日別アーカイブ: 2010年2月16日

『マーケティングを学ぶ』『ビューティフルカンパニー』『マーケティング・アンビジョン思考』

紹介しなくてはと思いながら、いままで紹介してなかった3冊を、ここで。

1冊目は石井淳蔵先生による、わりと最近のこちらの本 ↓ 。

マーケティングを学ぶ (ちくま新書) マーケティングを学ぶ (ちくま新書)
価格:¥ 945(税込)
発売日:2010-01-10

「マーケティングを学ぶ」とはいいながら、入門者向けの本ではありませんので、ご注意を。
むしろ、マーケティングマネージャー、あるいは現場で数年の経験を積んだマーケターが読むべき本ではないでしょうか。基本的なテーマは、マーケティングマネジメントなので。

それは、もくじを見てもらえば一目瞭然ですし、このもくじを見ると石井先生の主張も見えてくると思います。(そのために、少し細かなレベルで紹介しておきます)

序章 マーケティング・マネジメントを求めて
第1部 市場志向の戦略づくり
 第1章 生活者に向き合う
 第2章 市場を細分化し、ターゲットを定め、ポジションを獲得する
 第3章 顧客関係の深化に向けて事業を再定義する
 第4章 ポジショニングを先行させる
 第5章 第1部のまとめ:市場志向の戦略を立てる
第2部 戦略志向の組織体制づくり
 第6章 コーポレート・ブランドを経営する
 第7章 製品分野別に経営する
 第8章 ポジショニングを通じてブランド・エクイティを確立する
 第9章 ブランドを拡張する
 第10章 市場カテゴリーとブランドの絆を作る
 第11章 第2部のまとめ:戦略体制を確立する
第3部 顧客との接点のマネジメント
 第12章 ブランド・コミュニケーションをマネジメントする
 第13章 ブランド・エクイティの成長をマネジメントする
 第14章 ブランド・エクイティに基づいて企業を経営する
 第15章 営業プロセスをマネジメントする
 第16章 チャネルをマネジメントする
 第17章 第3部のまとめ:顧客関係をマネジメントする
第4部 組織の情報リテラシーを確立する
 第18章 市場調査情報を使いこなす
 第19章 営業情報を使いこなす
 第20章 お客様の問い合わせ情報を使いこなす
 第21章 第4部のまとめ:組織の情報リテラシー
終章 コマーシャル・イノベーションに向かって

著者の言葉を借りると、

本書は、<創造的適応>というそうしたマーケティングの基本論理を念頭に置きながら、市場や組織に向けて企業が考える戦略やマネジメントを、具体的なケースを通してわかりやすく読み解こうとするものです。21世紀に入り、ますます複雑さを増し、流れが早くなる環境にある企業にとって、創造的適応の姿勢はますます重要になると思います。(p.311)

ここにあるとおり、各章は“テーマ>ケース>まとめ”という構成をとっており、読みやすい内容になっています。
ただ、ケースは読みやすいのでわかった気になりがちですが、やはりマーケティグの基本を理解していないと正しい理解はできないと思いますので、まずはマーケティングの基本を理解した上で、本書に進んだ方がいいかと思います。
その上で本書を読むと、理論と現場の結びつきが理解できるようになるのでは?

とはいえ、なぜか新書なんですよね、この本。
なので、とりあえずこの本から読んでみて、マーケティングに興味を持ってもらうというのも、ありなのかもしれませんね、肩肘を張らずに。

2冊目の本は、少し前に出版された、嶋口充輝先生のこの本 ↓ 。

ビューティフル・カンパニー 市場発の経営戦略 ビューティフル・カンパニー 市場発の経営戦略
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-10-17

石井先生の本は、どちらかというと戦術レベルでの内容だったとすると、嶋口先生のこの本はもう一段上の戦略レベル、あるいは理念レベルの内容ということができるかもしれません。

実は、つい先日、twitter上で「マーケティングは戦争か」ということについての議論が行われていました。その時に、SurveyMLの萩原さんが嶋口先生のネット上の記事を紹介してくださり、この本を思い出しました。
(萩原さんが紹介した記事は、こちらです ↓ )

特集「見えない顧客ニーズをつかむ組織の作り方」
(読売ISコミュニケーションマガジン「ペリジーvol.6」2009年1月号)

本書の中でも、「戦争型の競争から恋愛型の競争の変化へ」と題して、つぎのように述べています。

大きな変化の一つは、それまでの市場シェアをベースにした「戦争型の競争」のウエイトがだんだんと小さくなって、それに代わって「恋愛型の競争」が重視されてきたことだ。どういうことかと言うと、競合他社との相対的な競争ではなく、顧客価値を高めるという絶対的な競争にそのウエイトが移ってきたのである。(p.46)

このような環境の元での、「必要なアンビジョン、仕組み革命、マーケティング・マッスル、顧客主義と顧客との関係性などについてもその考え方を紹介していきたいと思う」(p.4)ということで書かれたのが本書です。

もくじは、つぎのように。

第1章 マーケティングの持つ本来の意味とは
 第1節 アンビジョンという名の戦略
 第2節 マーケティングは企業経営の根幹機能
第2章 ビューティフル・カンパニーの条件
 第1節 仕組み革新の時代への対応
 第2節 マーケティング・マッスルという組織づくり
 第3節 ビューティフル・カンパニーという価値軸
第3章 関係性マーケティグと先客万来のシステム
 第1節 恋愛競争の時代におけるロイヤル・カスタマーの創造
 第2節 関係型ソリューションを売る金融マーケティング
 第3節 お得意様をもてなす、千客万来の仕組みづくり
第4章 顧客満足の追求とコーポレート・ガバナンス
 第1節 社外取締役に求められるもの
 第2節 企業理念、CREDOと呼ばれる羅針盤の意義
 第3節 顧客満足とコーポレート・ガバナンス
 第4節 クレームをガバナンスに生かす
第5章 揺らぎ始めたモノ主導型マーケティング
 第1節 サービス・ドミナント・ロジックという概念
 第2節 品質に関するパラダイム・チェインジの必要性

ある雑誌でのインタビュー記事を元に構成した本のようで、とても読みやすい内容になっています。

さて、以上の2冊の本。
いずれも、これまでの両先生の研究のエッセンスをまとめたような内容で、さらにとても読みやすいという特徴も共通です。
論文書や理論書ではなかなか取っ付きにくいかもしれないですが、この2冊でしたらあまり抵抗なく読めるのではないかと思って紹介しました。
とくに、マーケティングの基本を学びながらも、時代の変化(パラダイムシフトとも言われますね)の中で、これまでのマーケティング理論が、なんかしっくりこないという疑問を感じ始めた人に読んでもらいたい本です。「序破離」でいうところの、序から破に向うくらいの方ですね。
なんらかのヒントが得られるかもしれません。

そして、さらにもう1冊。
石井、嶋口両先生も名を連ねているのですが、JMA(日本マーケティング協会)の研究を元に書かれた、こちら ↓ の本もぜひ。

マーケティング・アンビション思考 (角川oneテーマ21) マーケティング・アンビション思考 (角川oneテーマ21)
価格:¥ 740(税込)
発売日:2008-11-10

この本、2008年の出版となっていますが、実は2001年に出版されている下記の本とほとんど同じ内容の本です。

柔らかい企業戦略―マーケティング・アンビションの時代 (角川oneテーマ21)
価格:¥ 600(税込)
発売日:2001-11

つまり、2001年に提言されていた内容が、そのまま2008年でも通用したということで。。。
新しい考え方が受け入れられるのには、時間がかかるということですね。
あるいは、ハウツーやノウハウでないと理解されないのか。。。

この本も、もくじを紹介しておきます。

第1章 戦略アンビジョンの時代(嶋口充輝)
第2章 マーケティングの使命は夢を売ること(竹内弘高)
第3章 マーケティングへの2つのチャレンジ(片平秀貴)
第4章 新しい時代の顧客ニーズと顧客志向(恩蔵直人)
第5章 アンビジョンを具現化するマーケティング戦略(上原征彦)
第6章 創造的瞬間がアンビジョンを確信に変える(石井淳蔵)
終章  新たなパラダイムシフト

基本的に、新しいマーケティングについての考え方が示されている本です。
(さすがに今となっては、「新しいか?」と思う方もいらっしゃるでしょうけど・・・)
「アンビジョン」がテーマなので、たとえば竹内先生の章では、マーチン・ルーサーキング師のスピーチが引用されていたりします。

これまでの調査について、少なからず否定的な言説がなされているのも本書の特徴で。。。
(とはいっても、リサーチ自体を否定しているわけではなく、その使い方、考え方についての否定ですので)
引用したいところは多々あれど、ここで抜書きするとそれぞれの文脈とは異なった解釈をされる危険性があるので、やめておきます。

けど、せっかく紹介しているのに、エッセンスを感じてもらえないのも・・・。
思い切って、終章からつぎの文章を紹介しておきます、少し長い引用になりますが。

私たち現代人は、要素還元法と呼ばれる線形の理論に慣れ親しんでしまった。確かに、この手法は重要だ。MBA(的教育)の重要性が叫ばれる。ロジカル・シンキングや財務や税務をはじめ、さまざまな理論という名の知識が必要とされる。
しかし、アンビジョンはロジカル・シンキングでは導き出されない。アンケート調査や統計手法の先にもアンビジョンはない。アンビジョンは哲学のようなものだ。ホーリスティックなアプローチ、あるいはアフォーダンス理論のようなアプローチによって、インスパイアされるものだ。ロジカル・シンキングや財務的なアプローチなどは、得られたアンビジョンを吟味し、ブレイクダウンし、戦略化するために重要なのである。(p.164)

本書の通奏低音になっているのは、このような考え方だということを感じていただければ。
個人的には、おすすめの本です。
(けど、否定的な人も少なくないだろうと思います・・・)