月別アーカイブ: 2010年4月

『星野リゾートの教科書』

星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則 星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2010-04-15

また星野本ですか・・・、という方もいらっしゃるかもしれませんが。。。
星野さんの本は「ベーシックなことをしっかり」というものが多いと思うので、先端とかバズワードに向きがちな視点を、基本に戻してくれる効果があると思っているので。

今回の本も、日経BPの雑誌連載の単行本化です。正直、すかすか&ページ少ないので、2時間もあれば十分読みきれると思います。また、テーマもベーシックな内容(なんといっても「教科書をどう生かすか」についての本ですから)。
ということで、「あまり本をよむのに慣れていなんだよね」とか言いそうな社会人ビギナーの方が、経営とかマーケティングへの取っかかりとして読むには、とくにおすすめの本です。

まずは、もくじ。

第Ⅰ部 教科書の生かし方 ~定石を知り、判断ミスのリスクを最小にする
第Ⅱ部 教科書通りの戦略 ~難しそうに見えて、実は効果的である
第Ⅲ部 教科書通りのマーケティング
      ~「やるべきこと」をやり切れば、すべてが変わる
第Ⅳ部 教科書通りのリーダーシップ
      ~すぐに成果は出ないが、必ず成果は出る
第Ⅴ部 教科書通りに人を鍛える
      ~「未経験者歓迎」で成長できる理由

内容は、

では、星野社長は、どんな教科書から学んで、どんな成果を上げてきたのか。そのとき現場はどう動いたのか。本書では、その具体的な事例を取り上げ、教科書を経営に生かすためのポイントを明らかにする。(本書「はじめに」より、p2)

というものです。
まず第Ⅰ部で本の探し方+読み方+実践の仕方が紹介されています。
そして第Ⅱ部以降で事例が紹介されていますが、それぞれの事例はほぼ、

概要 + 抱えていた課題 + 解決への取り組み + 他分野への応用 + 教科書のエッセンス

という内容で構成されています。
正直なところ、親切すぎる内容かなという印象もありますが。。。

このような事例もさることながら、この本を紹介しようと思ったのは、以下のような考え方に共感する部分が大きかったからです。

「教科書の理論なんて机の上でしか通用しない」「本当にビジネスの現場で役立つのか?」と思う人がいるかもしれない。(・・・中略・・・)しかし、私はこれまでの経験から「教科書に書かれていることは正しく、実践で使える」と確信している。(本書「第Ⅰ部」より、p12)

囲碁や将棋の世界に定石があるのと同じように、教科書に書かれている理論は「経営の定石」である。何も知らないで経営するのと、定石を知って経営するのでは、おのずと正しい判断の確率に差が出る。それは会社の長期的な業績に直結するはずだ。(本書「第Ⅰ部」より、p14)

むしろ私が注目するのは、書棚に1冊ずつだけ置いてあるような本だ。こうした本は流行の波を乗り越えて、体系化された理論として生き残り、定石として一般的に認知されたことを示している。私はこういう古典的な理論の中にこそ、経営に役立つメッセージがあると実感している。だから棚に差された本をじっくりと見る。(本書「第1部」より、p18-19)

いかがでしょう?
確かに、「教科書なんて役に立たない」という声を聞くことも少なくないです。しかし、それは理解が十分でない、あるいは、徹底的にやり抜いていないからだ、というのが星野氏のスタンスのようです(「はじめに」より)。

そして、本書を読んで思いを新たにしたことがあります。
それは、「星野リゾートは、ほんとにリサーチを活用している」ということです。他書でも、星野氏がリサーチを重視していることは明らかですが、本書でも多くの事例に調査の話が顔を出します。

市場調査のデータを分析しながら、競合から抜け出す戦略を立てた。(本書p35)

星野リゾートの独自の調査によると・・・(本書p50)

予約ページの使いやすさをチェックするために、外部の専門会社を使い調査を実施する。(本書p64)

こんな感じです。

リサーチでしっかり実態を把握し、教科書に書かれた理論に従い、きっちりとやり抜く。
これが、星野リゾートの強さなのでしょう。

最後に、どんな本を教科書としているのか、一部を紹介。

競争の戦略
価格:¥ 5,913(税込)
発売日:1995-03

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 基本編 第3版
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2008-12-19
売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則
価格:¥ 1,529(税込)
発売日:1994-01

真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか
価格:¥ 1,325(税込)
発売日:1990-03
ブランド・エクイティ戦略―競争優位をつくりだす名前、シンボル、スローガン
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:1994-01
ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
価格:¥ 2,039(税込)
発売日:1995-09

10年以上前の本が多い、でも確かに、いずれも必読書だと思います。

MMとYVIが経営統合へ向け協議開始?!

(いやはや、こんな記事で1ヶ月ぶりに更新とは。。。さらに、twitter の力も痛感。。。)

本日(2010.4.19)、マクロミルからニュースリリースが配信されています。

株式会社マクロミルとヤフーバリューインサイト株式会社(ヤフー連結子会社)の経営統合に関する本格協議開始について (マクロミル社IR情報)

マクロミルとヤフーバリューイサイト(YVI)の経営統合へ向けて、マクロミル社とヤフー社が協議に入ったと。さらに同日のリリースでは、ヤフー社に対してマクロミル社株の第三者割当増資を行っている(募集後のヤフー社の持株比率は7.22%、第3位の株主に)ので、本気ですね。

リリース資料をみると、両者の売上は、マクロミルが78億円、YVIが49億円、単純合計でも127億円の売上高を誇るリサーチ企業が誕生することになります。

リリースでは、統合のメリットをつぎのようにしています。

 このような状況のもと、本経営統合後の新会社(以下「統合新会社」)において、マクロミルのシステム構築力と営業力ならびにヤフーの調査パネル資産およびYVI のソリューション提案力を融合させることは、顧客資産の統合、経営管理の効率化、販売促進等の機能向上も相俟って、さらなる業容の拡大につながります。
 統合新会社は、いままで以上に高品質のネットリサーチを効率的に大量提供するこが可能となるほか、商品ラインアップの拡充で、高度化するマーケティング課題をワンストップ解決することが可能となります。また、ヤフーグループと協働することによって新時代のインターネットマーケティング事業創出などについて模索・検討してゆきたいと考えております。

注目したいのは、「ヤフーグループと協働することによって新時代のインターネットマーケティング事業創出などについて模索・検討してゆきたい」の部分ですね。単に、ネットリサーチ会社2社の統合という枠を超えた新たなマーケティングリサーチ企業への飛躍を期待したいと思います。

(ほんとに経営統合されれば、の話ですが。。。キリンとサントリーのような例もありますし)

ここで、他の業界情報もついでに。

twitterではすでに紹介していましたが、クロス・マーケティングからは下記のリリースが発表されています。

「株式会社クロス・マーケティング、株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント~ネットリサーチ業務に関する業務提携のお知らせ~」(PDF)
(クロスマーケティングよりリリース 2010/4/1)

資本提携ではなく業務提携ですけど。。。

また、すでにグローバルレベルではグループとなっているカンターとテイラーネルソンですが、日本でも、統合的な活動に移行するようです。
ジャパンカンターリサーチの下記のリリースによると、

本社移転に関するご案内(ジャパンカンターリサーチ社ニュースリリース2010.4.15)

新たに「日本事業を統括する機能として、カンター・ジャパン(Kantar Japan)を設立いたしました」ということのようで、新宿にJKR社とTNS Infoplan社が移転、集結するようです。

リサーチ業界、まだまだいろいろありそうです。。。

【追記:2010.4.20】
過去の関連記事は、こちらに ↓ 。

業界再編の予感・・・(2007.1.25)
インフォプラント&インタースコープ合併へ(2007.5.11)
IP+IS=ヤフーバリューインサイト(2007.6.21)