日別アーカイブ: 2012年5月7日

ここ1年(≒2011年)のお勧め本~その1:基本編

ゴールデンウイークを利用して、積読になっていた本を少し整理しました。
この1年くらい、こちらのblogで本の紹介をしていなかったので、これを機に、主だったものを紹介しておこうと思います。あまり経験がなく、これから勉強していこうという方向けの基本編と、専門書を中心に少し変化球ぎみの応用編の2回にわけて、紹介します。
(出版されてから時間が経っている本が多いので、すでに購入された方もいるかと思いますが、その点はご容赦を・・・)

今回は基本編です。ただし、「自分はベテラン」と思っている人にも参考になると思います。

 

◆ものの見方、考え方についての本

昨年は、ものの見方や考え方、科学的リテラシーとは何か、あるいは統計・確率に関する本が多く出版された印象があります。おそらく、原発事故に伴って溢れ出た様々な情報やデータに多くの人が振り回された状況があったからだと思います(実際、これらの本の内容も、原発に関連した情報を検証するという内容のものも少なくありませんでした)。
日々の暮らしの中で接する情報をどのように読むのかということは、ふだんの生活を行う上でも重要ですが、これらの本が提示している内容は、とくにリサーチャーにとっては重要なベースとなるものです。

『自分のアタマで考えよう』

自分のアタマで考えよう 自分のアタマで考えよう
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2011-10-28

著者のちきりんさんのblog(→ こちら )は、その視点がユニークで、硬直したアタマではなかなか見ることのできない世の中の側面を提示してくれる、おすすめのblogです。各エントリーが平均4万人に読まれ、月間100万~150万のページビューを集めるということからも、そのおもしろさは推して知るべし、でしょう。
そして、このblogの発想の元となっているのが、この本で提示されている思考の方法論。
「はじめに」で、“この本が、「考えるって、つまりなんだよ?」と思われている方、「なにをどう考えればいいのか、誰か教えてくれよ!」と感じていらっしゃる方のお役に立つ”ことを目的として本書を書かれたとあります。
大枠は「もくじ」を見るとわかるので、紹介しておきます。

序:「知っている」と「考える」はまったく別モノ
1:最初に考えるべき「決めるプロセス」
2:「なぜ?」「だからなんなの?」と問うこと
3:あらゆる可能性を検討しよう
4:縦と横に比べてみよう
5:判断基準はシンプルが一番
6:レベルを揃えて考えよう
7:情報ではなく「フィルター」が大事
8:データはトコトン追い詰めよう
9:グラフの使い方が「思考の生産性」を左右する
終:知識は「思考の棚」に整理しよう

Amazon評では辛口の評も少なくありません。フレーム思考にすぎない、厳密性に欠ける、偏ったものの見方、一般的すぎるなどなど。しかし、ここに書かれていることは分析の基本的な思考法として知っておくべき内容だと思いますので、読んでおいて損はないと思います。とくに、まだまだ分析がよくわからないという方のベーシック本として、お勧めしておきます。

 

『「科学的思考」のレッスン』
さらに、アカデミックに振って「科学的思考」を学ぶための本が、こちら。

「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス (NHK出版新書) 「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)
価格:¥ 903(税込)
発売日:2011-11-08

“アカデミックに振って”と書いたので敬遠したくなる人もいるかと思いますが、リサーチを仕事とする人にとって、この「科学的思考」を学ぶことは不可欠です。
こちらも「もくじ」を見ると、求められていることの大枠がわかると思いますので、紹介しておきます(ただし、2部構成の前半だけ紹介します。後半は、まさに原発問題を題材とした科学リテラシーについての内容ですので、読まなくてもいいかなと・・・)。

第1章 「理論」と「事実」はどう違うの?
第2章 「より良い仮説/理論」って何だろう?
第3章 「説明する」ってどういうこと?
第4章 理論や仮説はどのようにして立てられるの?
どのようにして確かめられるの?
第5章 仮説を検証するためには、どういう実験・観察をしたらいいの?
第6章 なぜ実験はコントロールされていなければいけないの?

まさにリサーチの根本に関わる問題。
このあたりの概念や方法論が理解できているかどうかで、リサーチャーとしての質は問われるのではと思っています(定量調査に限らず、です。はやりのデータサイエンティストさんも同じ)。
リサーチにかかわる人には、必読本だと思います。

◆リサーチの本

リサーチに関する本、しかも基本的な本もいくつか出版されています。

『アンケート調査入門』
まずは、マーケティングリサーチやマーケティングサイエンスについての著書を多く書かれている朝野先生編著による本。

アンケート調査入門 アンケート調査入門
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2011-10-08

本書の特徴は、著者が事業会社でのリサーチ担当者だということ。内容も著者の皆さんの経験をベースに書かれているので実務的で、トラブルシューティングなどの工夫もあるなど、タイトル通り入門書としても読める内容だと思います(この部分の構成は、リサーチプロセスと実行管理/アンケート票の作成/テキストデータからの情報抽出/データの集計と統計解析/統計モデル/情報発信、となっています)。
ただ、この本で読んで欲しいのは、実は1章~3章です。ここは、リサーチの入門者には少し難しいかもしれません。一方でリサーチのベテランにとっては、これまでの考え方を揺さぶられる内容になっていると思います。古典的な統計調査の考え方に安住することの危険性を示してくれます。しかし、「いまのリサーチ」を捉えるには、理解しておくべき内容でしょう。ここに記されている背景や考え方を理解しているかどうかで、リサーチへ取り組む際の“深み”に違いが出てくるのではないかと思います。
(そういう意味では、第1章~3章と4章以降のレベル感や内容に、ギャップがあるとも言えるのですが…)

 

『インタビューのプロが教える、「ホンネ」を語らせる技術』
こちらは、インタビューのノウハウについての入門書です。

インタビューのプロが教える「ホンネ」を語らせる技術 インタビューのプロが教える「ホンネ」を語らせる技術
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2012-02-08

著者は、定性リサーチ会社(アクセス・ジェーピー)の代表。この会社での若手社員の教育向けに書き溜めた原稿をベースに書かれている、と紹介されています。
インタビューのための準備や仕込み、さまざまな投影法の紹介、インタビュー現場でのノウハウなどについて書かれています。掛け値なしの入門書、これからインタビュー調査をやらなければならない人、やってみたい人にとっては、よい参考書になると思います。

 

『図解 マーケティングリサーチの進め方がわかる本』
こちらは、10年前に出版された『図解でわかるマーケティングリサーチ(2001)』の改定版です。
基本的な構成や内容については大きな変更はありませんが、グループインタビューとインターネットリサーチについて加筆がなされています。
副題に「企画設計から、調査票の作成・実査、集計、分析、報告書作成まで」とあるように、マーケティングリサーチの全体像とポイントを理解したい人の入門書として、お勧めです。

図解 マーケティングリサーチの進め方がわかる本 図解 マーケティングリサーチの進め方がわかる本
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2012-01-26

 

『オンライン・ソーシャルメディア・リサーチ・ハンドブック』
いまは、ソーシャルメディア・リサーチについても理解しておかないといけない時代でしょう。
そういう意味で本書は、オンラインリサーチやソーシャルメディアリサーチの基本を理解するためのベースとなる本だと思います。
構成は、オンライン定量調査/オンライン定性調査/ソーシャルメディア/特定分野の調査/マーケティングリサーチの最新動向とあるように、まさに網羅的(そのため、分厚く、お値段もそれなりにするのが、ちょっと。。。)
この分野を専門とする方には、基本を学ぶ、事典的に調べるための本として必携だと思います。

オンライン・ソーシャルメディア・リサーチ・ハンドブック―リサーチャーのためのツールとその技法 オンライン・ソーシャルメディア・リサーチ・ハンドブック―リサーチャーのためのツールとその技法
価格:¥ 6,300(税込)
発売日:2011-10-20

 

『1からの商品企画』
リサーチとタイトルにはないですが、リサーチを学ぶにはよい一冊です。

1からの商品企画 1からの商品企画
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2012-02

この本、商品企画を学ぶための本です。ただ、本来の商品企画・開発は、結構泥臭いものだし、この本のようにリニアに進むものでもないと思いますが、「1からの」とあるように入門書ですので、その点は留意を。実務的かというと、否、でしょう。
商品企画の入門書を、なぜリサーチ本として紹介するのかというと、この本で商品企画の過程でリサーチがどのように組み込まれるかがわかるからです。とくに、リサーチ会社に所属するリサーチャーは、商品企画・開発の全過程に関与することはできないので、企画プロセスとリサーチの関わりを理解するには、ちょうど良い一冊でしょう。さらに、最近注目されるようになったリサーチ手法も取り入れているので、手法の基礎的な理解~どんなときに使うのか、どのように進めるのか~に役立つと思うからです。
もくじを見ると、この意図が少し理解いただけるかもしれないので、簡単に紹介。

第1部:探索的調査
商品企画プロセス/インタビュー法/観察法/リード・ユーザー法
第2部:コンセプトデザイン
アイデア創出/コンセプト開発/プロトタイピング
第3部:検証的調査
市場規模の確認/競合・技術の確認/顧客ニーズの確認
第4部:企画書作成
販促提案/価格提案/チャネル提案/企画書作成/プレゼンテーション

最近、アップルやマクドナルドの事例から、商品企画にリサーチは役立たないということが喧伝されていますが、リサーチを矮小化して理解した、かなり単純化した議論だと思っています。本書で、リサーチの多様性と商品企画との関わりを学び、その上で判断しても遅くはないでしょう。

◆消費者行動論の本
リサーチャーの必須科目となる消費者行動論の本が、ここ1ヶ月くらいの間に立て続けに出版された(される)ようなので、一応紹介しておこうと。(いずれも未読です)
リサーチ本もそうなのですが、20世紀にまとめられた消費者行動論の本だけでは追いつかなくなった、ここ10年くらいの研究蓄積が整理されたということなのでしょう。
構成を見るかぎり、いずれも教科書的で網羅的な内容になっているようです。
(内容については、ご自身で確認してください)

 

最初は、消費者心理学の定番本として評価の高かった『消費者理解のための心理学(1997)』の改定版です。基本的な部分はそのままにおさえつつ、情報環境の変化によってもたらされた領域について、最新研究を取り入れながら改定をしたということです。
出版社紹介は、“モノやサービスを消費するとき、人は何に刺激を受け、どのように行動し、何を感じるのか。消費者行動を心理学から読み解く方法を、より現代社会に即して解説した改訂版。”

新・消費者理解のための心理学 新・消費者理解のための心理学
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:2012-04

 

つぎに、早稲田の守口剛先生・竹村和久先生編著による著書。
出版社紹介は、“近年大きな発展を遂げている行動経済学、神経科学・脳科学ほか、社会学、文化人類学等の最新の研究成果を取り入れ、より学際的な研究の活発化が見られる消費者行動研究。伝統的な心理学的アプローチを基本に据え、消費者行動の基礎的な理論から先端的な研究動向までを解説、消費者行動研究の面白さが伝わってくる好著。”

消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで 消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで
価格:¥ 2,415(税込)
発売日:2012-04-16

 

続いて、基本書として優れた本が多い有斐閣アルマから。学習院の青木幸弘先生、法政の新倉貴士先生他による著書。
出版社紹介は、“消費者情報処理の理論を軸に,様々な段階の消費者選択に焦点を当てながら多様な消費者の行動を整理し,理解するための基本理論を易しく解説。消費者行動分析をマーケティング戦略,ブランド戦略につなげるための枠組みも提示する待望のスタンダード。”

消費者行動論–マーケティングとブランド構築への応用 (有斐閣アルマ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2012-05-12

 

そして、明治大学の井上崇通先生による著書。
出版社紹介は、“「マーケティングと消費者行動」「消費者行動のモデル化」「消費者心理」「社会のなかの消費者」の4部構成。消費者行動論の体系的な標準テキストを目指した著者渾身の書き下ろし。”

消費者行動論 消費者行動論
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2012-04

以上が、基本書として紹介したい本です。
消費者行動論のところでも書いたように、専門書については、ここ10年くらいに起きた環境変化に即して、改定された内容の本が少なくないことに気づきます。
最初に、入門者向けの基本的な本と書きましたが、そういう意味では20世紀に基本的な知識を習得したベテランほど、これらの本で新たな理論を理解しなければいけないのかもしれません。すべてのリサーチャーに、読んでおいてほしい本といえそうです。