日別アーカイブ: 2009年12月12日

『社会調査論』

社会調査論 社会調査論
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:2009-09-24

前のエントリー(「社会調査学科」?!)と関連して。
少し前に読んで、「これは紹介しないと」と思っていた本です(ただ、売れてなさそうなんですよね、Amazonのランキングでは・・・。仕方ないとも思いますが。。。)

実はこの本、1998年に出版されている ↓ の本の改訂版です。
(タイトルが変更になっていますが、理論的な部分はほとんど同一、事例的な部分がほとんど改定、という内容になっています。前書をお持ちの方は、内容を検討してから購入してください)

見えないものを見る力―社会調査という認識 見えないものを見る力―社会調査という認識
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:1998-09

「社会調査を学ぶ本質は、その方法論を学ぶことにあるのではないか」というようなことを前のエントリーで書きました。
しかし、世の中にある多くの社会調査の本は、サンプリングの方法や調査票の作り方、あるいは集計や統計といった「テクニック」について記述しているものがほとんどだと思います。
(少し話がそれますが、最近のビジネス書のコーナーに行くと、「○○しなさい」「○○せよ」「○○術」「○○力」といったタイトルの本があふれています。個人的には、このような傾向はいかがなものかと思っていました。テクニック~というかノウハウといった方が正しいかも~ばかりを身につけても、本質的な理解ができなければ、意味はないと思うのですが。。。)

そこで本書。この「社会調査の本質」について考えさせてくれる数少ない本だと思います。
まずは、もくじを紹介。

Ⅰ部 社会調査の方法
 1章 問うということ―問題の組織化
 2章 対象を設定する―単位と全体の構成
 3章 データの収集―新しいテクストづくり
 4章 データの処理―データベースの構築
 5章 データの分析―比較から説明へ
 6章 書くということ―分析の再組織化

Ⅱ部 社会調査の問題
 7章 社会調査と社会認識
 8章 具体的な知・抽象的な知
 9章 仮説が生まれるとき
10章 社会調査がつくる「現実」

Ⅲ部 社会調査の実践
11章 方法論の歴史と想像力
12章 日雇い労働現場のフィールドワーク
13章 住まいという場を読み解く
14章 犯罪を減らすためになにをどう探るか
15章 地域社会に広がる社会関係の網
16章 格差や不平等をどうとらえるか
17章 「所有」と「自然」の発見

たとえばⅠ部の内容は、これまでのよくある社会調査の本と同様に見えるかもしれません。しかし、データの収集法を定量・定性とは分類せずに、「観察による/対話による/記録・資料による」という3つで整理しています。その心は本書を読んでいただくとして、個人的には定量・定性という分類よりも、こちらの整理の方がしっくりします。このように、単純にテクニックについて語るのではなく、その考え方をふまえて記述しているのが本書の特徴です。

このあたりについては、「はじめに」での以下の記述に想いが込められているのではないでしょうか。そして、この記述には強く賛同しますし、このような考え方が根底にあるらこそ、本書の価値があるのだと思います。

技法の活かしたかを学び、理論枠組みや思想の使い方を学ぶことは確かに重要である。しかしながら、社会への想像力をそのなかで養い、社会調査の解読力と批判力とを身につけることの方が、さらに大切である。だから、この方法と方法論の書物が伝えようとしているのは、「成果」や「結果」として認められた正解ではない。知るという過程を自分で歩もうとするとき、「力」となりうるであろう、問い方であり、疑い方である。
(本書p.ⅳ「はじめに」より)

そして、本書で一番読んで欲しいのは「Ⅱ部」です。
認識するとは何か、実証主義と解釈主義の問題、理論と経験の問題、仮説、アブダクション、グラウンデッドセオリー、予言の自己成就の問題、などが取り上げられています。
いずれも、調査やリサーチを行なっていく上で、直面する課題だと思います。このあたりを理解してリサーチを行なうのかどうかで、その解釈も異なってくる問題でもあるでしょう。
これ以上詳しいことを書こうとすると、引用だらけになってしまうと思うので、ここでは「お勧め!」ということだけを書いて終わりにしようと思います。

決して、簡単で、読みやすい本ではないです。具体的なテクニックやノウハウが知りたいのなら、もっとよい本があると思います。
しかし、あるていど調査やリサーチに携わった人や、ふとリサーチに疑問を感じることがある人が、いま一度リサーチについて考えるための一冊として、読むべき本だと思います。
(それと、大学院で研究をしたい方も、ぜひ)