アハ!または???」カテゴリーアーカイブ

「行動観察研究所」by大阪ガス

7月に入って、個人的な大事業に追われ、新しい情報に接することも、新しい本を読むこともままならず、当然このblogの更新も、しばしお預けとなっていました。
が、なんとか最初の関門は乗り越えたので、ぼちぼちと復活。

最初は、肩慣らし程度に、備忘録から。

以前紹介した↓の記事でもおわかりのように、大阪ガスはエスノグラフィに力を入れている企業のひとつといえると思います。

大阪ガス、調査手法「エスノグラフィー」をサービス改善などに活用、グループ会社にノウハウ伝授し調査の外販も(NIKKEI BP/IT Pro:2008/12/17)

この記事の中でも、

同社は2005年からエスノグラフィーに基づく調査サービスを外販するなど本腰を入れ始めた

とあるのですが、今回「研究所」という形で、さらに発展させたということでしょうか。

それが、こちら↓です。

行動観察研究所

7月7日にHPをオープンしたばかりのようですが、「研究所」と銘打つだけあり、ビジネス的な側面ばかりでなく、理論的背景などについてのコラム等も充実しそうで、期待したいです。

(この研究所に関しては、こちら↓のblogの紹介で知りました。あわせてご覧ください。)

大阪ガスの行動観察研究所(人机交互論さんのblog:2008/7/18)

「ビジネスエスノグラフィ実践コース」by日本能率協会

このblogでも検索上位の単語になっている「エスノグラフィ」、皆さんの関心が高いことがうかがえます。

そこで、具体的に「エスノグラフィって、どうやってやるの?」という方のために、研修コースのご紹介です。
JMA(日本能率協会)で、下記↓の講座が予定されています。

「ビジネスエスノグラフィ実践コース」(日本能率協会)

<さらに詳しいプログラムは → こちら(PDFです) >

まる一日の研修×5日、受講料もそれなりのお値段となってますが。。。
(個人的には、参加したいのはやまやまですが、この金額はちょっと手が出ない・・・。)

この講座、昨年にも実施されています。たぶん、今回が2回目の講座となると思うのですが、2回目を実施するということは、それなりに評判がよかったのではないかと思います。

多摩大大学院教授の紺野先生、博報堂イノベーション・ラボの田村氏、さらに5日目のメンターに名を連ねている方々、いずれもエスノグラフィの分野では第一人者で、エスノグラフィを学ぶには、いまの日本では最良の方々ではないかと思います。
講座の内容も、座学による講義だけでなく、フィールドワークを伴う実践が含まれているのもいいです。エスノグラフィは、実践してみないとよくわからないことが多いと思いますので。

参考文献としてあげられているのは、こちら↓。いずれも良書だと思います。

知識デザイン企業 知識デザイン企業
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発売日:2008-02

発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法 発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
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発売日:2002-07-25

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材 イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2006-06

興味をもたれた方は、どうぞ。
(ただ、実際に参加したことがあるわけではないので、この点は留意の上、ご判断ください。あくまでも講師陣と講座内容から推測してのお勧めです。参加のご判断は、皆さんご自身の責任でお願いします。)




携帯電話の満足度に差はあるのか?~標本誤差の話

ネットに、つぎのような記事が出ています。

ケータイの満足度・所有率ともにトップは「シャープ」――ネットエイジア調べ(japan.internet.com:2009/6/16)

同じリリースをネタ元とした記事が、あちこちのニュースサイトで取りあげられていますので、ご覧になった方も多いと思います。

この記事タイトルとなった部分の分析は、以下のとおり。

ネットエイジア株式会社は、10代~30代の男女500人に対し「ケータイ端末の満足度について」の調査をモバイルリサーチにて実施、2009年6月16日、調査結果を発表した。調査期間は、5月25日~27日の3日間。

まず、現在利用しているケータイメーカー(複数利用している場合は最も利用しているメーカー)を聞いたところ(単一回答)、トップは「シャープ」25.0%、次に「パナソニック」16.4%、「NEC」12.6%、「ソニーエリクソン」8.0%となった。

次にケータイの総合満足度について、各メーカーを利用しているユーザー別で見てみると、「満足」(「かなり満足」と「まあまあ満足」の合計)が最も高かったのは、「シャープ」ユーザーで86.4%となり、これに僅差で「ソニーエリクソン」ユーザー85.0%が続き、以下「NEC」ユーザー84.1%、「富士通」ユーザー83.9%、「パナソニック」ユーザー82.9%となった。

さて・・・。
満足度は、シャープで86.4%、5位のパナソニックで82.9%。
満足度のベースは各メーカー機種のユーザーなので、シャープは125人、ソニーエリクソンが40人、NECが63人、富士通が31人、パナソニックが82人となっています。
果たして、この結果から「携帯満足度トップは、シャープ」とタイトルに打ってもいいものか?
みなさんは、どのように感じたでしょうか?

■「標本誤差」ということ

今回の調査の場合、ほんとに知りたい人たち=母集団は「10代~30代の男女で携帯電話を利用している人全員」となります。しかし実際には、この母集団全員からアンケートに回答してもらうのは不可能なので、「標本として500人分集めて、満足度を計算してみました」ということになるわけです。これが、一般に行われているマーケティング・リサーチの原理です。

ただ、ここで考えてみてほしいことが。

今回の500人の回答と、また500人を選び直して調査した時の回答と、またまた500人を選び直して調査した時の回答と、またまたまた・・・、というように何回か標本抽出を繰り返して調査をしてみると、調査から得られる満足度の値は、「毎回ぴたりと一致!」とはならないわけです。
このあたりは、ご自身で実験してみてはどうでしょう?たとえばコインを10回投げて、表の出る回数の割合を何回か試してみてください。毎回50%とはならないはずですから。

だからといって、「そんなこといったら、調査なんてやる必要ないじゃん!毎回、違う結果が出たら話にならないでしょ!」などと、憤ったりしないでください。。。
さらに複雑なのは、知りたいのは「今回の500人の満足度」ではなくて、「母集団である、10~30代男女の携帯電話を利用している人全員の満足度」ですよね?・・・

じゃあ、どうするんだ?

ここで出てくるのが、「標本誤差」という考え方です。リサーチャー必携の書『マーケティング・リサーチ用語辞典』には、つぎのように書いています。

標本調査において、全数を調査しないで一部対象者のみを調査し、その結果から母集団値を推定すことによって生ずる誤差のこと。(・・・中略・・・)
しかし、この誤差がどの範囲の大きさで生ずるかは、確率標本の場合は、確率論に基いて一定の式で計算できる。(『マーケティング・リサーチ用語辞典』P157)

マーケティング・リサーチ用語辞典 マーケティング・リサーチ用語辞典
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発売日:2004-12

標本調査から「母集団値を推定できる」、しかも、「誤差の範囲を計算できる」と。
(厳密には、「確率標本の場合は」という点を無視してはいけなのでしょうけど、ここにこだわると話がややこしくなるので、ここでは無視させていただきます。。。)

では、その推定値とやらをどうやって計算するのか?
計算式は面倒なので、統計の本で調べていただくとして。。。
ここでは、標本誤差簡易早見表という便利なものを使わせていただきます(これも、自分で探してもらうとして・・・)。

今回のデータではどうなるか。
(信頼度95%で。「信頼度」ってなんだ?という話になるのですが、これもスルーします。。)

  • シャープ→今回の調査では、125人のサンプル数で86.4%
    →かなり下駄をはかせて、200人の85%ラインでみると、標本誤差は±5.0%
    →なので母集団推定値(真の満足度)は、81.4%~91.4%の間にある。
  • パナソニック→今回の調査では、82人のサンプル数で82.9%
    →少し下駄をはかせて、100人の80%ラインでみると、標準誤差は±8.0%
    →なので母集団推定値(真の満足度)は、74.9%~90.9%の間にある。

という結果になります。(仕事で使うときは、もっときちんと計算をしますが・・・)

この結果からは、推定値の幅にかなりの重複区間があるので、シャープとパナソニックの真の満足度に差があるとはとてもいえない結果となっているわけで、「満足度は、シャープがトップ!」と見出しをかかげると、この記事へのYahoo!のコメント欄のように、「ほんとかよ? -_- 」という反応を呼び起す結果になるわけです。。。

このあたりの話は、「視聴率調査」で、いつもいつも語られるている「視聴率1ポイントの差に一喜一憂しても意味がない」といわれる話と同じなわけです。しかし、今回のような記事がつぎからつぎへと出てくるところをみると、なかなか理解されにくい、マーケティング・リサーチのやっかいな課題でもあります。。。

(視聴率についての考え方については、↓の本の1章で説明されているので、興味のあるかたは、こちらの本をどうぞ。標本誤差の考え方が、説明されています。)

視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) 視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2007-04-13

■とはいえ・・・

だからといって、いつもいつも調査結果に対して「標本誤差」を計算しないといけないのか?、統計的仮説検定をしないといけないのか?、というと話は別。。。

なぜか?

標本誤差は、サンプル数を大きくすれば、どんどん推定値の幅が小さくなります。ということは、1ポイントの差でも「有意差あり」という結果になることもあるわけです。しかし、この「1ポイントの差」がマーケティングを考える上で、ほんとうに意味のある差なのかというと、これは疑問です。
逆に、検定で有意差がないとなったら、ほんとうにマーケティング上の差がないと断言できるのかとなると、これまた微妙な問題だったりします。
(というか、小さな標本で検定をかけると、ほとんど有意差のない結果ばかりということになりかねません。。。)

「標本誤差」という考え方は、マーケティング・リサーチを行っていく上で、確かにとても大切な考え方ではあるのですが、だからといって盲目的に信奉しても仕方のない考え方でもあると、個人的には思っています。
(ただ、品質管理とか、医薬品の治験、商品テストなど、厳密に誤差をみないといけない領域もあるということも理解しておいてください。このあたりのニュアンスが微妙で、伝えるのに苦労するのですが。)

「統計的に有意差がある」ということと「マーケティング上、意味のある差である」ということは、別々に考えるべきだろうということです。

個人的には、納得性のある差であれば検定などせずに解釈をする、一方で、商品テストなどデータの厳密さを求める場合や、結果に疑問が残るような場合にはきちんと検定を行う、というスタンスをとればいいのではないかと思っています。

いずれにせよ、「標本誤差」とか「統計的仮説検定」は、リサーチを行なっていく上では避けて通れない考え方ですので、一度きちんと理解することをお勧めします。
(といいながら、自分がほんとうに理解できているのか・・・?[E:bearing])

おまけ・・・
参考書ですが、「これ!」といったものは、まだ見つけられていません。。。
ただ、以下の2冊が比較的お勧めかな、と思っていますので、よかったらどうぞ。

現場で使える統計学 現場で使える統計学
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2006-09-28

↑以前、このblogでも紹介しています(→こちら)ので、そちらも参考にしてください。
数式で理解せずに、概念的に理解しようというと、この本でしょうか。

心理統計学の基礎―統合的理解のために (有斐閣アルマ) 心理統計学の基礎―統合的理解のために (有斐閣アルマ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2002-06

↑数式いっぱいです。。。
しかし、初歩を抜け出し、より理解したい人向けの本としては、いい本だと思います。

「ビジュアルシンキング」

ほぼ1ヶ月ぶりの投稿なのに、備忘録ですいません。。。

マーケティング研修やコンサルをしている㈱シナプスの家弓氏のブログから。
「ビジュアルシンキング」について整理されたものを、シリーズで紹介しています。

「ビジュアルシンキング(1)~可視化による思考法」
「ビジュアルシンキング(2)~アイデア発想」
「ビジュアルシンキング(3)~発想のツールやスキル」
「ビジュアルシンキング(4)~構造化」
「ビジュアルシンキング(5)~総括」
(『ロジックとパッションの狭間から。。。』)

第1回目の、つぎのフレーズに「そうそう!」と。

シナプスでの会議では、ホワイトボードを徹底的に使いこなすことを推奨・徹底していたことに発端があります。

よく、会議と称しながら、数人で集まって1時間もただしゃべっているだけという光景があります。このような会議に限って、同じような話の周りをぐるぐるまわっているだけとか、何を話したのか結論がないとか、時間の無駄に終わってしまうことが多いように感じています。

そこで、「ビジュアルシンキング」。
「なぜビジュアルシンキングなのか」から初めて、いくつかのツールや考え方を紹介、最後の回では、家弓氏自身が行った講演資料づくりのプロセスを紹介しています。
(このプロセスも、私のやり方に近いものがあったので、「やっぱり、そうだよね」と。ここまで、きっちりとはしていませんが。。。)

家弓氏にとってはこれが商売のネタですから、詳細まで紹介しているわけではないので、もしかしたら食い足りないと思われる方もいるかもしれませんが、ビジュアルシンキングについての最初の取っ掛かりとして、参考になる内容だと思います。

少し関連して。
以前、「グラフィック・ファシリテーション」というのを聞いたことがありました。
(名称を忘れてしまい、探し出すのに苦労しました。やはり備忘録は大切・・・)

こちら↓で、どのようなものか紹介しています。

グラフィック・ファシリテーション.jp

会議の内容を、ほんとうに「絵」にしてしまうというものです。
「絵」ですから、あいまいさがあると描くことができません。究極のビジュアルシンキングともいえるでしょうか?興味がある方は、こちらもどうぞ。
(個人的には、一度、現場を見てみたいと思っているのですが。。。)

統計データの公開

統計データの二次利用に関するリリースが、2本発表されていますので、ご紹介しておきます。

◆総務省統計局

今月8日(2009/5/8)、総務省統計局から下記のリリースが発表されています。

統計利用の一層の拡大に向けて-匿名データの提供とオーダーメード集計
                                   (総務省統計局)

ただし、誰でもOKというわけではなく、「学術研究を行なう研究者」に対してという限定つきですが。

公開されるデータは、

・全国消費実態調査

平成元年、6年、11年、16年

・社会生活基本調査

平成3年、8年、13年

・就業構造基本調査

平成4年、9年、14年

・住宅・土地統計調査

平成5年、10年、15年

また、オーダーメイド集計に対応するデータは、

・国勢調査

平成2年、7年、12年、17年

です。

実際に対応を行うのは、統計センターになります。こちら↓を参照ください。

統計データアーカイブの運営(独立行政法人統計センター)

◆日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)

こちらは先月になりますが、JMRAからも同様の制度に関するリリースが発表されています。

「JMRA リサーチ・データ・アーカイブ」に関するお知らせ
                                           (JMRAリリース・2009/4/17)

サービス提供のHPはこちら↓。

JMRA-リサーチ・データ・アーカイブ(JMRA)

やはりこちらも、学術研究・教育限定ですし、提供範囲(概要のみ・集計表・データ等)もさまざまですが、JMRA会員社で行われている調査を知ることができるという点だけでも意義があるのかなと思います。さらに、データの再分析までできるデータが増えれば、簡単には収集できないデータも少なくないので、研究目的だけとはいえ大きな貢献を果たすのではないかと思います。

日本以外では、このようなデータの二次利用は可能だという話を聞いていましたが、やっと日本でも土壌ができてきたようです。これを最初の一歩として、データ利用環境がさらによくなり、研究の数や深さが増していけばよいなと思います。

PS.
関連して、本を一冊。
本屋さんに行くと平積みされているようですので、すでに読んだ方も多いと思いますが、↓の本が出ています(いまはやりの「○○力」がタイトルなのが、成功要因のひとつ?・・・)

内容は大きく3章構成で、1章は基礎編として世の中のさまざまなデータを例にデータの見方を解説、2章は中級編として平均、分散、正規分布、大数の法則など統計の基礎の説明、そして3章は上級編として過去データから未来を予測する方法を紹介しています。

本日紹介した統計局やJMRAのデータは研究者の利用を前提としていますが、研究者でなくても世の中にあふれているデータの見方を知っていると、社会の見方も変わってきます。こういう本が売れることは、とてもいいことですね。

不透明な時代を見抜く「統計思考力」 不透明な時代を見抜く「統計思考力」
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2009-04-15

クラウドソーシング関連備忘録 (and more…)

クラウドソーシング関連の記事で、備忘録。
(日経BP社のHPは登録制になっていますので、未登録の方はご覧いただけない場合があります。無料で登録できると思いますので~ご確認ください~、ぜひ登録してご覧ください。)

◆今注目される「クラウドソーシング」ならばできること

日経ビジネスオンラインの記事から。

今注目される「クラウドソーシング」ならばできること~”個人発”から世界が変わる可能性(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/5/1)

クラウドソーシングについての、いま現在のひとつの整理かと思います。
あたりまえのことではありますが、クラウドソーシングも万能ではない。そこで、

それではクラウドソーシングを活用する際に必要な要因とは何だろうか。筆者が考える成功要因は、(1)参加者の量と質、(2)適切に設定された課題、(3)オープンな環境の整備、(4)インセンティブである。

という整理をしています。
(さらに、国家としてのイノベーション戦略まで話が及ぶのですが・・・)

あわせて、同シリーズの↓の記事もぜひ。
クラウドソーシングでは必ずケースとしてあげられる空想生活についてです。

「あるといいな」が形になるサイト~消費者のアイデアは無尽蔵の資源
(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/4/15)

◆誰でもメーカー

こちらは、「日経エレクトロニクス」の創刊1000号記念特集。
WEB上での特集ページが、こちら↓。

誰でもメーカー(Tech-On/日経BP社)

そして、記事の一部を紹介しているのが、こちら↓。

日経レクトロニクス2009年3月23日号
特集・誰でもメーカー ~User Generated Deviceが拓く新時代
(Tech-On/日経BP社)

日経エレクトロニクス2009年3月23日号
特集・誰でもメーカー ~消費者は商品開発者になれるか,押し寄せるユーザー参加型開発の波(Tech-On/日経BP社)

「UGD」という造語をつくっていますが、編集長のあいさつ文を紹介しておきます。(ちょっと長めの引用になりますが)

さて,1000号記念特集の内容です。エレクトロニクス業界は,これまで数多くのエンターテインメントを消費者に提供してきました。ラジオ,テレビ,オーディオ,携帯電話,ゲームなどなど・・・。その販売によって生まれた収益は研究開発の原資となり,新技術が次々と生まれました。大量生産した同じ仕様の機器をできるだけ多くのユーザーに届けることによって,エレクトロニクス業界は巨大な産業に成長したといえます。

 マス・マーケットに完成品を届ける――。この大量生産型ビジネスとは異なる潮流が今,デジタル家電などの世界に押し寄せようとしています。ユーザーが機器やサービスの開発に参加し,メーカーが提供するハードウエアの機能モジュールやソフトウエアなどを組み合わせて,自分仕様のデジタル機器を作り上げる動きです。本誌では,こうしたユーザー参加型の開発環境から生まれた機器を「UGD(user generated device)」と名付けました。

 UGDの発展を支えるのは,これまでのようなマス・マーケットではありません。開発したユーザーに共鳴できる人々が構成する無数のミニ・コミュニティが相手です。この変化が,従来の大量生産型ビジネスを揺さぶることになるのでは・・・。こういった視点から,今回の特集「誰でもメーカー~User Generated Deviceが拓く新時代~」をまとめました。
                                    (引用元はこちら

興味を持った方は、ぜひ本誌も読んでみてください。

◆で?

で、これらの記事をみて思い出したのが、少し前の日本マーケティング・リサーチ協会実施のセミナー。題して、「Web2.0とマーケティングリサーチ」。(2009年3月に実施されました。JMRAにしては挑戦的な内容でした^^;)

このセミナーで、㈱電通ネットイヤーアビーム代表取締役社長・及川直彦氏の講演タイトルが「Web2.0時代のマーケティング戦略」で、クラウドソーシングにも関連する内容でした。
(この時の講演内容のベースとなったと思われる論文が、日本マーケティング協会発行『マーケティング・ジャーナル』111号(2009年1月発行)に掲載されています。タイトルは、「デジタル情報技術がもたらした事業環境における新たな商品開発戦略~いわゆる「Web2.0」的な事業環境を概観し、それらの商品開発戦略への意味合いを探る~」です。今回の内容に興味を持った方は、こちらもぜひ。)

ここまで読んできて、クラウドソーシングなんて、リサーチと関係あるの?と思う方。マーケティング・リサーチ協会が、こんなセミナーを実施しているんだから、あるんですよ。いつまでも、コンベンショナルなリサーチだけでいいの?クライアントは、こんなに進んでますよ、という意味で。もしもクラウドソーシングがあたりまえになったとしたら、外部機関としてのリサーチ会社の役割はどうなるのか?、ということを考えてしまいます・・・。

及川さんは講演の中で、キーワードについて「この言葉、知っていますか?」とたびたび問われていました。リサーチ関連のワードだけでなく、こういうワードを知っていると知らないとでは、いま起こっている現象についての理解が違うんだろうなと感じた次第です。
たとえば、こんな↓ワードです(今、資料を見直して気になったワードをあげています)。
どれくらい知ってますか?気になる方は、ぜひ自分で調べてみてください。

「Web2.0」「集合知」「マッシュアップ」「ユーザ・エクスペリエンス」「Web3.0」
「コンテクスト」「行動ログ」「SECIモデル」「情報の粘着性」「レコメンデーション」

(このblogでの過去の関連記事は、こちら↓。あわせてどうぞ。)

◆おまけ

クラウドソーシングではないですが、日経BPでの記事を拾っておきます。
(別エントリーの方がよかったかな・・・)

エスノとまでいえるかどうかですが、観察調査からの展開事例です。

キリンビバレッジ・店頭で顧客の検討状況を観察 ~目を引く販促手法を特定し、売り場作りに反映(IT-Pro/日経BP社2009/4/10)

こちらは、広~い意味ではクラウドになるのかな?。。。

三菱地所、無印良品仕様のマンション販売 ~良品計画のサイトで4万3000人の声を収集(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/5/8)

こちらは、前にも記事があったような気が・・・。ニューロ系の事例です。

カネボウ化粧品、化粧と女性心理の関係性を解明 ~脳科学を応用した「ニューロマーケティング」を模索(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/4/24)

そして、こちらは個人的なメモで(みなさんも、興味あると思いますが・・・)

徹底解説!行動ターゲティング(日経ビジネスONLINE/日経BP社2009/3~4)

雑誌『プレジデント』石井先生のコラム part3

雑誌『プレジデント』に掲載される石井淳蔵先生のコラムの紹介、Part3になります。
前のエントリーとの関連エントリーですので、あわせてごらんください。
(→こちら。先生の著書『ビジネス・インサイト』の紹介です

まず、このblogでの石井先生関連のエントリーのリンクから。
(いずれも、雑誌『プレジデント』のHPへのリンクです)

マーケティングコラム(備忘録) (2007/3/30)

雑誌『プレジデント』石井先生のコラム part2 (2008/6/2)

では、新しいコラムの紹介を。
(一部、前回とダブリがありますが、関連性がありますのであえて)

■本質を見抜く力「ビジネス・インサイト」を磨け(2008/6/2号)

ある一つの事象から、新しいビジネスの価値を生み出す能力──。
筆者は、二つの事例を交えて、この能力を身につける方法論を説く。

■マネジメントの必須条件「ミッション、ドメイン、成果測定」(2008/8/4号)

今日の経験を明日に繋げるためにはどうすればよいか。
筆者は、マネジメントのサイクルを回す三つの要素を解説する。

■沈むGMS、粘る百貨店(2008/9/28号)

企業は業態を超えられないという。
果たして克服する術はないものか。
GMSと百貨店における長期分析から明らかにする。

■仮説検証の限界、新しい「知価創造」の技法(2008/12/1号)

人には「知らないうちに知ってしまう」ことで、確信が閃くことがあるという。
筆者はこの「暗黙の知」について、メカニズムと重要性を説き明かす──。

■「誤算の連鎖」と価値創発のメカニズム(2009/2/2号)

日常会話の過程では、話し手の当初の意図には
存在しなかった新しい現実が創発される。
この過程はマーケティングのモデルになりうると筆者は説く──

■常識を打ち破る「創造的瞬間」のつかみ方(2009/3/30号)

不況の時代、経済の構造改革にとって重要なのは
「創造的瞬間」の概念であると筆者は説く。
ダイエー創業者・中内功の創業当時の苦悩から、
その概念を明らかにする。

日本版顧客満足度指数(日本版CSI)モデル

新聞で記事を見て、あわててチェック。
(朝日新聞では2009/3/17の経済面。たった25行のべた記事?・・・)

しかし、具体的な内容の発表会(シンポジウム)は、すでに16日に終了していました。
(そういえば以前、朝野先生(首都大学東京大学院)から、このお話をうかがっていたことを思い出す。もっと早くからウオッチしておけばよかったと後悔・・・)

なので、ここではWEB上で集められる資料を紹介しておきます。
(もしも、もっと具体的な内容についてご存知の方がいらっしゃいましたら、参考HPなどご紹介いただけるとうれしいです。)

サービス業に関わる方は、確認しておいた方がいいかと思います。

◆サービス産業生産性協議会HP

まずは、発表元から。

サービス産業生産性協議会のリリースのページ

ここを見ると、今回の「日本版顧客満足度指数(日本版CSI)モデル」の特徴として、つぎの3つをあげています。

1、  消費者の購買行動に共通する心の動きをモデル化したもので、サービス産業全体を業種横断的に比較ができます
2、  顧客満足度だけでなく、満足および不満足にいたる原因と、満足および不満足だった結果としてとるであろう行動までも分析できる因果モデルです。
3、  ヘビーユーザーだけでなくライトユーザーも含むサービス利用者の全体像を明らかにするために、サービスの利用経験者から一定数の信頼できるデータをとっています。

記者発表資料のPDFで概要はわかるんですけど、詳細はちょっとわからない感じ。

◆シンポジウムに参加された方のblog

そこで、実際にシンポジウムに参加された方のblogを紹介。

日本版CSI(顧客満足度指数) (「調査マンの独り言」2009/3/18)

詳しい内容は直接ご覧いただくとして、

ただ、業界横並びの思想は前世紀的な古い考え方です。企業の戦略を考える材料としては、もう少し先を見た独自性のある観点がないと、情報としての価値は薄いようにも感じます。

という感想は同意。ただ、つぎの企業担当者のコメントも、またなるほどと思わされる。。。

この手の話はコンサルから嫌ほど売込みがある。さらに、マスコミのランキングに翻弄されたうえに、社内からもいろいろ言われて、ウンザリするといった本音の話が垣間見えました。
こういう事から、ある程度業界スタンダード的なものが合った方が、担当者の負担低減にも繋がると言うこともあろうかと思います。

これに近い話は、実はメーカーとお仕事をしているときに聞いたことがありました。
要は使い方。調査マンさんおっしゃるように、この指標は、行政機関やマスコミなどに積極的に利用していただいて、企業さんにはこの指標は現状把握のツールのひとつとしていただきながら、戦略的な課題解決のためには、独自のリサーチをしていただけるとよいかと^^;。

◆座長である小川先生(法政大学大学院)のblog

つぎに、開発プロジェクトの座長である小川孔輔先生(法政大学大学院)のblogから。
ここでは、狙いと意義について知ることができます。

日本版CSI(顧客満足度指数)開発の現在 (「Professor Ogawa」2008/7/26)

こちらで、ポイントのひとつである「業界横断」の狙いをつぎのように説明しています。

「携帯電話に支払うお金が増えたので、旅行に行かなくなった/本を買わなくなった」などと良く言われます。これは、個々のお客様が「同一業種内」ばかりで比べているのではなく、「自分が接している様々な商品・サービス」を比べて選択をしていることを示しています。「うちの業界の中では評判が良い方なんだけど、業界全体の調子は良くないなあ」というような業種・業界がたくさんあるのですが、それって「自分の業界だけを見ている内弁慶」になってしまっていて、「お客様の心」や「お客様の気持ち」にまで踏み込んでいないから起きてしまっていると考えられます。

業界内でよい評価だとしても、他業界との相対的な比較でその業界のポジションが低ければ、ずるずると落ち込んでいく可能性がある。あるいは、これまでの業界基準とはまったく異なるサービス水準で参入されたらどうなるか、ということですね。
(なんか、身につまされる話でもあるような・・・。どうです?調査業界は。今回はBtoBは対象外かもしれませんが。)

また、つぎの記事では、そもそもの経緯を垣間みることができます。

「日本版顧客満足度指数の構築を」連載:続・サービス産業の生産性向上7
(「Professor Ogawa」2008/12/21)

そして、パイロット調査の結果についてのコメント。

日本版顧客満足度調査(JCSIの開発を終えて) (「Professor Ogawa」2009/3/6)

ここをみると、対象は「15業種や約180社(各300サンプル、全国調査)」のようです。
(実査はどこがやったんだろう、ネット調査みたいだけど。と、ちょっと下世話な興味^^;)

◆関連本

本題は以上ですが、ここでサービスや顧客満足関連の本を。

実務で顧客満足度調査をやっていると、たびたび悩ましい結果に出くわします。そのひとつの側面について言及しつつ、サービスについて総括的に整理しているのが、この↓本です。
副題にある「顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント」というフレーズは、まさに!と思います。この点を無視して、満足度だけを単純に比較しても・・・、だと思います。

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント

顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2009-01-17

サービスに関するものではないですが、「顧客満足度」といえば、J.D.パワー社。広告でよく登場する「NO1マーク」は、この会社の調査結果であることが多いです。
そのJ.D.パワー社からの本が、こちら↓。宣伝っぽい側面も多分にありますが、顧客満足測定の本家・本元でもあるので、さまざまな事例を示しながらCSを紹介できるのが強み。

J.D.パワー 顧客満足のすべて J.D.パワー 顧客満足のすべて
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2006-08-25

いまでは古典になってしまいますが、個人的に「サービスとは」を考えるフレームを与えてくれたのが、この↓本。「真実の瞬間」「サービス・サイクル」「サービス・トライアングル」などなど、サービスの基本を理解するには良書だと思うのですが、どうも絶版のよう。。。おしい。(中古はあるようです)

サービス・マネジメント サービス・マネジメント
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2003-04

◆さらに蛇足ですが

日本版CSIから離れてしまうのですが、もしかしたら、こちらの方に興味がある方が多いかもしれませんので。。。

今回紹介した「サービス産業生産性協議会」のHPはお勧めです。とくに、

専門委員会のページ (サービス産業生産性協議会)

の「科学的・工学的アプローチ委員会」の議事要旨。各回とも事例報告が行われ、その資料PDFがあるのですが、これがなかなか。

たとえば、2009年2月27日の回は、最近エスノグラフィの事例でよくお見かけする大阪ガスの方が、「サービスサイエンス 行動観察技術のビジネスへの応用」と題して事例報告をしています。

科学的・工学的アプローチ委員会(第4回)議事要旨 (サービス産業生産性協議会

他にもいくつかの事例をみることもできますので、丹念に追ってみてください。(平成19年版もありますので、お見逃しなく)

クラウド、エスノ、ペルソナ~最近のWEB記事から

備忘録として、この1ヶ月くらいの間に見つけたWEB記事をご紹介。

◆クラウドソーシング

japan.internet.comの記事から。
この1ヶ月くらいで立て続けに、クラウドソーシング関連の記事が連載されています。
(以下で紹介するリンクの他にも、関連記事はありますので、そちらもご覧ください。)

2つめはDellの事例、3番目はこのblogでも書籍を紹介したP&Gの事例(→こちら)。

まずは、「実は意味を知らないビジネス用語、第1位の「クラウド」って何?」から読んでみてください。クラウドソーシングとは何か?、誤った認識とは?、限界は?、危険性は?、などがまとめられています。たとえば、つぎの一文のような。

一方で、クラウド・ソーシングに過度の期待をするケースもある。クラウド・ソーシングのためのオンラインコミュニティサイトを作れば、何でも自由自在にソーシングができると考える人もいる。ボタンを押せば何でも自動的に出てくる”打ち出の小づち”といった具合である。

世の中には「打ち出の小づち」は、ないですよね。。。
(そういえば、多変量解析も「打ち出の小づち」のように思われている節がありますが、そんなことはなく・・・。"Garbage in,Garbage out" 「ゴミを入れても、ゴミしか出ない」のです。)

◆エスノグラフィ

こちらは、WEB担当者Forumでの新たな連載のよう。
エスノグラフィに限らず、ユーザビリティ関連の内容のようですが、2回目のこの記事がエスノグラフィに関連した内容。

インタビュー調査の極意「ユーザーに弟子入りしよう」
(Web担当者Forum:2009/2/25)

内容はぜひ一読を。つぎの一文などは同意できます。(ちょっと言いすぎかも、ですが)

そして設計者は「ユーザーの声」ではなく「ユーザーの体験」を分析するべきだ。ユーザーの声は、すでにユーザー自身が分析した結果なので、もはやあらたな発見はない。

インタビューの例も、少しですが紹介されていますので、インタビューの経験がまったくない方もわかりやすいと思います。

(この記事に出てくる、「コンテキスト調査法」という言葉。これ、私がいま考えているリサーチのキーワードのど真ん中です。ただ、ここでは新たなインタビュー手法という狭い意味で使っているようなので、その点が異なりますが。ひとりごとでした。。。)

◆ペルソナ

日経ビジネスONLINEで、立て続けに「ペルソナ」関連の記事が。(どうやら、日経情報ストラテジーの3月号で、ペルソナ手法を紹介したようです)

実は、気になりながらもこれまで紹介していなかったのが、この「ペルソナ」です。ずいぶん前に本も出ていたし、雑誌でも特集記事があったし、ワールド・ビジネス・サテライト(テレビ東京)などテレビでも紹介されているのを見たこともあります。
しかし、こちらの理解が十分でなく、手法としての新しさがわからないというのが正直な感想でした。STPとどう違う?という感じで。。。

しかし、こちら↓のblogを読んで、納得。なるほど。。。
まずは、こちらの記事を読んで、ペルソナについての理解を。

マーケティングの顧客セグメントとペルソナ(DESIGN IT! we/LOVEさんのblog)

このblog「DESIGN IT! we/LOVE」は、他にもおもしろい&ためになるエントリーが多いので、お勧めのblogです。とくに、デザイン関係の方にお勧め。(ちょっと、エントリーが長いのが難ですが・・・)
まずは、「ペルソナ」のタグがついているエントリーから読んでみるのがいいかも。

「ペルソナ」についての本は、まず、この2冊でしょうか。

ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2007-03-16

ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2008-05-30

(2冊目の「ペルソナ作って、それからどうするの?」の著者は、DESIGN IT! we/LOVEの管理人です)

ニューロマーケティング(みたび)

日経ビジネスONLINEで、ニューロマーケティングについての連載が始まっています。
(おそらく閲覧には会員登録が必要だと思いますが、登録しても損はないと思います。)

「ニューロマーケティング~話題の新手法の実力」
日経ビジネスマネジメントリポート(日経ビジネスONLINE)

連載はまだまだ続くようですが、ニューロマーケティングについての包括的な理解ができる内容になりそうですので、ご紹介しておくことにします。
これまでに、3回の連載が終了していおり、そのタイトルはつぎのような内容。
(2009.3.3追記:その後の連載タイトルを更新しています)

ヒット商品は「脳科学」が作る(2009/2/2)

脳が語る「不況だから値下げ」の誤り(2009/2/7)

脳は「セクシー広告」がお嫌い?!(2009/2/14)

脳科学は不況から救う(2009/2/21)

記者が体験した「広告評価」の”威力”(2009/2/28)

日本の市場は100億円に育つ(2009/3/7)

ハーレーダビッドソンは脳に心地よい(2009/3/28)

茂木健一郎が語る「グーグル、強さの秘密」(2009/4/4)

茂木流「売れない時代」に売る方法(2009/4/11)

第3回で紹介されているのが、↓の本。

買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界 買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2008-11-21

この本、たしかにおもしろい。おもしろいけど・・・、少しエキセントリックだな、というのが正直な感想でした。(なので、単独エントリーとしては紹介しなかったのですが。)

そしてこの本、とても気になる記述もすくなからずあり。このあたりを、以下で。

◆ニューロマーケティング、確かにおもしろいけど。。。

このblogで、「エスノグラフィ」と並ぶ注目コンテンツが、この「ニューロマーケティング」です。
これまでも、以下のようなエントリーで紹介しています。

リサーチにはこのような限界がありますよ、脳科学の世界をのぞくとこんなこともいわれてますよ、人ってほんと複雑ですね、すでにこんなことまでできるようになってますよ、などなどのことをお伝えしたいと思ってのエントリーです。

ただし・・・
このようなエントリーを再三アップしていながらも、少し気になっていることもあり。。。
なので、ここでひとつ、お断りしておきたいことがあります。
それは、これら「エスノグラフィ」や「ニューロマーケティング」を、無条件に、手放しで紹介しているわけではないということです。
「従来のリサーチはもう終わった、これからは新しい手法じゃないと!」などということを言っているわけではないということです。
この点は、了解いただきたいなと思ってます。

たとえば、上↑で紹介した本にも、つぎのような記述があります。

私が言いたいのは、炭酸飲料であれ、タバコであれ、テレビゲームであれ、この世のありとあらゆる商品について、会社は消費者の反応を痛ましいほど予測できていないということだ。本書でずっと述べているように、私たちの言葉と行動は一致しない。したがって、市場調査は信頼性が低く、ときには会社をひどく間違った方向に導いたり、さらには商品をぶち壊しにしたりしてしまうことさえあるのだ。(p.210)

アンケート、サーベイ、フォーカス・グループといった従来の市場調査の役割はどんどん小さくなり、ニューロマーケティングが商品の成功と失敗を予知するための主要なツールになっていくだろう。(p.219)

この本に限らず、このようなニュアンスの記述は、散見されます。
確かに、これまでのリサーチにはさまざまな限界がありますし、実施環境もかなり厳しくなってきています。そして、新たな科学の進歩で、いろいろな測定方法やデータの収集手段の可能性も広がっています。
けれど、だからといって、「これからのリサーチは、ニューロだ!」というのも行き過ぎでしょう。これまでの(定量含む)手法も、使い方をきちんと考えれば、まだまだ有効だと思うのです。逆にみると、きちんと使いきれていないと思うのです。
なので、新しい手法について、「こういう考え方や手法があるのだな」という理解をしておくことは、とても大切なことだとは思うのですが、安直にこれまでのリサーチを否定することがないようにしていただければと思います。
(もしかしたら、こちらの疑心暗鬼かもしれませんが、念のため。。。)

ちょっと専門的&難しいと感じるかもしれませんが、ニューロマーケティングに関しては、

『ニューロサイエンスとマーケティングの間』 (kaz_atakaさん)

というblogでの以下のエントリーもあわせて読んでおくといいと思います。

脳科学、大脳生理学とニューロサイエンス

現在の脳科学、脳神経科学で脳の活動はどこまでわかるのか(6回シリーズ)
→最終回のまとめは、こちら↓

現在の脳科学、脳神経科学で脳の活動はどこまでわかるのか(最終回)、、、および現在のニューロマーケティングについての個人的所見

このblogでは、他にもつぎのようなエントリーもおもしろいです。

脳は「市場」をどう感じるか (4回シリーズ)

市場における原子

知覚のポイントからみた商品、サービスの打ち出し原則 (5回シリーズ)

(つまり、いいたいことは、「視野は広く」です。ひとつの考え方に凝り固まることなく、いろいろな考え方を知っておけば、視野は広くなります。そして、このblogが視野を広くもつ一助になればいいなと思っています。)