リサーチ業界動向」カテゴリーアーカイブ

田下氏(インテージ)&杉本氏(マクロミル)インタビュー

もう一本、紹介記事になりますが・・・。

以前、コメントで萬さんよりご紹介いただいたテレビ番組「賢者の選択」、WEBでご覧いただけます。インテージ田下社長だけでなく、マクロミル杉本社長のインタビューの回もありましたので、あわせてご紹介。

テレビ番組「賢者の選択」オフィシャルサイト

(「賢者一覧」→「情報処理・提供サービス」と辿ってください。
 一覧の中に、田下氏、杉本氏の回があります。
 田下氏:2009年6月13日放送、杉本氏:2007年6月2日放送)

現在の仕事についての語りはあまり多くなく、むしろ「人となり」と「今に至る道」をメインとしたインタビュー内容になっています。

ですので、直接リサーチに役立つ内容というわけではないのですが・・・。
それぞれの会社の歴史について知りたい、社長のこれまでの人生を知りたい、創業や会社の転機でどのような判断をしたか知りたい、という方はどうぞ。
(現職の方より、これから調査業界、マーケティング・リサーチ業界に入ってみたいという方むけかもしれませんね。とくに、この2社を狙っている方^^;)

1本50分近い内容になっていますので、お時間のあるときにどうぞ。




インテージ2009年3月期決算

インテージの2009年3月期決算が発表になっています。
2009年3月23日に、東証一部に指定替になってから初めての決算となります。

決算説明会資料および決算短信は、こちら↓からどうぞ。
(いつもは決算説明会のストリーミング映像もあるのですが・・・。後日確認して、アップされていたらページを更新しておきます。
【追記】→5/22に公表されています、ライブラリーからどうぞ。50分近くの映像です・・・)

2009年3月期決算説明会(アナリスト、機関投資家対象)を開催しました
(インテージIRニュース・2009/5/19)

インテージIRライブラリー(2009/5/8に「平成21年3月決算期決算短信」)

数値を抜書きすると、下記のとおりです。

連結  売上    343億円(対前年+3.7%)
     営業利益  33億円(対前年+0.2%)
     経常利益  33億円(対前年+0.0%)

単体  売上    266億円(対前年+ 1.8%)
     営業利益  25億円(対前年+11.0%)
     経常利益  25億円(対前年+ 6.3%)

連結・単体とも、売上、営業・経常利益いずれも対前年プラスは維持しています。
この経済環境を考えると、検討しているといえるのでは?

データで気になるのは、セグメント別での「市場調査・コンサルティング」の数字。全体では、

売上231億円・構成比67%・対前年比+6.0%
(営業利益29億円、対前年比+0.3%)

という数字です。さらに、カスタムリサーチとパネル調査にわけてみると、

カスタムリサーチ  売上 88.7億円・対前年比+0.0%
パネル調査     売上142.3億円・対前年比+10.1%

という結果に。
ほぼ独占のパネル調査は順調に売上を伸ばしましたが、カスタムリサーチはやや苦戦といったところでしょうか?
そこで、さらにカスタムリサーチを細分化すると、

従来型調査     売上47.5億円・対前年比+2.2%
インターネット調査 売上41.2億円・対前年比-2.2%

インターネット調査が苦戦のようです。
決算短信の中でも、「ここ数年にわたって成長の牽引役であったインターネット調査の伸び率が鈍化したこと、競争が激化して受注単価が下落傾向にあることから、増収減益となりました。」とコメントしています。
インターネット調査の減速が、単にいまの経済状況による要因が大きいのか、無条件で成長する時代が終わりに近づいたという構造的な要因なのかは、見極めが必要です。
(個人的には、構造的な要因が大きいように思っていますが。。。)

そして、2009年度の重点課題でも、「カスタムリサーチ分野の構造改革」が筆頭に上げられています。前提となる市場環境の認識については、他の調査会社・リサーチ会社にとっても同様であると思うので、引用しておきます。

    • 中長期の観点では、リサーチやデータに対するニーズは高まることがあっても、後退することはない。
    • ただし、インターネットを基点とするパラダイムシフトが進み、その変化に対応できた企業のみが生き残ることができる。
    • 意思決定のための情報活用という観点からは、リサーチにとどまらず、周辺領域を含めた対応力の強化が成長のための必須条件。
                     (インテージ「2009年3月期決算説明会資料」P13)

この内容に同意できるかどうかは、皆さんご自身の判断で。。。(2つめなど、従来の調査会社に対しては、ある意味、挑戦的なフレーズであるとも取れますが・・・)
そしてこのような環境の中で、インテージがどのような方向性を考えているのかは資料をご覧ください。

さて、上場している同業2社はどのような状況か?
まだ年度末決算ではないですが、動向をピックアップしておきます。

まず、マクロミルから。

マクロミル社IR情報

第3四半期決算(2009/5/15)や業績修正(2009/5/8)からみると、苦戦している模様。
このような中で、創業者の杉本氏が「代表取締役会長兼社長」へ復帰することで、意思決定の迅速化等を図る方向性を示しています。

続いて、クロスマーケティング。

クロスマーケティングIR情報

こちらも、第1四半期決算説明会資料(2009/5/1)をみると、苦戦している模様。
とくに気になったのが、説明会資料P6~8のセグメント別情報。ここで、「大手調査会社」セグメントの売上が対前年比で▲32.1%。これは、どういうことか?・・・。(コメントは控えさせていただきますが・・・)

ただ、一方でクロスマーケティングは、さまざまな動きを同時にしています。たとえば、

株式会社リサーチアンドサーベイの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
(2009/5/18)

コンベンショナルリサーチを中心に実施している会社を子会社化することで、インターネット調査以外の業務にも対応し、「総合的なマーケティングリサーチ会社」を目指すとしています。

以上、上場リサーチ会社3社の決算と動向を整理してきました。
第1四半期のGDP▲15.2%という状況は、当然リサーチ会社にも影響しているわけで、各社とも苦戦しているようです。ただし、他業界に比べると、まだ傷は浅いのかもしれませんね。(そして、この3社以外はどうか?むしろ、そちらの方が心配・・・)

インテージの環境認識にあったように、「生き残る」はどこか?
この時期の対応と、今後の戦略にかかっているのかもしれません。

PS.
過去の、インテージの決算関連のエントリーはこちら↓。

インテージ決算2008.3

GIS+ネットリサーチ

GIS+ネットリサーチ、親和性はかなり高いと思っていたのですが、これまで具体的なサービスはなかったのでしょうか・・・?(ググってみても、めぼしいものは発見できなかったので・・・)

以下のリリースが発表されていました。

アイブリッジ、地図情報と連動したエリアマーケティングリサーチサービス「GISネットリサーチ」を提供~地図情報と連動した、エリアマーケティングリサーチが可能に(NIKKEI NET・2009/5/11)

年齢や性別、住所などの登録属性で調査対象者を抽出するのは、どこでもできますが、

「円形領域」「道路領域」「線側領域」「自動領域(主商圏)」「区画領域・自由領域」の区分でリサーチ対象地域・対象者の抽出が可能となった

のが、GISならではでしょう。
ただ、この機能によって何ができるの?、どのようなメリットがあるの?、ということを説明できるかどうかが勝負になりそうですが。。。
(メリット訴求がきちんとできるかどうかが、新機能によるリサーチ商品についてまわる悩みです。それと、コストパフォーマンス・・・。
いまでさえ主流となったネットリサーチですが、最初のころはかなり苦労されたと思います。
そういえば、マクロミルは杉本氏が社長に復帰していますね。どなたかも指摘していましたが、ユニクロを想起させます。。。閑話休題・・・)

こちら↓は、GIS+ネットリサーチといえるのかどうか?・・・。
単に、GISにリサーチデータをリンクさせるだけ?、という解釈をしましたが、どうなのでしょう?

ネットリサーチとの組み合わせでGISによるデータ分析がより身近に
(ZDNET Japan・2009/4/21)

「だけ?」とは書きましたが、データの見える化という点では、かなり効果的です。
店舗の商圏などを示せたりすれば、結構面白いのでは?
(ただ、サンプル数がネックになりそうです。狭いエリアでのマッピングだと・・・)

そもそも・・・
「GISってなに?」ということを説明していませんでしたが・・・^^;
こちら↓のページがわりと専門的でしょうか?お国のHPなので、具体的な商品の紹介はありませんが、GIS関連の情報を得るには、よいサイトだと思いますので、ご紹介しておきます。

GISポータルサイト(地理空間情報活用推進会議)

(まぁ、いまではカーナビやgoogle mapが一般的になったので、イメージしやすいと思いますが。。。)

「マーケティングリサーチの現状」by JMA

先日(2009/4/10)、日本マーケティング協会(JMA)の「マーケティングリサーチの現状:2008年度調査報告会」に行ってきました(→こちら)。

この調査はJMAが1985年から隔年で実施しているもので、今回で13回目になります。
報告内容≒報告書構成は、以下の内容です。

Ⅰ.MRの実施状況とMR担当部門に対する役割・期待
Ⅱ.外部調査機関の利用状況と委託業務内容の期待・満足
Ⅲ.「定性調査」の実施状況と実施上の課題
Ⅳ.MR情報の意思決定寄与度合と活用を高めていくための施策
Ⅴ.「ROI」を意識したMRの実施状況と将来のMRの重要性
Ⅵ.(参考資料)「海外事業におけるMR」の実施状況と海外MRにおける課題

セミナーでは、上記の結果報告とあわせ、アサヒビール、花王、日本コカ・コーラの3社によるパネルディスカッションが行われました。

とくに「Ⅱ.外部調査機関について」の報告内容で、いくつか考えさせられる点がありましたので、ご紹介しておこうと思います。(ここで、どこまで引用、紹介していいのかという問題もありますが、あえて・・・)
JMA会員社の方は、おそらく報告書が送付されていると思いますので、あわせて実際の報告書をご覧ください。

◆気になるポイント1:外部調査機関の選択重視点

まずは、下の表を。

20090414chart1

外部調査機関の選択重視点のトップが「コスト」になっています。
この点は、パネルディスカッションでも議論になりました。
調査実施時期が2008年の11月から2009年の1月という時期だったこともあり、経済の低迷が大きな要因となっているという解釈は、そのとおりだと思います。
また、パネラーの方が言っていたように、単純に「コストが下がればよいと思ってもらっては困る、安かろう悪かろうになる」というのも、ほんとうでしょう。

しかし、「コストの低減」のポイントが大きくアップしているのと同時に、「リサーチャーの優秀さ」「調査結果の分析」「調査結果の提言」が大きくポイントを下げているのが、気になります。

このセミナーの標題でもある「ROIを意識した意思決定に役立つ」ということ、つまり「投資効果=価値/コスト」という式で考えるとすると、“価値は期待していないから、コストを下げることで、投資効果に寄与してね”という声が聞こえてきそうです。。。
あるいは、“これまでは分析も期待していたけど、無理みたいだからコストで貢献してね”という声が。。。

外部調査機関に対する全体的な満足度も、TOP2では63%ですが、TOP BOXでは5%に過ぎない。これを「高い」と判断するか、「低い」と判断するか?・・・
(ちなみに、花王の方はノーム値の話の際に、「指標は、5段階のTOP BOXで判断する」とおっしゃっていましたが・・・汗。さらに、このTOP BOXの選択肢は「そう思う」です。「とてもそう思う」では、ありません・・・。)

◆気になるポイント2:外部調査機関への委託内容

つぎに、外部調査機関への委託内容です。
これも、個人的にはかなりショックな内容で・・・。

20090414chart2

調査設計は36%、報告書作成は40%しか任されていない、しかも前回に比べ10ポイント以上ダウンしている。

パネラーの方は、「定型調査だと設計も報告書もいらない場合が多いから、その反映では?」とフォローしてくれていましたが、それだけでしょうか・・・?
どうも、データサプライヤーとしかみられていないと感じるのですが。。。
(というか、設計も分析もできない会社がふえたから?)

◆気になるポイント3:新しい調査技法や分析手法の提案

もうひとつ議論になったのが、外部調査機関への期待での「新しい調査技法や分析手法の提案」について。
パネラーの方のお話を聞くと、新しいリサーチの可能性を模索している様子、切実さが伝わってきました。「調査会社の営業の方がお見えになると、コストのことはお話いただけるが、新しい手法を提案してくれる会社はほとんどない」とも。さらに、「新しい提案を持ってきてくれるのなら、門戸を開いていますから、どんどん持ってきてください」とも。。。

ただ、司会の近藤さんが、新しい技法・手法開発はクライアントや学会の協力もいただかないと難しいといった趣旨の話を振ったときの反応が、また気になり・・・。
今回のパネラー3社は、いずれも産学共同プロジェクトを行っていると回答。そして、そのプロジェクトの中にリサーチ会社は入っていない。つまり、研究・開発の相手として、リサーチ会社に期待はしていないというのが本心でしょう。いみじくも、「実査の段階、オペレーションの段階になったら、リサーチ会社さんにも入ってもらって・・・」と、つい本音を漏らしていましたが。。。

◆さて・・・

以上の結果について、調査会社の方はどのように感じたでしょう?
「深読みのしすぎでしょう、そんなことはないよ」?
「たしかに反省すべき点が多いな」?
あるいは、「たしかにそうかもしれないけど、それで?何か問題?」?

リサーチ・クライアントの皆さんはどうでしょう?
「そのとおりだから、少し考えて欲しい」?
「そこまでは言ってないよ、このご時勢だからさ・・・」?
あるいは、「たしかにそのとおりだけど、いいよ気にしなくて、期待しないから・・・」?

ポイント1~3の解釈は、報告書の中で書かれているものではなく、あくまで個人的なものです。しかし、このような状況=“リサーチ会社への期待感が低下しており、データサプライヤーとしての位置づけが強くなっている。結果、真のマーケティングパートナーとはなり得ていない”というのが、いまのリサーチ会社の大きな課題ではないかと考えています。
今回の調査結果は、これらが如実にデータとなって表れていると感じています。
この解釈が、杞憂であればいいのですが。。。
(あるいは、データサプライヤーで何がいけないのか?リサーチ会社はそういうものだ、という考え方であれば、それはそれでいいです・・・)

そして、調査のもっともおもしろいデータのひとつが自由回答。
今回も、ずいぶんと考えさせられる意見が多く寄せられています。データを見なくても、この自由回答を読むだけで、今後のリサーチ業界を考えるヒントがあると思います。

中でも、つぎの意見には思わず涙が・・・(^^;
これこそ、私が独立して「りんく考房」として活動しているコンセプトそのものです。勇気づけられました。

今後の調査実施の広がりを期待する意味で、あまり調査がうまくないクライアントの場合は特に、クライアントサイドと調査会社をうまくコーディネートするプロが必要ではないか。調査会社は会社として調査の実施完了に重点を置くため、そのマーケティング上の役立ち度には責任を持ちたくない、持てないことが多いのではと思う。マーケティングの全体を把握しつつベストな調査を企画実施し分析し提案することを仕事とする人間集団が調査会社とは独立して必要と思われる。これにより調査の品質だけでなくその役立ち度、価値が維持向上すると考える。
(報告書p63)

録画による視聴も測定可能に?

読売オンラインの記事から。

録画も視聴率測定、テレビ音声で番組判別…ビデオリサーチ
(YOMIURI ONLINE:2009/2/5

テレビ視聴率調査の「ビデオリサーチ」は、これまで集計できなかった「録画による視聴率」を測定できる装置を開発した。

たしかに、テレビそのものだけの、かつオンタイムだけの視聴率は、どれだけ視聴の実体を把握しているんだという話なので。。。
ただし、まだ「可能になった」という段階で、実施するかどうかはこれからのことなので、この点はお間違えないように。

しかし、録画でも番組視聴率が測定できるようになるとは言っても・・・。
録画視聴で、どれだけCMを見ているのかという問題もあるので、番組視聴率=CM視聴率とならないかもしれないのが、また悩ましいですね。。。

いまの視聴率調査の仕組みについて知りたい方は、ビデオリサーチ社のこちら↓のHPを。

視聴率について(TV RATING GUIDE BOOK) (ビデオリサーチ社HP)

本では、こちら↓の本が参考になります。

視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) (朝日新書) 視聴率の正しい使い方 (朝日新書 42) (朝日新書)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2007-04-13

そういえば、ビデオリサーチ社からは数日前に、このような↓リリースも。

6媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・インターネット・交通)の広告出稿データを統合 ビデオリサーチ『iNEX2 6媒体広告統計』のサービスを開始
(ビデオリサーチ社プレスリリース:2009/1/22)

広告主にとっては、こちらの方が興味あるかもしれませんね。。。

【追記:2009.2.23】

関連記事が出てましたので、追記を。

メディアの多様化で変わる視聴率(接触率)調査(IT Pro:日経BP)

リサーチ新サービスをいくつか

ヤフーバリューインサイト社以外でも、このところ新サービスのリリースがいくつかありましたので、連投でご紹介を。

◆ニールセン・カンパニー

こちらは、注目のニューロマーケティング関連のサービス。

ニールセン・カンパニー、脳波でマーケティング効果測定の新事業(六本木経済新聞)

ニールセン・カンパニーの関連リリース(→セミナー告知ですが、すでに終了してます)

ニールセン・カンパニー、新たな神経科学の最先端技術をマーケティング手法に応用
(ニールセン・カンパニー米国より発表された報道資料の翻訳:20080207)

日本でもデモセミナーを開催し、本格的にサービス導入するようです。
六本木経済新聞に書かれているサービス価格をみると、どうかな?という感じもしますが。。

そういえば、本屋で↓の本を発見。買おうかどうしようか、迷ってます。。。(たぶん、買うでしょう・・・)

買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界 買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2008-11-21

◆マクロミル

マクロミルは、最近FA系のシステムに注力しているのかな?

マクロミル、自由記述の分析機能をASPで提供するサービス(マイコミジャーナル)

マクロミル、新サービス 「Quick-MINING ASP」 を提供開始(マクロミル社リリース)
「クイックマイニングASP」サービス紹介ページ(マクロミル社)

WEBリサーチでは、せっかくFAがテキストデータで落ちてくるのに、分析はこれまでどおりではもったいない・・・、と常々思っていましたが、とうとうASPでテキストマイニングができるようになりましたか。。。
ただ、テキストマイニングは使いこなすのが結構たいへんだというのが個人的な認識でもあり・・。魔法の箱ではないので、がらがらぽん、とおもしろい結果が出てくるわけでもなく・・。
なんか、「・・・」ばかりでキレの悪い紹介になってしまいましたが^^;、このあたりはすべてのテキストマイニングのソフトについてくる問題でもありますので、おもしろい分析になるかどうかは、利用者の力量次第ですね。
(料金説明の「上記料金には、基本的な辞書登録設定も含まれています。」という記述には期待しますが、どの程度やってくれるのでしょう。ここが肝ですね、ある意味。)

また、マクロミルでは、以前↓のようなサービスもリリースしていました。
(テキストマイニングといい、このサービスといい、このようなサービスがリリースされるのは、いわゆる狭義の「アンケート」だけでは限界があるという認識がクライアントにあったということなのでしょうかね?・・・)

「マインドミル(Mind Mill)」サービス紹介ページ(マクロミル社)

◆ネットレイティングス

ネットレイティングスからも、ネット視聴率データについてリリースが。

ニールセン・オンラインが「家庭と職場」全体の視聴率データの提供を開始、iTunesも集計対象にする「DMU」を導入(MakeZine)

ニールセン・オンライン、家庭と職場を総合した視聴率データの提供を開始
(ネットレイティングス社リリース)

広告における旧4メディアの元気の無さが伝えられ、これからはますますネットの時代かというときだからこそ、ネット視聴率への注目度は増していくでしょう。
そのような中で、ネット視聴率データの収集や算出方法で、大幅な仕様変更を行い、よりネット利用の実態に即したデータが得られるようになったということです。
(たとえば、日経系のメディアのランキングが上昇するというような結果に。)

YVIの「Search Insight」含め、こうしてリサーチサービスの新たな動向をみてくると、ほんと、リサーチの変動を感じます。。。

※WEB上で情報収集しているため、どうしてもWEB関連企業やサービスが目に留まるという側面もあるかもしれません。リサーチ会社の方で、「うちでもこんなサービスをリリースしてます」ということがありましたら、コメントやトラックバックでPRしていただいて結構です^^;
ただし、この1年くらいの内にリリースされた新しいサービス限定でお願いします。
また、コメント、トラックバックとも承認制にしておりますので、画面反映までに少しお時間を頂きますが、この点はご了承ください。

Search Insight(サーチインサイト) by YVI

ヤフーバリューインサイト社から、新しいサービスが発表されています。
(もう10日くらい前に発表になってますので、皆さんご存知かもしれませんが。。。)

「Yahoo!リサーチ」、新サービス「Search Insight(サーチインサイト)」公開
(ヤフー社リリース)

ニュース記事としては、たとえばこちら↓。

ヤフー「Search Insight」、ネットリサーチに検索行動データを融合(CNET Japan)

具体的なサービス説明については、ヤフー社のHPにて↓。

Search Insight (サーチインサイト)

さて、紹介はこれくらいにして、では実際に何ができるのか?
簡単に言ってしまえば、Yahoo!での検索結果を元に調査対象者を選定(絞込み)して、リサーチを行なう、ということでしょうか。

う~ん・・・、簡単に書いてしまうと、この程度なのですが。。。
実はこれ、かなり凄いことなのではないかと思うのです。当然、いまのところはYahoo!だからこそ実現できるサービスであるということもありますが、「リアルな行動を元に、リサーチ対象者を選定できる」ということのメリットは、かなり大きいものだと思います。

(他にも、”実購買データを元にリサーチができる”マクロミル社のQPRも、同様の意味で素晴らしいリサーチシステムだと思います。~ただし、「QPR」の本来の目的は購買データのトレンド把握で、購買データを元にしたアドホックなリサーチはオプションのようですが~
QPRについて、詳しくはこちらへ→「QPR(マクロミル社)」

もちろん、ふだんリサーチを行なうときも、「最近1ヶ月以内に○○を購入した人」とか「○○に関心をもっている人」という質問でスクリーニングを行い、リサーチ対象者の選定・絞込みを行ないます。
しかし、このように質問で絞り込みを行うのと、実際に「○○を検索している」という事実を元に選定するのとでは、対象者の濃度というのでしょうか、リアリティというのでしょうか、このあたりが結構異なるのではないかと経験的に感じています。。。「興味がある」というレベルと、「実際に検索を行った」というレベルでは、テーマに対する関与度が異なるのではないか、ということです。
さらに、リサーチの対象者=消費者=人は、スタティック(静的)であるわけがなく、ダイナミック(動的)なものであると捉える方が妥当でしょう。たとえば、ある時にふと「寒い・・・。手袋、買おうかな。」と思ったりする動物だと認識するのが正しいのでは?、ということです。
なので、「実際に行動を行った(Yahoo!のサービスの場合は、検索を行った)」時に、できるだけ近いタイミングで対象者を捉えることができれば、それがもっともリアリティのある情報が得られる瞬間だと考えることができそうです。

もっとも・・・
ヤフー社の説明をみると、基本的にプロモーション活動の一環~たとえば、検索連動型広告のキーワード改善とか、閲覧者のニーズに合ったサイト構築~といったテーマを想定しているようなので、もっと広い意味、たとえば新たな価値創造に結び付くインサイト把握といったテーマまでは視野に入れていないのか?、とも感じたのですが。。。
(このあたりは、使う方の勝手?^^;)

とくに広告という視点からは、MEDIOLOGICのタカヒロさんのエントリーが核心をついた記事だと思いますので、ぜひあわせてご覧ください。

検索動機を知るためのリサーチサービス(MEDIOLOGIC.COM)

クロス・マーケティング、上場へ

クロス・マーケティングは、設立当初からIPOを狙っているという話を聞いていましたが、このご時勢なのですっかり忘却の彼方にあったのですが・・・。

株式会社クロス・マーケティングが、東証マザースへの上場承認を得たようです。

新規上場会社「株式会社クロス・マーケティング」(東証)
新規上場企業の横顔「クロス・マーケティング」(ロイター)

会社概要、および上場に際しての目論見書については、会社のHPでどうぞ↓。

株式会社クロス・マーケティングHP

リサーチ会社では、インテージ、マクロミルについで3社目の上場です。
会社の沿革をみると、H15(2003)年の設立ですから、約5年での上場達成となります。そして業績はH19(2007)年12月期で、売上24.3億円、経常利益3.4億円。こんなに成長しているとは知りませんでした。。。

クロス・マーケティングといえば、調査画面をすべてカスタマイズ設計で作成することに特徴があります。他社では、調査システムを構築し、そのシステムの範囲の中で画面設計を行うのが主流です。オーダーメイドとレディメイドの違いですね。
カスタマイズ設計のいい点は、ほぼリサーチャーの希望に沿った調査画面を構築することができること。レディメイドの画面では、妥協しなければならないことが時々あります(ただし最近は、他社システムもかなりいろいろなニーズに応えられるようになってきていますが)。
一方で、ひとつひとつカスタム設計を行うので、人的工数が掛かるのが欠点。利益率をマクロミルと比べていただくと、その差がお判りいただけると思います。

そして、目論見書を見ると、“ほー”と思う点が。おそらく、上記の「すべてカスタマイズ設計」と関連がありそうな気がします。(そしてまた、この点からクロス・マーケティングの調査会社としての業務範囲も自ずと予想がつきます。)

興味のある方は、ご自身で目論見書を眺めてみてください。
(販売実績とか、売掛先実績のところですね。業界では常識だったのでしょうか・・・。)

取り急ぎのエントリーでした。

TNSとGfk合併はご破算?

【20081208追記あり】

以前、こちらのエントリー(2008.5.1)で、ワールドワイドでのリサーチ会社合併の可能性として、TNSとGfkが合併か?ということを書きました。

ところがここにきて、状況が変わってきているようです。。。

世界3位の市場調査会社テイラーネルソンソフレス(TNS)の争奪戦から独同業GfKが撤退した。同社は27日、広告で世界2位の英WPPによる総額約11億ポンド(2,200億円)の買収提案に対抗するための資金調達ができなかったとして、TNSの取得を断念すると発表した。一方、TNSはこの日、WPPの提案を拒否する姿勢をあらためて示している。
(「独GfK、TNSの争奪戦から撤退」NNA.EU/2008.8.29)

何が起こっているのか・・・?

端的に言うと、6月の初めにはTNSとGfkの間で合意に達していた合併交渉に、広告会社で世界2位のWPPグループが参入し、7月に入りWPPがTNSに対しTOBを仕掛ける。Gfkは、買収提案に対抗するためにファンド会社と共同で提案を行うも不発、対抗できる資金調達も難しいため、買収を断念。

ということのようです。
ただし、TNSとしては、WPPの提案を拒否する姿勢を示しているので、これから事態がどのように推移するのかは、まだわかりません。
(対して、WPPはTNSへのTOBを延長しているようです。)

この合併・買収問題が、今後どうなるかも興味深いですが・・・、
(TNSとGfKの合併がご破算になると、インテージの世界トップ10入りも先伸ばしになってしまいそうですし・・・)

ここで確認したいのは、「なぜ、WPPが、こうまでしてTNSを買収したいのか」ということ。同記事によると、WPPの狙いはつぎの点にあるとしています。

WPPは傘下に市場調査会社のカンター・グループを抱える。カンターとTNSを統合すれば同業界で世界2位に浮上し、最大手の米ニールセンを追撃する体制が整う。これにより景気の影響を受けやすい広告事業への依存度を弱める考えで、今回、GfKの決定を歓迎する声明を出している。
(「独GfK、TNSの争奪戦から撤退」NNA.EU/2008.8.29)

この記事を素直に読めば、「事業分野のひとつである情報部門を拡大することで、広告依存の事業構造から脱却する」ということになりますか。これは、リサーチが収益性のある事業と考えている、ということでもありますよね?

日本の場合はどうでしょう・・・?
日本で広告代理店(やメディア)がリサーチ会社を傘下に置くのは、純粋に「リサーチ機能」を手元に置きたい、ということのように思うのですが。
リサーチ会社の情報力とか、収益性を見込んでのこと、とは正直思えない。。。
となると、日本と欧米のリサーチ会社は、その(社会的?)ポジションが異なっているとも言えそうですし、実際に異なっているとしたら、何が違うのか?要因は何なのか?ということを、考える必要もあるのではないかと・・・。
(実際、日本と欧米のリサーチ会社のポジションは異なる、とよく耳にします。。。)

今回のTNSとGfKの記事から、このようなことを考えてしまいました。。。
完全に個人的な感想なので、実態がどうなのかは定かではありませんが。

【追記2008.12.8】

結局、WPPグループのTNSの買収は成功し、TNSはWPP=カンターグループの一員になったようです。
TNSインフォプランからのリリースが出ていましたので、引用しておきます(リリース日:2008.11.29)

ロンドン発、2008年10月31日付プレスリリースで、TNSは、英国の大手広告会社WPPの Information, Insight and Consultancy Division, The Kantar Groupファミリーになったことが、正式に発表されました。
TNSブランド、TNS独自のサービスおよび製品開発は、優先的に継続され、弊社TNSインフォプランも含めて、経営陣、経営組織の大きな変更はございません。 TNSがWPP, The Kantar Groupファミリーになったことで、更にお客様のニーズに対応し充実したサービスを提供できると信じております。
TNSインフォプラン社員一同、お客様のお役に立てるサービスを提供できるよう、一層努力する所存ですので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
(TNSインフォプラン、リリース)

びっくり!だけど、なるほど・・・

博報堂から、一本のリリースが発表されていました。
かなりびっくりしましたが、よくよく考えると、なるほどと納得のできるものです。。。

博報堂、マーケティングリサーチ会社「株式会社東京サーベイ・リサーチ」の株式を取得(博報堂ニュースリリース:2008年7月14日発表)

「株式を取得」といっても、発行済み株式の74.4%の取得による連結子会社化ですし、社長も博報堂の方がなるようです。電通-電通リサーチほどではないかもしれませんが、それに近い形になるのでしょうか?

東京サーベイリサーチ(TSR)社は1965年の創業ですから、リサーチ業界ではかなりの老舗企業です。それに、ネットリサーチ以前には、リサーチ業界のランキングで10位前後に位置づけられていたのではないでしょうか。

これで、民族系(日本資本)・独立系・非装置系調査会社の一角がまた崩れました。
(今年2008年の4月には、やはり1969年設立の調査会社スミスが「NTTデータスミス」になっています。)

ただ、このblogでも何度も指摘してきたように、マーケティング・リサーチのネット化とグローバル化の動きの中で、民族系(日本資本)・独立系・非装置系調査会社は厳しいポジションにあり、なんらかの動きを取らないと生き残りが難しいのではという仮説が、どんどん現実化しているだけでもあります。
そして、ネット系調査会社との提携や外資系企業との提携など業界内での選択肢のほかに、広告代理店やコンサル会社といった、データ収集機能を内在化したい企業の傘下に入るというのも、大きな選択肢のひとつとしてあるのだということが明らかになったということです。(このことが何を意味するのか・・・。あまりうれしくないことなので明示しませんが、わかる人にはわかっていただけるのではないでしょうか。)

で、このような流れの中で、TSRは業界内での選択ではなく、広告会社の傘下に入る選択をしたということです。博報堂とTSRの関係は、以前からかなり強いものだったので、ある意味、当然であり妥当性な選択といえるかもしれません。(この動きについては、個人的にも、いろいろと思うところがあるのですが、さすがにここでは触れられませんので。。。)

さて、残された民族系・独立系・非装置系の各社は、これからどんな道を進むのでしょうか?まだまだ、業界再編は続きそうです。。。

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