日別アーカイブ: 2010-09-02

メモ的に新しい動きをいくつか

最近、目についたリサーチ関連の新しい動きを備忘録としてメモ。

 

◆博報堂、専門チーム「ETHNOVISION」発足

博報堂は、以前にも潜在意識や認知心理学をベースとした専門チームである「博報堂ブレイン・ブリッジ・バイオロジー」を発足していますが、今回はエスノグラフィをベースとした専門チームを発足するというリリース。
博報堂からのニュースリリースは、こちら ↓ (PDF)。

エスノグラフィを活用した企業イノベーションコンサルティング専門チーム、
博報堂「ETHNOVISION(エスノビジョン)」発足、活動開始(博報堂:2010.8.30)

サービス内容は、生活者の日常生活に入り込み、多様な生活の文脈から新たな問題や機会(ビジネスチャンス)を発見するエスノグラフィ手法を機軸に展開。顧客の需要開拓からプロダクトデザイン、サービスデザイン、イノベーションマインドやスキルを育成するための人財育成や組織改革など、既存の市場内での競争戦略ではなく、新しい市場の創造を目指す、イノベーション創出を行っていきます。(同社リリースより)

前回のこのblogのエントリーである「MROC」とも絡みますが、やはり焦点はイノベーション創出ですね。

博報堂は以前からエスノグラフィに注力していましたし、開発責任者である田村大氏は、日本におけるビジネス・エスノグラフィの第一人者といえる方です。そういう点からも、エスノグラフィの活用を推進するチームとして期待したいと思いますし、ぜひ成果を発表してほしいと思います(もちろん、できる限りで)。

(※「顧客のインサイト」ということでは『日経情報ストラテジー2010年10月号』も、おもしろそう。まだ購入できてませんが。。。)

特集 顧客のインサイトをつかめ! (日経情報ストラテジー:2010年10月号)

◆インテージ、CSコンサルティングサービス提供

続いては、インテージ。

『JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)』の 「利用推進パートナー」認定を受け、CSを核としたコンサルティングサービスの提供を開始 (インテージ:2010.8.30)

CSコンサルティングサービスの提供開始というものですが、ベースになっているのは、なんと JCSI(日本版顧客満足度調査)。「利用推進パートナー制度」なるものがあったんですね。
こういう制度を活用し、いち早くサービス化してしまうのが、さすがインテージでしょうか。

サービス内容は、

  1. 『JCSI(日本版顧客満足度指数)』を活用した「診断(Diagnostic)」サービス
  2. 当社オリジナルのテーマ型リサーチによる課題の「要因分析(Analytical)」サービス
  3. 日々のお客様の声=“真実の瞬間”にもとづく「改善(Improvement)」支援サービス
  4. これらのKPIモデル化および組織へのビルトインプロセスをご支援する 「定着化(Consulting)」サービス
    (同社リリースより)

とのこと。

日本生産性本部の資料(→ こちら)をみると、他には日経リサーチも名前がでているので、近いうちにサービスインするのでしょうか。

(※JCSIについては、以下の過去エントリーを参照してください。)

平成21年度JCSI(日本版CSI)調査結果(2010.3.17)

国土交通省、道路交通データ収集を抜本改善

こちらはリサーチサービスのリリースではないですが、人手によるリサーチからIT活用のログデータに置き換わる事例として興味深い。

国土交通省、道路交通データ収集を抜本改善(GAZOO.COM:2010.8.6)

リサーチ視点でのポイントは、こちら。

人手による交通量調査や区間を限定した速度調査(断面速度調査)、利用者への聞き取り調査など、従来の道路交通センサスの手法を廃止し、ITS(高度道路交通システム)機器による常時観測値をベースにする。当面は約100万台の民間プローブデータなどを活用、面的な移動速度を把握し、旅行時間など利用者の便益を大きく左右するデータの精度を高める。 (同上記事より)

実態データに関しては、この事例のように、サーベイによるデータからログデータに置き換わっていくのかもしれません。

◆ネットレイティングによる「日本のオンラインメディアの現状」

インターネット視聴率調査の先駆であったネットレイティング社から、白書(ホワイトペーパー)発行のリリース(PDF)。

インターネットの成長ポテンシャルはシニア層に~ニールセン・オンライン、ホワイトペーパーの刊行を開始 創刊号は「日本のオンラインメディアの現状」~
(ネットレーティング社ニュースリリース:2010.8.23)

弊社では、 「どこにどのような消費者がいるのか」、「今インターネット上で何が起きているのか」という視点に重点を置き、 日々のデータ収集・分析を行っております。本レポートでは、それらの活動を通じて得られた知見を5つのトピックに分類し、 皆様にお届けいたします。 (同社リリースより)

ホワイトペーパーのダウンロードは、こちらから(→ ダウンロードページ

データのみでなく、コラムも役立つ。オンラインメディア関連のデータをウオッチしていくには、良い資料となる予感。

◆慶應大学による2つの実験

慶應大学からも、リサーチ関連の実験のリリースがふたつ。

最初は、MROC的な実験。

慶応大、Twitter を活用して未来の技術やサービスを考える社会実験を発表(japan.internet.com:2010.8.27)

Web サイトや Twitter を通じて一般の生活者から情報技術やサービスに対する様々な期待やアイデアを募集。将来の社会において求められる情報技術へのニーズやそれを活用した新たなサービス像を模索するという。 (同大リリースより)

サイトはこちら → 「 MIRAI TWEET COMPANY
twitter によって、生活者の意見を集めようというもの。まだ始まったばかりで、そんなに発言は多くないようですが、最終的にどのような形になるのか。。。

 

2つめは、「討論型世論調査」。
アンケート調査と市民討論会を組み合わせた、新たな調査手法としています。

「藤沢の選択,1 日討論」(討論型世論調査,市民1000人調査・200人討論)開催について (PDF:藤沢市・慶應義塾大学:2010.8.23)

「藤沢のこれから,集中討論」~討論型世論調査(藤沢市HP:2010.8.26)

討論型世論調査(Deliberative Poll○R)は,アンケートの実施と市民討論会を組み合わせた,新しい調査手法であり,無作為抽出により参加をいただく藤沢市民の熟慮に基づく声を,新総合計画の策定に反映させることを目的としています。 (上記リリースより)

実施の流れの詳細については、上記の資料をご覧ください。

この試みは、少し前に紹介されていた「熟議」という言葉に繋がるものでしょう。そこでは、「集計民主主義」と「熟議民主主義」という対比で紹介されていたのですが、最近のメディアによる世論調査(ともいえないものが跋扈してますが)を見るにつけ、このような仕組みが重要になってくるかもしれないと思っていました。

本当に「多数決」は万能なのか?(JB PRESS:2010.6.22)

“コク”のある世論調査(東京新聞:2010.1.11)

以上、ここ1ヶ月くらいで目に留まったものを、ご紹介しました。

(紹介するプレイヤーがいつも同じになるのは、こちらの情報源が偏っているからなのか、これらのプレイヤーが積極的にリリースを行なっているからなのか、という点が気になりますが・・・)