リサーチ業界動向」カテゴリーアーカイブ

ネットリサーチ2社の新たな動き

ネットリサーチのメイン2社である、マクロミルとヤフー・バリュー・インサイトに新たな動きが。

◆マクロミル、韓国へ

まずはマクロミル。

マクロミル、韓国に新会社を設立(japan.internet.com)

韓国における新会社設立に関するお知らせ(マクロミル社、リリース資料)

中国に関しては、すでにM&Aで進出しているはずですが、今度は韓国へ。
それも、Ipsos Korea 社のCEOを引き抜いて、ですか?!
モニター構築から始めるようですが、既存のモニター会社はなかったのかな?

◆ヤフーバリューインサイトとヤフー、共同化へ

ついで、ヤフーバリューインサイト。

ヤフーバリューインサイト、ヤフーと「Yahoo! リサーチ」を共同運営(japan.internet.com)

2008年7月1日より、ヤフー株式会社と『 Yahoo!リサーチ 』を共同運営
(ヤフーバリューインサイト社、リリース資料)

これで、旧インフォプラント時代のブランド名はなくなり、すべてを「Yahoo!リサーチ」のブランド名の元で運営していくようです。(ただ、モニターは今後も2本建でいくようですが・・・)

ヤフーバリューインサイトが設立された時も指摘させていただいたと思いますが、やはり気になるのは、つぎのパラグラフです。

今後は、Yahoo! JAPANの行動ターゲティングの技術や行動履歴を活用し、広告接触、検索行動などのインターネット上の消費者行動を分析・解明する高付加価値調査サービスの開発を進めます。さらに、モバイル、TVなど今後発展するインターネットの各種デバイスに対応したマーケティングリサーチサービスについても、親会社であるYahoo! JAPANとの連携を深め開発検討を行う予定です。

どのようなサービス、仕様になるのか具体的なことはまったくわかりませんが、ヤフー社と共同でリサーチを運営するメリットは、まさにこの点にあると思いますので、今後の展開に期待したいと思います。

(ただ、ヤフーバリューインサイト社のHPと別に、「Yahoo!リサーチ」のHPもあるということは、それぞれ事業を行なっているということ?。このあたりはわかりにくいのですが・・・。
それと、ヤフーとインテージが組んだ「インテージ・インタラクティブ」は?気づかないうちに、持ち株比率が大きく変更になっている <→リリースはこちら> ようですが。。。)

ネットリサーチの両雄は、着々と次の手を打っているようです。
リサーチ業界の上位集中化は、さらに進むのでしょうか・・・。

(リサーチ業界売上ランキングは、こちらで紹介してます~中ごろ以降にあります)

「ヤマト運輸と日経リサーチ、サービス産業動向調査を受託」

以前このblogで、↓この2つのエントリーをご紹介しました。

統計調査の民間開放・市場化テストに関する研究会

ヤマト運輸が調査事業開始?!

で、結局「日経リサーチ+ヤマト運輸」で政府統計調査を受託したようです。
ニュース記事と日経リサーチのリリースを紹介しておきます。

ヤマト運輸と日経リサーチ、サービス産業動向調査を受託(NIKKEI NET)

「サービス産業動向調査」実施のお知らせ(日経リサーチ)

「サービス産業動向調査」は、今年から始まる月次統計調査です。
サービス産業化の進展度合を考えると、少々開始が遅かったかなとも思えますが・・・。
調査の詳細については、↓のHPを参照してください。

サービス産業動向調査(総務省・統計局)

さて・・・
この件に関して、いくつかおもしろいペーパーもありましたので、一応紹介を。

最初は、どういう経緯で出されたものか分かりませんが、日経リサーチから政府あてのペーパーです。今回の事業を受託するにあたっての苦労がしのばれます。。。

第14回公共サービス改革小委員会 統計調査分科会の会議資料等
(内閣府・官民競争入札等監理委員会)

(なんだか、おどろおどろしい委員会名ですが・・・)
この中の「資料3」が、日経リサーチからの提出資料です。

そして、サービス産業動向調査を民間委託とすることについての委員会検討資料と議事録。

第9回 公共サービス改革小委員会 統計調査分科会の会議資料等
(内閣府・官民競争入札等監理委員会)

この中の「資料2」で、どのような実査フローが想定されているのか、調査票はどのような内容かがわかります。

この2回の委員会のほかの資料をみるだけでも、統計調査の民間委託案件はまだまだあることがうかがえます。
↓このページで、「統計調査分科会」を追っていくと、統計調査の民間開放の流れや詳細を追えると思います。

内閣府・官民競争入札等管理委員会「過去の更新情報一覧」

これらをみると、統計調査の民間開放は本気のようです。
となると、他の調査会社は、どのような対応をとるのか・・・。今回の日経リサーチはヤマト運輸と組むというスキームを使いましたが。。。
調査会社にとって、「政府統計を実施しているという信用力」と、「売上の大きさ」「安定的な売上基盤」はかなりの魅力ではないかと思います。(利益面はどうかという面がありそうです。ただ、回を重ねることで、ある程度利益率は上がっていくとも思います。)

いずれにしても、日経リサーチには今回の受託調査をきっちり仕上げていただき、これからの統計調査民間開放のよき先例となっていただきたいです。

インテージ決算2008.3

インテージの2008年3月期決算が発表されています。

2008年3月期決算および今後の成長戦略(pdf資料)

2008年3月期決算説明会(ストリーミング映像)

平成20年3月期決算短信(pdf資料)

連結決算で見ていくと、売上331億円(対前年+7.5%)、営業利益33億円(+13.1%)と順調な数字を残し、今年(2008年)の1月には東証2部に上場も果たしています。

市場調査・コンサルの部門数字は、218億円で+9.9%の伸び率とこちらも順調のようです。
さらに、カスタムリサーチとパネル調査に分けてみると、以下のような数字になります。

カスタムリサーチ:前期80.0億(+30.2%)→今期88.6億円(+10.7%)
パネル調査:前期118.2億(+3.9%)→今期129.2億円(+9.4%)

カスタムリサーチの伸び率が、前期に比べると鈍化しています。インターネット調査の伸びが思ったほどではなかったようです。たしかに、JMRAのデータ(→こちら)をみても、アドホックリサーチに占めるネット調査の売上構成比の伸びが鈍化していることが見て取れます。
一方で、パネル調査が伸びていますが、これはSRIという小売店パネル調査の寄与です。以前、このブログでも取り上げましたが、競合社であったニールセンが小売店パネル調査から撤退したことにより、約40社のクライアントがインテージへ切り替えたということです。
パネル調査は、クライアントが増えるほど利益率も上がりますので、説明会でも話されているとおり、安定的な経営基盤を確保できたといえそうです。

では、今後の戦略は?

リサーチ、システム、コンサルという3つのビジネス領域を収斂させ、
「工数提供型ビジネスモデル」から「価値提供型ビジネスモデル」へ転換

というのが、基本戦略のようです。正しい方向性だと思います。
「プラットフォーム」という概念を持ち出しているのも、さすがですね。(本来の意味と合っているかどうかは別にして、新しめのビジネス概念を取り入れているところが、「さすが」です。他の調査会社で、このような新しい概念を理解・活用できる会社が、どれくらいあるか・・・。)

今年は、上海に続きタイへも現地法人を設立するようですし、(TNSとgfkが合併すれば)期せずして世界ランキングも10位になりそうですので、日本におけるインテージの地歩は確固たるものになりそうです。

他のリサーチ会社(とくに、日本資本の独立系の調査会社)も、なんらかの手立てをうたないと・・・・・・・・・。

PS.
インテージではないですが、こんな↓リリースもありました。
YVIも着々と商品強化?

ヤフー・バリュー・インサイト、 アイスタイルと業務提携
~国内最大級の化粧品情報専門サイト @cosme会員を対象とした
  マーケティングリサーチサービスを提供開始

『マーケティング・リサーチ業界・新版』

マーケティング・リサーチ業界 新版―その仕事と働く人たち マーケティング・リサーチ業界 新版―その仕事と働く人たち
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-04

以前ご紹介した『マーケティング・リサーチ業界』の新版です。

内容をみると大きな変更はないようですが、データが最新のものに差し替えられていることと、インターネットリサーチや業界再編についての記述が現状にあわせて書き換えられています。
また、第3章「現場で働く人たち」の顔ぶれは一新され、ネット調査のマクロミル、外資系のIPSOS日本統計調査の方などがコメントしており、「いま」の業界の流れに沿っています。

前回の記事(こちら)でも書いたのですが、少しきれいにまとめられすぎ&将来の希望を持ちすぎでは?、という感じは否めないですが、リクルート本でもありますので、このあたりは大目に見ていただいて。。。
とはいえ、マーケティング・リサーチ業界、市場調査業界に興味がある人は、リサーチという仕事の雰囲気、リサーチャーに求められていることなどを、この本でしっかりと理解しておいていただきたいものです。

◆マーケティング・リサーチ業界売上ランキング
(最近、業界売上ランキングの検索が多いのですが。。。就職活動の影響?)

旧版と新版で、業界ランキングを比べておきましょう。

まずは、世界ランキング。
(順位は2006年、かっこは2001年順位。社名の*は、日本進出企業)

1位(1位):The Nielsen Company*
2位(2位):IMS Health*
3位(4位):Taylor Nelson Sofres*
4位(3位):The Kantar Group*
5位(6位):Gfk*
6位(8位):Ipsos Group *
7位(-):Synovate*
8位(5位):IRI
9位(10位):Westat
10位(-):Arbitron

このリストで順位を上げている企業は、多くが何らかの形で合併を行なった企業のようです。さらに、萬さんのコメントでは3位:TNSと5位:Gfkに合併の可能性もあるとか。。。
そして、世界上位7社の企業がすでに日本に進出しています。(このリスト外では、12位のJ.D.Power and Associates、13位のHarris Internationalも日本で営業を行なっています。)

では、日本でのマーケティング・リサーチ会社ランキング。
(「宣伝会議」推定、2006年。かっこは2001年順位。)。

1位(2位):インテージ
2位(1位):ビデオリサーチ
3位(3位):電通リサーチ
4位(-) :マクロミル
5位(5位):日経リサーチ
6位(6位):サーベイリサーチセンター
7位(-) :ジャパン・カンター・リサーチ
8位(-) :ヤフーバリューインサイト
9位(7位):日本リサーチセンター
10位(-):TNSインフォプラン

この中で、インテージは世界ランキング11位、ビデオリサーチは16位、電通リサーチ、日経リサーチ、マクロミルもトップ30位圏内にあります。
このリストをご覧頂くと一目瞭然、インターネットリサーチと外資系リサーチの躍進が目に付きます。日本資本&独立系で10位以内に踏ん張っているのは、インテージを別格とすると、SRCとNRCだけ。。。(そういえば、スミスがNTTデータグループの傘下に入っていたんですね、知らなかった。)
ここから、マーケティング・リサーチ業界が変革期(ほぼ終了?)にあることはお判りいただけると思います。

QPR by マクロミル&東急エージェンシー

(ほぼ一ヶ月、更新せず・・・。少々さぼりぎみでした、すいません・・・)

萬さんから、コメントで情報をいただいています。
コメントに埋もれさせるのはもったいない情報ですので、あらためてエントリーとして取り上げます。

以前リリースがありました、マクロミルと東急エージェンシーによる共同事業が稼動のはこびとなったようです。
以下は、萬さんからのコメントをそのまま引用させていただきます。

東急エージェンシーとマクロミルが新しいホームスキャンを行うようです。

◇携帯型バーコードスキャナを用いた商品購買調査『QPR』サービス開始
http://www.macromill.com/client/corporate/release/20071128_qpr/index.html

パネル数も1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)、2府4県(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀)エリアの16~69歳の男女5,000人と拡大ということも着目ですが、
*携帯型のバーコードスキャナ
  http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200711290024a.nwc
*アンケート調査

というのはいいですね。
これなら、家庭内に於ける消費行動を量的にかなり実態に近く把握できます。

前々から似たような手法がありましたが、マクロミルが本格的に参入すると、機械的にも進歩が見られますね。
うん、凄い。

詳しくはリンクを辿っていただくとして、少し説明を。

「QPR」というのは、東急エージェンシーがかなり以前から実施していた調査です。
調査協力者の方に、バーコードリーダーを貸与して、買物した商品をすべてスキャンしてもらうことで、実際に売れている商品と実売価格を追うというもの。
ただし、コンビニとか自販機のように、購入&そのまま外で消費される商品については、追うことができないという欠点がありました。
この調査に、今度マクロミルも共同実施者として参画することになり、対象者の拡大とともに、スキャナーをハンディタイプにすることで、この欠点を克服することができるようになったのがひとつのメリットです。

そして萬さんもおっしゃっているように、対象者に対して、追跡的な「アンケート調査」を実施することができるようになったのが、ふたつめのメリットです。おそらく、これまでもベーシックな属性データ等は収集していたと思いますが、「インターネット調査の機動性」を最大限に活用することで、リアルデータ(誰が、何をかったのか)に、コーザルデータ(なぜかったのか?など)を結びつけることが容易になるというのが大きいです。

それも、確実に購入者を捉えられるのは元より(実は、スクリーニングで確実に購入者を捉えるというのは結構たいへんだったりします。人の記憶はあいまいで・・・)、初期ユーザーを捉える、購入サイズ別に捉える、購入チャネル別に捉える、ということも技術的には可能なのではないでしょうか?(あくまでも推測です。興味を持った方は、直接マクロミル社に問合せください。)

小売店パネル(POSデータパネル)では少々ミソをつけてしまいましたが、消費者を対象とした分野においては、やはり強みを発揮しますね。
できることなら、少しはオープンデータとして公表していただけるとうれしかったりしますが・・・。

ヤマト運輸が調査事業開始?!

標題をみて、「え?!」という方、多かったのでは・・・。

ネタ元は、この↓記事です。

ヤマト運輸/政府統計調査事業に参入(LNEWS)

確かに、ヤマト運輸のHPでもニュースリリースが。

統計調査事業への参入について(ヤマト運輸HP)

以前に、このblogで、「統計調査の民間開放・市場化テストに関する研究会」というエントリーをしたのですが、この統計調査の民間開放に対する動きです。
ヤマト運輸と日経リサーチが共同で、政府統計調査に対応できる体制をつくる。方法は、ヤマトのセールスドライバーから、統計調査員を募り、全国規模での訪問調査を実施できる体制を作ろうと。。。
たしかに、ヤマトのドライバーさんなら、全国あまねくいらっしゃるでしょうし、お宅を訪問するのも容易かもしれませんね。目の付け所としては、なるほどと思わされました。

ただ・・・、
実は昔から、このような発想で、事業化をしている業界は他にもあるのです。
それは、「ガソリンスタンド」です。
今でもあるのかと検索してみたら、ありました。東京サーベイリサーチという調査会社と新日本石油が組んで、このような↓会社を設立しています(それも、1989年設立です)。

株式会社ユー・エヌ・エス

インターネット調査もそうですが、「全国規模のインフラ(インターネット調査でいうとモニター組織ですね)」を持っていると、調査という事業に参入したくなるんでしょうか・・・。
そんなに簡単なものじゃないと思うんですけど、調査も。。。
(まあ、こんなこと言っていると、「うちの業界は、特殊だから」「うちの業界は、ノウハウが必要だから」と言っている頭の固い方々と一緒になってしまうので、控えたいとは思うのですが。)

さて、ヤマト運輸と日経リサーチのこの試み、うまくいくのか、今後をみていきたいです。
(うまくいったら、日経リサーチは大きな成長基盤を持つことになりますね。なにせ、政府の調査を落札できる可能性が、ぐっと高まるわけですから・・・。)

PS.
実は今回のエントリーが、ちょうど100回目のエントリーになります。
昨年の10月にはじめてから1年、なんとかここまで辿り着きました。
最近は、かなり更新期間が長くなってしまっていますが、それでもアクセスしていただいている皆さまに、この場を借りてお礼申し上げます。
(ほんとは、100回目のエントリーは「寺子屋」の再開にしたいと思っていたのですが・・・。)

マクロミルの新たな動き:続報

ひとみしりさんより、情報いただきました。
前回投稿した、「マクロミル社のニールセン社からのPOS事業譲渡」はご破算になったようです。

マクロミル社のリリースは、こちら↓を参照ください。

ニールセン・カンパニー株式会社の事業一部譲受に関する基本合意の解消について(2007.9.10:マクロミル社IR情報)

理由については、こちらのリリースから、皆さん自身でご確認ください。
(今回の結論に至った理由については、いろいろと思うところもありますが、勝手な推測の域を出ませんので、ここで述べることは控えたいと思います。あわせて、合意解消理由についてのコメントは、皆さんも控えていただければと思います。)

個人的には、今回の結果はとても残念なことだと思っています。前回のコメントにも書きましたが、競争がないところに成長はないと思っているので、POSデータパネルがインテージさん1社の独占になってしまうことは、あまりいいことではないと思うからです。
(とはいえPOSデータについては、日経グループはじめ調査業界以外で、販売している企業はあるようなので、完全な独占というわけではないようですが。)

同時に、ひとみしりさんが指摘していたように、パネル事業を行なうことの難しさについても、あらためて感じた次第です。視聴率調査もそうですし・・・。

ただマクロミルさんも、拡大志向や見切り発車で事業を始めることなく、冷静な判断に基いて、クライアントや自社にとって賢明な判断をしたのだと思いますので、萬さんご指摘のように、今後のマクロミルさんの動向については期待をしていきたいと思います。

PS.
今回の件に関連して、「とみざわのマーケティング思索ノート」さんが、おもしろい見解を示しているので、参考にしてください。

コンサルと言い始めたら(とみざわのマーケティング思索ノート)

この見解は、確かにネット調査会社や上場会社でより大きな課題になると思いますが、個人的には、いずれの調査会社も抱える成長の限界だと感じました。この限界があるから、調査会社はなかなか大きくなれず、また、小さな会社でも存在できるのだと思います。
つぎの一文はまさに、「現実」、でしょうね。。。肯定したくない気持ちも多分にあるのですが。(まさに、私自身がこの現実を感じて、スピンアウトしたようなところもありますし・・・)

結論的には、効率を重視しなければいけないのなら、「知」のことは考えず、「キカイ」に徹しろということです。
知に無駄は避けられない。
その無駄を嫌うなら、従業員を機械として見るしかない。
銀河鉄道999に乗りたくなる話のようですが、現実はそういうことです。






マクロミルの新たな動き

(8/20追記あり)

今週、マクロミルの決算発表と今後へ向けての新たな動きが発表されていました。

まずは、決算から(決算説明会資料は、↓でご確認ください)。

「平成19年6月期決算説明会資料」(マクロミルIR情報TOPページ)

連結で売上高64億円(対前年+23.4%)、単体で売上高54億円(対前年+20.2%)。
いずれも2桁増で、着実に売上を拡大しているようですが、↓の記事をみると、計画に達していないということで、株価はストップ安とか・・・。

マクロミルが値下がり率トップ、今期連結業績予想が2カ年計画を下回る

「調査会社」としてみれば、毎年着実に売上増を達成している(しかも2桁増)だけでも凄いと思うのですが、マーケットは評価してくれないんですね。。。他の調査会社で、毎年着実に売上増を達成している会社が、いくつあるのか?(上場するということは、こういうことなんですね・・・。確かに市場からの資金確保や信用面でのメリットは大きいですが、成長性を毎年確実に示していけないと、あっという間に市場から見放されてしまう。たいへんです。。。)

今後の活動方針については、「決算説明会資料」の17ページ以降に記されています。至極全うな内容で、あまり驚きはないですが・・・。

ところが、決算発表後に、↓のような発表がされているようです。日経でも記事になっていたようなので、すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが。

ニールセン・カンパニー株式会社の事業一部譲受に関する基本合意契約締結のお知らせ(マクロミルIR情報TOPページ)

何かというと、これまでニールセンが行なっていた「スキャントラック」というPOSデータ販売事業を、そのままマクロミルが買収したということのようです。いくらで買い受け、今後どれくらいの売上となるかは、未定とのことですが・・・。

実は、もうひとつ興味深いリリースもあります。こちらは、あまり報道されていないようですが。

商品購買調査サービスに関する共同展開についてのお知らせ(マクロミルIR情報TOPページ)
新サービスの開始に向けたシステム開発に関するお知らせ(マクロミルIR情報TOPページ)

これまで、東急エージェンシーが独自に行なっていた「QPR(家庭内スキャンパネル調査)」というシステムを、共同で開発・展開を行なっていくということ、そのために4000万円を投資しシステム開発を行なうということです。(こちらは、決算発表にも反映されていて、売上としては、来期で1億を見込んでいるようです。)

これまで、マクロミルはアドホック調査(=クライアントのテーマ・課題毎に調査を行う単発実施型の調査)を中心に行ってきましたが、この2つによって、データ販売型の事業の基盤を築くことができるようになったということです。それも、小売のデータであるPOSデータをニールセンから、消費の現場でのデータであるホームスキャンデータを東急エージェンシーと協同で、と売りと購入の両面を押さえているところが秀逸だと思います。
いまのところ、この両方のデータを扱っているのは、おそらくインテージだけだと思いますので(これまでは、ニールセンが対抗していましたが)、まさに両社が、がちんこで勝負を行なう状況になったともいえそうです。

【追記:2007.8.20】
ブルームバーグに解説記事があるのを見つけましたので、リンクを貼っておきます。

マクロミルが上場来安値、パネル調査事業の買収価値に不透明感(ブルームバーグ:8/16記事)

たしかに、ニールセンさんは採算が合わなかったので売却するんでしょうから、このような記事になるのもむべなるかな・・・。
そこは、マクロミルのシステム構築力&事業構想力でどのような展開にするのか?ですね。

ヤフーバリューインサイトHP

前の投稿を確認していたら、ヤフーバリューインサイト社のHPを発見。
「IP+IS=ヤフーバリューインサイト」という投稿をした手前もありますので、一応、紹介をしておきます。(なにせ、この記事へのアクセスが多いですし・・・。)

ヤフーバリューインサイト株式会社HP

(リサーチメニューをみると、「グループインタビュー」や「会場調査」が確かに入っていますね・・・。すでに、これらの調査のノウハウを持っているスタッフがいるんでしょうか?
これはこれで、インターネット調査とはまた別の実査ノウハウが必要なんですけど・・・。)

それはいいとして・・・、
「調査・分析手法」のページは、なかなか充実しています。とおり一遍ではなく、わりとわかりやすい内容で、紹介がされていると感じました(旧インタースコープ社のページでもあったものですが)。一度、ご覧になるのも勉強になると思います。
(って、ヤフーバリューインサイトの営業をしてもしょうがないですけど・・・)

とりいぞぎ、ご報告まででした。






IP+IS=ヤフーバリューインサイト

Dashさんから情報をいただきました。

インフォプラントとインタースコープが合併という記事は以前紹介しています(こちら)が、正式に社名や体制が発表になっています。

社名は、「ヤフーバリューインサイト」。

知らなかったのですが、ヤフーの子会社で「ヤフー」という名前を冠するのは、初めてのことらしいです。ヤフーの井上社長も取締役に名前を連ねていますし、それだけ力が入っているということなのでしょうか。(このことは、インタースコープの創業者の一人である平石氏のblogから知りました。創業者としての親心なようなものが伝わります。。。)

具体的なリリースは、↓こちらを参照してください。
(ヤフーのものをリンクしています。インフォプラントもインタースコープも、同時にリリースを発表しているようですが、まったく同じ内容です。)

株式会社インフォプラントと株式会社インタースコープの合併に関するお知らせ

この文章の中で、いくつか気になった点を、コメントしておきます。
(社名に「インサイト」を入れたのか・・・、と思ったのが最初ですが、このことは置いておいて^^;)

新会社の企業ミッションは「市場の今から、明日の価値を生み出すマーケティングパートナー」

「マーケティングパートナー」と謳っています、リサーチと出していないところがいいです。これからは、リサーチ・データを提供していくだけではなく、「マーケティングパートナー」となることが、リサーチ会社には求められていると思いますので。真にマーケティングパートナーとなることができると、強い会社になると思いますし、リサーチ会社もマーケティングパートナーとなれるんだという成功事例を作っていただき、業界の地位を高いものにしていっていただきたいと思います(いま、企業のマーケティングパートナーといえば、広告代理店が主ですから。。。)

Yahoo!リサーチモニターを含めた約150万人(重複モニターを除く)のアンケートモニター

これもある意味、興味深い。記事下方にある各社のモニターを純粋に足し合わせると、ヤフー135万人+インフォプラント37万人+インタースコープ28万人で、200万人。単純に考えると、重複モニターが50万人くらいいるということですか?この3社以外でも、ネットモニターの登録者は、結構重複しているんだろうな・・・、と思います。
(あまりいないとは思いますが)このことからすると、同じテーマの調査を複数の会社に発注して回収数を確保することは、もしかしたら同じ回答者から複数の回答を得ることになる可能性も高いということを頭においておいた方がよさそうですね。

つぎのセンテンスも興味深いです。

さまざまな調査ニーズに対応できるサービスラインナップに加え、会場調査・グループインタビューなどのコンベンショナルリサーチも拡充してまいります。

これまでも、会場調査やグループインタビューのリクルーティング業務は行ってきたと思いますが、今後は実査部分まで含めて行っていくということでしょうか?となると、いまの両社(3社?)のスタッフではノウハウ不足のように思うのですが、どこかCLTやGIの専門会社を買収あるいは提携していくことになるのでしょうか?このあたりは、まだ目が離せないところです。

さらに興味深いのはつぎのパラグラフ。今後の、ヤフーのリサーチ事業についての言及です。

今後は、Yahoo!のリサーチのモニターを活用したリサーチサービスの新商品開発や企画推進、Yahoo! JAPANユーザーの膨大なアクセスログや購買データの活用など、インターネット・マーケティング・リサーチを軸により付加価値の高いサービスを拡充することにより、インターネットリサーチ市場でのナンバーワンを質・量ともに目指してまいります。

「アクセスログや購買データの活用など」とあります。行動ターゲティングや文脈型ターゲティングの広告はよく聞きますが、これをリサーチに使う?、ということ?この文章ではよくわかりませんが・・・。もしも、このような文脈だとして、これが実現するとなると、他の調査会社では決してまねのできない仕組みが構築されますね。

それと、気になったのは、これまでヤフーと共同していたインテージはどうするのかということ。これも、Dashさんのコメントにあったのですが、時を同じくして、インテージからもリリースが発表されています。

ヤフー子会社へのモニター利用拡大に関するお知らせ

これまでどおりです、ということのようです。

いずれにしても、これでネット調査に関しては、マクロミルvsヤフーという構図になりそうです。

(〆の文章がいつも同じになってしまうので、今回は割愛します・・・)