『次世代マーケティングリサーチ』(予告編)

次世代マーケティングリサーチ 次世代マーケティングリサーチ
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2011-03-03

個人的には、やっと年が明けた感覚。
おとなりの国では、いまが春節なのでちょうどいいのかもしれませんが。。。

さて、今回紹介する本、実はまだ発売されていません(予定では2/23発売)。
ただ、Amazonではエントリーされていますので、紹介してしまおうと。

この本の著者は萩原雅之さん。
リサーチ業界では、著名人です。
記事執筆も多数ですし、SurveyMLの主宰者として、さらにTwitter でも @SurveyML として、さまざまな問題提起をされていますし、有益な情報を発信してくれています。

そして、本書のタイトルは『次世代マーケティングリサーチ』。
昨年(2010年)7月に、JMRX(旧ツイッチャーの会)のセミナーで講演していただいたタイトルそのもの。このときの内容に沿ったものになっているのではないかと想像します。
だとすると、リサーチャーにとっては必読本になるのでは?!(という期待も込めて)
このときにも、ご本人に「この内容で、出版されないのですか?」とコメントしたのですが、まさかほんとに出版されるとは。うれしいかぎりです。

JMRX当日のセミナーの内容については、こちら ↓ を参照ください。

萩原さん、ツイッチャーの会で、次世代マーケティングリサーチについて語る!
(みんなのMR.COM:2010/7/20)

Amazonで紹介されている本書の内容は、つぎのように。

ビジネスに生きる本当の消費者データ”Ask”から”Listen”へ。
海外で注目される新技法は日本でも普及するのか。
ソーシャルメディア時代におけるマーケティングリサーチの伝統と革新を知る貴重な一冊。
ソーシャルメディアの発達で、消費者の声を探る手法が大きく変わりつつある。
質問紙やインタビューに依存した従来型の手法では消費者の心の声(インサイト)を十分に反映できない。
コミュニティの中に入り、データを観察し、企業活動に生かしていくために今何ができるのか。
マーケティングリサーチの最新手法を紹介しつつデジタル時代の新たなデータ活用法を説く。

まだ目次も掲載されていないですし、フライング気味のエントリーですが、興味を持った方は予約をどうぞ。
もちろん、発売後に紹介したいと思いますので、その後でもかまいませんが。

【追記:2011/2/25】
発売予定日が、3/3に延期されました。
また、著者である萩原さんによる本書のFacebookページが作成されています。
詳細もくじもありますので、こちらもぜひ参照ください。

http://www.facebook.com/NextMR

『「つながり」を突き止めろ』

「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書) 「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2010-10-15

この本、1ヶ月くらい前に読み終わり、紹介したいと思いながら後回しになっていました。
素直に本書の紹介で書こうか、もっと大きく「つながり/ネットワーク」というキーワードを主に書こうかとずっと迷いがあったからです。わたしにとって、あまり軽く扱えないテーマでもあり。

しかし本日、アドタイムで高広さんのつぎの記事が紹介されました。

セグメンテーションからコネクションへ(アドタイ2010.12.13 by 宣伝会議)

ぜひ読んでみてほしい記事なのですが、この文を理解するにはやはりネットワークの理解が欠かせなはず。で、あまり考えていても仕方ないので、とにかく書いておこうと思い至ったというわけです。
(なので、まだ思いが錯綜していて流れが悪い、わかりにくい、あまり内容がないものになっているかもしれません。ご容赦を・・・)

本書の著者はネットワークサイエンスの研究者である安田雪先生。
実は安田先生は、もう一度マーケティングリサーチについて考えて(研究して?)みよう、というきっかけをわたしに与えてくれた先生でもあるのです(実際に師事したわけではないのですが)。
先生との出会いは2005年、セミナーにおいてでした。このときのメモを見ると、こんなことが書いてあります。

サンプリング調査への批判~ネットワークを無視しているのではないか?
→属性等によるセグメンテーション等、個の分析に過度に依存しすぎており、
  個の背景にあるネットワーク、つながりを無視している
→部分の合計は全体となり得ない
→個の分析を掘り下げても、おおもとの全体を理解できない

(安田先生のこのあたりの考え方は、マーケティングジャーナル誌101号『マーケティングは、関係を制することができるか』(2006)という論文でも触れられていますので、興味をもたれた方はこちらも読んでみてください)

「なるほど、ネットワークか」と思った記憶があります。そして、つぎのマーケティング(リサーチ)のキーワードもネットワークになるのだろうというひらめきがありました。(2005年?、遅くない?、という方もいるかもしれませんが。。。)

そしてまさに、「つながり/ネットワーク」は、いまを、そしてこれからを理解する上では欠かせないキーワードになっています。
しかしどうも、「つながり/ネットワーク」をきちんと理解している人は多くないとも感じています。とくにネット上で散見される意見や主張をみると、そう感じます。

そこで本書です。
研究者による著書ですが論文や研究書ではありません。エッセーに近い文章で、著者の私的な思いも、時おり顔をだします。
しかし、ネットワークサイエンスのトピックスや、研究領域、いまの課題などについても十分に触れられていると思うので、はじめてのネットワーク入門としては丁度いいのかもしれません。「つながり/ネットワーク」の世界が、どのようなテーマを扱っていて、いま、何が分かっているのかを理解する上で。
一応、いつものようにもくじを紹介しておきます。

第1章 対ゲリラ戦略と米軍マニュアル
第2章 電子メールから浮かび上がる業務遂行ネットワーク
第3章 SNSの人脈連鎖
第4章 広告作品「カレシの元カノの元カレを、知っていますか。」
第5章 知人の連鎖と新型インフルエンザつながり
第6章 弱い絆の強さと弱さ
終章  “入る”を制する

◆さらにネットワークを学ぶ

今回はいつもの本紹介とは趣向を変えて、本書の紹介はここまでとし、さらに「ネットワーク」をテーマとした本を紹介していきます。

本書でネットワークに興味をもたれたら、ぜひ、つぎの本を読んでみてください。
ネットワークでは古典といってもいい本で、ネットワークを勉強するには避けられない本だと思います。ネットワークの論文では、引用されることの多い本でもありますし、著者の「バラバシ」という名前や、「スケールフリーネットワーク」という単語は、基本用語です。
ネットワークについて順を追って理解するには、本書が最適では?

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く 新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2002-12-26

あわせて、こちら ↓ も読んでおくといいとは思いますが。(必読とまでは・・・)
こちらも、著者の「ダンカン・ワッツ」や「スモールワールド・ネットワーク」という言葉は、覚えておくべき単語だと思います。

スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法 スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2004-10

いやいや、ここまで専門書ではなく、もう少し概論書はないですか?という方には、こちらでしょうか ↓

私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書) 私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書)
価格:¥ 840(税込)
発売日:2007-04

以上の本は、発売日を見るとわかるとおり、日々進化・深化するネットの世界を理解するには少々古くなってきているかもしれません。
最近出版されたものとしては、こちら ↓ がいいかもしれません。

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2010-07-22

◆さらに進んで、実際にネットワークを研究対象としたいなら・・・

ここまでは、「つながり/ネットワーク」を理解するための本の紹介でした。
しかし、では実際にネットワークを研究するとなるとどうしたら?、という人のための本をいくつか。
(ただ、こちらはいずれも専門書ですし高い本ですので、一度、図書館ででも内容を確かめて、ほんとうに必要かどうかは判断ください。)

まずは、安田先生の著書。
ネットワーク分析を行なうための用語やモデルについて書かれていますので、基本的な理解からはじめる方は、この本から入るのがいいと思います。

ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ) ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1997-02-14

実際にネットワークを調査、分析した事例が紹介されているのが、こちら ↓ の本。
これがそのまま使えるかどうかはわかりませんが、「初学者が実際に調査や分析を行うための入門書」ということで。

社会ネットワークのリサーチ・メソッド―「つながり」を調査する 社会ネットワークのリサーチ・メソッド―「つながり」を調査する
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2010-04

また、実際にネットワーク研究を行なった本としては、こちら ↓ など。

クチコミとネットワークの社会心理―消費と普及のサービスイノベーション研究 クチコミとネットワークの社会心理―消費と普及のサービスイノベーション研究
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2010-02-17
消費者間の相互作用についての基礎研究―クチコミ、eクチコミを中心に 消費者間の相互作用についての基礎研究―クチコミ、eクチコミを中心に
価格:¥ 3,675(税込)
発売日:2009-03
ネットが変える消費者行動―クチコミの影響力の実証分析 ネットが変える消費者行動―クチコミの影響力の実証分析
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2008-03

少し毛色の変わったところでは、こちら ↓ が面白いかも。
安田先生の本にも出てくるのですが、どうもネットワーク研究には「統計物理学」という領域が大きく関わっているらしく、先に紹介したバラバシなども統計物理学者のようです。
で、流行についての研究者と統計物理学者がジョイントして、クチコミ効果の数式化に挑んだのが本書です。

大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する 大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2010-09-15

さて、そろそろ今回のエントリーも終わりにします。
途中でも書きましたが、今、これからを理解するには、「つながり/ネットワーク」の理解が不可欠だと思います。
ぜひ、『つながりを突き止めろ』から、ネットワークの世界に入ってみてください。
いろいろと、考えさせられると思いますよ。

PS.
最後に、ネットワークからの連想で思いついたので、おまけを。
ネットワーク分析のひとつの領域としてあるのが、社内のコミュニケーション分析(『つながりを突き止めろ』では、第2章でふれています)。
社内でのメールのやりとりを解析して・・・、というのはすでに研究もあると思います。しかし、ほんとのコミュニケーションを分析しようと思ったら、対面コミュニケーションは無視できないはず。
そこで、このような ↓ ソリューションもすでにあるんですね。(ある意味、怖いですけど・・・)

社内コミュニケーションを可視化する「ビジネス顕微鏡」(日立HPより)

(この技術、マーケティングリサーチに応用できないのかな、と考えるのですが・・・)

『イシューからはじめよ』

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」 イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2010-11-24

今回紹介する本の著者は、以前から視点や考え方がとても勉強になると思っていたblog『ニューロサイエンスとマーケティングの間』の方。
このblogで2,684ものブックマークを得た、こちら ↓ のエントリーをベースに書き起こしたものが本書。出版されると聞いて即買いでした。

圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル
 (『ニューロサイエンスとマーケティングの間』20081018)

期待に違わず、久しぶりにblogを書こうという気持ちに^^;
リサーチャーは必読の書だと思います。とくに企画や分析の仕事を始めて3年くらいで、今までの自分の思考スタイルを見直したい、整理したい、もっと効率的・効果的にしたいと思っている方が読むと、いちばん得るものが大きいかもしれません。

本書の狙いについて、著者はつぎのように述べています。

ちまたに「問題解決」や「思考法」をテーマにした本は溢れている。しかし、その多くがツールやテクニックの紹介で、本当に価値あるアウトプットを生み出すという視点で書かれたものは少ないように感じる。意味あるアウトプットを一定期間に生み出す必要のある人にとって、本当に考えなければならないことは何か、この本はそのことに絞って紹介したい。(「はじめに」p.2)

ポイントは、「意味あるアウトプットを一定期間に生み出す」でしょうか。
科学者であり、コンサルタントでもあり、今は事業会社で実務を行なっている著者だからこそ書ける内容だと思います。かなり実践的です。

もくじは、つぎのとおり。

序章 この本の考え方~脱「犬の道」

第1章 イシュードリブン~「解く」前に「見極める」
      イシューを見極める/仮説を立てる/よいイシューの3条件/
      イシュー特定のための情報収集/イシュー特定の5つのアプローチ

第2章 仮説ドリブン①~イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
      イシュー分析とは何か/イシューを分解する/ストーリーラインを
      組み立てる

第3章 仮説ドリブン②~ストーリーを絵コンテにする
      絵コンテとは何か/軸を整理する/イメージを具体化する/方法を
      明示する

第4章 アウトプットドリブン~実際の分析を進める
      アウトプットを生み出すとは/トラブルをさばく/軽快に答えを出す

第5章 メッセージドリブン~「伝えるもの」をまとめる
      「本質的」「シンプル」を実現する/ストーリーラインを磨きこむ/
      チャートを磨きこむ

序章は考え方の整理で、第1章以降で具体的な方法を提示しています。
もくじからではわからないかもしれませんが、第3章と第4章はまさに「分析とは何か」についてですし、第5章は「プレゼンのまとめ方」といえる内容になっています。

著者は問います。
「バリューのある仕事とは何か?」、そして、「バリューのある仕事を、圧倒的な生産性で生み出すプロセスは?」
そして、この問への答えとして、「イシュー(の見極め)からはじめる」ことだとしています。

つまり、「何に答えを出す必要があるのか」という議論からはじめ、「そのためには何を明らかにする必要があるのか」という流れで分析を設計していく。(「第1章」p.45)

これ、まさにリサーチ企画の最初のステップです(私のリサーチ研修を受けた方は、理解してくれると思うのですが・・・)。
この部分がクリアになっていないと、途端に迷路にはまっていく、ムダを重ねる、あるいはアウトプットの納得感がない、という結果に陥ります。

そして、「よいイシューの3条件」である

「本質的な選択肢である」「深い仮説がある」「答えを出せる」
(「第1章」pp.56-57)

も肝に銘じておきたいポイントです。
(字面だけで理解した気にならずに、しっかり本書で内容を理解してくださいね)

ここで疑問を持つ人もいるでしょう。
「イシュードリブン、仮説思考ということは、固定的なものの見方をしてしまうのでは?」と。
この点についても、著者はしっかりと釘をさしています。

アウトプットを生み出すステップで意味のある分析・検証は、「答えありき」とは対極にあるということだ。
「イシューからはじめる、という姿勢でアウトプットを作成するように」と同じチームの若い人にいうとかなりの確率で誤解が起きる。それは「自分たちの仮説が正しいと言えることばかり集めてきて、本当に正しいのかどうかという検証をしない」というケースだ。これでは論証にならず、スポーツでいえばファウルのようなものだ。
「イシューからはじめる」考え方で、各サブイシューについて検証するときには、フェアな姿勢で検証しなければならない。(「第4章」p183)

少し前にあった検察の問題は、ここでいう「ファウル」であったとわかります。

紹介は、この程度にしておきます。でないと、本書の内容をすべてここで書き連ねることになりそうだからです。
ただし、もう一点だけ。
このような本を紹介すると、「でも本を読んだだけでは、役に立たないでしょ?」という反論も必ずあります。この点についても、著者は明快に、つぎのように語っています。私も、この考え方に賛成です。

「僕は今、自分にできる限りの深いレベルまで、知的生産におけるシンプルな本質を伝えた。あとは、あなたが自分で経験する以外の方法はないはずだ」(「おわりに」p.239)

一度読んでみてください、若手の方はとくに。
(学生の方が論文を書く際にも、とても役立つと思いますよ)

できるだけ短い文章で書かれているからでしょうか、リズムがあり、読みやすく、わかりやすい文章だと思います。(こんな文章を書きたいと思うんですが・・・)

PS.
著者自身による本書の紹介も、↓ にてあわせてどうぞ。

本がついに世に出せそうです(『ニューロサイエンスとマーケティングの間』20101102)
本の予約受付が始まりました(『ニューロサイエンスとマーケティングの間』20101114)

「イノベーションノためのエスノグラフィ」(読売ADリポートOJO)

いまのところのビジネスエスノグラフィのまとめとして良記事だと思うので、とりいそぎの紹介。

「イノベーションノためのエスノグラフィ」(読売ADリポート『OJO』:2010.10.11)

総括的な整理を博報堂の田村大氏が行ない、他にいくつかの事例的な紹介という構成。

ビジネス・エスノグラフィーがイノベーティブな組織をつくる博報堂 イノベーション・ラボ 上席研究員 田村 大 氏

運動会の定点観測が生んだ「瞬足」の画期的コンセプト
アキレス シューズ事業部商品企画開発本部 副本部長 津端 裕 氏

現場の徹底観察からソリューションを生み出す
大阪ガス行動観察研究所 所長 松波晴人 氏

組織・業務の課題を可視化 コーポレート・エスノグラフィー
富士通 フィールド・イノベーション本部 FI技術センター センター長 岸本孝治 氏

新聞の読まれ方を観察する新聞版エスノグラフィーの試み

エスノグラフィについては、さまざまなところで、さまざまなことが言われていますが、個人的には田村さんの考え方やスタンスがもっとも共感でき、納得のいくものだと思っています。
それは、この特集でも語られているような「客観的な真実はない」「客観的事実と思っているのは解釈の問題」「集めた情報を現場の文脈から切り離した瞬間に、その情報は無価値になる」というような点においてです。
このようなスタンスに立てるのか、理解できるのか、によってエスノグラフィのもつ価値は異なってくるように思います。

とはいえ、こうやって文脈から切り離したフレーズを取り出すこと自体が、あやまった解釈を皆さんに与えることにもなると思うので、ぜひ上記の特集を読み込んでみてください。
最初にも書いたとおり、いまのところのビジネスエスノグラフィのまとめとして良記事だと思いますので。

メモ的に新しい動きをいくつか

最近、目についたリサーチ関連の新しい動きを備忘録としてメモ。

 

◆博報堂、専門チーム「ETHNOVISION」発足

博報堂は、以前にも潜在意識や認知心理学をベースとした専門チームである「博報堂ブレイン・ブリッジ・バイオロジー」を発足していますが、今回はエスノグラフィをベースとした専門チームを発足するというリリース。
博報堂からのニュースリリースは、こちら ↓ (PDF)。

エスノグラフィを活用した企業イノベーションコンサルティング専門チーム、
博報堂「ETHNOVISION(エスノビジョン)」発足、活動開始(博報堂:2010.8.30)

サービス内容は、生活者の日常生活に入り込み、多様な生活の文脈から新たな問題や機会(ビジネスチャンス)を発見するエスノグラフィ手法を機軸に展開。顧客の需要開拓からプロダクトデザイン、サービスデザイン、イノベーションマインドやスキルを育成するための人財育成や組織改革など、既存の市場内での競争戦略ではなく、新しい市場の創造を目指す、イノベーション創出を行っていきます。(同社リリースより)

前回のこのblogのエントリーである「MROC」とも絡みますが、やはり焦点はイノベーション創出ですね。

博報堂は以前からエスノグラフィに注力していましたし、開発責任者である田村大氏は、日本におけるビジネス・エスノグラフィの第一人者といえる方です。そういう点からも、エスノグラフィの活用を推進するチームとして期待したいと思いますし、ぜひ成果を発表してほしいと思います(もちろん、できる限りで)。

(※「顧客のインサイト」ということでは『日経情報ストラテジー2010年10月号』も、おもしろそう。まだ購入できてませんが。。。)

特集 顧客のインサイトをつかめ! (日経情報ストラテジー:2010年10月号)

◆インテージ、CSコンサルティングサービス提供

続いては、インテージ。

『JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)』の 「利用推進パートナー」認定を受け、CSを核としたコンサルティングサービスの提供を開始 (インテージ:2010.8.30)

CSコンサルティングサービスの提供開始というものですが、ベースになっているのは、なんと JCSI(日本版顧客満足度調査)。「利用推進パートナー制度」なるものがあったんですね。
こういう制度を活用し、いち早くサービス化してしまうのが、さすがインテージでしょうか。

サービス内容は、

  1. 『JCSI(日本版顧客満足度指数)』を活用した「診断(Diagnostic)」サービス
  2. 当社オリジナルのテーマ型リサーチによる課題の「要因分析(Analytical)」サービス
  3. 日々のお客様の声=“真実の瞬間”にもとづく「改善(Improvement)」支援サービス
  4. これらのKPIモデル化および組織へのビルトインプロセスをご支援する 「定着化(Consulting)」サービス
    (同社リリースより)

とのこと。

日本生産性本部の資料(→ こちら)をみると、他には日経リサーチも名前がでているので、近いうちにサービスインするのでしょうか。

(※JCSIについては、以下の過去エントリーを参照してください。)

平成21年度JCSI(日本版CSI)調査結果(2010.3.17)

国土交通省、道路交通データ収集を抜本改善

こちらはリサーチサービスのリリースではないですが、人手によるリサーチからIT活用のログデータに置き換わる事例として興味深い。

国土交通省、道路交通データ収集を抜本改善(GAZOO.COM:2010.8.6)

リサーチ視点でのポイントは、こちら。

人手による交通量調査や区間を限定した速度調査(断面速度調査)、利用者への聞き取り調査など、従来の道路交通センサスの手法を廃止し、ITS(高度道路交通システム)機器による常時観測値をベースにする。当面は約100万台の民間プローブデータなどを活用、面的な移動速度を把握し、旅行時間など利用者の便益を大きく左右するデータの精度を高める。 (同上記事より)

実態データに関しては、この事例のように、サーベイによるデータからログデータに置き換わっていくのかもしれません。

◆ネットレイティングによる「日本のオンラインメディアの現状」

インターネット視聴率調査の先駆であったネットレイティング社から、白書(ホワイトペーパー)発行のリリース(PDF)。

インターネットの成長ポテンシャルはシニア層に~ニールセン・オンライン、ホワイトペーパーの刊行を開始 創刊号は「日本のオンラインメディアの現状」~
(ネットレーティング社ニュースリリース:2010.8.23)

弊社では、 「どこにどのような消費者がいるのか」、「今インターネット上で何が起きているのか」という視点に重点を置き、 日々のデータ収集・分析を行っております。本レポートでは、それらの活動を通じて得られた知見を5つのトピックに分類し、 皆様にお届けいたします。 (同社リリースより)

ホワイトペーパーのダウンロードは、こちらから(→ ダウンロードページ

データのみでなく、コラムも役立つ。オンラインメディア関連のデータをウオッチしていくには、良い資料となる予感。

◆慶應大学による2つの実験

慶應大学からも、リサーチ関連の実験のリリースがふたつ。

最初は、MROC的な実験。

慶応大、Twitter を活用して未来の技術やサービスを考える社会実験を発表(japan.internet.com:2010.8.27)

Web サイトや Twitter を通じて一般の生活者から情報技術やサービスに対する様々な期待やアイデアを募集。将来の社会において求められる情報技術へのニーズやそれを活用した新たなサービス像を模索するという。 (同大リリースより)

サイトはこちら → 「 MIRAI TWEET COMPANY
twitter によって、生活者の意見を集めようというもの。まだ始まったばかりで、そんなに発言は多くないようですが、最終的にどのような形になるのか。。。

 

2つめは、「討論型世論調査」。
アンケート調査と市民討論会を組み合わせた、新たな調査手法としています。

「藤沢の選択,1 日討論」(討論型世論調査,市民1000人調査・200人討論)開催について (PDF:藤沢市・慶應義塾大学:2010.8.23)

「藤沢のこれから,集中討論」~討論型世論調査(藤沢市HP:2010.8.26)

討論型世論調査(Deliberative Poll○R)は,アンケートの実施と市民討論会を組み合わせた,新しい調査手法であり,無作為抽出により参加をいただく藤沢市民の熟慮に基づく声を,新総合計画の策定に反映させることを目的としています。 (上記リリースより)

実施の流れの詳細については、上記の資料をご覧ください。

この試みは、少し前に紹介されていた「熟議」という言葉に繋がるものでしょう。そこでは、「集計民主主義」と「熟議民主主義」という対比で紹介されていたのですが、最近のメディアによる世論調査(ともいえないものが跋扈してますが)を見るにつけ、このような仕組みが重要になってくるかもしれないと思っていました。

本当に「多数決」は万能なのか?(JB PRESS:2010.6.22)

“コク”のある世論調査(東京新聞:2010.1.11)

以上、ここ1ヶ月くらいで目に留まったものを、ご紹介しました。

(紹介するプレイヤーがいつも同じになるのは、こちらの情報源が偏っているからなのか、これらのプレイヤーが積極的にリリースを行なっているからなのか、という点が気になりますが・・・)




MROCを考える

8/25にツイッチャーの会(twitter で繋がったリサーチャーの勉強会)が行なわれました。
今回は、experidge 岸川さん(→ blogはこちら。とても参考になるblogです)によるMROC(marketing research online community)の事例紹介。
MROCという言葉はともかく、オンライン・コミュニティを活用したリサーチは以前から興味を持っていたので、岸川さんのセミナーを少しサマライズしつつ、MROCについて思うところをまとめておこうと思います。

【岸川さんによるMROC事例紹介とまとめ】

紹介していただいた事例は、BrainJuicer 社(→HPこちら)の「the JuicyBrains Innovation Community 」。
同社はこのシステムで、ESOMAR の Best Methodology Prize を受賞しているそう。

岸川さんの説明からポイントをつまむと(誤りがありましたら訂正ください>岸川さん)

    • このコミュニティは、製品開発におけるコンセプト開発のための定性調査のプラットフォームとして位置づけられる。

 

 

    • 「ブランド特化型でないコミュニティ」のメリットとして、
      参加者としては、疲弊や惰性、バイアスを軽減できるし、さまざまな製品開発に関与できるので「おもしろい」。
      サービス提供者としては、低価格&低負担で提供が可能。

 

    • 主なリサーチテーマとしては、インサイトジェネレーション、コンセプトジェネレーション、コンセプトクリニックといった開発上流でのテーマ。

 

    • 1回のテーマでの参加者は、100人程度。

 

  • (GIと対比した)オンライン・コミュニティ活用のメリットとしては、安い、早い、継続できる、多くの人の意見を聞ける、広域な人の意見を聞ける、消費者同士のインタラクティブ性がある、等があげられる

といったあたりでしょうか。

実務上の課題となるのが、「コミュニティ運営と結果の分析」というのも納得。
現状は、テキストアナリシス(テキストマイニング)は補助的であって、分析者の読み込みによる解釈が主流だとか。

また、広くMROCとして整理すると(レイ・ポインターによる。下記書籍参照)

  • もっとも急速に伸びている手法。
  • しかし、「これがMROC」という決まった型はない。
  • 定性と定量の融合が図れる。
  • ディスカッション、リスニングという視点は将来のマーケティング・リサーチの主要部分となる。
  • ORC(オンライン・リサーチ・コミュニティ)は、ニューパラダイムやニューマーケティング・リサーチの一要素であることは間違いない。

ということです。

すでに欧米では、blogや本でMROCは広く取り上げられており、代表的な blog や本も紹介していただきました。英語に抵抗のない方は、こちらもぜひ。

◆blog: Research Community FAQ(Jeffrey Henning’s Vovici:2010.7.21)

◆書籍: ”The Handbook of Online and Social Media Research” →11章がMROC

The Handbook of Online and Social Media Research: Tools and Techniques for Market Researchers The Handbook of Online and Social Media Research: Tools and Techniques for Market Researchers
価格:¥ 5,698(税込)
発売日:2010-10-11

【感想など】

自分の卑近な例にあてはめて考えるのは、よくない思考なのですが、直感的に思い出したのが、掲示板を活用したオンライングルインでした。この点は、当日の議論でも話がされたので、皆さん同様だったよう。MROCを考える上で、参考になるかもしれません。

また、「空想生活」や「@コスメ」などの事例も頭に浮かびました。

これらもふまえつつ、個人的に気になった点は、以下でした。

    • 「ひとつのブランドに特化していないコミュニティ(以下、インディペンデント・コミュニティといいます)」をメリットとしているが、ほんとにメリットか?
      確かに、ブランド特化型コミュニティでは参加者が偏る可能性もあり、そこでの意見がとんがり過ぎる、過度な適応を導く危険性もあるが、インディペンデント・コミュニティ参加者のテーマ製品への「関与度」は、どの程度のものなのだろう?
      あまり関与度が高くない人の意見をいくら集めても、あまり意味を感じない。。。

 

    • 参加者間のインタラクティブは、どの程度行なわれているのだろうか?
      オンラインコミュニティで行なう意義は、参加者間のインタラクティブだと思うので、この点は気になる。ただ一方で、twitter をやってみて感じるのは、100人くらいの意見が流れると、意見を追うのがなかなか難しいとも感じるので。。。
      もしも、あまりインタラクティブがなされないとしたら、それは自由回答メインの定量調査と変わらなくなってしまう。

 

  • そして、すでに岸川さんからもあげられていた「運営と分析」の問題は?
    掲示板型のグルインがうまくいかなかった原因のひとつとして、この「運営と分析」の問題は大きかったように思う。
    個人的に、とくに気になったのがコンテクストの問題。コミュニティ登録の際に、どの程度のプロフィールを取っているのかについては詳しくわからなかったが、「誰が、何を背景に、どういう発言をしているのか」というのが、とくにインサイトジェネレーションでは大切だと思っているので、このあたりの情報がどの程度取れるのかは気になるところ。
    (ブランド型のコミュニティだと、日々の発言の積み重ねで、発言者のコンテクストをある程度把握することができそう。またリアルのグルイン等では、参加者の表情等がコンテクストを理解するひとつの参考になりうるのでは。)

主なポイントは、この3点。つまり、「コミュニティ形成(パネル構成)」「運営」「分析」になりそうです。

【さて、では?】

なんか、このように整理してしまうと、MROC否定派、あるいは懐疑派と捉えられそうですけど、決してそんなことはありません!むしろ、積極推進派です。
(5年以上前から、クオリティパネルやインタラクティブな手法を用いたリサーチの必要性については考えていたくらいです。いくつか実験もしましたが、既存手法の応用では、なかなか難しく・・・)

  • 消費者が「一人十色」になり、「平均的な」マーケットが小さくなっている
  • 消費者の意思決定に、ネットワーク(オンラインでも、オフラインでも)の関与する割合が大きくなっている(意思決定の際にさまざまな情報に接する)
  • 「代表性のあるマーケティング・リサーチ」が難しくなっている
  • 市場実態(何が売れているか)は、IT技術の進化により「サーベイ」を行なわなくてもデータが得られる
  • 上記のような結果として、マーケティング・リサーチのテーマも、インサイト・ジェネレーションやコンセプト・ジェネレーションの比重が大きくなっている

いずれも仮説ですが、このような時代状況にあると考えると、MROCのような手法が有効になると思うからです。

「ここでもう一度、先行研究的な本を見直さないといけないな」と思い、手に取ってみたのが以下の本です。MROCを考えようとするには、このあたりの本は読んでおくべきだろうと思います。(こうやって並べると最近の本がない。ちょっと勉強不足かも・・・)

まず、すでに古典ともいえそうな2冊の本。
「コミュニティ」や「ソーシャルテクノロジー」について考えるには、必読の2冊だと思います。

グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press) グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press)
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2008-11-18
ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2007-06-07

 

日本でのユーザードリブン開発の先行事例として必ず取り上げられるのが「空想生活」であり「空想無印」。ファイル形式= pdf 限定でググると、さまざまなペーパーが得られると思います。やはり「コミュニティ形成」や「運営」を考える上では、参考になるはずです。
そして、少し前のものになりますが、空想生活と空想無印について整理した論文が掲載されているのが、こちらの本です。

競争的共創論―革新参加社会の到来 (HAKUTO Management) 競争的共創論―革新参加社会の到来 (HAKUTO Management)
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2006-06

 

もうひとつの課題である「分析」。
MROCが定性情報のためのプラットフォームであるとすると、やはり定性的な分析の視点は必要になるはず。定性分析の基本的な視点を与えてくれるのが、こちらの本。
フィールドをベースにしたリッチな定性情報の分析を基本にしているので、MROCの情報をこのような視点で分析できるのかという疑問も残りますが、逆に、このような視点での分析が可能な情報を得るにはどうするのか、という視点も与えてくれそうです。
(さらに、MROCに定性的な役割だけを求めるのか、という議論もありそうですが)

質的データ分析法―原理・方法・実践 質的データ分析法―原理・方法・実践
価格:¥ 2,205(税込)
発売日:2008-03-25

 

しかし・・・
先程あげたMROCのポイント、「コミュニティ形成(パネル構成)」「運営」「分析」以外に、重要な構成要素があると考えています。これまで紹介してきた本では、あまり触れられていない要素でもあります。
それは、コミュニティ運営の基礎となる「システム」と、コミュニティ形成の基礎となるであろう「既存の会員組織」です。(これから、まったくゼロベースでコミュニティを形成するのは、かなり難しい選択肢だと思いますので)
これらがベースにあって、リサーチ的な視点からの検討を加えていくことで、日本版MROCが始動するのではないかと思っています。

すでにいくつかの事業会社がオンラインコミュニティを形成し活動を行なっていますし、たしかに、これらのコミュニティも一部MROC的な機能を担っているといえます。
しかし、このようなコミュニティを立ち上げ、運営できる企業は限られています。
であればこそ、ぜひリサーチ会社主導のMROCも求められているのではないかと思うのです。

<関連エントリー>
つぎに、こちら ↓ のエントリーをどうぞ、ほぼ1年後(2011/8)のソーシャルメディアとリサーチの状況を整理しています。

・ソーシャルメディアとリサーチ(2011.8.31)

・リサーチ手法のポジショニング(2011.9.3)

 

『課題解決!マーケティング・リサーチ入門』

課題解決! マーケティング・リサーチ入門 課題解決! マーケティング・リサーチ入門
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2010-08-06

マーケティングリサーチ本の新刊です。
中央大学大学院の田中洋先生が編著、リサーチナレッジ研究会という実務家による研究会が著者となっています。

このリサーチ本、これまでの一般的なリサーチ本とは趣を異にしています。

これまでのリサーチ本は、どちらかというと「リサーチをどのように行なうのか(HOW)」に焦点をあてた本が多かったと思います。サンプリングとか、調査票の作り方とか、集計の仕方とか、統計とか・・・。
しかしこの本は、「何を調べればいいのか(WAHT)」に焦点をあてた本だといえそうです。
(そして、調査設計はできるけど、調査課題を設定したり、何を調べたらいいのかを考えるのは苦手というリサーチャーも少なくないような?。。。)

本書の「はじめに」でも、この本の狙いについて、つぎのように書いてあります。

これまで多くのマーケティング・リサーチに関する書物が出版されてきました。優れた本も少なからず存在します。しかし私が長年感じていた不満は、こうしたマーケティング・リサーチの本の多くがリサーチ手法やデータ解析の解説にとどまっていることでした。
調査票の作り方、グループインタビューの手法、多変量解析の方法・・・、こうした手法を解説した本は数多くあります。しかし、ビジネスパーソンが抱えている問題をリサーチにどのように置き換えて、解決にまで導くのかという問題に答えてくれるような本はあまり見当たりませんでした。(「はじめに」 p.ⅳ)

私が考えたのは、こうした「主人の技術」についての本をまとめることでした。つまり、どのようにマーケティングの問題をマーケティング・リサーチの問題に転化し、さらにリサーチで得られた結果をマーケティング活動に反映していくか、こうしたことを教えてくれるような本のことです。(「はじめに」 p.ⅴ)

このような狙いで書かれていますので、「マーケティング・リサーチ入門」とはいっても、道具としてのリサーチの解説書ではありませんので、この点は注意してください。
しかし、マーケティングの問題が複雑になっているいまという時代には、このような趣旨のリサーチ本こそ必要なのだと思います。

では、どんなマーケティングの問題を扱っているのか。もくじを見てみます。

プロローグ

Ⅰ 既存商品のマネジメント
 1.ブランドの健康診断
 2.ブランドのリポジショニング
 3.ブランドストレッチの検討
 4.既存ブランドの価格再検討

Ⅱ 新商品の開発
 5.ブランド設計のためのマーケティング・リサーチ
 6.生活者の「問題」からのアイデア発見
 7.新商品アイデアの探索
 8.コンセプトの作成と評価
 9.商品の評価と改善点の抽出
 10.最適価格の設定
 11.パッケージデザインの評価
 12.販売量の予測
 13.上市後の追跡調査の実施

Ⅲ 効果的な広告展開
 14.広告戦略の検討
 15.広告の事前評価
 16.広告出稿計画の策定

Ⅳ 魅力的な市場の発見
 17.新市場把握のための調査
 18.既存市場の周辺領域の開発
 19.消費動機の探索
 20.消費者行動の理解促進
 21.海外でのマーケティング・リサーチ

かなり網羅的な内容だと思います。そして、それぞれの章は、

課題 → Q&Aによる概要 → 課題解決ステップ → 
課題解決への調査と解説 → コラム(主要調査手法の紹介)

という構成です。
また、課題解決の具体的な内容では、いわゆるSurvey(実査)を伴わず、パネルデータの分析により課題に迫る、広義でのリサーチステップが紹介されていることにも特徴があります。(たとえば、「4.既存ブランドの価格再検討」では、小売店パネルデータの分析だけで解説されています)

もちろん、ここに紹介されている解決ステップがすべてでも、万能でもありません。しかし、何事も基本的な考え方があっての応用だと思いますので、まずはこの本に書かれている内容を理解しつつ、実際の課題にむかって応用をしていくという態度も必要でしょう。

そして、「プロローグ」に書かれているつぎのセンテンス、リサーチユーザーの方~リサーチを発注し、結果をビジネスに活かす立場の方~には、ぜひ覚えておいていただきたいことです。(少し長い引用になってしまいますが、大切なことですので。著者の皆さん、すいません)

ビジネスパーソンが専門家(注:専門のリサーチ会社のリサーチャー)にリサーチを依頼するときに重要なこと、明確にしなくてはならないことは2つあります。
・誰が、何をするための事実を知りたいのか
・何がわかると自分(たち)はうれしいのか
「誰が」というのは、たとえば「開発部が」なのか、「営業部が」なのか、「広告宣伝部が」なのかといった意味になります。つまり、その調査の背景であり、何のための調査なのかということが大切なのです。「当たり前のこと」だと思うかもしれませんが、これが意外とはっきりしていない、あるいは、はっきりとリサーチャーに伝えられていないというケースがことのほか多いのです。それがわからないと、的確な調査項目を練ることが難しくなります。
また、何がわかるとうれしいのか。これは、調査の本当の目的は何なのかを、突きつめて考えることになります。新しい商品を開発するために、営業部門を説得したいのか、既存商品の広告戦略を強化するために市場の将来を把握したいのかなど、なるべく具体的に調査結果の使い方を考えておくことが重要です。「漠然とした理由で行なう調査」は意外と多いもので、これでは、効果的なマーケティング・リサーチにつながりません。 (「プロローグ」 p.4-5、注はblog筆者加筆)

これはリサーチユーザー向けのメッセージですが、リサーチャーも、ここに触れられている内容(「誰が」と「何が」)を、クライアントにしっかりと確認しなければなりません。常に頭において、リサーチを進めなければなりません。

「マーケティング・リサーチ入門」とありますが、本書のメインターゲットはリサーチユーザーといえそうです。しかし、リサーチャーこそ、読むべき本だとも言えそうです。
リサーチャーが、このような知識をベースに持ち、リサーチユーザーと議論をできることが、マーケティング・リサーチをより有効なものにしていくのです。

PS.
すでに、本書についてコメントをされている先生もいらっしゃいました。
つぎのblog も、あわせて参考にしてください。

Mizono on Marketing (明治大学・水野誠先生)

j-ono.com (明治学院大学・小野譲司先生)

【追記:2010.8.8】
リサーチャーも、twitter でお勧めしてます。

surveyml さん(2010.8.7~8.8)

先ほど amazon から届いた。実用性の高い見事な構成、これは名著の予感

コモデティ化脱出のヒントかも<マーケティングリサーチに関する書物の多くは「従者の技術(servant)」、必要なのは「主人の技術(master)」

田中洋先生、ありがとうございます。クライアントが本書で「解決のステップ」を習得すればするほど、調査会社側はうかうかできなくなるのは確実です


simfarm さん(2010.8.7)

今日アマゾンから届いた『課題解決!マーケティング・リサーチ入門』(田中洋編著/ダイヤモンド社)。うん、これはかなり使えそう。リサーチャー、マーケター、調査関連職は必携かも。

さらに、ダイヤモンド社さんでは、本書の一部(10ページ)を電子ブック形式で見ることができますので、本書の内容を確認できます。

課題解決!マーケティング・リサーチ入門(ダイヤモンド社)

統計を学ぶ本

実は、日経BP社のWEBサイト「BPnet ビズカレッジ入門講座:仕事に役立つデータの読み方・伝え方」(→こちで)で、3ヶ月の短期連載を始めています(2010.7~2010.9の連載です)。

(ふだん調査やリサーチに接することの少ない人へむけての入門講座なので、このblogの読者の方には、あたりまえすぎる内容だと思います。
また、限られた字数の中で、できるだけ数式等を使わずに、初歩的なことをお伝えするという内容なので、正直、結構苦戦しているという状況でもあり・・・^^; )

そこで、この講座を進めるにあたり参考にした書籍を、一度紹介しておこうと思います。
統計の入門書、それもできるだけ数学寄りではなく、ビジネス向け、学生向けに書かれたものを探している方の参考になればと思います。

◆『現場で使える統計学』(豊田裕貴)

現場で使える統計学 現場で使える統計学
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2006-09-28

まずは、このblogでもすでに紹介しているこの本です。詳しい内容は、こちらのエントリーをご覧ください。
「とにかく、統計とかよくわからん。統計の厳密さとかはいいから、とっかかりがほしい」という方が、一番最初に読む本としては、おすすめできるのではないかと思います。

◆『文系でもわかるビジネス統計入門』(内田学他)

文系でもわかる ビジネス統計入門 文系でもわかる ビジネス統計入門
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2010-02-26

つぎは、こちらの本。
「早稲田大学オープンカレッジの大人気講座の完全書籍化!」とあるように、現場で練りこまれているだけあって、わかりやすい本だと思います。適度に数式を使いつつ、理論導出の過程も例を中心にていねいに書かれています。
とくに、統計の中でもわかりにくいと思われる(自分だけでしょうか?・・・)、推測統計のパートは、この本でだいぶ理解ができたと感じました。
さらに、この本ではEXCELでの活用まで触れているのが、実用的です。

◆『心理統計学の基礎』(南風原朝和)

心理統計学の基礎―統合的理解のために (有斐閣アルマ) 心理統計学の基礎―統合的理解のために (有斐閣アルマ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2002-06

そして、この本。
前の2冊に比べれば、数式の展開が多い本です。しかし、すこしは統計的な考え方に慣れてきた、もう少ししっかりと統計の考え方を理解したい、という方にはおすすめできる本です。
はじめにで、つぎのように記述されています。

本書は、基礎的な内容から、現在の心理学の研究論文を読み解くには不可欠な「重回帰分析」、「分散分析」、「因子分析」、「共分散構造分析」など、比較的高度な方法まで取り上げて、それらが統合的に理解できるような解説を試みました。また、「因果関係」、「区間推定と検定の関係」、「自由度」、「偏回帰係数の解釈」、「平方和のタイプ」、「斜交因子解」など、ひととおり心理統計を学んだ人でも理解が難しいと感じたり、誤解されることが多い事項を重点的に取り上げました。

マーケティングリサーチの分析をすることがある方なら、おなじみの言葉が並んでいると思います。
調査報告書を読むだけでなく、自身で分析をすることがある人は、この本に書かれていることについては理解をしておく必要のある内容だと思います。(そして、個人的にも、再度この本を読み直さないと、と思ったのですが・・・)

◆『統計学を拓いた異才たち』(デイヴィッド・ザルツブルク)

統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫) 統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)
価格:¥ 1,200(税込)
発売日:2010-04-02

最後に、少し毛色の変わった本書です。
少しでも統計学に興味をもたれたら、この本を読んでみるとおもしろいかもしれません。日頃接している統計が、どのように生まれてきたのか、どのように展開してきたのか、といったエピソードで語られた読み物です。この本を読むと、統計の背景にある本質を理解できるかもしれません。
(そして、文庫本になったということは、それなりの読者がいたということでもあると思います)

さて、入門編としての統計関連の本を紹介してきましたが、最後の最後に、ぜひ読んでいただきたい論文があります。
それは、『マーケティングリサーチャー』最新号(112号)に掲載されている首都大学東京・朝野先生の論文です。

『マーケティングリサーチャー』112号もくじ(JMRA)

リサーチ会社に入ると最初に教えられるであろう標本調査や推定の理論が、マーケティングリサーチにおいては、どのような矛盾をはらんでいるのかが述べられています。
実は、調査理論には矛盾が多いことを感じていた時に、朝野先生のこの講義を大学院で受け、得心がいったという経験があります。
日本マーケティングリサーチ協会(JMRA)会員社の方であれば、会員ログインページより、本文を読むことができると思います。
また、日経テレコンでも『マーケティングリサーチャー』のバックナンバーを検索できますので、そちらで読むこともできます(反映のタイミングが、よくわかりませんが・・・)。

今回紹介した本が、少しでもみなさんのお役に立てばいいのですが。。。。
また、「この本、おすすめ」という本があれば、コメント欄で、ぜひご紹介ください!




「NHK大相撲名古屋場所生中継」問題から考える

NHKが大相撲名古屋場所を生中継するのかどうかという問題が、データについて考えさせられるので、久々に。

こちら ↓ の記事について、みなさん、どう思いますか?

「楽しみにしていたのに」NHKに反響2000件「中継すべき」が反対を上回る(iza:2010/7/7~リンク切れです)

簡単に整理すると、まず以下の事実があったと。

先月14日から会見直前の6日午後4時半までにNHKに寄せられた意見は約1万4000件で、「中継反対」が66%(約9400件)、「中継賛成」が14%(約2000件)だった。

これを理由のひとつ(=視聴者からも厳しい意見が多い)として、NHKは大相撲名古屋場所の生放送中継をしないことを決めたのですが、それに対して、

NHK広報局によると、意見は福地茂雄会長が記者会見を開いた午後4時半から午後10時までの集計。電話やメールなどで寄せられた約1200件のうち、「中継すべき」は44%を占め、「中継反対」の20%の倍以上となった。

というものです。

単純に見てしまうと、NHKの生中継中止の会見をはさんで、「中継反対」という意見が66%から20%へ減少し、「中継賛成」が14%から44%へと増加した、ということになります。
この数字だけ見せられると、なんと世の中は・・・、という印象を持ってしまいそうです。とくに、最近の内閣支持率の急激な変動などとあわせて考えると、なおさら、「ほら。世の中の意見なんてこんなもんさ。当てにならない」、あるいは、「調査って、ほんとひどい。信用ならん」などということを感じる人もいるでしょう。

ほんとに?、そうなの?。
?マークが頭の中を駆け巡ります。。。

結論を先に言うと、ここに表れている数字は、『世論の曲解』の菅原先生が tweet されていたように、「世論ではなくて反応ですね。不利益を被る側が反応するのが通常なので」ということなのだと思います。

まず確認しないといけないのは、ここで呈示されているデータは「電話やメールなどでよせられた意見」、つまり「NHKに対して(強く?)意見したい人が、実際にNHKに対して言った意見」を元に%を算出しているという点です。
このような背景の下での「反対66%」という数字の意味は、「自らNHKに物申した人の中では、中継反対の人が66%だった」ということで、決して視聴者全体の中の割合でも、相撲に興味がある人の中の割合でも、ふだん相撲を見ている人の中の割合でもない。このことを忘れてはいけないと思います。

そして、「満足した人より、不満な人の方が他人に話をする割合が高い」というデータがあったと思います。
(80年後半頃に、顧客満足の背景として繰り返し語られていたデータなのですが、出典が思い出せません・・・。満足→5人に対し、不満→10人くらいだったように記憶しているのですが)
このことに照らして考えると、「自ら意見を言う人は、相対的に不満な人が多い」ということが考えられ、NHKに寄せられた意見の中で「反対」の立場をとる人が多くなるのは当然の結果だともいえるでしょう。
つまり、NHKが中継中止を表明するまでは「中継反対」の人の意見が多くなり、同様に、中継中止決定後は「中継中止に反対=中継賛成=44%」が多くなる。結果、見かけの数字では逆転現象を起こすのも、これまた当然の結果といえるでしょう。

つまり、これは「(いわゆる)調査」ではないし、このような結果が出てくるのは、ある意味、当前の結果であって、このデータを中継中止の理由のひとつとして示したNHKの考え方に違和感がありました。(そして、中継中止後の状況をあえて記事にするのもどうなの?、と報道する側のスタンスにも疑問を抱いたのですが・・・)

もうひとつ、「シンプソンのパラドックス」という問題があります。

「集団を2つに分けた場合にある仮説が成立しても、集団全体では正反対の仮説が成立することがある」(Wikipedia)というものです。
今回の相撲中継問題にあてはまるかどうか、正直なところ自信はないのですが、データ分析の際に、このようなパラドクスがあるということを、ついでに覚えておいていただければ。

とはいえ、私にこのパラドクスを詳しく説明する力量はないので、サイトをいくつか紹介しておきますので、こちらを参考にしてください。
(ただし、煙に巻かれたような感じを持つかもしれませんが・・・)

シンプソンのパラドクス(Wikipedia)

最後に。

今回のテーマからすると、“(いわゆる)量的調査”に基づかないデータ、たとえばコールセンターへの意見や、blogとか、コミュニティとか、twitter とかのソーシャルメディア上の意見についてはどうなの?、分析しても意味ないと言うの?、という疑問をもつ方もいるかもしれません。
そうではありません。これらのデータも十分に有効なデータだと思っていますし、へたな“調査”に基づいたデータよりも、リッチな内容で、多くの知見を得ることができる可能性があります。
むしろ、たとえ一人の意見であり、つぶやきであったとしても、商品改良やイノベーションのきっかけになることは十分ありますし、粗末な量的調査データよりも、商品改良やイノベーションに寄与する可能性は高いと思います。

ただし、意見を単純に数字に置き換えること、とくに賛否の比較をすることについては、今回のような背景=言いたい人が言っている意見である、ということは踏まえておかないと危険だと思います。
一方で、「不満」の内容を項目レベルで整理し、大小を比較することについては、同じ基準の中での比較になると考えることもできるので、賛否の比較に比べると、素直にデータを読むことができるでしょう。
(ここで、ひとつ気になる点を追加。同じ「意見を言う回路」であっても、電話をする>メールをする>blogを書く>コミュニティサイトへ書き込む>twitterで書く、というように意見を言うことについての障壁は低くなると思うので、すべてのチャネル、メディアに対し、単純に今回の背景を当てはめられない、ということも言えるかもしれません)

また、ある意見を参考にするにあたっては、「どのような人が言っているのか」「どのような文脈で言っているのか」ということも、あわせて理解することも大切ではないでしょうか。
今回のNHK問題については社会的なテーマであるため、マーケティング的な視点からだけ見るのはそぐわないのですが、「中継反対」を言っている人がどのような人なのか、たとえば、ふだんから相撲を見ているのか、見ていないのか、といった背景を理解するだけでも、意思決定は異るかもしれません。

NHKの大相撲中継問題についての記事から、話は拡散気味に、ずいぶん長いエントリーになってしまいました。。。
ただ、このようにデータを扱った記事については、ほんと?、背景は?、などを考えるくせをつけ、そこからふだんの仕事に繋げていくのも、大切なことですよね。
(6月twitterまとめは、近日中に・・・)

2010年5月の twitter から

5月の twitter から。
※段落ちが、tweet された文章オリジナルです。
※tweet の中にある、http://~がサイトへのリンクになります。twitter をしていない方は見慣れないURLだと思いますが、短縮形でのURLになっています(twitterには140文字の制約があるため)。
※@~は、@以降のtweetを発した人のtwitterアドレスにリンクします。@から始まっていないものは、このblogの主宰者のtweetです。

◆リサーチ周辺情報

1)インテージ決算
インテージの決算が発表されています。

「インテージの前10年3月期連結業績は増収ながら減益(ヤフーファイナンス)」http://bit.ly/aqrHwd >増収減益といっても、売上0.5%増、経常2.8%減なのですが。オリジナルの決算短信はこちら(PDF)~http://bit.ly/bG13EI (2010/5/12)

インテージ決算説明会記事> インテージの代表取締役社長田下憲雄氏「今後の成長戦略と事業計画を語る」 http://bit.ly/9H6Z9G / 発表資料はこちらに(pdf)~http://bit.ly/cdnINk (2010/5/20)

発表会見のストリーミング映像も →こちら で公開されています(45分あります)。

詳細は、上記のリンクを参照いただければと思いますが、つぎの環境認識はリサーチ業界全体で共有する必要があると思います。

当社グループの事業環境においても、リサーチ業界、コンサルティング業界、IT 業界、広告業界等の企業がお互いを巻き込みながら、ビジネスモデルが収斂して行く状況が生じています。また、成長を続けてきたインターネットリサーチ分野も転換期を迎え、競合企業にもサービス変革の動きが見られます。(インテージ社「平成22年3月期決算短信」P11)

2)楽天リサーチカンファレンス
楽天リサーチのカンファレンスも行なわれています。ポイントは、SurveyML萩原さんのつぎのtweetで。

@surveyml 楽天リサーチの戦略まとめると (1)スマートフォン対応(モニターの利便性向上)、(2)クラウド推進(ユーザーによる集計オンライン化)、(3)行動データ統合(楽天購買データも使えるショッピングパネル) (2010/5/20)

1と2は他社もできる(すでに実施している)ものですが、3は楽天ならではの差別化ポイントになりそう。

3)リサーチのスマートフォン/iPad対応
そして、楽天リサーチの戦略1であるスマートフォン対応は、すでに事例も。

「国内初 スマートフォン端末/スレート端末 完全対応次世代モバイル・マーケティング・ツール「モバQA neo」 2010年7月リリース」(VRI) http://bit.ly/9kMrfj >「モバイル・マーケ・ツール」とありますけど、「モバイル・アンケート・ツール」ですので (2010/5/28)

こちらは、ビデオリサーチインタラクティブ社の「モバイルFlashアンケート(キャンペーン測定)作成/管理ASPサービス」。何かの広告調査で回答したことがあるのですが(バーコード経由でアクセス)、とても回答しやかった記憶があります。

他にも、こちら ↓ のようなリリースも。

コネクトテクノロジーズ、「iPad™」を利用した企業向けアンケートソリューションを開発(PDF:コネクトテクノロジー社ニュースリリース、2010/5/28)

まさにCAPIのiPAd版かと。
(2003年ごろ、当時わりと実用化なったタブレットPCでCAPI化を行なったことが思い出されます。当時とは、ハードもソフトも通信環境も、隔世の感。。。)

4)マイボイスコムによる「キキミミパネル」
慶応大学清水聰先生の「目利き・聞き耳・死神」研究をベースとし実用化したものが、マイボイスコム社よりリリースされています。

清水先生の「聞き耳・死神」研究の実用化。このリリースだけでも勉強になる(PDF)>「マイボイスコムと読売広告社、消費者行動研究の理論に基づい34,000人の「キキミミパネル 33-Voice(ミミ・ボイス)」のサービスを開始」 http://bit.ly/c7kSv3 (2010/6/1)

「目利き・聞き耳・死神」研究については、上記のリリースを見ても概要はわかると思いますが、さらにこちら ↓ のサイトを見ていただくとより理解が深まります。リサーチにおける「対象者」選定の重要さが、うかがいしれます。

「消費者行動とSPについて」(salespromotion.jp、2007/9/6)
→ 研究当初の清水先生(当時、明治学院大学)と守口先生(早稲田大学)の対談

アサヒビールの「目利き調査」(ブログ『マインドリーダーへの道』、2009/6/17)
→ @matsuoty さんのブログ。慶應MCC「夕学50講」での講演まとめ

◆おすすめサイト

1)「なるほど統計学園」(総務庁統計局)
4月のまとめで 『科学の道具箱』(科学技術振興機構) を紹介しましたが、今月は総務庁統計局から統計学習サイトリニューアルのリリースが。

「なるほど統計学園」開校!-統計学習サイトのリニューアル」(総務庁統計局) http://bit.ly/9RAVgp >統計学習のサイトが続々オープンしてますが、こちらで背景等がわかります。

「なるほど統計学園」http://bit.ly/d9fkFl >こちらは、児童・学生向けのサイト

「統計学習の指導のために」 http://bit.ly/b9Lrul >こちらは先生向け。「補助教材」は、リサーチャーの自己学習の教材にもなりそう。 (2010/5/17)

統計の学習がどんどん広がっていくのはいいことですね。
リサーチャーとしては「統計学習の指導のために」で書かれている内容は理解しておく必要がありそう。たとえば「1936年&1948年アメリカ大統領選における選挙予測」の事例は、リサーチの古典中の古典です(「なにそれ?」という方、→こちら のページで勉強を。。。)

リサーチ専門家でなくても、頻繁に世論調査が行なわれる今という時代においては、マスコミで報道される世論調査結果を読む前提として知っておかないといけない一般教養といえるでしょう。

2)『Research Methods Knowledge Base』
SurveyML萩原さんが紹介していたサイト。
英語のサイトなのですが、WEB版リサーチ事典といった趣で、とても勉強になります。ぜひ一度、もくじだけでものぞいてみてください。

これ、いいですね!、知りませんでした。@surveyml さん、ありがとうございます > ”Research Methods Knowledge Base” http://bit.ly/aKkwmi (2010/5/8)

3)『Excelで始めるデータ分析』(MARKETING METRICS Lab.)
MARKETING METRICS Lab.( @mmlab_jp )のサイトから。
分析とは、結果を見せるとはどういうことかを教えてくれます。ほんとにひと手間かけるだけで、データのわかりやすさや理解がまったく違ってきます。とても良い内容です。(第2回が待たれます・・・)

ひと手間かけるだけで、見えてくるものが。ぜひ RT @mmlab_jp: 初心者向けデータ分析講座「Excelで始めるデータ分析(第一回引き算とソート)」書きました。難しい話ではないけど、意外と盲点では? http://www.mm-lab.jp/news/92/ (2010/5/13)

4)「アクセス解析サミット2010」
こちらも萩原さんのtweetで知った内容。たしかに、興味深いセッション。

@surveyml ツイートまとめ http://ht.ly/1PxJU 、一部のセッションはUstream アーカイブも http://ht.ly/1PxV3 <RT @surveyml: アクセス解析サミット2010 は素晴らしい内容 #a2isummit

詳細を知りたい方は、上記のツイートまとめやUstアーカイブを追ってもいいですけど、まとめサイトがありますので、そちらを紹介しておきます。

アクセス解析サミット2010 (『stj064 UX_Memo』、2010/6/1)

5)Twitterマーケティング【まとめ記事】(Tech Wave)
「Twitterマーケティング」という言葉は好きではないのですが、こちらのまとめ記事は、わりと本質をついた内容になっていると思うので紹介。

ちょっと前の記事ですがメモ >Twitterマーケティング【まとめ記事】(Tech Wave)http://bit.ly/9hR8iL (2010/5/13)

どうも、ソーシャルメディアを旧来のマスメディアと同じような"Pushメディア"と理解をするような風潮を感じるときがあるのですが、本質はまったく違うと思います。こちらの記事を読むことで、ソーシャルメディアとは何かについて、少し理解することができそうです。

6)BtoB営業について考えるためのサイト
マーケティングリサーチの営業も、まさにBtoBの営業といえます。
では、BtoBの営業で考えておかなければならないことは何か。ありそうで、あまりなかった、このような視点からの整理をしてくれるサイトを2つ。ぜひ。

リサーチの営業?にもあてはまる RT @ushido: なるほど、訪問回数が多ければ良いというものでもないですよね。 RT @kayumi: 成功するB2B営業のための原点回帰 | http://bit.ly/a2aYhD

営業のはなし、こちらもあわせて RT @vermilion07: B to B営業担当者にとって欠かせないこと! http://tinyurl.com/3a8fc2m (2010/5/25)

大切なことなので、「基本」として整理されている部分を引用させていただきます。

(1)お客様は必要最低限のやり取りで済ませたいと思っており、必要以上の面会や連絡は逆効果になる。
(2)営業マンは取り扱う製品やサービスだけでなく、競合他社との訴求点の違いまで熟知している必要がある。
(3)お客様は製品やサービス(の仕様よりも)が自社のビジネスにどういう効果をもたらすかを知りたがっている。
(成功するB2B営業のための原点回帰『ThinkCreative』、2010/5/18)

7)コトラー『Marketing3.0』モデル
以前紹介したコトラーの『Matketing3.0』(洋書です!)。

Marketing 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit Marketing 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit
価格:¥ 2,362(税込)
発売日:2010-05-03

本書におけるキーモデルの紹介と、その解釈についてもtwitter上で議論が。最終的には、ここに落ち着いたかな?

@surveyml おお、これは決定版かもですね。Marketing 3.0 モデル http://ht.ly/1N6hx の理解が進みそう<RT @matsuoty: Mind=心で考えること、Heart=心で感じること、Spirit=心を揺らすこと。 (2010/5/20)

これからのマーケティング、ソーシャルマーケティングを理解する上で参考になります。

◆今月の一言

1)リサーチに関連する一言
いずれも至言だと思います。日々の業務を進める上で、心に留めておきたい一言です。
(ただし、よくキレるプロ仕様の刃物のような言葉も。字面だけをなぞることのないように。真の意味を理解しないと、怪我をする場合もありますので、注意してください!)

@DruckerBOT: 間違った問題への正しい答えほど始末におえないものはない。 (2010/5/21)

@matsuoty マーケティング調査(特にアンケート調査)の陥りやすい罠。手間も時間もかけずに、ちょっとお金をかければ、(要するに楽に)データ収集できるため、データ収集自体が目的化する点。本当に使えるデータを集めるために最適な方法は何かという検討はしばしばスルーされる。 (2010/5/27)

@NaohitoOkude 哲学とビジョンをもって、フィールドワークを行う。ここでもなにか「気付く」ことを焦る。すると凡庸なものになる。自分がフィールド経験で変わる。変わった自分が創造性にむかってジャンプする。ここを演出できるのがデザイン思考のファシリテーターである。 (2010/5/21)

@mrsugimoto: 状況の認識においては価値観を排し、何が起きているのかという事実に焦点を当てなければならない。状況認識に価値観を持ち込むと、都合のいいように事実をねじ曲げることになる。ただし、その後の行動においては価値観に基づく原則も重要。 (2010/5/20)

@kawango: …みんな自分の感覚に頼りすぎ&自分の感覚を共有できる人口の全体での割合を考えていない。ライトユーザはどう動くひとたちかをわかっていない。過去のユーザの行動のシミュレーションに現在の自分の知識感覚を適用している。 (2010/5/31)

2)広く人生、ビジネスについての一言
そして、リサーチに関係なく、心に留めておきたい一言。

そう。成功の対語は、失敗ではなく何もしないことだと思う。 RT @sohbunshu: 問題は「失敗」が必ず日常的に起きることだ。必要以上に責任を取らせると何もしなくなる。 (2010/5/19)

なるほど RT @hitsuka: 山本五十六氏の言葉には続きがあったのか>「やってみせ 言って聞かせて させて見せ ほめてやらねば 人は動かじ」「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」 (2010/5/20)