日別アーカイブ: 2010年8月6日

『課題解決!マーケティング・リサーチ入門』

課題解決! マーケティング・リサーチ入門 課題解決! マーケティング・リサーチ入門
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2010-08-06

マーケティングリサーチ本の新刊です。
中央大学大学院の田中洋先生が編著、リサーチナレッジ研究会という実務家による研究会が著者となっています。

このリサーチ本、これまでの一般的なリサーチ本とは趣を異にしています。

これまでのリサーチ本は、どちらかというと「リサーチをどのように行なうのか(HOW)」に焦点をあてた本が多かったと思います。サンプリングとか、調査票の作り方とか、集計の仕方とか、統計とか・・・。
しかしこの本は、「何を調べればいいのか(WAHT)」に焦点をあてた本だといえそうです。
(そして、調査設計はできるけど、調査課題を設定したり、何を調べたらいいのかを考えるのは苦手というリサーチャーも少なくないような?。。。)

本書の「はじめに」でも、この本の狙いについて、つぎのように書いてあります。

これまで多くのマーケティング・リサーチに関する書物が出版されてきました。優れた本も少なからず存在します。しかし私が長年感じていた不満は、こうしたマーケティング・リサーチの本の多くがリサーチ手法やデータ解析の解説にとどまっていることでした。
調査票の作り方、グループインタビューの手法、多変量解析の方法・・・、こうした手法を解説した本は数多くあります。しかし、ビジネスパーソンが抱えている問題をリサーチにどのように置き換えて、解決にまで導くのかという問題に答えてくれるような本はあまり見当たりませんでした。(「はじめに」 p.ⅳ)

私が考えたのは、こうした「主人の技術」についての本をまとめることでした。つまり、どのようにマーケティングの問題をマーケティング・リサーチの問題に転化し、さらにリサーチで得られた結果をマーケティング活動に反映していくか、こうしたことを教えてくれるような本のことです。(「はじめに」 p.ⅴ)

このような狙いで書かれていますので、「マーケティング・リサーチ入門」とはいっても、道具としてのリサーチの解説書ではありませんので、この点は注意してください。
しかし、マーケティングの問題が複雑になっているいまという時代には、このような趣旨のリサーチ本こそ必要なのだと思います。

では、どんなマーケティングの問題を扱っているのか。もくじを見てみます。

プロローグ

Ⅰ 既存商品のマネジメント
 1.ブランドの健康診断
 2.ブランドのリポジショニング
 3.ブランドストレッチの検討
 4.既存ブランドの価格再検討

Ⅱ 新商品の開発
 5.ブランド設計のためのマーケティング・リサーチ
 6.生活者の「問題」からのアイデア発見
 7.新商品アイデアの探索
 8.コンセプトの作成と評価
 9.商品の評価と改善点の抽出
 10.最適価格の設定
 11.パッケージデザインの評価
 12.販売量の予測
 13.上市後の追跡調査の実施

Ⅲ 効果的な広告展開
 14.広告戦略の検討
 15.広告の事前評価
 16.広告出稿計画の策定

Ⅳ 魅力的な市場の発見
 17.新市場把握のための調査
 18.既存市場の周辺領域の開発
 19.消費動機の探索
 20.消費者行動の理解促進
 21.海外でのマーケティング・リサーチ

かなり網羅的な内容だと思います。そして、それぞれの章は、

課題 → Q&Aによる概要 → 課題解決ステップ → 
課題解決への調査と解説 → コラム(主要調査手法の紹介)

という構成です。
また、課題解決の具体的な内容では、いわゆるSurvey(実査)を伴わず、パネルデータの分析により課題に迫る、広義でのリサーチステップが紹介されていることにも特徴があります。(たとえば、「4.既存ブランドの価格再検討」では、小売店パネルデータの分析だけで解説されています)

もちろん、ここに紹介されている解決ステップがすべてでも、万能でもありません。しかし、何事も基本的な考え方があっての応用だと思いますので、まずはこの本に書かれている内容を理解しつつ、実際の課題にむかって応用をしていくという態度も必要でしょう。

そして、「プロローグ」に書かれているつぎのセンテンス、リサーチユーザーの方~リサーチを発注し、結果をビジネスに活かす立場の方~には、ぜひ覚えておいていただきたいことです。(少し長い引用になってしまいますが、大切なことですので。著者の皆さん、すいません)

ビジネスパーソンが専門家(注:専門のリサーチ会社のリサーチャー)にリサーチを依頼するときに重要なこと、明確にしなくてはならないことは2つあります。
・誰が、何をするための事実を知りたいのか
・何がわかると自分(たち)はうれしいのか
「誰が」というのは、たとえば「開発部が」なのか、「営業部が」なのか、「広告宣伝部が」なのかといった意味になります。つまり、その調査の背景であり、何のための調査なのかということが大切なのです。「当たり前のこと」だと思うかもしれませんが、これが意外とはっきりしていない、あるいは、はっきりとリサーチャーに伝えられていないというケースがことのほか多いのです。それがわからないと、的確な調査項目を練ることが難しくなります。
また、何がわかるとうれしいのか。これは、調査の本当の目的は何なのかを、突きつめて考えることになります。新しい商品を開発するために、営業部門を説得したいのか、既存商品の広告戦略を強化するために市場の将来を把握したいのかなど、なるべく具体的に調査結果の使い方を考えておくことが重要です。「漠然とした理由で行なう調査」は意外と多いもので、これでは、効果的なマーケティング・リサーチにつながりません。 (「プロローグ」 p.4-5、注はblog筆者加筆)

これはリサーチユーザー向けのメッセージですが、リサーチャーも、ここに触れられている内容(「誰が」と「何が」)を、クライアントにしっかりと確認しなければなりません。常に頭において、リサーチを進めなければなりません。

「マーケティング・リサーチ入門」とありますが、本書のメインターゲットはリサーチユーザーといえそうです。しかし、リサーチャーこそ、読むべき本だとも言えそうです。
リサーチャーが、このような知識をベースに持ち、リサーチユーザーと議論をできることが、マーケティング・リサーチをより有効なものにしていくのです。

PS.
すでに、本書についてコメントをされている先生もいらっしゃいました。
つぎのblog も、あわせて参考にしてください。

Mizono on Marketing (明治大学・水野誠先生)

j-ono.com (明治学院大学・小野譲司先生)

【追記:2010.8.8】
リサーチャーも、twitter でお勧めしてます。

surveyml さん(2010.8.7~8.8)

先ほど amazon から届いた。実用性の高い見事な構成、これは名著の予感

コモデティ化脱出のヒントかも<マーケティングリサーチに関する書物の多くは「従者の技術(servant)」、必要なのは「主人の技術(master)」

田中洋先生、ありがとうございます。クライアントが本書で「解決のステップ」を習得すればするほど、調査会社側はうかうかできなくなるのは確実です


simfarm さん(2010.8.7)

今日アマゾンから届いた『課題解決!マーケティング・リサーチ入門』(田中洋編著/ダイヤモンド社)。うん、これはかなり使えそう。リサーチャー、マーケター、調査関連職は必携かも。

さらに、ダイヤモンド社さんでは、本書の一部(10ページ)を電子ブック形式で見ることができますので、本書の内容を確認できます。

課題解決!マーケティング・リサーチ入門(ダイヤモンド社)