日別アーカイブ: 2013-04-22

「マーケティングリサーチの現状」by JMA 2013

2年に一度行われるJMA(日本マーケティング協会)の「マーケティングリサーチの現状(今回は2012年度調査)」調査、先日(2013/4/18)報告会が行われたので参加してきました。
今回は、パネルディスカッションでの日本コカコーラさんのプレゼンが秀逸、このプレゼンを聞けただけで元が取れたような気分になりました。マーケティングリサーチの現状やこれからについて、的確に指摘いただいたように思います。

さて、内容ですが、個人的に調査結果から感じた課題は4年前に紹介した内容と大きく変わっていない、というのが正直な印象です。ですが、その深度は確実に深まっている気がします。
いくつか、代表的なデータを紹介したいと思います。
報告書の目次は、以下のようになっています。

1.MRの実施状況とMR担当部門に対する役割・期待
2.「定量調査」の実施状況と課題
3.「定性調査」の実施状況と課題
4.外部機関の利用状況と受託業務内容・期待・満足
5.「ROI」や海外リサーチについて
6.MR情報の意思決定寄与度と活用を高めていく施策

 

◆マーケティング活動の情報ソース:MA (報告書P19)

データの取り方が前回までと異なっているので時系列での比較はできないのですが、狭義でのマーケティングリサーチが情報ソースの one of them であることが、よくわかる結果です。
当たり前の結果でもあるのですが、状況の確認をすることは必要です。多様化する情報をどう編集するかが、新たな課題だとして見えてきます。(各課題のTOP3を紹介。他のソースも含めて確認してもらう方がいいかも)

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◆外部調査機関の選択重視点・不満点:MA (報告書P42)

これは前回のエントリーでもメインに取り上げたものです。結論を言ってしまうと、分析や提言・インサイトについての重視は、やはり低下しているということです。
前回から回答の取り方を変えているので長期のトレンドがわからなくなっていますが、低落傾向と見て間違いないように思います。(上位項目のみピックアップ)

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◆外部調査機関への委託を含むプロセスの主担当:SA (報告書P46)

こちらも前回エントリーで取り上げた内容。質問や選択肢が変わっているので、単純比較はできません。(質問項目が細かくなったので、%のベースが実施ベースになってます)
それでも、調査設計や調査票作成、結果の分析がこの程度でいいのだろうかという状況は相変わらず。一方で、ワークショップの実施率が結構高いという印象を持ちました(ワークショップの内容は不明ですが)。

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◆新たなリサーチ手法への実施、興味・関心:SA (報告書P51)

これは今回の新しい項目で、新手法への実施や関心度合いについて。
比較対象がないので、高いと見るか、低いと見るかの判断はお任せします。
(また、「プロモーション・リサーチ」については、言葉の捉えられ方に問題がありそうなので参考とした方がいいと思います)

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◆自由回答

いつものように、自由回答は考えさせられるものが多いです。
そして、分析者のまとめが的を射ているように思うので、紹介しておきます。
(こちらは、発表資料からで、報告書にはありません)

マーケティングリサーチのサービスと、リサーチユーザーのニーズに乖離があるのではないか? それは・・・

・統計理論に則った実査がますます不可能になっている
→代替え手法の開発を!

・データが速く、安く、大量に集まるのは望ましいが
→実際の行動に直結するような手法の開発を!
→ノイズの「除去力」と、リアル感を減衰させない「編集力」を!

・ネットリサーチの普及もありリサーチの装置化が進行している
→「マーケター」と「装置」の間に入る「人材」を!

 

とくに気になったのは以上なのですが、ここでは課題点のみをピックアップしています。他のデータでは、リサーチへの期待が垣間みえる項目や、海外調査増などの傾向も見て取れます。
これら他のデータや自由回答にも考えさせらるものが多いので、ぜひ報告書を入手して、ご自身で確認してみてください。
(人によって解釈が異なる結果も少なくないかもしれませんし・・・)

 

◆パネルディスカッション

そしてパネルディスカッションの内容ですが、さすがに主催者でない者が内容を書くのは憚れるので、こちらもとくに気になったフレーズをいくつか紹介しておきます。
(個々の発言をくっつけたり、はしょったり、言い換えたりしてるので、バイアスが入っていると思ってください)

  • リサーチテーマは、これまでは「何を作るか、どう改良するか」だったが、いまは「誰に、どんな価値を、どう実現するのか」という、より綜合的なテーマになっている。
    また、予測精度の向上や、上市後のフォロー調査の進化/深化も課題に。
  • 「なぜこの調査なのか」「この調査の意味は」を、一緒に議論できるパートナーになってほしい。
    (極端なことを言うと、現状は、間違っていようと、おかしかろうと、クライアントの言うままに形にするだけ、ということも少なくないよう)
  • リサーチャーの役割は、データ処理やサポートから、方向性を示す、目指すところを考えるという方向に進化している。
    (データ処理だけなら、海外へのアウトソースの方が良いことも)
  • リサーチ会社がM&Aで大きくなるのはいいが、結果として「なんでもやります」となり、個々の会社の特徴が見えなくなってしまった。
  • 勉強していますか?、新しいことにトライしてますか?、人材に投資してますか?

 

以上が、「マーケティングリサーチの現状」について、個人的に気になった部分です。
つまりは、コストを意識しながらも、アウトプットの高度化が求められていると言えます。しかし、これはリサーチに限らず、当たり前のことでしょう。
そのために何をすべきか。
やはり、これまでのやり方や考え方に囚われずに、これまでの延長線上ばかりで考えずに、視点やスタンスを変えてみたり、新しいことを学びトライしていくことが必要なのでしょう。自由回答を読むと、リサーチの変革を望む声がこれまで以上に多いように感じます。また一方で、リサーチの基本的な部分の劣化についても自由回答では指摘されています。

リサーチの基本的な部分をしっかりと学びつつ、視点を変えてみる、新たな取り組みにトライしていく、当たり前ではありますが、この当たり前のことを、いまいちど確認しておくことが大切なのだと感じた報告会でした。