林さんシリーズ」カテゴリーアーカイブ

【Mrs.H】「インタビュー」ということ

久しぶりの、林さんからの寄稿です。
「インタビュー」について思うことを、述べられています。

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 人と直接接して、言葉を聴き、その態度、表情を観察することは相手を理解するために極めて重要であり、アンケート(unquёt→フランス語:一定の様式で行う問い合わせ。意見調査)では分からない生活者の微妙な意識や行動が見えてくる。
 寺子屋でも紹介された、福井遥子さんの『インタビュー調査の進めかた』(→ こちら です)は、「そうそう、そうなのよ」と思う事例がたくさん書いてあり、実に興味深い。それに関連して、とくに定性調査のインタビュアーがすることに関して、基本に戻って再確認しておきたい。

◆Interviewerと司会者は違う
 Interviewという言葉を語源辞典で調べると、「interは、相互にという意味の接頭語」、「viewは、見る/眺めるの意味を持つ動詞」で、互いに見るの意味から面接や対談になり、取材で人に会って話しを聞く(聴く)ことを意味するようになったと書いてある。
 インタビュールームの備品の中に、司会者という名札立てがあって、時には、ご丁寧に「司会者:林」と用意して下さっているところもある。申し訳ないが、私は、それを席から引いて備品用の場所に返している。私は、インタビュアーであるが司会者ではないからである。書くのなら、名前だけにして欲しい。
 ここで、司会者を広辞苑で引いてみると「会の進行を司る人」、英和辞典で引くと「The chair/the president」など、会を仕切る人のような意味がある。ここには、Iinter&Viewという役目は含まれていない。
 つまり、インタビュアーと司会者は、その役割が異なっている。
 インタビュアーをモデレーターと呼んでいるところもあるが、この言葉には調停/調節役という意味があり、反応を抑えるといったニュアンスが含まれていて、少しは仕切り的な役割があるが、それでも司会者とは違う。

◆誤解があるのかもしれない
 司会者でもインタビュアーでも、呼び名そのものは大した問題ではない。しかし、その役割と心構えは異なるから、パーソナルインタビューやグループインビューの発注、受注側共に、台本(フロー)どおりに上手に質問して、会を仕切る「司会者」を期待しているとすると、様々な問題が発生する危険性がある。
 その問題とは、対象者の方から出てくる言葉の意味(真意)の掘り下げや因果関係の追及不足で、表層的に出てくる言葉だけが次のステップの指針となり、調査結果と実際の市場が食い違うことにある。情報の取り方も、分析も、奥行きが不足しているからこういうことが起こる。そして、定性調査は信頼できないとか、定量調査との結果が違うとかいう声を聞くと、実に腹だたしい。
 人には奥行きがあって、表面だけを見ていてもその本質は分からない。そして、人は簡単に、なおかつ的確に自分の気持ちを表現できないし、受ける相手もそれを完全に理解できない。そして、その奥の方にあることも、日常の行動に大きく関係しているから、無視できない。(言葉数が多いということと、自分の気持ちが表現できているということは、必ずしも一致しないので要注意)。
 だから、定性調査ではインタビューという手法が取り入れられていて、“Inter”や“View”もしないと、インタビュアーという仕事は成立しない。
(ただ、インタビュアーはもっといろいろなことをしますけど)

◆相手の気持ちを理解しようとして、耳と心を傾ける
 心理カウンセラーは「訊く、聞く、聴く」を使い分けている。そして、最後の耳と心を傾けて「聴く」が最も重要な役割と位置づけている。定性調査のインタビュアーも同じである。現実問題としては、どうも質問することが重視されている傾向があり、上手に質問すれば、対象者は気持ちを容易に吐露すると誤解している様子がある。
 インタビューで言葉が出ないと、手を換え品を変え質問攻撃をすると、相手は固く押し黙るか、どうでもいい言葉を返してきて蟻地獄に落ちる。私も初期の頃、質問大攻勢を試みて大失敗をしている。また、何とか答えを引き出そうとして「こういう意味ですね/こういうことを言いたかったんですね」と有無を言わせずに整理してしまって、相手の真意に迫っていないという失態もしている。
 待つとか、受ける、突く(プローブ)ということをする余裕が無かった時代の手痛い思い出である。

◆今、インタビューアーに求められているのは、マーケティングリサーチャーとしての素養
 上手に質問できること、その場を仕切れることは前提条件であり、司会者の役割も当然求められている。
 ただし、定性調査のインタビュアーはこれだけでは不十分であり、調査課題を頭に叩き込んでおいて、生活者の言葉や反応の奥を、絡んだ糸を紡ぐにように丁寧に引き出していき、その因果関係をみつけて、調査課題に繋げることができないと人の心の奥には迫れない。「定性調査のインタビュアーを養成しようと思ったら、企画から」というのが私の持論であり、企画ができれば、インタビューも分析もできる。
 企画書を書くことだけが企画ではないが、少なくとも、企画の中の目的と課題と仮説(アクションスタンダートも含む)だけは、理解しておかないと定性調査のインタビュアーはできない。
「この通りに訊いて下さい」というインタビューフローだけでは、表層的な言葉は取れても、心の中に潜む何かには迫れないし、その因果関係も解明できない。

                                              林美和子

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今回のお話も、リサーチャーにとって大切な提言を含んでいると思います。

少なくとも、企画の中の目的と課題と仮説(アクションスタンダートも含む)だけは、理解しておかないと定性調査のインタビュアーはできない。

これは、まったく同意です。
そしてこの視点は、定性調査、インタビュアーに限ったことではないでしょう。定量調査においても、同じでしょう。
リサーチをする目的、課題、仮説を理解せずに、どうして調査票が作れるのか、集計ができるのか、あまつさえ分析ができるのか、これは私もときどき感じることです。

そして、もうひとつ気になった一文がありました。

心理カウンセラーは「訊く、聞く、聴く」を使い分けている

「訊く」と「聞く」と「聴く」。この違いも意識したいポイントです。
ちょうど、「ask」と「hear」と「listen」の違いはなんだろう?、ということを考えていたのですが、合い通ずるものがありますね。

※「askingからlisteningへ」ということについては、experidgeの岸川さんが連載で紹介されていますので、こちらも参考にしてください。

  第1回がこちら→ The ARF Listening Playbookの紹介 (1)
                                   (Digital Consumer Planner’s Blog 2010/2/8) 

【Mrs.H】行動観察

久しぶりに、林さんに寄稿いただきました。
テーマは、「行動観察」についてです。

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 社団法人日本マーケティングリサーチ協会の機関紙『Marketing Reseacher 110号』の特集は、今、脚光を浴びている行動観察であり、各分野の経験者の方が具体例とその成果をあげている。中でも、TOTO株式会社の江藤祐子さんのお書きになった、UD(ユニバーサル・デザイン)サイクルの実例は興味深い。行動観察を商品開発に有効活用している実例が分かりやすく紹介されている。
 また過去の『Marketing Reseacher 101号』では、松下電器産業(現パナソニック)のユーザビリティ実践チームの水谷美香さんが、機器の操作性に関するユーザーの観察調査の例を紹介されていて、メーカーの方達が商品開発の段階で行動観察手法に積極的に取り組んでいらっしゃることが、如実にわかる。

 大手のトイレタリーメーカーでは、本社内に洗面台やシャワールームが備えてあり、生活者を招いて、洗髪や髪の手入れ、洗顔、スキンケアをしてもらう。その行動を観察したり、インタビューすることが日常的に行われ、商品開発の全てのステップで、この機能が活用されている。家電、食品メーカー等々、研究開発部門の担当者が生活者を知るために、行動観察調査を有効活用している。
 商品開発の初期の段階で、生活者ニーズを探すためにシニアの家庭に訪問して、行動観察やインタビューをし、さらにお買いものに同行する調査をさせていただいたことがある。その時担当だった研究開発の女性は、「いつも、あの時の対象者の方の立場に立ってものを考えている」と言って下さった。また、大手の流通のシンクタンクに入社した新人マーケッターは、オーナーの指導で、毎朝、ターミナル駅で生活者を観察し、そこでの気づきをレポートにすることを繰り返したという話を聞いたことがある。彼女は今、広告代理店のアカウントプランナーとして活躍している。

 マーケティングリサーチ業界では、「今こそ行動観察」だと、あたかも新しい手法のように言っているが、行動観察は市場調査の原点であり、アンケートやインタビュー法は、行動観察だけでは分からないことを解明するために導入された調査手法だと私は解釈していた。
 過去と比較すると、得られた情報のデータ化、分析の処理スピードや精度は上がっている。また、システムも整備され、行動観察を調査の中に取り入れやすくなったのは確かである。何でもアンケートやインタビユーで生活者に聞いて答えを出そうとしていたことがそもそも片手落ちで、今、日本のリサーチ業界でも、行動観察が見直されたことは、リサーチャーのはしくれとして大賛成である。
 携帯電話が普及する以前の調査で、「1週間にその家でかけた電話の本数」を思い出させた結果と、実際にかけた数には大きな差異があった。旦那が内緒で、子供が深夜にこっそり長電話をするような行為を差し引いても、実際にカウントした数の方が多かった。生活者が嘘をついているというのは被害妄想以外の何物でもなく、実際に人の記憶なんてそんなものである。誤解がないように言っておくが、だから、アンケートやインタビュー調査はあてにならない、行動観察こそ真実だと言うことではない。そもそも、その手法の特性を生かした使い分けが必要であり、新手法が全てを解決してくれるという妄想は抱かない方がいい。

 面接方式のインタビュー調査では、その場の生活者の態度、表情、そして語調も分析の対象であり、インタビュアーも分析者も、音として発せられる言葉以外の反応も重視している。冷静な観察者であることは、インタビュアーや分析者の役割のひとつであり、グループインタビューをバックで観察していたマーケッターが対象者のちょっとした仕種を見逃さなかったことで、パッケージ機能の些細でありながら重大な問題点を発見し、発売前に解決したケースもある。
 「Marketing Reseacher 110号」の中の、TOTOの内藤さんの項のタイトルは、観察者の「気づき」に着目したモノづくりである。また、同号の「観察工学の製品開発への展開」で和歌山大学の山岡先生は、行動観察をする人のセンスという言葉を使っていらっしゃる。気づきもセンスも人間がしなければならない。特に定性的観点での観察調査はそれを生かすも殺すも、リサーチャーやマーケッターの力量に掛っているということではないだろうか。

 ここが、一番難しい。                               

                                                 林美和子

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今回も、林さんのおっしゃる内容に、かなり同意です。
どんな手法も、「魔法の杖」でも「打出の小槌」でもありません。それぞれにメリットとデメリットがあり、その特質を理解した上で使うからこそ、意味があるのです。そして、「使う人」次第でもあります。
結局は、「リサーチのテーマと目的」に沿った手法を、しかるべきが人が実施しないと、どんな手法であっても効果を発揮することはできないのです。

少し視点が変わるかもしれませんが、日頃感じていることを・・・。
日本人の特質なのかどうかわかりませんが、経営手法などにしても、とかくその時に"流行っている"(としか言いようがないと思うのですけど)手法に、誰もがわっと飛びついてしまう傾向があるように思います。少し前では、「成果主義」などは、その典型でしょう。
どんな手法にも、メリット、デメリットがありますし、その背景を十分理解せずに行うと、「百害あって一利なし」だと思います。(このblogでも、いろいろ新しい動向を紹介していますが、実はこの点は、いつも気になっていました)
ですから、どんな手法でも「いまの流行はこれ」といって、その上辺だけをまねすることなく、しっかりと背景と内容を理解した上で、実施してほしいと思っています。

ということで、林さんの寄稿「行動観察」に関連して紹介しておきたい資料をいくつか。

まず、『マーケティング・リサーチャー』誌。
これは、社団法人マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が発行している機関誌です。ここ数年、意欲的なテーマもありますし、リサーチに携わる方は読むべき雑誌だと思います。
(JMRA会員社には必ず本誌があるはずです、なかなか社内を回らないかもしれないですけど。。。見たことがない方は、総務あたりに聞いてみては?)

今回のテーマである110号のもくじは、こちら ↓ 。

『マーケティング・リサーチャー110号
 特集:なぜ、生活者が見えにくいのか ―今、脚光を浴びる行動観察』
(JMRA HP)

このページの下に、バックナンバーの案内もありますので、あわせてどうぞ。
ちなみに、林さん紹介の101号のもくじはこちら ↓ 。

『マーケティング・リサーチャー101号
 特集:言葉を介さない調査の最前線-なぜ「言葉を介さない調査」なのか?』
(JMRA HP)

(そういえば、『マーケティング・リサーチャー』の記事が、日経テレコンで検索ができるようになったはずです。記事単位での購入ができると思いますので、こちらでもどうぞ)

そして、今号で特集の総論を執筆されている山岡先生の本は、こちら ↓ 。
特集を読んで興味をもたれた方は、こちらもあわせて読んでみては?

ヒット商品を生む 観察工学 -これからのSE,開発・企画者へ- ヒット商品を生む 観察工学 -これからのSE,開発・企画者へ-
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発売日:2008-06-10

【Ms.H】市場調査の価値を認めてもらおう

林さんからの寄稿です。(このシリーズの背景は、→こちら

今回は、マーケティングリサーチ、市場調査をクライアントに提案し、その価値を認められたエピソード。
リサーチャーへの応援歌でもあります。

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◆プランナーPMさんの悩み
 プランナーであるMさん(以下、PMさん)は、ブランド立ち上げに際し、コンセプトを作ったり、イベントの企画をしたりと、クライアントと生活者の良好な関係を作るための企画提案、サポートを手がけている。彼女は、大手の調査会社から流通系のシンクタンクを経て、今はコンサルタント会社に、という経歴の持ち主。なので、市場調査の結果をマーケティングに有効活用して成功した体験がいくつもある。
 プランニングという仕事は、常に生活者を知っていなければならない。素晴らしい創造があっても、それが生活者の心に響かないと単なる自己満足に終わってしまう。とくに、人も世相も変化している今は、人の心の襞、世の中の空気を読めないとプランナーという仕事は成立しない。
 しかし最近では、提案に際して市場調査の費用を載せることが難しくなってきていると感じている。どうしたら生活者を知るための市場調査を含めた提案ができるのか、このことを試行錯誤中である。

 神戸の高校生がインフルエンザに集団感染したニュースが流れたその日、PMさんから私に、神戸のファッションビルに関する調査の見積り依頼があった。知名度の高いコンセプトショップの神戸出店で、場所も建物も決まっていて、プレス発表も終わっているとのこと。事は順調に進み、そろそろバイヤーが活動しはじめる時期に入って、担当者が「今まで、なんの調査もして来なかったが、生活者データを持っていないのは不味いのではないか」ということで、知り合いのPMさんに打診があったとのことであった。

 PMさんとのやりとりで、この段階では受容性調査でも、需要予測調査でもなく、ましてやコンセプトショップだから、今更ビジョンの構築でもないことを、お互いに確認。となると、神戸のその地区での取り扱い商品やサービス提供等、マーチャンダイジングのヒントを探ることが目的となる。そして、そのキーワードを出せば、クライアントの要望に答えられる筈と、PMさんの調査の視点は絞られた。
 結果、関西地区のターゲツト層対象のインターネット調査と、張り付き調査(エスノグラフィー)、さらに、ある程度のキーワードが出てきた後でそれを検証するグループインタビューの見積りを作って、PMさんに提出した。

◆生の情報をくれたY氏の鋭い観察力
 その時ふっと思いついたのが、定性調査に関心を示し始めた私のクライアント、神戸在住で30代前半、男性のY氏である。ダメもとで、「神戸の街と人を知りたがっているプランナーがいるけど、時間がある時にちょっと様子を教えて欲しい/まずは、その彼女にアドレスを教えていいか」というメールを出した。その時は、ショップ名も場所も明かさなかった。しかし、Y氏の反応は度肝を抜くほど早く、鋭いものだった。

 今度神戸に進出するショップがあることや、どこに出店するかを知っていて、仲間と楽しみにしていること、どんな期待感があるかということ、さらにその地域の人通りの傾向(年齢、性別に加えて、どんな嗜好の人がどの程度歩いている)も克明に知らせてくれた。
 その中で、「神戸の人は、大阪と同じに括られるのを嫌う-大阪の人と一緒にせんといて下さいと反論する」、「某高級ブランドの販売をしている知人が、神戸店の接客単価は大阪店の倍近くあると言っていた」、「神戸はエリアによって客層がクッキリと分かれている、東京に例えると、トアウェスト=裏原宿、居留地=青山骨董通り、磯上・栄町エリア=下北沢」という3つの情報が、私達にピンと響いた。

 クライアントも私達も東京にいて、東京を基準にものごとを考えていることを見通しての文面であり、エスノグラフィーとはこういう視点でものを見るべきということを教えてくれるような内容だった。後に、Y氏は「思いついたことをありのままに伝え過ぎて、精査しなかったことを反省している」というメールをくれた。でも、この段階での彼の役割は思い付きをありのまま伝えることであり、その情報を、理性的とか、普遍的でスクリーニングしてしまうと、大切な気付きが消される危険性が高い。情報の選別はマーケッターやプランナーがやればいい。
 
◆クライアントの気持ちが動いた
 PMさんは、Y氏の好意に甘えて、できる限りオープンデータとつき合わせて課題と仮説を整理、企画書に仕立て上げ、調査見積りと共に、クライアントに企画提案をした。その時に、クライアント担当責任者の、市場調査に対する興味・関心が俄然上った感触を、PMさんは掴んだ。
 私は、あくまでサポートをしただけなので、その後の調査と結果に関しては触れないが、中間報告の段階で、クライアントのメンバーが徐々に調査に関心を示し始めたこと、張り付き調査への同行希望も出たそうである。

◆市場調査の価値が認められた
 実施が全て完了して報告書を仕上げたPMさんは、神戸の人と接しないと絶対にわからなかったことを、クライアントが活用できるような10のキーワードにして、神戸店立ち上げのプロジェクトメンバー全員を前にプレゼンテーションをした。
 その時の参加者の真剣さは、最初のオリエンテーションの時とは比べものにならないほど熱心で、主要メンバーから「この調査、やってよかった」という声が出た。そして次の週に、立ち上げのメンバー全員が神戸の現地調査に出向き、街を歩き、人々を観察し周辺のショップを見て歩くという行動を取り、バイヤー達もこの街でのビジネスへの挑戦の意欲が盛り上った。
 また、PMさんは、Y氏と私に、日本での次の出店の際には、最初から調査予算を取るとの言葉を貰ったと報告してくれた。PMさんの、調査の価値をクライアントに説得したいという願いは叶えられたし、どうしたら市場調査を含めたプランニングの費用が取れるかの答えも少し出た。とくに「大阪の人と一緒にせんといて下さい」という神戸人のリアルな言葉はクライアントの心を動かした。

 プランニングのための調査にお金を払わないのは、市場調査というと「多くの人が〇〇のブランドの買い物をしました。だから、〇〇ブランドを入れましょう」とか、「私達が考えた3案の中でP案の支持が高かったので、P案をコンセプトに採用しました」といった結果の使い方しか想像できないからである。
 また、生活者の生活意識や態度から気付きを得ることの必要性を頭では認めていても、そのアィディアを突き詰めて、ビジョンやコンセプトに展開するよりも先に、もの作りや売りに走る傾向があり、調査データが有効活用できないからでもある。「急がば回れ」は、頭では分かっていても、実行に移すのは難しい。
 今回は休日にカフェで街の人達の写真撮影までしてくれた観察眼の鋭いY氏からの情報を取っ掛かりとして、PMさんの企画提案でクライアントを引き付けたことの成功例であり、謝礼は勿論のこと、お茶もアルコールも食事もご馳走していないY氏と、それを仮説として、課題をしっかり立てたPMさんの力量に起因している。
 Y氏ほどの鋭い情報を寄せてくれる人は少ないが、インターネット、知人、街等々、予備情報の収集先は山ほどあり、それによる課題と仮説の構築はクライアントに調査の必要性を伝えるために、必ず役に立つことを証明してくれたケースとして、私は是非ともここで紹介したいと思った。

◆リサーチャーも企画段階での提案力を磨こう
 リサーチャーも、クライアントが発注するひとつの調査を最大限に活用してもらうための企画提案にもっと力を注いで欲しい。エビデンス主目的の市場調査でも、その気で向かえば、生活者を知ることができる。エビデンスも得られて、生活者も知って、それが刺激となって送り手に気付きがあれば、一挙両得である。とにかく調査をしないと周囲が納得しないというオーダーでも、視点を変えれば生活者の真意を知る調査データになる。

 今まさに世相も人も変り行く時代に突入した。
 データを集めて整理して、過去に比較して良かったの悪かったのを見るだけでは、人や世相の変化に乗り遅れる。リサーチャーもテーマに即した、調査企画提案、実施、分析をフレキシブルに考えて、提案していく力をつけて行かなければならない。

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【owl のつぶやき】

今回のテーマである、調査企画書。
実は、本来の「企画書」を書いているリサーチャーは少ないのでは?、と思っています。
その多くは、調査仕様書あるいは設計書、ではないでしょうか。
クライアントのオリエンを、そのまま整理しただけの内容。調査の目的も、課題も、クライアントが言ったままを、そのまま書いているだけ。確かに、具体的な実査の方法は考えている(?)わけだから、それでも企画書といっていいとは思いますが。。。

本来の調査企画とは、林さんのストーリーにあるように、テーマの周辺情報を自分でも集め、整理し、考え、ある程度の仮説をもちつつ、クライアントがほんとうに必要とするアウトプットを想定し、そのための調査の道筋と内容(いわゆる設計)を決めていくことではないでしょうか。そして、この調査をすることで、こんなアウトプットが得られ、このように活用できる、だからこの調査が必要だ、ということを提案することだと思っています。
(そして、この企画のために必要なのは、やはり「現場観 and/or 感 and/or 勘」。まさに、“事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!(by踊る大捜査線)”ですね)

林さんのメッセージから、単にクライアントの言うことに忠実であるだけのデータ・サプライヤーになっていないか、それだけではリサーチャーの価値や仕事はシュリンクしていくのではないか、ということが問いかけられていると感じました。

(とはいえ、提案を嫌う人もいるし、正確な(ときには、正確でなくても)データさえ提供してくれればいい、という人がいることも、また一方の真実なのですが・・・)

【Ms.H】『ヒットの神様』~内田耀一氏を偲んで

ヒットの神様―伝説のマーケッターに学ぶ、不況に勝つ知恵 ヒットの神様―伝説のマーケッターに学ぶ、不況に勝つ知恵
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2009-06

『ヒットの神様』への林さんの寄稿です。
(本書の紹介は、こちらに

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 私が市場調査の仕事を始めたきっかけとなった当時のボスであった故U氏は、広告代理店の萬年社出身で、内田さんの部下であったと聞いていた。その後、グループインタビューの実務を教えて下さった当時フリーのインタビュアーであったO氏も、萬年社出身で内田さんを師と仰いでいた。つまり、私のインタビュアーとしての原点は、内田さんの存在にあったのだと、この本を読んで改めて気が付いた。
 定性調査に関心のある人たちの任意の勉強会であるグループインタビュー研究会でも、内田さんは重鎮として参加されていて、私達は定性調査の考え方や技術に関する生のお話を伺ったし、1985年にグループインタビュー研究会のメンバーで共同執筆した「グループインタビュー実践マニュアル」-日本能率協会-の出版委員会にも同席させていただき、いつも興味深いお話を伺っていた。
 その会はグループインタビューの本質論だけでなく、対象者へのお弁当を何にするかといった実務に関する議論もあり、「お寿司をはじめとする生ものは、万が一のことがあるからグループインタビューの対象者に出すべきではない」という内田さんの言葉で、そういう配慮も必要だということを教えられた。

 内田さんがASIマーケットリサーチを辞められてフリーリサーチャーになられてからは、グループインタビュー(内田さんは、デイスカッションという名に拘られている)のお手伝いをさせていただいたこともある。
 内田さんのインタビューは、対象者の自発的な会話を誘発して、とにかく耳を傾ける、適宜プローブして言葉の意味を深めることを徹底されていて、質問を浴びせかけるというようなことは一切されていなかった。質問をして出てくる表層的な言葉よりも、その奥にある潜在意識(ホンネ=自分でも気付いていないが確かにある気持ち)の抽出が大事であり、そこからの気付きを次の発想に繋げるための、本来のグループインタビューの形に拘っていらした。
 内田さんのインタビューは、テーマに入る前の背景(General Discussion)に1時間ほどを費やす。実はこの背景情報の中に、課題に関する重要なヒントがあり、耳で聴きながら、そこをばっちり掴んでいて、テーマインタビューの際にきちんとそれを昇華してプローブしていく。インタビュアー(内田さんは、モデレーターと言っている)が話を聞き→聴く→気付く→発想する→創造するために、こういう手法が必要不可欠なのである。
 本書の中に「グループディスカッション」という呼び名に拘られたと書いてある。対象者の相互刺激を活用して、自由に自発的に出る会話にこそ、潜在意識が飛び出すという考え方であり、だからこそインタビューよりもディスカッションが相応しいというお考えなのだと思う。
 この呼び方への拘りはグループだろうが、1人だろうが、フロー通りに質問していくだけというやり方で、真意に迫ることなく言葉を取って満足するインタビュー方法に対する、彼の抵抗とも受け取れる。(私もディスカッションを重視しているが、グループインタビューと呼んでいる)

 内田さんは、心理学の学者であり、学問と体験によって観察、洞察力を磨きあげたリサーチャーの先駆者と思っていた。しかし、この本の題にもあるように、想像⇒創造に繋げるマーケッターとしての才能もあり、調査結果をマーケッターやプランナーに的確に翻訳(直訳ではない)するという役割も担っていられた。その例が本書の中にいくつも挙げられている。
 新しい試みを提案した時に、クライアントの上の方が「やってみましょう」と決断されたという実例があるが、これはクライアントと内田さんとの間に信頼関係ができていたことに起因している。クライアントから調査の打診をされたら、内田さんは綿密な情報収集をして、それを考察して、目的を整理して、課題と仮説、手法、対象者の条件を提案する。それが採用されると、今までに体験したことがないことであっても、様々な工夫をして、実行する。そして、手書きや手集計があたり前の時代に、クライアントの目的を達成するために、インタビューも分析も人ができる限りの労力と知恵を使って最大限の努力をする。クライアントと生活者の双方の利益を追求するための誠意が、それらの行動に表れている。
 内田さんとクライアントは、お互いに活発に意見を交換して、相手を受け入れるという対等なパートナー関係を築いている。そこには、対象者に伝わらないような質問でも、クライアントの指示だからといってそのまま受け入れるような、今のリサーチャーにありがちな「忠実」とは異なった、「誠実」な関係が見える。誠実と忠実はイコールではない。

 もうひとつ、内田さんがクライアントと生活者の気持ちの上での接点を探すために、常にアクティブに行動していることに驚かされた。女性の下着売り場、幼稚園での観察例は、今流行のエスノグラフィーの原点であるが、洗剤を洗濯板を使って洗ってみる、銀座のクラブに行ってみる、メーカーの研究所に行ってみるなど、とにかく行動することの全てが発想のヒントになる、という考え方を実践されていたことが伺える。本著の中にある「自分で考えてヒントが浮かばなかったら、現場を観察する」という姿勢をリサーチャーは決して忘れてはいけない。
 最近でこそ脳科学が注目されているが、内田さんは1963年から嘘発見器やアイカメラを使っての調査を取り入れられていて、生活者を知るための創意工夫への惜しみない努力に敬服する。人間でありながら、人間を解明するのは簡単ではない。いまでも、いろいろな角度から試行錯誤が行われているが、どんなソフトを使っても、人間の近未来の志向が容易に明らかになることはない。様々なデータを、人間がいろんな角度で読み込んで、発見して、想像⇒創造という知恵を絞ってはじめて、真実に近いものが見えてくる。

 内田さんが大病されたというお話はご本人からも聞いていて、それが大原麗子さんと同じギランバレー症だったというのを、この本で知った。その病から見事に復活された後にお目にかかる機会があり、壮絶な病との闘いのお話を伺った。その後、赤坂見附の駅ですれ違ったことがあり、お痩せになられていたが、スタンドカラーのブルーストライプのシャツとブレザーの相変わらずのダンディなファションが脳裏に焼き付いている。それが、お姿を見た最後だった。
 改めて、内田さんのご冥福を祈ると共に、遅ればせながら厚く御礼を申し上げたい。

                                               林美和子

【Ms.H】『アカウントプランニングが広告を変える』からの気づき

さっそくですが、すでに林さんから寄稿をいただいていますので、ご紹介を。

第1回目の記念すべきテーマは、『アカウントプランニングが広告を変える』を読まれての気づきです。この本については、このblogでも過去に紹介しています(→こちらです)ので、こちらもどうぞ。

アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実 アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2000-06

では、林さんの寄稿を。

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◆市場調査の「テスト」としての使い方◆

ジョン・スティールは、アカウントプランナーでありながら驚くほど市場調査に精通していて、自分の仕事に極めて有効に活用しているが、今のリサーチャーの姿勢に対する痛烈な批判もこの本から読み取れる。

その中で印象的なのは、「テスト」=試験→成績表→合否判定に力を注いでいる、クライアントや市場調査機関への彼の疑問であり、周辺にいるクリエイター達の多くは、この「テスト」という考え方に眉をひそめているということである。
以前、私が某広告代理店で、各種の賞をとっているクリエィターの方とお話した時にも、彼はつぎのように語った。「(自分は、暗い部屋に入れられて退屈な時間を過ごしたくないと思っているのに)グループインタビューの観察に行かされ、生活者が生活感のない座談会室で、自分達が精魂こめて作ったアイディアを評論されるのを観察しても何の役にも立たない。自分達は、生の生活者から気付きにつながる刺激を受けたいのに。」

市場調査における「テスト」は、それぞれのステップで生活者からどのような評価が得られるか、市場で受け入れられる可能性があるのか、問題点は何かを明らかにするために実施される。この結果、市場に出た時のリスクが回避されるという利点がある。
私が知る限り日本でも、そして定量調査だけでなく、定性調査でも「テスト」が多く行われており、各ステップで合格判定が出たものが、市場にお目見えするという構造になっている。
「テスト」というチェックシステムを構築し実践したことで、マーケティング効率は上がっているのではないかと推測できる。

◆「テスト」で未来の大輪の花の芽が剪定されてしまったら・・・・◆

「テスト」の目的は、送り手が自分達の志向や勘だけに頼って、生活者の志向と一致しない商品や広告を市場に送り出すことによる労力やお金の損失を出さないためである。さらには、データを通じ、組織の上の人や、その商品に絡む全ての人達に納得してもらうためでもある。ジョン・スティールもこの「テスト」の必要性を否定していない。(私も、同感)

問題はこの、試験→成績→合否を決める「テスト」調査への偏重により、今後、大輪の花を咲かせる才能を持った確かな蕾が切り取られてしまっているのではないかということにあり、商品構成要素のどれもが平均値以上なのに売れない商品が市場に出る、いいんだけど何か魅力がなくて、記憶に残らないコマーシャルが溢れているという現状の市場と大いに関係があると、私は考える。

◆市場調査は「テスト」のためだけにあるのではない◆

ジョン・スティールが市場調査とそのデータをどう活用しているかということを、本の中から拾って簡単に整理すると以下のようになる。

    1. 生活者の今を入念に調べて、市場を把握して発想のヒントとする(気付くための刺激とする)
    2. クリエィティブへのブリーフの説明材料とする(今、生活者は/今、このカテゴリは、このブランドは)
      →ブリーフィングの際も常に背景データが議論の中心となる
    3. クライアントへの説得材料とする
    4. アイディアが生活者に意図どおりに受け入れられるのか and/or さらに新しい視点がないのかを探す
    5. クリエィティブラフ案の生活者の反応を把握して、コミュニケーションを完成させるための参考にする

一見、今も実施している市場調査に当てはまるように感じる。しかし、その優先される期待感が、優劣を決める「テスト」というチェック機能(評価を得て、成績表を作って、合否を決める)にあるのではない、ということに大きな意味がある。

◆生活者情報から、何を探すのか→何に気付くのか◆

本書の中にポラロイドカメラのユーザーにはフィルムを、ノンユーザーにはフィルムとカメラを送って、対象者が自由に撮った写真を送り返してもらい、その画像を観察した例がある。送られてきた画像の約9割は普通のカメラでも撮れるもので、残りの1割にポラロイドならではの価値が発見できる画像があり、極めて有効な調査であった、と書いている。

私が思ったのは、恐らく生真面目なリサーチャーがこの調査の報告書を作成することになったら、どうするかということである。
きっと、まず対象者を性別、年齢、その他の属性に分けて、人物〇枚、動物〇枚、風景〇枚、その他〇枚と数えることからはじめるだろう。ピントがずれた写真が人物なのか風景なのかを判断することに時間がかかったり、数が合わなくて数え直したりしている間に時は過ぎ、報告書の納付期限が迫り、時間切れを迎える。
1割に意味があるということに到達しないまま終わってしまう。市場を数で判断することを絶対と思っているクライアントに対して普通のカメラでも撮れる9割の画像を結果から外したら、いい加減な調査だとお叱りを受けることも覚悟しなければならない。

1割の画像の意味をポラロイドの特性と繋ぎ合わせて見抜く、Next Stepの方向を探す、アイデアを出す、クリエイティブをサポートするのがプランナーの役割であり、ここで問われるのはアカウントプランナーの能力=人間力以外の何者でもない。

◆リサーチャーが、クライアントの強力なマーケティングサポータ-になるためには◆

ジョン・スティールは、広いアメリカのあちこちに自ら足を運んで、生活者にインタビューをする、CLTの会場に行って観察する、そして、よく考えて、営業、クリエイティブスタッフ、クライアントともよく会話をする。そういえば、私が、よく仕事をいただくプランナー(アカウントプランター、ストラテジックプランナー、いろんな呼び方があるが、違いは分からない)やマーケッターも、現場を重視し、よく動き、よく考えて、ひるむことなく議論をする。

私は、リサーチ側のインタビュアーであるが、有能で活発なプランナーやマーケッター達が生活者の現実をしっかり見ることができ、創造力を発揮できるような市場調査の企画、実施、分析をしようと努力している。
そして、これから育つ定性調査のインタビュアーには、マーケティングに関する知識を身につけ、本当の意味でのクライアントのパートナーになることを強く望んでいる。

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いかがでしたか?
個人的には、まったく同意です。とくに、最近のマーケティング・リサーチが、ここでいう「テスト」に偏っているのではないか?、という見方に同じ問題意識をもっています。
インターネットリサーチの登場により、リサーチが手軽に行なわれるようになったことはよかったのですが、一方で、この傾向に拍車をかけたのではないかとも思っています。

実は、この問題意識は大学院での論文テーマとかなり似たもので、ちょっとびっくり。
さらに、『マーケティング・ジャーナル』の最新号(113号)でも、近い趣旨の記述を見つけ、さらにびっくり。

最近、社内外のマーケターやリサーチャーと話をすると、「エビデンス(evidence:証拠)」という言葉をよく耳にする。話の文脈からエビデンスの意味を察すると、「自らの仮説を通すための証拠の数字を用意すること。オープンデータで数字がなければ独自に調べて用意すること。それでもできなければ近似の意味の数字で代替すること」。どうやら、このような意味でエビデンスという言葉が氾濫しているようだ。
(中略)
マーケターやリサーチャーが従来発想に固執し、生活者を自説検証のための調査対象者としてだったり、受け手として見ているだけでは、企業と生活者の意識の溝は深まるばかり。これからのマーケターやリサーチャーたちには、生活者によって自らの仮説が裏切られることを喜び、そこから再び新しい仮説が生まれることを楽しむような発想の切り替えが求められるにちがいない。
(夏山明美・南部哲浩(2009)「CtoB社会~賢くなった生活者とco-solutionの関係へ~」、『マーケティング・ジャーナル』113号、pp.28-44)

これだけの引用では全体像はよくわからないかもしれないですが、林さんの指摘と同じような内容であると感じませんか? 奇しくも、この論文の著者のお二人は、博報堂の方なのですが(アカウントプランナーではないみたいですが)。。。

このように、ほぼ時を同じくして、三者が似たような問題意識をもったということは、いまのマーケティング・リサーチにとっての、大きな課題であるということが言えそうです。
(そして、このような問題意識が強くなったからこそ、エスノグラフィーが注目されているのではないかとも思っています。)

しかし、ここで留意してほしいことも。
林さんの寄稿にもあるように、何も「テスト」調査が悪いとも、意味がないとも言っているわけではないです。この点は、十分に理解して欲しいと思います。
調査には、いくつかの目的があります。そして、いずれの目的も大切な役割を持っています。この点は、よく理解する必要があると思います。

以下の寺子屋のエントリーでも、リサーチの目的について話をしています。参考にしていただければと思います。

『定性調査がわかる本』林さんとのコラボはじめます!

このblogも、今度(2009年)の10月で開始4年目に入ります。

そこで、blogにも変化を!  ということで、『定性調査がわかる本』(→こちらで紹介しています)の著者の一人である林さんとのコラボを始めてみようと思います。
カテゴリーのひとつとして、林さんからの寄稿を掲載していきます。いまも現役で、定性調査のインタビューアをしていらっしゃる林さんの視点で、マーケティング・リサーチについての気づきを紹介してもらいます。

きっかけは、こんな感じでした。。。

(とある昼下がりの喫茶店にて・・・)

林さん:最近とくに感じるんだけど、調査会社がオリエンを受けての企画ができなくなっていると思わない? この傾向は益々酷くなってきているような気がする。[E:gawk]

owl:そうですよね。それは、感じます。

林さん:それにね、最近の調査って「証拠づくり」のための調査が多いと思わない?

owl:証拠づくり?

林さん:そう、証拠づくり。なんていうか・・・、担当者の意見を通すための調査というのかな。最初に答えありきで、その結果を出すための調査?

owl:仮説検証型の調査、ということですか?

林さん:仮説検証なら、それでもいいのよ。でも、検証でもなくて、会社で企画を通すための調査というか、最初に答えありきで、それを証明するための調査というか、要するに消費者の声は関係ないのね。[E:gawk]

owl:はいはい、「ためにする調査」ですね。結果が自分の思っている通りにでないと、調査がおかしいということになってしまうといいう。。。

林さん:他にも、よくテレビとか新聞とかのコメントで、「それってほんと?」と思うことがあったりするわけ。そんな一面的な解釈でいいの?、と思うような。

owl:わかります。一面的というか、ほんとにデータや起こっていることを、きちんと見ているの?っていいたくなることがありますよね。ひとつのイシューに対し集中豪雨的に触れるかと思えば、ステレオタイプな内容を振りまいて、あっという間に引いてしまうということが、最近目に付きますものね。

林さん:でね、そんなこんながあって、私ももっと情報発信したいなと思ったわけ。定性調査に関する真面目な情報提供の場ができないかなと。とくに企画の部分に関して、今言っておかないと誰もできなくなってしまうという危機感もあるし。テレビや新聞を見たり、本を読んでいても、こんな見方もできるんじゃない?、ということとかも話してみたいし。

owl:ぜひ、やってくださいよ。これまでの林さんの経験や知見をベースに情報発信すれば、きっと有益ですよ。

林さん:でね、寺子屋に居候させてもらえないかしら?[E:bleah]

owl:そういうことですか[E:coldsweats01]

実際は、かなりの時間、お話をさせていただいたのですが、核心部分だけ抽出すると、こんな感じで。こんなやりとりがあって、寺子屋に林さんの原稿を寄稿してもらい、紹介していこうということになりました。
テーマは、もちろんマーケティング・リサーチに関すること。最初にも書いたように、現役のプロジェクトマネージャーとして、そしてインタビューアとして、常に現場にいる林さんの気づきは、きっと皆さんの参考になると思っています。
さらに、一人では気づかなかった点を林さんにご指摘いただくことで、創発的に新たな発想が生まれる、あるいは考えがまとまっていくこともあると思いますし、これこそがコラボレーションによってもたらされる大きな効果だと思います。

これまでの寺子屋同様、ご愛顧いただければ幸いです。
(タイトルで、【Ms.H 】とあるときが、林さん寄稿の回になります。)

PS.
ということで・・・。
人様の力を借りるだけなのもどうかと思いますし、今後は個人的な負荷もだいぶ軽減されることになりそうなので、本来のこのblogの趣旨でもあった「寺子屋」も再開できればと思っています。できるだけ早い内に、再開を目指しますので、こちらもご期待ください。
(久しぶりに会話形式の文を書いていたら、懐かしくなりました・・・)