日別アーカイブ: 2010年12月14日

『「つながり」を突き止めろ』

「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書) 「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2010-10-15

この本、1ヶ月くらい前に読み終わり、紹介したいと思いながら後回しになっていました。
素直に本書の紹介で書こうか、もっと大きく「つながり/ネットワーク」というキーワードを主に書こうかとずっと迷いがあったからです。わたしにとって、あまり軽く扱えないテーマでもあり。

しかし本日、アドタイムで高広さんのつぎの記事が紹介されました。

セグメンテーションからコネクションへ(アドタイ2010.12.13 by 宣伝会議)

ぜひ読んでみてほしい記事なのですが、この文を理解するにはやはりネットワークの理解が欠かせなはず。で、あまり考えていても仕方ないので、とにかく書いておこうと思い至ったというわけです。
(なので、まだ思いが錯綜していて流れが悪い、わかりにくい、あまり内容がないものになっているかもしれません。ご容赦を・・・)

本書の著者はネットワークサイエンスの研究者である安田雪先生。
実は安田先生は、もう一度マーケティングリサーチについて考えて(研究して?)みよう、というきっかけをわたしに与えてくれた先生でもあるのです(実際に師事したわけではないのですが)。
先生との出会いは2005年、セミナーにおいてでした。このときのメモを見ると、こんなことが書いてあります。

サンプリング調査への批判~ネットワークを無視しているのではないか?
→属性等によるセグメンテーション等、個の分析に過度に依存しすぎており、
  個の背景にあるネットワーク、つながりを無視している
→部分の合計は全体となり得ない
→個の分析を掘り下げても、おおもとの全体を理解できない

(安田先生のこのあたりの考え方は、マーケティングジャーナル誌101号『マーケティングは、関係を制することができるか』(2006)という論文でも触れられていますので、興味をもたれた方はこちらも読んでみてください)

「なるほど、ネットワークか」と思った記憶があります。そして、つぎのマーケティング(リサーチ)のキーワードもネットワークになるのだろうというひらめきがありました。(2005年?、遅くない?、という方もいるかもしれませんが。。。)

そしてまさに、「つながり/ネットワーク」は、いまを、そしてこれからを理解する上では欠かせないキーワードになっています。
しかしどうも、「つながり/ネットワーク」をきちんと理解している人は多くないとも感じています。とくにネット上で散見される意見や主張をみると、そう感じます。

そこで本書です。
研究者による著書ですが論文や研究書ではありません。エッセーに近い文章で、著者の私的な思いも、時おり顔をだします。
しかし、ネットワークサイエンスのトピックスや、研究領域、いまの課題などについても十分に触れられていると思うので、はじめてのネットワーク入門としては丁度いいのかもしれません。「つながり/ネットワーク」の世界が、どのようなテーマを扱っていて、いま、何が分かっているのかを理解する上で。
一応、いつものようにもくじを紹介しておきます。

第1章 対ゲリラ戦略と米軍マニュアル
第2章 電子メールから浮かび上がる業務遂行ネットワーク
第3章 SNSの人脈連鎖
第4章 広告作品「カレシの元カノの元カレを、知っていますか。」
第5章 知人の連鎖と新型インフルエンザつながり
第6章 弱い絆の強さと弱さ
終章  “入る”を制する

◆さらにネットワークを学ぶ

今回はいつもの本紹介とは趣向を変えて、本書の紹介はここまでとし、さらに「ネットワーク」をテーマとした本を紹介していきます。

本書でネットワークに興味をもたれたら、ぜひ、つぎの本を読んでみてください。
ネットワークでは古典といってもいい本で、ネットワークを勉強するには避けられない本だと思います。ネットワークの論文では、引用されることの多い本でもありますし、著者の「バラバシ」という名前や、「スケールフリーネットワーク」という単語は、基本用語です。
ネットワークについて順を追って理解するには、本書が最適では?

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く 新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2002-12-26

あわせて、こちら ↓ も読んでおくといいとは思いますが。(必読とまでは・・・)
こちらも、著者の「ダンカン・ワッツ」や「スモールワールド・ネットワーク」という言葉は、覚えておくべき単語だと思います。

スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法 スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2004-10

いやいや、ここまで専門書ではなく、もう少し概論書はないですか?という方には、こちらでしょうか ↓

私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書) 私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書)
価格:¥ 840(税込)
発売日:2007-04

以上の本は、発売日を見るとわかるとおり、日々進化・深化するネットの世界を理解するには少々古くなってきているかもしれません。
最近出版されたものとしては、こちら ↓ がいいかもしれません。

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2010-07-22

◆さらに進んで、実際にネットワークを研究対象としたいなら・・・

ここまでは、「つながり/ネットワーク」を理解するための本の紹介でした。
しかし、では実際にネットワークを研究するとなるとどうしたら?、という人のための本をいくつか。
(ただ、こちらはいずれも専門書ですし高い本ですので、一度、図書館ででも内容を確かめて、ほんとうに必要かどうかは判断ください。)

まずは、安田先生の著書。
ネットワーク分析を行なうための用語やモデルについて書かれていますので、基本的な理解からはじめる方は、この本から入るのがいいと思います。

ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ) ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1997-02-14

実際にネットワークを調査、分析した事例が紹介されているのが、こちら ↓ の本。
これがそのまま使えるかどうかはわかりませんが、「初学者が実際に調査や分析を行うための入門書」ということで。

社会ネットワークのリサーチ・メソッド―「つながり」を調査する 社会ネットワークのリサーチ・メソッド―「つながり」を調査する
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2010-04

また、実際にネットワーク研究を行なった本としては、こちら ↓ など。

クチコミとネットワークの社会心理―消費と普及のサービスイノベーション研究 クチコミとネットワークの社会心理―消費と普及のサービスイノベーション研究
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2010-02-17
消費者間の相互作用についての基礎研究―クチコミ、eクチコミを中心に 消費者間の相互作用についての基礎研究―クチコミ、eクチコミを中心に
価格:¥ 3,675(税込)
発売日:2009-03
ネットが変える消費者行動―クチコミの影響力の実証分析 ネットが変える消費者行動―クチコミの影響力の実証分析
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2008-03

少し毛色の変わったところでは、こちら ↓ が面白いかも。
安田先生の本にも出てくるのですが、どうもネットワーク研究には「統計物理学」という領域が大きく関わっているらしく、先に紹介したバラバシなども統計物理学者のようです。
で、流行についての研究者と統計物理学者がジョイントして、クチコミ効果の数式化に挑んだのが本書です。

大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する 大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2010-09-15

さて、そろそろ今回のエントリーも終わりにします。
途中でも書きましたが、今、これからを理解するには、「つながり/ネットワーク」の理解が不可欠だと思います。
ぜひ、『つながりを突き止めろ』から、ネットワークの世界に入ってみてください。
いろいろと、考えさせられると思いますよ。

PS.
最後に、ネットワークからの連想で思いついたので、おまけを。
ネットワーク分析のひとつの領域としてあるのが、社内のコミュニケーション分析(『つながりを突き止めろ』では、第2章でふれています)。
社内でのメールのやりとりを解析して・・・、というのはすでに研究もあると思います。しかし、ほんとのコミュニケーションを分析しようと思ったら、対面コミュニケーションは無視できないはず。
そこで、このような ↓ ソリューションもすでにあるんですね。(ある意味、怖いですけど・・・)

社内コミュニケーションを可視化する「ビジネス顕微鏡」(日立HPより)

(この技術、マーケティングリサーチに応用できないのかな、と考えるのですが・・・)