D.パワー 顧客満足のすべて
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2006-08-25

いまでは古典になってしまいますが、個人的に「サービスとは」を考えるフレームを与えてくれたのが、この↓本。「真実の瞬間」「サービス・サイクル」「サービス・トライアングル」などなど、サービスの基本を理解するには良書だと思うのですが、どうも絶版のよう。。。おしい。(中古はあるようです)

サービス・マネジメント サービス・マネジメント
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2003-04

◆さらに蛇足ですが

日本版CSIから離れてしまうのですが、もしかしたら、こちらの方に興味がある方が多いかもしれませんので。。。

今回紹介した「サービス産業生産性協議会」のHPはお勧めです。とくに、

専門委員会のページ (サービス産業生産性協議会)

の「科学的・工学的アプローチ委員会」の議事要旨。各回とも事例報告が行われ、その資料PDFがあるのですが、これがなかなか。

たとえば、2009年2月27日の回は、最近エスノグラフィの事例でよくお見かけする大阪ガスの方が、「サービスサイエンス 行動観察技術のビジネスへの応用」と題して事例報告をしています。

科学的・工学的アプローチ委員会(第4回)議事要旨 (サービス産業生産性協議会

他にもいくつかの事例をみることもできますので、丹念に追ってみてください。(平成19年版もありますので、お見逃しなく)

『R25のつくりかた』

「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ) 「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)
価格:¥ 893(税込)
発売日:2009-02

(すでに出版から1月くらい経っているようなので、読まれた方も多いかもしれませんが。。。)

創刊当時(もう4年半も経つんですね・・・)、大きな話題を呼び、多くの講演やセミナーが組まれたフリーマガジン「R25」。その講演の内容が、やっと(?)本となって出版されました。
書かれている内容は、著者自身が言っているように当時の講演で語られていた内容ですが、再読してみると、やはりいろいろなきづきを与えてくれるのではないでしょうか。
当時、講演を聞かれた方も、もう一度おさらいのつもりで読んでみても損はないと思います(新書ですし・・・)。

(このblogでも、藤井氏のセミナーの内容を紹介しています。こちら↓)

リサーチをきちんと使う(2006/12/2エントリー)

もくじは、つぎのようになっています。

第1章 少人数の組織で「業界常識」に立ち向かう
第2章 M1層は本音を語ってくれない
第3章 M1層に合わせた記事づくり&配布作戦
第4章 世の中のちょとだけ先を行く発想術
第5章 M1世代とM1商材を結びつける
第6章 さらにビジネスを広げるために

とくに、リサーチに関係するのは2章です。
「R25」のターゲットであるM1層のインサイトを明らかにするために、彼らがどのようなリサーチを行なったのか、ぜひ読んでみてください。調査・リサーチのほんとうの意味、そしてインサイトに迫るには、上辺だけの、通り一遍のリサーチでは通用しないことも、わかってくると思います。

ただ、この本をこのようなリサーチ活用の視点からだけ読むのはもったいない。とくに、調査会社に所属しているリサーチャーの方は、ぜひ一読を。
なぜなら、調査会社所属のリサーチャーは自分たちが取り組んだリサーチがクライアントでどのように活用されるのかがよくわからない、というジレンマを感じることがあります。本書を読むと、この点が少しはわかると思います。クライアントでプロジェクトがどのように進むのか、その中でリサーチがどのようなときに使われるのか、結果がどのように活用(解釈かな?)されているのか、などがなんとなく感じることができると思います。
実際にクライアントのプロジェクトの全過程に関与していくことは、ほとんど不可能でしょう。なので、このような本を読むことで擬似体験をしておくことは、クライアントがどのようなことを望んでいるのか、どのようなことを考えているのかということを理解する一助になると思います。
(ただし、すべてのクライアントが、同じレベルでリサーチを理解・活用しているというわけではない、ということも忘れずに。)

リサーチャーに限らず、読む人の立場や問題意識によって、いろいろに読むことができる本だと思います。そういう意味でも、おすすめです。
新書(≒安い)ですし、語り口調なので読みやすく、90分くらいで読むことができる内容ですので、一度手に取ってみてください。

PS.
同じリクルートの方の著書ですが、こちら↓の本もあわてどうぞ。
リクルート流発想術&広い意味でのリサーチの勘どころのようなものを感じ取れる内容です。
(こちらの本も、本blogで以前紹介しています。あわせて、どうぞ→ こちら )

リクルート「創刊男」の大ヒット発想術 (日経ビジネス人文庫) リクルート「創刊男」の大ヒット発想術 (日経ビジネス人文庫)
価格:¥ 750(税込)
発売日:2006-08

【2009.6.25追記】
「R25」に関して、↓のような記事も。

解体!R25――ビジネスの裏側、教えます。社内では意外に評価されていない!?
(東洋経済:2009.6.24)

クラウド、エスノ、ペルソナ~最近のWEB記事から

備忘録として、この1ヶ月くらいの間に見つけたWEB記事をご紹介。

◆クラウドソーシング

japan.internet.comの記事から。
この1ヶ月くらいで立て続けに、クラウドソーシング関連の記事が連載されています。
(以下で紹介するリンクの他にも、関連記事はありますので、そちらもご覧ください。)

2つめはDellの事例、3番目はこのblogでも書籍を紹介したP&Gの事例(→こちら)。

まずは、「実は意味を知らないビジネス用語、第1位の「クラウド」って何?」から読んでみてください。クラウドソーシングとは何か?、誤った認識とは?、限界は?、危険性は?、などがまとめられています。たとえば、つぎの一文のような。

一方で、クラウド・ソーシングに過度の期待をするケースもある。クラウド・ソーシングのためのオンラインコミュニティサイトを作れば、何でも自由自在にソーシングができると考える人もいる。ボタンを押せば何でも自動的に出てくる”打ち出の小づち”といった具合である。

世の中には「打ち出の小づち」は、ないですよね。。。
(そういえば、多変量解析も「打ち出の小づち」のように思われている節がありますが、そんなことはなく・・・。"Garbage in,Garbage out" 「ゴミを入れても、ゴミしか出ない」のです。)

◆エスノグラフィ

こちらは、WEB担当者Forumでの新たな連載のよう。
エスノグラフィに限らず、ユーザビリティ関連の内容のようですが、2回目のこの記事がエスノグラフィに関連した内容。

インタビュー調査の極意「ユーザーに弟子入りしよう」
(Web担当者Forum:2009/2/25)

内容はぜひ一読を。つぎの一文などは同意できます。(ちょっと言いすぎかも、ですが)

そして設計者は「ユーザーの声」ではなく「ユーザーの体験」を分析するべきだ。ユーザーの声は、すでにユーザー自身が分析した結果なので、もはやあらたな発見はない。

インタビューの例も、少しですが紹介されていますので、インタビューの経験がまったくない方もわかりやすいと思います。

(この記事に出てくる、「コンテキスト調査法」という言葉。これ、私がいま考えているリサーチのキーワードのど真ん中です。ただ、ここでは新たなインタビュー手法という狭い意味で使っているようなので、その点が異なりますが。ひとりごとでした。。。)

◆ペルソナ

日経ビジネスONLINEで、立て続けに「ペルソナ」関連の記事が。(どうやら、日経情報ストラテジーの3月号で、ペルソナ手法を紹介したようです)

実は、気になりながらもこれまで紹介していなかったのが、この「ペルソナ」です。ずいぶん前に本も出ていたし、雑誌でも特集記事があったし、ワールド・ビジネス・サテライト(テレビ東京)などテレビでも紹介されているのを見たこともあります。
しかし、こちらの理解が十分でなく、手法としての新しさがわからないというのが正直な感想でした。STPとどう違う?という感じで。。。

しかし、こちら↓のblogを読んで、納得。なるほど。。。
まずは、こちらの記事を読んで、ペルソナについての理解を。

マーケティングの顧客セグメントとペルソナ(DESIGN IT! we/LOVEさんのblog)

このblog「DESIGN IT! we/LOVE」は、他にもおもしろい&ためになるエントリーが多いので、お勧めのblogです。とくに、デザイン関係の方にお勧め。(ちょっと、エントリーが長いのが難ですが・・・)
まずは、「ペルソナ」のタグがついているエントリーから読んでみるのがいいかも。

「ペルソナ」についての本は、まず、この2冊でしょうか。

ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2007-03-16

ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2008-05-30

(2冊目の「ペルソナ作って、それからどうするの?」の著者は、DESIGN IT! we/LOVEの管理人です)